俺が儀式を受け、正式に上級悪魔に昇格してから数日後にそれは起こった。
「おはよう、イッセー」
「おはよう、リアス」
などと昇格して階級が変わってもいつもと何一つ変わらない朝の挨拶を交わす。
食卓に並ぶのはパンにハムエッグにサラダ、スープと今日は洋食だ。
いやー、やっぱり作り手が多いとメニューのレパートリーも増えるから良いよね!
修行を終えて腹も減ってるから、どれも美味そうに見える!
いや、美味いんだ!
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅっ・・・・・・・
盛大になる腹の音。
それを聞いてリアスがクスッと笑った。
「もう、イッセーったらそんなにお腹空いてるの?」
「アハハハ・・・・・・。まぁね。修行した後だし、それでかな?」
「昇格しても怠けずに修行を続けているのね」
「そりゃあ、日々の鍛練が俺の強さに繋がるからな」
昇格してもその辺は変わらないよ。
「イッセーさん、おはようございます。朝ごはんの仕度が出来ましたから席についてください」
「おう、サンキュー」
アーシアに促されて、席につく。
既にゼノヴィアやイリナ達も席についている。
と、ここでレイナと俺の視線が合った。
すると、レイナは顔を真っ赤にして視線をそらす。
「・・・・・・・」
最近・・・・・というより、俺が昇格した次の日からずっとこんな感じなんだ。
あまり口を聞かないし、俺が近づくとこれまた顔を真っ赤にして逃げていくというか・・・・・・。
それに気づいたのか、ゼノヴィアが怪訝な表情で問う。
「どうしたレイナ。ここのところイッセーとあまり上手くいっていないようだが・・・・・喧嘩でもしたか?」
「え、あ、いや、そ、そそそそそういうわけじゃないの! うん!」
レイナは手を振りながらそう返した。
かなり焦っているのか、言葉を噛みまくってる。
俺もレイナと喧嘩をしたという記憶もないし、何かをした記憶もされた記憶もない。
正直、全く心当たりがない。
うーむ、ここは直接本人に聞いてみるべきか?
「なぁ、レイナ。レイナが俺を避けるのは多分、俺に原因があると思うんだけど・・・・・・。レイナを傷つけるようなことをしたなら謝るよ。だから、教えてくれないか? このまま、ギクシャクした関係が続くのはお互いにとって悪いことだと思うし・・・・・・」
これは本心だ。
同じ家に住んでいるんだから、それは毎日顔を会わせることになる。
その度に互いを避けるようでは、心苦しいと思うんだ。
俺はレイナと仲良くしていきたいし、俺に非があるならそれは直す。
「え、えっと・・・・・・でも、朝食の席で言うようなことじゃ・・・・・・皆もいるし。イッセー君は皆に知られてほしくないことだと思うから・・・・・」
俺が皆に知られてほしくないこと?
何だろう?
エロ本の隠し場所か?
それならとっくにバレてるんだが・・・・・・・。
この間なんて教会トリオがエロ本持って、それに載ってる言葉の意味を聞きに来たくらいだし。
あの時はかなり恥ずかしかった・・・・・・。
ゼノヴィアは興味津々といった様子で次々に聞いてくるわ、アーシアとイリナは顔を真っ赤にしながらも真剣に耳を傾けてるわでさ。
まぁ、とにかく今俺に皆に聞かれたくないような隠し事はない・・・・・・・はず。
「俺は構わないよ。言ってみてくれ」
「・・・・・本当に良いの?」
「まぁ、ここまで来れば皆も聞かずにはいられないって顔してるしね」
ここで黙っていても、後であれよこれよで問い詰められてバラしてしまうのがオチだろう。
これまでの経験で学んだことだな。
「えーと、じゃあ・・・・・・言うね?」
「うん」
その最終確認に俺は一言で返した。
レイナはそれを確認すると一度大きく深呼吸して覚悟を決めたような顔で口を開いた。
「実は私、見ちゃったの」
「見た? 何を?」
俺は聞き返す。
すると―――――――
「・・・・・・イッセー君が・・・・・・・美羽さんとアリスさんと・・・・・・・しちゃってるところを・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
食卓を囲む空気が凍った。
俺もレイナの予想を遥か超えた言葉に思考をフリーズさせてしまう。
えっと・・・・・つまり、その・・・・・・レイナは俺達が三人でしてたところを見た?
