ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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3話 応援もらいます!

「あー・・・・・・覚えること多すぎだろ・・・・・」

 

 

あれから数日が経った。

 

今は昼休みで、俺は学園の中庭にあるベンチに横になりながら、ボヤいていた。

 

片手にはこの数日で作った暗記帳。

レイヴェルの協力のもと、上級悪魔試験に出る要点だけをまとめてある。

赤シートで特定の文字を隠しながら覚えていくという、ベタな暗記方法だ。

 

はぁ・・・・・・昇格試験と中間テストがブッキングするとか・・・・・・。

 

毎日、悪魔の仕事をこなして、帰ってから勉強会だ。

皆に教えてもらいながら中間テストと昇格試験の勉強をしている。

どちらかを疎かにするわけにもいかないから、かなり大変だ。

 

・・・・・・もう、頭がパンクしそうです!

 

『でも、イッセーは頭が悪いわけではないのだから、なんとかなるんじゃないの? 戦術を組んだりもできるわけだし』

 

イグニスはそう言ってくれるが・・・・・。

 

戦術試験に関しては今までの経験があるから、なんとかなりそうなんだ。

伊達に異世界で戦ってきたわけじゃないからな。

 

ただ、冥界の政治学とかは元々の知識が薄いから覚えることが多すぎるんだよね。

政策とか出てくるし・・・・・。

 

悪魔になって一年も経ってない俺にとってはかなりハードルが高い。

 

せめて、一ヶ月あればもう少し余裕を持って勉強できると思うんだけど・・・・・。

 

『確かに話が急過ぎた。だが、それを言っても仕方がないだろう?』

 

うん、ドライグの言う通りだ。

 

一々文句を言っても始まらない。

今は合格に向けて勉強するしかないよな。  

 

レポートはもう終わらせたから、とりあえず暗記していかないと・・・・・・。

時事問題もあるみたいだし。

 

「お、兵藤じゃん」

 

声をかけられたので振り向くと匙がいた。

 

 

 

 

 

 

「聞いたぜ。昇格推薦だってな。おめでとさん」

 

匙が賛辞を送ってくれる。

 

俺は生徒会室にお邪魔をしていた。

 

「ああ、サンキュー。でも、話が急でな。覚えることが多すぎて頭がパンクしそうだ・・・・・」

 

「ま、飛び級だもんな。いきなり上級悪魔の試験となりゃ、そうなるって」

 

「あれ? おまえ、それ知ってたのか?」

 

「会長から聞いた。まぁ、俺も妥当だとは思うぜ。おまえ、かなりの死線潜ってきてるもんな。旧魔王派だの悪神だの英雄だのが相手だし」

 

まぁ、そうなんだよね。

 

ちなみに今回の俺の推薦理由の中には公には出来ないけど、アスト・アーデのことも含まれているそうだ。

これは先生から聞いた話。

 

匙が続ける。

 

「それを生きて結果出したんだから、当然っちゃ、当然だ」

 

「でも、木場も朱乃も激戦潜ってきたのに俺だけが飛び級ってのは未だに納得出来ないんだよな」

 

「姫島先輩を呼び捨てかよ・・・・・・って、実年齢はおまえの方が上だったか」

 

そうそう、俺のことは会長を始めシトリー眷属にも伝わってる。

 

匙も俺のことは知ってるんだ。

 

「まぁな。でも、黙っててくれよ? 一応、秘匿事項だからな」

 

「分かってるって。会長にも言われてるしな。・・・・・っと、さっきの続きだけど、確かに木場とかも実力的には上級悪魔クラスだもんな。俺も最初は木場と姫島先輩も飛び級かと思ってた」

 

「上が融通利かなかったそうだ。俺だけ例外らしい・・・・・」

 

「あー、なるほど。まぁ、おまえが中級ってのもおかしな話だ。実力は魔王様方と並ぶって言われてるし」

 

先生に言われたことを匙にも言われてしまった。

 

「俺も昇格したいところだけど、まずは強くならないとな」

 

匙が苦笑しながら言う。

 

「おまえも十分な実力は持ってるだろ。龍王ヴリトラもついてるし」

 

「いや、俺だけじゃなくて、シトリー全員で強くなりたいんだ。最近、会長がグリゴリに相談しててな。人工神器について」

 

「人工神器?」

 

というと、先生が使ってるやつだな。

 

神器を作ったと言う「聖書に記されし神」の神器システムを真似して独自に編み出したという。

 

まだまだ研究するところが多くて改良を繰り返しているそうだ。

 

