ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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5話 無限との会談

次の日の朝。

 

インターホンが鳴らされたので、玄関へと向かった。

 

ドアを開けると、そこにいたのは見覚えのある人物。

黒いゴスロリ衣装を着た細身の女の子。

 

その女の子は俺の顔を見ると一言だけ簡素に漏らした。

 

「ドライグ、久しい」

 

おいおい・・・・・・マジかよ・・・・・・っ!

 

こいつは―――――

 

「オーフィス・・・・・・!?」

 

驚愕の声を上げる俺。

 

いや、驚かない方がおかしい!

予想外すぎるわ!

 

俺は一気に警戒を高めて、玄関に集まっていた他の皆も臨戦態勢に入った!

 

それも当然だ。

 

だって、こいつは各勢力にかなりの被害を与えている『禍の団』のトップだぞ!

 

無限の龍神、世界最強の存在!

 

そんなやつがなんで、俺の家を訪問してきやがった!?

ラスボスがお宅訪問するほど、この家は重要拠点なのか!?

 

オーフィスの登場に場に緊張が走る!

 

そんななか、先生が俺達とオーフィスの間に入った。

 

「待て待て! 昨夜言ったじゃねぇか! 誰が来ても殺意は抱くなって! 攻撃は無しだ! こいつも攻撃を仕掛けてこない! つーか、やったとしても俺たちが束になっても勝てねぇよ!!」

 

先生の言葉にリアスが激昂する!

 

「そのドラゴンは各勢力に攻撃を加えるテロリストの集団の親玉! 世界にも多大な損害を出しているいわば仇敵なのよ!? どうして、この怨敵を招き入れるの!? 同盟にとって重要な場所となっているこの町の、この家に! どうして、そこまでして! ・・・・・・まさか、アザゼル・・・・・あなた・・・・・・」

 

リアスはそこまで言うとハッとなる。

 

「まさかと思うけど、お兄様や天使長ミカエルに黙ってオーフィスをここに・・・・・?」

 

この町は天界と冥界が協力によって、他勢力とほ交渉にも使われる最重要拠点の一つ。

天使、堕天使、悪魔のスタッフが俺達以外にも動いており、場を維持している。

 

そこにオーフィスが入り込めたということは先生はスタッフを説得したか騙したかのどちらかだろう。

 

そして、答えはおそらく後者だ。

 

悪魔サイドからは何も連絡はなかったし、イリナやレイナの様子を見るに二人にも事前報告はなかったのだろう。

 

これだけの相手が来るんだ。

事前報告があって然るべき。

 

――――今回はそれがなかった。

 

リアスの言う通り、先生はサーゼクスさんやミカエルさんに黙ってオーフィスをここに連れてきたことになる。

 

リアスが更に激昂する。

 

「協定違反だわ、アザゼル! 魔王様や天使長ミカエルに糾弾されても文句は言えないほどの! 誰よりも各勢力の協力を訴えていたあなたが・・・・・・」

 

そこまで口にしたリアスは途端に語気を鎮めていった。

 

「協力体制を誰よりも説いていたあなたですものね。オーフィスを招きいれたのは何かしら理由があるのよね?」

 

リアスはそういう結論を口にした。

 

そう、先生は誰よりも他勢力との協力体制、和平に力を入れていた。

 

それに先生は俺達をその知識を活かして何度も救ってくれた。

 

この人はサボりで神器オタクな未婚総督だけど、面倒見のいい人なだけだ。

 

そんな先生を疑う道理はない。

 

「おい、イッセー・・・・・。おまえ、かなり失礼なこと考えていただろう?」

 

「ハハハ・・・・・気のせいですよ」

 

うん、さりげに人の心読まないでください。

 

ティアが一歩前に出て言う。

 

「まぁ、アザゼルはサボりで神器オタクな未婚総督だが、世界を破滅に導くような者ではないのは確かだ。信用しても良いと私は思うが?」

 

おいおいおい!

 

俺が考えてたことそのまんま言っちゃったよ、この人!

 

「んだと!? おまえを破滅に導いてやろうか!?」

 

おーい!

言ったそばから荒れてんぞ!?

 

全く平和的でない発言したよ!?

 

先生はコホンッと咳払いする。

 

「俺はこいつをここに招き入れるためにいろんなものを現在進行形で騙してる。だが、こいつの願いは、もしかしたら『禍の団』の存在自体を揺るがすほどのものになるかもしれないんだ。・・・・・・無駄な血を流さないために、それが必要だと判断した。改めて、おまえたちに謝り、願う。頼む、こいつの話だけでも聞いてやってくれないか?」

 

先生が再び俺達に頭を下げる。

 

この人がすることには重要な意味がある。

悪ふざけでこんなことをする人じゃない。

 

オーフィスをここに連れてきたのも大きな意味を持つんだろう。

 

「俺は先生を信じます。まぁ、束になっても勝てないんだし、ここは話を聞くしかないとも思いますしね」

 

俺は苦笑しながらそう言い、警戒を弱めた。

 

他の皆も頷き、それを了承した。

 

さて、オーフィスのことは良いとして、もう一つ気になることがある。

 

「それで、オーフィスの他にヴァーリチームから誰が?」

 

「それは―――」

 

先生が言い終わろうとした時、小さい魔法陣が玄関前に出現する。

 

そこから現れたのはトンガリ帽子にマントという出で立ちが特徴の魔法使いのルフェイと、灰色の毛並みを持つ大型犬。

 

この感じ・・・・・・覚えがある!

