ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今回は短めです。


16話 全力で応えます!!

『さぁ、ゲームも終盤に突入! 王はダイスをシュートしてください!』

 

実況者に促され、両王が台の前に立つ。

 

リアスが出した目は5、サイラオーグさんが出した目は4。

 

――――合計で9。

 

一発でこの数字が出たか・・・・・・。

 

俺は無言で立ち上がり、転移魔法陣へと歩を進める。

 

魔法陣に乗る直前、俺は顔だけ振り向かせて、後方にいるリアスとアーシアに一言。

 

「それじゃあ、行ってくるよ」

 

それだけ言うと俺は転移の光に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

俺が転移されたバトルフィールドは人気のないコロシアムの舞台上たった。

 

相対するように現れたのは女王、クイーシャ・アバドン。

 

朱乃との戦いで疲弊していたから、てっきり兵士がでるものと考えてたんだけど・・・・・。

 

その考えが顔に出ていたのか、クイーシャさんは怪訝な表情で尋ねてきた。

 

「どうしました? 私の顔に何か?」

 

「いえ、てっきり兵士の人が出てくると思っていたので・・・・・」

 

俺がそう言うとクイーシャさんはああ、と納得したような表情となった。

 

「彼は出ません。・・・・いえ、単独では出すことが出来ないのです。そのため私が出ることにしたのですよ」

 

単独では出せない・・・・・?

 

どういうことだ?

 

まさかと思うけど、暴走するような奴なのか?

 

気になるけど、兵士については後回しにするか。

 

「流石に落ち着いてますね。女である私ならばもっと喜ぶかと思いましたが・・・・」

 

「もちろん嬉しいっすよ! 美人は歓迎します!」

 

そりゃあ、野郎と戦うくらいなら俺は女の子とニャンニャンしたいね!

 

『よーし! それじゃあ、もう一回いってみよー!』

 

・・・・いや、イグニスさんよ。

 

それはマズいって。

 

つーか、なんでテンション高いの!?

 

イグニスの声が聞こえていたのか、クイーシャさんは自身の肩を抱いて身を守る格好となる。

 

「ま、まさかと思いますが・・・・・コリアナに使ったあの技を使う気ですか・・・・・?」

 

『もっちろん!』

 

「勝手に答えるなよ!! 使いません! 使いませんから微妙に距離とるの止めてください!」

 

さっきいた場所から五歩くらい下がってますよ、クイーシャさん!

 

そんなやり取りをしていると実況の声が聞こえてくる。

 

『えー、第三試合で兵藤一誠選手がコリアナ・アンドレアルフス選手に使った技は少々刺激が強いため、本試合より禁止といたします』

 

『つーか、全試合禁止だろ』

 

『そうですね。女性悪魔の方が逃げてしまうでしょう』

 

先生と皇帝べリアルも声を揃えて頷いてるよ!

 

ゴメンね!

 

刺激が強いよね、観客にも相手にも!

 

お子様には絶対に見せちゃいけないシーンだよね!

 

『でも、世の男性はあの瞬間を求めているわ!』

 

何の自信だ!?

 

どっから沸いてきやがった!?

 

『だってエロいじゃない』

 

確かにエロいけど!

 

コリアナさんも凄くエロいことになってたけど!

 

もうお願いだから黙ってて!

 

そろそろシリアスに入らせてくんない!?

 

グダクダな空気を払拭するために俺はコホンッと咳払いする。

 

そして、クイーシャさんに尋ねた。

 

「いいんですね? あなたでは俺には勝てない。疲弊した状態じゃ尚更です」

 

前の試合でサイラオーグさんが木場達に確認した内容と同じことを告げる。

 

向こうもそれを分かっているのか、少し微笑んだ後、表情を真剣なものへと変えた。

 

「もちろんです。赤龍帝―――禁手となりなさい。私の主サイラオーグ様はあなたの本気を所望している。ならば、女王の私もそれを望みましょう」

 

強い覚悟だ。

 

さっきの木場達に負けないくらい。

 

それほどのものをこの人から感じられる。

 

『第七試合! 開始してください!』

 

審判の合図で試合が始まるが、相手は動く気配がない。

 

・・・・・・俺の本気の姿を待ってるんだろうな。

 

 

それなら―――――

 

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』

 

籠手の宝玉が赤い閃光を解き放ち、俺の体を包んでいく。

 

光が止み、彼女の前に立つのは鎧姿の俺。

 

「これが俺の禁手です。そして、こいつが――――」

 

この状態でも十分だが・・・・・・

 

俺はここから更に鎧を進化させた。

 

 

バチッ!  バチチチチッ!

 

 

俺の周囲に激しくスパークが飛び交う。

 

そして――――

 

禁手(バランス・ブレイカー)第二階層(ツヴァイセ・ファーゼ)――――天武(ゼノン)ッ!!」

 

 

ドオォォォォォォォォッ!!

