ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今章ラスト、そして年内ラストの投稿となります!




15話 赤龍帝と龍神と

「す、すげぇ・・・・・・」

 

「そ、そうだね。流石にこれは・・・・・・」

 

眼前に広がる光景に俺と木場はついそう漏らしていた。

 

 

草一つ残っていない荒れ地。

あれだけいた死神は女性陣の力によって退けられ、残るはジークフリート、ゲオルク、そして先生とドンパチやってるプルートのみ。

 

・・・・・いつもの数倍・・・・・いや、もっとか?

 

リアス達の力が増して見えたような・・・・・・・。

 

プルートと距離を取った先生は俺達の元に降り立った。

同様にプルートもあちら側に降り立つ。

 

「さて、ジークフリート、ゲオルク。――――チェックメイトだ」

 

光の槍の切っ先を奴らに向ける先生。

 

「・・・・・これが若手悪魔最強のグレモリー眷属の力か」

 

そう言いながら肩で息をするゲオルク。

 

 

う、うーん、グレモリー眷属というか・・・・・・やったの殆どオカ研女子だよね!

俺も木場も戦ったけど、主に女子の力だよね!

 

『ふふふ。さっきのでテンションが一気に上がったみたいね♪』

 

テンションが上がったって・・・・・・。

その一言だけで片付くレベルか?

 

だとしたら、どんだけテンション上げてんだよ・・・・・?

 

 

ま、おかげでゲオルクもかなりの力を使うはめになったみたいだし、良しとするか。

 

確かに上位神滅具の力は凄いし、ゲオルクの力も凄まじい。

だけど、限界は必ずある。

 

こっちは俺も先生も健在だ。

 

―――――今なら確実にこいつらを潰せる。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

バチッ! バジッ!

 

 

 

いきなり快音が鳴り響いた。

 

見上げれば、ほんの少しばかり上空に空間の歪みが生じ、そこに穴が空きつつあった。

 

新手かと思いきや、ジークフリートやゲオルクも訝しげな表情を浮かべていた。

 

・・・・・・あいつらにとっても想定外の乱入者ってことか?

 

次元に穴を開けてこの空間に侵入してきたのは軽鎧にマントという出で立ちの男性が一人。

 

 

その男を見て俺は目を見開いた。

 

 

あいつは―――――

 

 

その男は俺達とジークフリートの間に降り立つ。

 

「久しいな、赤龍帝。――――それとヴァーリ」

 

俺を睨みつると、その後ろ――――ホテル上階の窓際にいるヴァーリも睨み付けていた。

 

先生が目を細める。

 

「シャルバ・・・・・・ベルゼブブ。生きてやがったのか・・・・・」

 

そう、こいつはディオドラの時に俺達のもとに現れた旧魔王ベルゼブブの子孫、シャルバ・ベルゼブブだ!

 

なんでだ!?

 

あの時、確かに俺が―――――

 

ジークフリートが一歩前に出る。

 

「・・・・・シャルバ、報告は受けていたけど、まさか、本当に独断で動くとはね」

 

「やあ、ジークフリート。貴公らには世話になった。礼を言おう。おかげで傷も癒えた。・・・・・・オーフィスの『蛇』を失い、多少パワーダウンしてしまったがね」

 

「それで、ここに来た理由は?」

 

「なーに、宣戦布告をと思ってね」

 

大胆不敵にそう言うシャルバ。

 

宣戦布告だと?

 

何を企んでいやがる?

 

シャルバが醜悪な笑みを浮かべ、マントを翻すとそこから一人の少年が姿を現す。

その少年の瞳には陰があり、操られている様子だった。

 

俺はその少年に覚えがある。

 

あの子は京都でアンチモンスターを生み出していた少年。

上位神滅具『魔獣創造』の所有者だ。

 

その少年を見て、ジークフリートとゲオルクは驚愕する。

 

「……レオナルド!」

 

「シャルバ、その子をなぜここに連れてきている? いや、なぜ貴様と一緒にいるのだ!? レオナルドは別作戦に当たっていたはずだ! まさか、連れだしてきたのか!?」

 

面を食らっているゲオルクとジークにシャルバは大胆不敵に言った。

 

「少しばかり協力してもらおうと思ったのだよ。―――こんな風にね!」

 

 

ブゥゥゥゥゥン

 

 

シャルバが禍々しいオーラの小型魔法陣を展開し、レオナルドの体に近づける。魔法陣の悪魔文字が高速で動くと、レオナルドは叫んだ。

 

「うわぁぁぁぁぁぁああああああああああああっ!」

 

絶叫を振り上げ、苦悶の表情を浮かべるレオナルド。

 

それと同時に彼の影が広がっていき、フィールド全体を覆うほどの規模となっていく!