つーか、何度もこいつに殺られかけたわ!

 

「ごきげんよう、皆さん。ルフェイ・ペンドラゴンです。京都ではお世話になりました。こちらはフェンリルちゃんです」

 

物腰柔らかく、丁寧な挨拶をくれるルフェイだけど・・・・・。

 

フェンリルをちゃん付け!?

 

京都の時もあのデカイ石造りの巨人を「ゴッくん」って呼んでたよな!

 

この娘、スゴいな・・・・・・。

 

 

更に魔法陣がもう一つ展開する。

 

そこからはグラマーなお姉さんが登場する!

そのお姉さんは出てきた途端に俺に抱きついてきた!

 

「おひさ~赤龍帝ちん! 相変わらずおっぱいが好きなのかにゃ~?」

 

「大好きです!・・・・・じゃなくて! 黒歌かよ! どういう組み合わせだ!?」

 

そう!

現れたのは小猫ちゃんのお姉さんの黒歌!

 

クソッ!

 

乳の感触が最高じゃないか!

 

ってか、他の面子が登場してこないってことはヴァーリチームからはこの二人だけか?

 

黒歌に抱きつかれる俺をじっと見つめてくるオーフィス。

 

オーフィスは一言だけ漏らす。

 

「我、話、したい」

 

「とりあえず、お茶してやれ。このセッティングをするため、俺は他勢力を騙し騙してんだからな。これがバレて悪い方向に進んだら、俺の首が本当の意味で飛ぶからよ」

 

「はいはい・・・・・・はぁ・・・・・」

 

最強の龍神様とお茶ですか・・・・・。

 

 

 

 

 

 

VIPルームに移動した俺達。

 

俺達グレモリー眷属(小猫ちゃんは部屋で休んでいる)、美羽にアリス、イリナ、レイナ、レイヴェル、ティア、イグニス、先生、そして、ヴァーリチームのルフェイ、フェンリル、黒歌、今回の主役のオーフィスという面子が集まっている状態だ。

 

普通ではあり得ない顔ぶれに皆の表情が固いんだが・・・・・。

俺としてはシリアスブレイカーのイグニスが実体化した状態でこの場にいることの方が不安で仕方がねぇ。

 

頼むから、絶対に変なことするなよ!?

誰かのおっぱい揉むのも禁止!

 

「お茶ですわ」

 

朱乃が警戒しつつもヴァーリチームとオーフィスにお茶を淹れる。

 

ルフェイはお礼を言った後、お茶を口にして、黒歌はお茶請けのお菓子をモグモグ食べていた。

フェンリルはルフェイの側で気持ち良さそうに寝てる。

 

あ、相変わらず緊張感がないな・・・・・・。

 

合流した木場とギャスパーだが、木場は後ろで待機している。

表情はいつもと変わらずだが、感覚を研ぎ澄まして、何かあったらいつでも飛び出せるようにしているみたいだった。

ギャスパーは小猫ちゃんを心配して今は小猫ちゃんの部屋にいる。

あいつが側にいれば小猫ちゃんも幾分落ち着けるだろう。

 

さて、問題は目の前の龍神様だな。

 

俺は先生に耳打ちした。

 

(それで、具体的に俺はどうすれば?)

 

話をきいてほしいとは頼まれたけど、なぜオーフィスが話をしに来たのかも知らないし、無限の龍神様相手にどういう接し方をすれば良いのかも分からない。

 

(奴はおまえに興味を持っている。とりあえず、質問されたら返せ。あいつを理解する良い機会だ)

 

(質問されたら返せって・・・・・殆ど投げ槍じゃないですか)

 

(暴れることはしないだろうよ。オーフィスはヴァーリや曹操に比べたら好戦的な意思は無いに等しい。グレートレッド以外にそう攻撃を加えたりはしないだろうさ。おまえは各勢力の代表として会談するってことだ。いいか? とにかく、いいお茶会にしとけ!)

 

(俺任せかよ!?)

 

この人、軽く絞めていい!?

 

はぁ・・・・・大事な試験前だって言うのになんでこんなトンデモイベントが来るのかね。

 

などと俺と先生がヒソヒソとしているとティアが言った。

 

「それで? おまえがここを訪れた理由を聞かせてもらおうか」

 

ナイスだティア!

よくぞ切り込んでくれた!

 

やっぱり頼りになるお姉さんだよ!