「俺達シトリー眷属はさ、アザゼル先生の実験によく付き合っていてさ。ひとつの成果として、今度、シトリー眷属の非神器所有者に人工神器を取り付けてみようって話になったんだ」

 

「へー、それはすごいな」

 

「人工神器は本物の神器と比べて出力も安定しないし、回数制限もあるから、まだ不完全なものなんだ。けど、強くなれるのは確かだし、やっておいて損は無しだ。それに人工神器って結構面白くて、パワー、サポートのタイプ別に始まり、系統も属性系、カウンター系、結界系って感じでバリエーションも富んでやがる。俺達の神器みたいに魔物や精霊と契約したり、封印した人工神器もあるんだ」

 

先生の人工神器も五大龍王の一角『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファーブニルと契約してるな。

 

ああいうのが他にもあるのか。

 

確かに話を聞いていると人工神器も色々な種類があって面白そうだ。

一度、先生の実験を見学してみようかな?

 

などと思っていたら、生徒会室に他のシトリーメンバーが帰ってくる。

 

「あー、兵藤君がいるー」

 

お下げの『僧侶』草下さんが俺を見るなり、「昇格推薦おめでとー!」と祝ってくれた。

他のメンバーも賛辞をくれる。

 

「ありがとう! 試験頑張るよ」

 

一年の『兵士』仁村さんが言う。

 

「元士郎先輩、会長が例の書類を取りに行けと仰っていました」

 

「あー、あれな。了解。すぐに行くよ」

 

さらに二年のもう一人の『僧侶』花戒さんが匙に告げる。

 

「元ちゃん、私の用件も会長からの用事なの」

 

「マジか。重なってきたか・・・・・。仕方がねぇ、とりあえず近いところからいくとするか。それじゃ、兵藤、俺は行くわ。ゆっくりしていってくれ」

 

「へーい」

 

匙は花戒さんと仁村さんを引き連れて生徒会室をあとにした。

 

生徒会の仕事って大変そうだな。

 

そういや、以前、『戦車』の由良と『僧侶』の草下さんから聞いたんだが・・・・・・花戒さんと仁村さんが匙を巡って水面下で激闘を繰り広げているらしい。

 

あいつも大変だねぇ。

 

『あら、人のこといえるのかしら?』

 

うっ・・・・・・。

 

それもそうか・・・・・・。

 

と、ここで由良がサイン色紙を取り出してきた。

 

「兵藤、サインをくれないかい?」

 

「サイン? 俺のでいいのかよ?」

 

「もちろん。この間のバアル戦、感動したよ。最高の殴り合いだった」

 

「そ、そうか。ありがとよ」

 

由良は俺のファンらしい。

なんでも泥臭い男が好きだとか。

 

俺、泥臭いのかなぁ・・・・・・。

いや、確かに殴り合いが多いけど・・・・・・。

 

まぁ、ファンと言ってもらえて嬉しくはある。

 

しかも、由良も結構な美少女だから尚更ね。

 

「兵藤君が来ていたのですね」

 

聞き覚えのある声に振り向くと、ソーナ会長がいた。

 

「お邪魔してます、ソーナ会長」

 

「ええ」

 

俺のあいさつにクールに応える会長。

会長って美少女だけど、カッコいいと思ってしまうよな。

 

「皆に用事を頼みます。椿姫が部活棟で苦戦しているようです」

 

「「「はい!」」」

 

会長の命令を受けて、皆が返事を返す。

 

「兵藤君、またね!」

 

皆が生徒会室をあとにしていき、残ったのは俺と会長だけ!

 

ソーナ会長と二人きりってのは始めてだな。

 

って、途端に生徒会室が静寂に包まれたよ!

会長も書類に手をつけ始めたし!

 

うーむ、俺がここにいても邪魔にしかならないかなぁ・・・・・。

 

なんてことを考えていると会長が手を止めて言った。

 

「兵藤君。少し時間はあるかしら?」

 

「へっ?」

 

 

 

 

 

 

「チェックです」

 

「やりますね」

 

俺は今、ソーナ会長とチェスをしている。

 

上級悪魔の戦術試験では試験官とチェス対決もあるみたいだから、それの対策ということでソーナ会長が相手になってくれたんだ。

 

リアス達とチェスの練習もしているけど、同じ相手と何度もやっていると何となくパターンが読めてしまうからな。

 

「リアスとデートしたようですね」

 

「・・・・・リアスから聞いたんですか?」

 

「ええ。彼女とは幼い頃からの友人ですから。あなたと何かがある度に通信用魔法陣越しに話を聞かされます。初めて名前で呼んでもらえたとか、兵藤君からキスをしてもらったとか」

 

そ、そんな話をしてたの!?