 

シャルバの野郎、何をするつもりだ!?

 

「ふはははははははっ! 『魔獣創造』とはとても素晴らしく、理想的な能力だ! しかも彼はアンチモンスターを作るのに特化していると言うではないか! だから私は彼を連れてきたのだよ! 私の望みを叶えてもらうためにね! それでは創ってもらおうか! 現悪魔どもを滅ぼせるだけの怪物をッ!」

 

レオナルドの影から何かが生み出されていく!

 

影を大きく波立たせ、巨大なものの頭部から姿を現していった!

 

なんだ、こいつは・・・・・・・!?

 

デカい・・・・・頭、胴体、腕、脚と体を構成するパーツの全てがデカイ!

 

フィールド埋め尽くすほどに広がった少年の影から生み出されたのは―――――

 

『ゴガァァァァァァァァァァァァァアアアアァァァァァッ!!』

 

巨大な咆哮を上げる、超巨大モンスター!

グレートレッドよりも頭二つ分くらいは大きいぞ!?

 

全長で二百メートル・・・・・・いや、それよりもデカいか!?

俺達の前に現れたのは超巨大生物!

 

『魔獣創造』は所有者の力量しだいでどんな魔獣でも生み出せるらしいが・・・・・・・本当にこんなのが創られるなんて!

 

さらにそれに続くように、それよりも一回り小さい百メートルを超えるモンスターがレオナルドの影から何体も出てくる!

 

 

ブゥゥゥゥゥン!

 

 

生み出された魔獣たちの足元に巨大な転移魔法陣が出現した!

 

あの紋様は転移型か!?

 

「フハハハハハハッ! いまからこの魔獣たちを冥界に転移させ、暴れてもらう予定なのだよ! これだけの規模のアンチモンスターだ、さぞかし冥界の悪魔を滅ぼしてくれるだろう!」

 

シャルバがそう叫んだ瞬間、超巨大モンスターたちは転移の光に包まれていく!

 

マズい!

 

あいつが言ってることが本当なら、このモンスター共は冥界に転移して――――

 

それだけは止めないと!

 

「とめろォォォォォッ!!」

 

先生の指示のもと、皆が巨大モンスターに攻撃を放つがビクともしない!

 

 

だったら――――

 

 

「美羽! 俺に合わせろぉぉぉおおおお!!」

 

俺はそう叫んで天撃の状態になり、砲門を全て展開する!

 

『Accel Booster!!』

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

瞬時に倍加してオーラを溜めていく!

 

美羽もその手に七色の光を集束させていった!

 

「ドラゴン・フルブラスタァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

『Highmat FuLL Blast!!!!』

 

「スターダスト・ブレイカァァァアアアア!!!!」

 

俺と美羽の砲撃が混ざり、極大のオーラが放たれる!

 

俺達の砲撃はモンスターの一体に直撃して、そいつを魔法陣から弾き飛ばした!

モンスターが倒れ、巨大な地響きが起こる!

その振動で立つのが難しいほどだ!

 

 

ぐっ・・・・・急激に力を使ったから体への負担が半端じゃない・・・・・・!

 

 

しかし、他の巨大なモンスター達は転移型魔法陣の光の中に消えていく・・・・・・・・。

 

モンスター達が消えた途端――――

 

 

グオォォォォォォン……。

 

 

このフィールドも不穏な音を立て始めた。

 

白い空には断裂が生まれ、ホテルの建造物も崩壊していく。

 

強制的な怪物の誕生と転移にこのフィールドが耐えきれなかったのか!