 

 

俺を中心にして吹き荒れる赤いオーラの嵐。

 

天武になった余波で足元には巨大なクレーターが生まれ、フィールドが揺れる。

 

「これが俺の本気です」

 

「――――っ! 想像以上ですね。これが今代の赤龍帝・・・・・・!」

 

驚愕するクイーシャさんに告げる。

 

「一撃です。この一撃で終わらせるつもりでいきます。防ごうとは思わないでください。避けなければ間違いなく死にます」

 

「言ってくれるわね。ですが、我が主のために、私は逃げるわけにはいきません!」

 

「・・・・・分かりました」

 

俺はクイーシャさんに掌を向けてそこに気を集中させる。

 

『Accel Booster!!!』

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

加速した倍加によって、気が爆発的に膨れ上がった!

 

クイーシャさんは危険を感じたのか、前方に『穴』を展開するが――――

 

「アグニッ!!」

 

放たれる赤い光の奔流。

 

クイーシャさんは『穴』で吸収しようとするが、アグニは『穴』をも破壊してクイーシャさんを包み込んだ。

 

 

ドオォォォォオオオオオオォォンッ!!

 

 

真っ直ぐに突き抜けた赤い光は眼前のコロシアムを跡形もなく消し飛ばし、ついにはフィールドに巨大な穴を開けた。

 

『サイラオーグ・バアル選手の女王、リタイヤです』

 

審判が俺の勝利を告げる。

 

一瞬の出来事に会場が騒然となるのが分かった。

 

 

・・・・・・しかし、今の一撃はクイーシャさんには当たっていなかった。

 

アグニが彼女を襲う瞬間にリタイヤの光に包まれていたのが見えたからな。

 

フィールドにサイラオーグさんの映像が映し出される。

 

その表情は苦渋にまみれたものだった。

 

『俺が強制的にクイーシャをリタイアさせた。あのままでは、赤龍帝に殺されるところだったからな。いや、殺すつもりだったのだろう?』

 

サイラオーグさんはフィールドにいる俺に語りかけてくる。

 

俺は鎧を解除して苦笑しながら言った。

 

「俺は彼女の想いに応えただけです。あそこまでの覚悟を決めた人に手加減をするのは、その人を侮辱するのと同じですから」

 

『ほう・・・・・。では、俺に対してもそうであると?』

 

「当然。・・・・・俺は俺に向けられる全ての想いに応える。そう覚悟を決めてこの場に立っています。相手が俺の全力を望むなら俺は全力を以て応えます」

 

だからこそ、クイーシャさんには俺の全力を見せた。

 

たとえ彼女を殺してしまうことになっても、それが彼女に対する礼儀だと思ったから。

 

それに、サイラオーグさんだって木場達の覚悟に応えてくれたしな。

 

俺が不敵な笑みで言うと、サイラオーグさんも嬉しそうな笑みを見せた。

 

『いい返事だ。・・・・・赤龍帝と拳を交える瞬間を俺は夢にまで見た。――――委員会に問いたい。もういいだろう? この男をルールで戦わせなくするのはあまりにも愚だ! 俺は次の試合、こちらとあちらの全部で団体戦を希望する!』

 

――――っ!

 

団体戦ときたか。

 

つまりは俺とリアス、アーシア、そしてサイラオーグと相手の兵士で戦おうって話だ。

 

いきなりの提案で驚いたけど、俺は賛成だ。

 

俺もサイラオーグさんに続いてどっかで見てる委員会に言う。

 

「俺はその案に乗った! どうせこの後の展開は読めてるんだろ? それなら、面倒なことは無しにして一気に決めてしまいたい!」

 

皇帝べリアルがにこやかに言う。

 

『彼の言う通り、このあとの流れは簡単に読めてしまう。連続して出られないルール上、次がグレモリーの僧侶とバアルの兵士。その次がサイラオーグと赤龍帝の事実上の決定戦となるでしょう』

 

アザゼル先生も顎に手をやりながら続く。

 

『それはあまりにもつまらない。それならば、次の試合を団体戦にしてケリをつける。分かりやすいし、このテンションを継続して見られるだろうな。俺としてはサイラオーグの意見に賛成だが・・・・・・さて、委員会の上役はどうするか』

 

『私もそれでいいのなら、構わないわ』

 

リアスも同意してくれた。

 

次の試合は消化試合だったから、リアスもそれを除いて一気に勝負をつけたいと考えたようだ。

 

それから、数分の時間が経ち、実況席に一報がもたらされる。

 

『委員会から、報告を受けました! 団体戦を認めるそうです! 次の試合は事実上の決定戦となる団体戦です! 両陣営の残りメンバーの総力戦となります!!』

 

会場が沸きだした。

 

次が決戦となるから当然の反応だろう。

 

いよいよ、最後の戦いが始まる!

 

 

 

 

 

 




というわけで、今回はキリの良いところで終わらせました。

次回より最終決戦です!

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