 

オーフィスはお茶を口にして、ティーカップをテーブルに置くと口を開いた。

 

「我、ドライグと話したい。ドライグ、天龍やめる?」

 

う、うーん・・・・いきなり、訳のわからんことを聞かれたぞ。

 

俺は微妙な表情で聞き返す。

 

「ど、どういう意味かな?」

 

「宿主の人間、今までと違う成長をしている。我、とても不思議。今までの天龍と違う。ヴァーリも同じ。とても不思議」

 

俺とヴァーリの成長・・・・・・。

 

オーフィスは続ける。

 

「我、これまでの戦い見てた。ドライグ、違う進化した。力の波動、別物。我の知ってる限り、初めてのこと」

 

違う進化・・・・・・天武と天撃のことか。

 

って、今までの戦いも見られてたのな。

全く気付かなかったぞ。

 

オーフィスは更に続ける。

 

「だから、訊きたい。ドライグ、何になる?」

 

と、可愛く首をかしげながら訊いてきた。

 

さて、なんと答えるか・・・・・。

 

無我夢中で修行してたらこうなりました、と答えたらいいのかね?

 

いや、それはオーフィスが求める回答にはならないか・・・・・。

 

と、俺の左手の甲に宝玉が現れた。

ドライグだ。

 

『わからんよ、オーフィス。こいつが何になりたいなどと、俺にはわからん』

 

「・・・・・そう」

 

『ただ、こいつが新たな進化をする理由は単純で明快だ』

 

「それはなに?」

 

オーフィスは宝玉に視線を移して聞き返す。

 

ドライグは一拍置いた後、静かに答えた。

 

『こいつは守るために新たな力を求めている。全てを守ることは不可能。それが分かっていながらも全てを守ろうという想いが、一本の芯がこいつの中にはある。そいつが折れない限りこいつは止まらんさ。――――相棒はまだまだ進化する』

 

一本の芯、ね。

 

ドライグが言うほど大袈裟なものじゃない。

でも、言ってるのとは正しいのかな?

 

俺はまだ止まるつもりはないよ。

 

ドライグの言葉を訊いて少し黙りこむオーフィス。

それから、話を続けた。

 

「二天龍、我を無限、グレートレッドを夢幻として『覇』の力の呪文に混ぜた。ドライグ、なぜ、覇王になろうとした?」

 

『・・・・・力を求めた結果だろう。その末に俺は滅ぼされたのだ。あの時の俺は「覇」以外の力を高めることに気づけなんだ』

 

「我、『覇』、わからない。『禍の団』の者達、『覇』を求める。わからない。グレートレッドも我も『覇』ではない」

 

『最初から強い存在に「覇」の理なぞ、理解できるはずもない。無限とされる「無」から生まれたおまえと夢幻の幻想から生まれたグレートレッドは別次元なのだ。オーフィスよ、次元の狭間から抜け出てこの世界に現れたおまえは、この世界で何を見て、何を得た? そして、なぜ故郷に帰りたいと思ったのだ?』

 

「質問、我もしたい。ドライグ、なぜ違う存在になろうとする? 『覇』捨てる? その先に何がある?」

 

質問を質問で返してきたよ・・・・・。

 

俺のこの先に何がある、か。

 

そんなことはその時になってみないと分からないし・・・・・・。

 

 

 

「ドライグ、乳龍帝になる? 乳つつくと、天龍、超えられる? ドライグ、乳を司るドラゴンになる?」

 

「ブフォアッ!?」

 

その質問に俺は飲んでいたお茶を吹き出した!

 

おいおいおい!

 

無限の龍神様からとんでもない単語が飛び出してきたよ!

 

乳を司るドラゴンって何!?

 

『うぅ・・・・・こいつにまでそんなことを・・・・・はぁはぁ・・・・・! 意識が・・・・・意識が途切れそうだ・・・・!』

 

ドライグゥゥゥゥウウウ!?

 

過呼吸になってんぞ!?

 

しっかりしろ、傷は浅いぞ!?

 

そこにイグニスが追い討ちをかける!

 

「そう、ドライグはね、天龍を超えた存在に・・・・・乳龍になるの。おっぱいのパワーはそれこそ無限大! ドライグは赤き龍の帝王から赤き乳龍の帝王になるの!」

 

『くぁwせdrftgyふじこlp・・・・・!!』

 

声にならない悲鳴を上げるドライグ!

 

ヤバイ!

 

これはヤバすぎる!

 

「おい! ドライグをこれ以上追い詰めるな! つーか、赤き乳龍の帝王って何よ!? 全く威厳が感じられねぇ!」

 

ドライグ、しっかりするんだ!

 

『キャー! ドライグが!』

 

『しっかりするんだ、ドライグ!』

 

なんか、エルシャさんとベルザードさんの悲鳴まで聞こえてきたんですけど!?

 

一体ドライグに何があったんですか!?

 

状況の説明をお願いします!

 

 

すると――――

 

 

『うぅ・・・・ドライグ・・・・・あなたのことは忘れないわ・・・・・』

 

『ああ・・・・・! ドライグ! おまえは俺達にとっても最高の相棒だった! ・・・・・・安らかに眠ってくれ』

 

死んだ!?

ドライグ、死んだの!?

 

『『アーメン』』

 

「ドライグゥゥゥゥゥゥゥゥウウウッ!!!!!」

 

 

 

この後、なんやかんやあって、オーフィスと黒歌達は俺の家に少しの間住むことになった。

 

 

 

 

 

 


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