 

ゲオルクがジークフリートに叫ぶ。

 

「装置がもう保たん! シャルバめ、所有者のキャパシティを超える無理な使い方をさせたな!」

 

「仕方ない、頃合いかな。レオナルドを回収して退こうか。プルート、あなたも―――」

 

そこでジークフリートはいつの間にか姿をくらました死神に気がつく。

 

それを知り、何かを得心したようだ。

 

「・・・・・そうか、シャルバに協力したのは・・・・・。あの骸骨神の考えそうなことだよ。嫌がらせのためなら、手段を選ばずというわけだ。あんな一瞬だけの雑な禁手ではどれだけの犠牲と悪影響が出るか・・・・・・。それに、これではレオナルドは・・・・・・」

 

それだけ漏らすとジークフリートとゲオルクはレオナルドを回収して、霧と共にこのフィールドから消え去った。

 

クソッ・・・・・・!

 

ここまで来てこんな・・・・・・!

 

いや、それよりも今は冥界がヤバい!

 

ハーデスの野郎・・・・・・・ッ!

シャルバにまで手を貸してやがったのかよ!

 

 

ドォォォォンッ! ドォォォォォォォォォンッ!

 

 

ホテルの方から爆音!

 

見上げれば、シャルバが後衛のヴァーリ達に魔力攻撃を加えていた!

 

「ふはははは! どうした、ヴァーリィィィィィッ! 自慢の魔力と! 白龍皇の力はどうしたというのだァァァァァ! 所詮は人と混じった雑種! 真の魔王である私に勝てる道理がない!」

 

あの野郎、ヴァーリを集中的に狙ってやがる!

今のヴァーリはサマエルの呪いをくらってるんだぞ!

 

防御魔法陣を展開して防戦一方のヴァーリ。

 

「・・・・・他者の力を借りてまで魔王を語るおまえに言われたくない」

 

「フハハハハハハハハハハハッ!!! 最後に勝てばいいのだよ! さて、私が欲しいものはまだあるのだ!」

 

そう叫ぶとシャルバはオーフィスの方に手を突きだした!

 

すると、オーフィスの体に悪魔文字が書かれた螺旋状の魔力が浮かび、縄のように絡みつく!

 

「情報通りだな! 今のオーフィスは不安定であり、今の私でも捕らえやすいと! このオーフィスは真なる魔王への協力者への土産だ! それから、パワーダウンした私にも再び『蛇』を与えてもらおうか! いただいていくぞ!」

 

「させるかよっ!」

 

俺は気弾を放ってシャルバをオーフィスから引き離す。

 

しかし、それでも奴は醜悪な笑みを浮かべていた。

 

「呪いだ! これは呪いなのだ! 私を・・・・・真なる魔王を拒絶した冥界などもう存在する価値もない! このシャルバ・ベルゼブブ、最後の力を持って、魔獣達と共に冥界を滅ぼす!」

 

この野郎、完全にイカれてやがる!

復讐・・・・・・いや、それよりも質が悪い!

 

シャルバは俺に指を突きつけて更に叫んだ。

 

「赤龍帝! 貴殿が大切にしている冥界の子供も我が呪いによって全滅するだろう! 下級、中級の低俗な悪魔の子供から上級悪魔のエリートの子息子女が全て! 血反吐を吐き! のたうち! そして、悶死していく! 喜べ! それがおまえ達の『差別のない冥界』だ! 」

 

ちっ・・・・・!

とことんゲスな野郎だ!

 

そうこうしているうちにフィールドの崩壊が進んでいく。

 

ついには空間に複数の穴が開いて、フィールドの瓦礫を吸い込み始めた。

 

ホテルの室内にいる黒歌が叫ぶ。

 

「もう限界にゃん! 今なら転移も可能だから、転移魔法陣を展開するわ! 急いで!」

 

魔法陣を展開する黒歌のもとに皆が集まる。

 

 

しかし―――――

 

 

俺だけはそちらに行かなかった。

 

「イッセー!? 何してるの! 急ぎなさいよ!」

 

アリスがそう叫ぶ。

 

俺はマスクを収納して皆に笑みを見せる。

 

「・・・・・・お兄ちゃん?」

 

怪訝な表現となる美羽。

皆も同様の反応だった。

 

そんな皆に俺は告げた。

 