それって・・・・・・
それって、つまり―――――
「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「「「「「ええええええええええっ!?」」」」」
俺とリアス達の声が重なった!
レイナは顔を手で隠し、耳まで赤くしている!
ま、マジでかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
「いつ!?」
「・・・・・・あの儀式を終えた、その日の夜に・・・・・・」
「っ!?」
間違いない!
完全に見られてる!
レイナは未だ顔を手で覆いながら言葉を続けた。
「私、一度目が覚めたの・・・・・・。それでトイレに行って、部屋に戻ろうとしたら、上の階・・・・・・アリスさんの部屋から声が聞こえてきて、それで様子を見に行ったら・・・・・・」
しまった!
あの時は美羽に防音用の結界を張ってもらってなかった!
皆が熟睡してたから完全に油断してた!
つーか、レイナの気配に全く気づかなかった!
「・・・・・私が覗いても気づかないくらいに三人とも夢中になってて・・・・・・。私もそのまま朝まで見てたというかなんというか・・・・・・」
朝まで覗いてたと!?
あの日、レイナが珍しく寝不足になってたと思ってたけど、原因はそれか!
「我も見てた」
「オーフィスまで!?」
子供は見ちゃいけません!
「・・・・・イッセー君と顔会わせる度にその光景を思い出しちゃって・・・・・・それで・・・・・」
それで、俺と顔を会わせにくかったと!?
そりゃ、そうだよね!
当然の反応だよ!
「イッセー・・・・・・どういうことかしら?」
「ええ。そこのところ詳しく説明してほしいですわね」
リアスと朱乃が微笑みながらこっちを見てくる!
怖いよ!
かつてないくらいに迫力があるんですが!?
「「なんで私も誘ってくれなかったの!?」」
誘うってどういうことですか!?
君達、自分がとんでもないこと言ってるの分かってる!?
「私はいつでもイッセーに処女を捧げられるわ!」
「私だってそうですわ! イッセー君になら、いつでもどこでも捧げる覚悟は出来てます!」
二人とも、朝食の席でそういうこと言っちゃいけません!
つーか、朱乃、普通に凄いこと言わなかった!?
いつでもどこでもって・・・・・・。
それはつまりベッド以外の場所でも・・・・・・・。
いやいやいや!
確かにエロいシチュエーションは色々浮かんでしまうが、それをすれば俺はバラキエルさんに殺される!
あの人のことだから、「不純だ!」とか言いながら大出力の雷光撃ってくるに違いない!
「レイナ! なぜそれを見たときに私に教えてくれなかったんだ!」
「私も我を忘れてたというか、気づけば朝になってて・・・・・」
そんなに覗くのに夢中になってたの!?
あと、ゼノヴィア!
おまえはどうするつもりだったんだ!?
「母さん、今朝の朝刊取ってくれるか?」
「えーと、これね」
あと、父さんと母さんはなんで平常運転なんだ!?
息子がピンチだって時に気になるのは今朝の朝刊だと!?
「おち、おおおおお落ち着いてくれ! とりあえず落ち着こうか! 美羽とアリスも止めてくれ!」
俺の叫びが朝の食卓に響き渡る!
・・・・・・が、ここで俺は気づいた。
美羽もアリスもここにいない。
「あれ? 二人は?」
「見てないけど? 美羽はともかくアリスさんはどうしたのかしら? この時間に起きてこないなんて珍しいわね」
リアスの言葉に首を捻る。
一瞬、またイグニスがやらかしてるかとも思ったが、俺の目の前で優雅に紅茶を飲んでるからそれはない。
流石に分身を作るのは無理だし。
美羽とアリスは悪魔化の影響で朝が少し辛くなったという。
美羽は元々朝が弱かったんだけど、アリスも少し弱くなった。
と言っても朝に起きれなくなったって程でもなくて、精々盛大に欠伸をするぐらいだ。
そのアリスが起きてこないってことは夜更かししたのか?