 

「あなたが美羽さんと恋人という関係になってからは、リアスも燃えていましたね。あんなリアスを見たのは初めてかもしれません」

 

「ハハハ・・・・・・。マジっすか・・・・・」

 

引きつった笑みの俺に会長は真っ直ぐに視線を送りながら言った。

 

 

「あなたは私が出来そうになかった事を全て叶えるのね」

 

「どういうことですか?」

 

「ライザー・フェニックスの件、木場祐斗くんの件、ギャスパーくんの件、小猫さんの件、朱乃さんの件。リアスが抱えていたものをあなたが全部軽くしたの。私はあなたよりも長くリアスの側にいながら、友人でありながら、何も出来ませんでした。『上級悪魔だから』、『悪魔のしきたりだから』と概念に捕らわれ、それらの壁を私は越えられなかった。周囲の視線と自分の立場を鑑みて、何も出来なかったのです」

 

会長もリアスのことを心配してたんだな。

 

まぁ、二人は親友だし気にかけて当然か。

 

「あなたはそれらを意にも介さずに解決していった。私はそれがたまらなく嬉しくて、たまらない程に妬みもしたわ。私に出来ない事をあなたは全部解決してしまうのだもの。だからこそ、改めてお礼を言いたいのです。―――リアスを救ってくれてありがとう」

 

リアスを救った、か。

 

俺はそんな大したことはしてないんだけどな。

 

守りたいから守った。

助けたいから助けた。

 

リアスは俺にとって大切な人の一人だからな。

 

会長は息を吐くとクールな表情を緩める。

 

「ねぇ、兵藤君。プライベートの時はイッセー君と呼んでいいのかしら?」

 

「ええ、もちろんです」

 

俺がそう答えると会長はそれではと続ける。

 

「イッセー君。リアスのことをよろしくお願いします。わがままで直線的で短気なところもあるけど、誰よりも繊細なのよ。リアスにはそばで支える人が必要です。だからこそ、あなたにお願いしたいの。親友としてリアスには幸せになってほしいのです」

 

「任せてください。リアスは俺が守りますよ」

 

「それを聞いて安心しました。っと、チェックメイトです」

 

「あっ!?」

 

本当だ!

 

いつのまにかやられた!

どこにも逃げ場がないし!

完全に詰んでる!

 

うわー、全く気づかなかったぞ・・・・・・。

 

「フフフ、油断大敵です。試験頑張りなさい。あなたなら合格出来ると思いますよ?」

 

微笑みを見せてくれたソーナ会長。

普段、クールな会長が笑うと一段と可愛く見えるな。

 

会長にも応援されて嬉しい限りだ。

 

必ず合格してみせるぜ!

 

 

 

 

 

 

 

チェスを終えて、一息ついた後。

 

「イッセー君。プライベートの時は私のこともソーナでいいわ」

 

「えっ?」

 

いきなりのことについつい聞き返してしまう俺。

 

「だって、イッセー君の方が実年齢は私よりも上なのでしょう? リアスや朱乃のことも普段は呼び捨てみたいだし、それなら私もそれでいいかと思いまして。敬語もいりません」

 

あー、なるほど。

 

まぁ、リアスと朱乃だけ呼び捨てで二人と同い年のソーナ会長だけ、「会長」ってつけるのも変と言えばそうなのかな?

 

「わかった。それじゃあ、プライベートの時はソーナって呼ばせてもらうよ」

 

「流石に切り替えが早いですね。リアス達があなたに好意を寄せるのも頷けます」

 

今のでそんなことがわかるの!?

 

ソーナは俺の思考を読み取ったようにクスリと笑う。

 

「公私をわけて女性に接する男性は素敵ってことですよ」

 

「そ、そういうものかな・・・・・?」

 

「そうです」

 

ソーナは息を吐くと一言漏らした。

 

「私も恋人つくろうかしら」

 

おっと、これは新鮮な言葉をいただいたな。

 

「それじゃあ、匙とかどう?」

 

俺からの提案だ。

 

さて、脈ありなのかどうなのか・・・・・・。

 

ソーナは首をかしげた。

 

「匙は・・・・・・弟といったところかしら。それに彼を慕う眷属の子達がいるのだから、手なんて出せないわ」

 

あらら・・・・・・。

 

これは現時点で脈なしか。

 

匙・・・・・おまえの想いは遠いかもしれん!

 

頑張れ、匙よ!

 

 

 

 

 

 

 

 


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