「悪いな、俺はここに残るよ。オーフィスを助けないといけないしな」

 

『っ!?』

 

俺の言葉に全員が度肝を抜かれていた。

 

「ボクも残る! お兄ちゃんだけを残してなんて行けないよ!」

 

「イッセー! それなら私も残るわ!」

 

美羽とアリスがこちらに来ようとするが俺は掌を二人に突きだして、それを制止する。

 

「俺だけで十分だ。あんなゲス野郎を倒すのに二人も三人もいらねーよ。それよりも先にするべきことがあるだろう? それに、俺なら鎧を着込んでいれば次元の狭間でも活動できるしな。――――今、この場でシャルバを逃すこともオーフィスを連れていかせることが今後、どんな被害をもたらすか分からない、だろ?」

 

俺の言葉に皆は黙り込む。

 

「もう限界にゃん! いま飛ばないと転移できなくなる!」

 

黒歌がそう叫ぶ。

 

「兵藤一誠」

 

先生に肩を貸してもらってるヴァーリ。

 

先程のシャルバの攻撃が響いているのかかなり辛そうだ。

 

「任せとけよ、ヴァーリ。俺のライバルに好き勝手言ってくれたんだ。あいつは俺がしっかり潰しとくさ」

 

「君がそう言ってくれるとはね」

 

ヴァーリは口の端を笑ました。

 

「イッセー、後で俺達が龍門を開いておまえとオーフィスを――――」

 

先生の途中で俺は首を横に振った。

 

「いえ、それは必要ないです。俺には最強のお姉さんが着いてますから。なぁ、イグニス」

 

『そーいうこと。私の力なら次元の狭間を斬り裂いて脱出できるわ。私達を召喚する暇があるなら、他のことに時間を使いなさい。ヴァーリ君の治療もあるしね』

 

イグニスの言う通りだ。

 

たとえ次元の狭間にいようともアーシアを助けた時みたいにして脱出することは可能だ。

 

それなら、召喚する時間を別のことに使う方が時間の節約にもなるってもんだ。

 

先生は何か言いたそうだったが、頷いてくれた。

 

「・・・・・そうか。わかった! おまえなら必ず帰ってくると信じてるぞ!」

 

「はい!」

 

『ま、イッセーのことは私に任せなさいな。私もイッセーに死なれるのは嫌だしー。危なくなったら自分の封印を解いてでも助けるから』

 

おいおい・・・・・・・それは色々ヤバいんじゃないの?

 

『大丈夫よ。次元の狭間なら私が本来の力を解放しても問題ないから・・・・・・・多分だけど』

 

うおぉい!

それ大丈夫なの!?

 

逆に心配になってくるわ!

 

 

・・・・・・はぁ。

 

ま、いっか。

 

俺は息を吐いた後、木場の方に視線を移す。

 

「木場! 俺がいない間、皆を頼む! オカ研男子として女の子は絶対に守れ! いいな!」

 

俺の言葉に木場は静かに頷く。

 

よし!

 

それじゃあ、行くとするか!

 

俺はドラゴンの翼を広げて飛び出した。

 

「お兄ちゃん!」

 

振り向けば、美羽がいて―――――

 

「心配すんな! 必ず戻る! 約束だ!」

 

俺はそう告げてシャルバの方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

ホテル上空で哄笑するシャルバ。

 

その前に俺は姿を見せる。

 

 

・・・・・・・フィールドも既に半分以上は消失してるな。

 

 

俺を視界に映すとシャルバは不愉快そうな顔となる。

 

「ヴァーリならともかく、貴殿のような天龍の出来損ないごときに追撃されるとは・・・・・・!」

 

「出来損ないで悪かったな。だが、忘れたのかよ? おまえは出来損ないの俺に負けてるんだぜ?」

 

しかも、あれだけの手勢を連れた状態でな。

情けないったらありゃしねぇ。

 

シャルバは一瞬、黙り込むが俺を問いただしてきた。

 

「私を追撃するのは何が目的だ!? 貴殿も真なる魔王の血筋を蔑ろにするのか!? それともオーフィスに取り入り力を求めるか!? 天龍の貴様のことだ、腹の底では冥界と人間界の覇権を狙っているのだろう!?」

 

あーあ・・・・・・。

こいつが言うことは毎回同じだな・・・・・・。

 

それしか頭がないのかね?