「ちょっと様子を見てくる。皆は先に食べててくれ」
「あ、逃げた」
イグニスの言葉にギクッとなりながら、俺は席を立った。
まず向かったのは美羽の部屋なんだが、そこに美羽の姿はなかった。
俺の部屋にもいないようだし・・・・・・。
となると、アリスの部屋か。
そういうわけで、俺はアリスの部屋に向かった。
「アリス、美羽、二人ともいるか? 朝飯だぞ」
ノックをした後でそう声をかけると・・・・・・。
『・・・・・あ、お兄ちゃん? ゴメン。ボクとアリスさん、ちょっと体調悪くて・・・・・』
「体調が悪い?」
怪訝に思った俺はドアを開けて、部屋の中に入る。
俺の視界に映るのはベッドで横になる美羽とアリスの姿。
二人とも毛布にくるまり、顔色を悪くしていた。
「おいおい、どうした?」
「・・・・・ボク達、朝から体が怠くて・・・・・」
「体が怠い?」
二人のおでこに手を当ててみる。
すると――――
「熱っ! かなりの熱だぞ、これ!」
触った瞬間にわかるほどの高熱!
「ケホッケホッ・・・・・」
咳も出てる!
こいつは―――――
「医者ぁぁぁぁあああああああ!! 救急車呼んでくれぇぇぇぇえええ!!」
「ちょ、お兄ちゃん!? 大袈裟だよ! ただの風邪だから!」
「バカ野郎! こんなに熱出てんだぞ!? 今すぐ病院に行くぞ!」
俺は拳を強く握りしめる。
なんてこった!
俺は・・・・・・・自分の眷属が苦しんでることに気づけなかったなんて!
『王』失格だ!
気を整えて気分を楽にしてやることは出来るが、ここまで病状が悪化していたら、根本的な治療にはならない。
もしかしたら特殊な病気だったりする可能性もある。
となると・・・・・・
「美羽! アリス! 待ってろ! 今すぐ助けてやるからな!」
俺は部屋を飛び出し、リビングに駆けていった。
「・・・・・・・バカ」
部屋を出る瞬間、アリスが何やら呟くのが聞こえた。
▽
「お二人とも風邪ですな。といっても悪魔、特に転生悪魔にみられる風邪です」
リアスに事情を告げた後、グレモリー領にある大きな病院に二人を運び診察を受けた。
で、その診察結果なんだが・・・・・・・。
悪魔特有の風邪ってところか。
「それで治療はどうすれば?」
「基本的な治療方法は人間の方と同じです。風邪薬を処方しておきますので、それを飲んで安静にしていれば治りますよ」
なるほど。
それなら家でも看病できるな。
ほっ・・・・・・。
いやー、かなりの高熱だったから焦ったんだけどね。
ただの風邪で良かった。
診察室の扉が開き、ロスヴァイセさんが入ってきた。
「先生、イッセー君、二人共目が覚めましたよ」
病院に運ばれる直前、二人は意識を失うように眠ってたんだけど・・・・・。
どうやら目が覚めたらしい。
「わかりました。では病室の方に移動しましょう」
「そうですね」
先生とロスヴァイセさんと共に美羽とアリスがいる病室に移動する。
病室に入ると二人共上体を起こしてリアス達と話していた。
「二人共調子はどうだ?」
俺が問いかけると、美羽は申し訳なさそうに頷いた。
「少しマシになったよ。熱も今は下がってるみたいだしね。・・・・・・心配かけてゴメンね」
「気にするなって」
謝る美羽の頭を撫でてやる。
顔色も家を出る前よりも幾分か良くなってるな。
二人のおでこに手を当ててみるが、確かに熱は下がってる。
「今は点滴で症状が緩和しているはずです。少し失礼しますね」
医師の先生が二人の脈や血圧を測り、心音を聞いて異常がないかをチェックしていく。
それが終わると先生は二人に言う。
「特に問題はありません。とりあえず解熱剤を出しておきますので、二、三日は安静にしてください。熱が下がっても激しい運動はしないでくださいね。夜の運動会もダメです。なんちゃって!」
「「・・・・・・・・」」
先生の発言に顔を紅潮させて俺の袖をギュッと握ってくる美羽とアリス。
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
そして、俺達三人に向けられるリアス達からの視線。
「あれ? 笑うところですよ?」
一気に冷めた空気に響く先生の声。
・・・・・・笑えねーよ・・・・・・・
今朝はそれで問い詰められたんだよ!