 

「・・・・・・くだらねぇな」

 

「何だと・・・・・・?」

 

俺の言葉に怪訝な表現で聞き返すシャルバ。

 

そんな奴に俺は息を吐いて言う。

 

「くだらねぇって言ったんだよ。血筋? 力? 覇権? そんなことばかりに目がいくから、おまえは落ちぶれたんだよ。そりゃ、誰も認めてくれんわな」

 

「貴様・・・・・ッ!」

 

「おまえの御託はもう聞きたくねぇ。それより、あんた、さっき冥界の子供達を殺すって言ったな?」

 

すると、奴は表情を一変させ、再び醜悪な笑みを浮かべた。

 

「そうだ! 偽りの魔王が統治する冥界で育つ悪魔など、害虫以下の存在! 成熟したところで真なる魔王である私を敬うこともないだろう! そんな悪魔共は滅んだ方が―――――」

 

 

 

ドゴンッ!!!

 

 

 

喚くシャルバの鳩尾に俺の拳がねじ込まれ、奴の体が大きくくの時に曲がる。

 

「ガッ・・・・・・フッ・・・・・・!?」

 

奴は崩れるようにホテルの屋上に落下。

そこで膝をついて、大量の血を口から吐き出した。

 

俺はシャルバの眼前に降り立ち、言い放つ。

 

「それ以上言わなくていいぞ。聞いた俺が間違ってた」

 

俺のオーラが膨れ上がり、周囲にスパークが飛び交う。

 

全身にブースターが増設されていく――――

 

「禁手第二階層――――天武。立てよ、ド三流。格の違いを見せつけてやる!」

 

荒れ狂うオーラが吹き荒れ、シャルバの体が更によろめく。

 

シャルバは苦悶の表情を浮かべながらも、こちらに手を向ける。

 

空間が歪み、そこから大量の蝿らしきものが出現してきた。

周囲一帯を蝿の群れが埋め尽くす。

 

「真なるベルゼブブの力を見せてくれよう!」

 

吠えるシャルバは、大量の蝿を操り、幾重もの円陣を描く。

そこから魔力の波動を無数に打ち出してきた。

 

 

しかし――――

 

 

その魔力の波動は俺が腕を薙いだだけで全て弾けていった。

 

「真なるベルゼブブの力? これが? 笑わせんなよ!」

 

 

『Accel Booster!!』

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

 

全身のブースターからオーラを噴出して、一瞬でシャルバとの間合いを詰める!

 

再び決まるボディーブロー!

 

そこから俺は奴の体が顔面へと回し蹴りを放つ!

 

「ガッ・・・・・・!」

 

まともにくらったシャルバは何度バウンドした後、ホテルの屋上から転がり出た。

 

シャルバは悪魔の翼を広げて、空に浮かぶ。

 

「おのれ・・・・・! この下級ごときがぁぁぁぁぁっ!!」

 

シャルバは幾重にも魔法陣を展開して、そこからロスヴァイセさんのように各属性のフルバーストをぶっ放してきた!

 

一発一発はさっきのよりもかなり大きいな。

 

並の悪魔ならこれで軽く消滅するだろう。

 

俺は迫る魔法のフルバーストに右手を向けて――――

 

「アグニッ!!」

 

そこから極大の光の奔流を放った!

 

俺が放ったアグニはシャルバの攻撃を容易に呑み込んでいく!

 

「なっ・・・・・!?」

 

驚愕に包まれるシャルバ。

 

その隙を俺は逃さない。

 

呆然とするシャルバとの距離を再び詰めて、そこから更に拳を繰り出す!

 

反応できなかったシャルバはたまらず、体を大きく仰け反らせた。

 

おいおい・・・・・・本気でこの程度かよ?

 

こいつの攻撃に威力があるとかないとかいう以前の問題だ。

 

 

――――こいつの攻撃には魂が籠ってない。

 

 

それ故に全く重みを感じない。

 

こんな奴が真の魔王?

 

魔王を目指してるサイラオーグさんはこの拳を受けても殴り返してきたぜ?

あれだけボロボロになっても俺に立ち向かってきた。

夢に向かってただ真っ直ぐに。

 

サーゼクスさんだってそうだ。

確かに普段はお茶目なところもある。

それでも、冥界に住む人達が幸せに暮らせるにはどうしたら良いか、頭を悩ませている。

 

シリウスはアスト・アーデという世界を救うために、その身を捧げた!

 

 

やっぱ、許せないよな・・・・・・・。

 

 

「てめぇごときが! 魔王を名乗るんじゃねぇ!!」

 

 

ドガガガガガガガがガッ!!!

 

 

繰り出すのは拳の弾幕!

 

その全てがシャルバの体を次々に抉り、その身を破壊していく!

 

容赦はしない!

 

こいつは・・・・・・こいつだけは・・・・・・!

 

今この場で!

俺のこの手で完全に滅ぼす!

 

「オラァッ!!」

 

「ぐうぅぅぅっ!」

 

何度目のボディーブローだろうか。

衝撃がシャルバの体を突き抜け、大気を揺らした。

 

俺の目の前には見るも無惨なシャルバの姿。

 

「ゴボッ・・・・・・。こ、この腐れドラゴンめががぁぁぁぁぁっ!! これならどうだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ボロボロの状態で手元に小さな魔法陣を展開するシャルバ。

 

そこから飛び出してきたのは一本の矢!

 

 

ヒュンッ!

 

 

風を切る音と共に俺へと放たれた!

 

 

 

 

・・・・・・しかし、その矢が俺に届くことはなかった。

 

 

 

当たる直前に矢の軸を指で挟んで、それを止めたからだ。

 

「油断はしない。この土壇場で使ってきたってことは何か特殊なものなんだろ?」

 

見れば、鏃に何か黒いものが・・・・・・。

 

その時、俺は気づいた。

 

これから感じられるのは――――サマエルの呪いと同じだ!

 

俺はその矢を捨てると、気弾を放って消滅させる。

 

あれを食らってたら、俺もヴァーリみたいになってたな・・・・・・・。

 

シャルバは震えた声を小さく漏らした。

 

「そ、そんな・・・・・・ハーデスからもらった矢が・・・・・!」

 

またハーデスかよ・・・・・!

どこまでもやってくれる・・・・・・!

 

 

いや、それもあるけど――――

 

 

奥の手を失ったからなのか、シャルバは近くで俺達の様子を見ていたオーフィスに懇願しだす。

 

「オーフィス! オーフィスよ! 私に再び『蛇』を! この者を倒すにはあの『蛇』が必要なのだ!」

 

「無理。今の我、不安定。力を増大させるタイプの蛇、作れない」

 

オーフィスの告白にシャルバは絶望しきった表情となる。

 

俺はそんな奴の情けない姿に盛大に嘆息する。

 

「おまえはトコトンまで他人の力頼りなんだな。まぁ・・・・・それもこいつで終わりだ」

 

 

カシャ カシャ

 

 

右腕の籠手、そこのブースターが大きく展開する。

 

すると、そこから赤い――――燃え盛る炎のようなオーラが発せられた。

 

右手が荒々しい紅蓮の輝きを放つ―――――

 

「あんたは子供達から笑顔を、未来を奪おうとした。おまえをぶちのめす理由はそれだけで十分だろ!」

 

「あぐっ・・・・・!」

 

燃え盛る右手でシャルバの顔面を掴む!

 

シャルバは魔力弾を放つなどの抵抗を見せるが、どれだけ足掻こうとも無駄だ!

 

もう間違っても、こいつが再び現れないように!

 

子供達に手を出させないためにも!

 

ここで跡形もなく、完全に消し飛ばす!

 

「おまえには過ぎた技だ! シャイニング・バンカァァァァアアアアアッ!!!!」

 

『Pile Period!!!!』

 

掌から巻き起こった灼熱の炎がシャルバを包み込み――――塵一つ残さず消し飛ばした。

 

 

 

 

シャルバを倒した俺は、オーフィスの前に降り立ち、オーフィスを捉えていた魔力の縄を引きちぎった。

 

オーフィスが俺に問う。

 

「赤龍帝、どうして我助けた?」

 

どうして、か。

 

まぁ、色々と理由はあるけど、それはやっぱり――――

 

「おまえ、アーシアとイリナを助けてくれたんだろう?」

 

「あれ、あの者達への礼。赤龍帝が我助ける理由にはならない」

 

「アーシアとイリナは俺の大事な仲間だ。それを助けてくれたのなら、俺がおまえを助ける理由は十分だろ?」

 

俺がそう言うとオーフィスは可愛く首を傾げていた。

 

いやー、マジで可愛いな。

ついつい頭を撫でたくなっちまうぜ!

 

と、そうそう。

オーフィスに聞きたいことがあったんだ。

 

「なぁ、なんでおまえはあいつらと手を組んだんだ?」

 

「グレートレッドを倒す協力をしてくれると約束してくれた。だから、我もあの者達に蛇、与えた」

 

・・・・・・そ、そんな口約束で?

 

「利用されてる、なんて考えなかったのか?」

 

俺の問いにオーフィスはコクリと頷く。

 

「協力してくれるなら、我それでいい」

 

今のオーフィスを見てて、俺はなるほどと何となく納得してしまった。

 

こいつは誰よりも純粋なんだ。

 

こいつがテロリストの親玉になんてなってしまったのも、旧魔王派だの英雄派だのが勝手に担ぎ上げたから。

 

世界の覇権だとか、超常の存在とのバトルなんてオーフィスにはどうでもいいことで・・・・・・。

 

全部、『禍の団』の連中が作り出した仮初めだったってことか。

 

 

ハハハハ・・・・・・。

 

 

何か引っ掛かってたものが取れてスッキリした気分だ。

 

確かにオーフィスは何を考えてるのか分かりにくいし、滅茶苦茶強いドラゴンだ。

 

でも、本当は―――――

 

「なぁ、オーフィス。俺と友達になるか?」

 

「・・・・・友達? それ、なると、何かお得?」

 

「さぁな。だけど、話し相手にはなれるんじゃないか?」

 

「そう。それは楽しそう」

 

ああ、楽しいさ。

 

俺が楽しませてやる。

 

後悔なんてさせねーよ。

 

 

すると、オーフィスは向こうの方を指指す。

 

「それで、赤龍帝。あれ、どうする?」

 

「あれ?」

 

オーフィスが指指す方を振り返ると―――――

 

 

 

『ゴアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

 

 

・・・・・・・・げっ。

 

 

 

俺と美羽が吹き飛ばした巨大モンスターが復活してるぅぅぅぅぅううう!?

 

うそ、マジで!?

 

あいつ、再生機能もついてんのかよ!?

 

 

うん、一体だけでもこっちに残せて良かった!

 

「どうするって言われてもなぁ・・・・・・・いや、待てよ?」

 

俺は崩れ行くこの空間を見て思う。

 

 

これは良い機会なんじゃないか、と。

 

 

俺の考えが分かったようで、二人の相棒が反応する。

 

『あら? あれを使うの?』

 

『まぁ、確かに良い機会なのかもしれん。次元の狭間であればあの技を使っても問題なかろう』

 

イグニスの言葉にドライグもそう続く。

 

だよな。

 

あの技は冥界、ましてや人間界で試し撃ちできるような技じゃない。

 

「オーフィス」

 

「なに?」

 

「オーフィスってさ、俺に興味を持ったから、家に来たんだよな?」

 

「そう。赤龍帝、普通でない成長。だから、我興味を持った」

 

「そっか。――――なら、俺の新しい可能性をここで見せてやるよ。友達になった記念だ。こいつを見せるのはオーフィスが初めてだぜ」

 

 

 

 

 

 

 

俺は瞑目し、意識を集中させる―――――

 

 

 

感じろ――――

 

 

 

俺の可能性を―――――

 

 

 

拡げろ――――――

 

 

 

希望の翼を―――――――

 

 

 

 

禁手(バランス・ブレイカー)第三階層(ドライ・ファーゼ)――――――『天翼(アイオス)』」

 

 

 

 




というわけで、進級試験とウロボロス完結です!

年内完結間に合って良かったです!

次回から新しい章に入りますが、少し期間が空くと思うので、ご容赦を。

それでは、よいお年を!

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