なに余計なこと言ってくれてるの!?
『・・・・・ドンマイだ、相棒』
励ましてくれてありがとよ!
「それと、同居されている方々もワクチンを打っておいてください。悪魔にも感染しますから」
先生は看護師さんに指示を出して、俺達に手際よく注射していく。
そして順番が美羽に回る。
「では、お注射しますねー」
「は、はい・・・・・」
一気に青ざめていく美羽の顔色。
看護師さんに握られている腕がガクガク震えてる。
「美羽ちゃん? どうしたの?」
美羽の急な変化に怪訝な表情を浮かべるアリス。
他のメンバーも首を捻っていた。
握られた腕が更に震え、縮こまっていく。
「あ、あの~、もう少し腕を伸ばしてもらえないと注射出来ないんですが・・・・・・」
看護師さんが困り顔で言った時だった。
「やっぱり嫌ぁぁぁぁあああ! 注射ダメぇぇぇぇえええ!!」
美羽が涙目で駄々をこね始めた!
そうだった!
美羽は注射が大の苦手だったんだ!
ブォォォォォォォォォォッ!!!!
ガシャーンッ!
美羽から迸る魔力の嵐が花瓶を割り、窓ガラスを砕く!
病室を次々に破壊していく!
ドカーンッ!
「ぐえっ!?」
「先生!? しっかりしてください先生ーーー!」
壁に叩きつけられた先生が白目向いて泡吹き始めた!
大丈夫か、先生!?
誰か医者を!
あっ、この人が医者だった!
「きゃあ!」
アーシアの悲鳴!
今度は何事だ!?
「アーシアのスカートが風圧で飛んでいったぞ!」
「割れた窓ガラスから外に出ていってしまったわ!」
なんだとぉぉぉおおおお!?
慌てて振り向く俺!
そこにはスカートが消え去り、ピンクのパンツが露になったアーシア!
なんということだ!
アーシアのスカートが!
このままではアーシアのパンツ姿を他の男に見られてしまう!
「ひゃあ!」
今度はレイナの悲鳴!
次は何だ!?
「レイナ先輩の服が美羽先輩の風の魔力で切り裂かれました」
小猫ちゃんが冷静に教えてくれた。
ホントだ!
レイナの服が
豊かなおっぱいが俺の視界に!
眼福です!
「ちょ、落ち着きなさい美羽! 点滴打っているのだから注射も大丈夫でしょう!?」
リアスがそう叫ぶ。
確かにごもっともな意見だが、点滴の針は美羽が眠っている時に打ったからな。
美羽は針が体に入ってくるあの瞬間が嫌なんだ。
注射あるあるだな。
普段の戦闘では特にそんなことはないんだけどね。
恐らく注射器の形状、病院の雰囲気諸々が恐怖を増幅してるんだろうな。
って、冷静に分析してる場合か!?
とにかく止めないと!
確か、中学の時も一度暴走しかけて・・・・・。
あの時は美羽が暴れる前に気絶させたから何ともならなかったが・・・・・・。
よし、ここはまた気絶させるとしようか。
「美羽・・・・・すまん」
俺は一度謝った後、美羽の首筋にトンッと軽く手刀を当てる。
すると、さっきまで暴走していた美羽の体から完全に力が抜けていき、魔力の嵐も止まった。
慌てていた皆も力が抜けたようで、ガックリと肩を落とし盛大に息を吐いている。
「・・・・・・・イッセー。『王』としてまずは美羽に注射を克服させなさい。今後のことを考えると恐ろしいわ」
「ハハハハ・・・・・・。は、はい・・・・・」
この後、気絶した美羽に注射を打ってもらった。
それから、俺はオカ研メンバーと病院関係者に対して深々と謝罪することになったのだった。
▽
そんなこんなで家に戻ってきた俺達。
美羽とアリスは二人共アリスの部屋で寝かせてある。
看病するならまとめて面倒見るのがてっとり早いからな。
というわけで、ここは俺が二人の『王』として看病することにした。
皆も手伝ってくれるからありがたい。
「熱はどうだ?」
「薬のお陰で下がってるわ。頭はクラクラするけどね。・・・・・ケホッケホッ」
寝てる美羽はともかく、アリスは咳はまだ出てるな。
こりゃ、医師の先生が言ってた通り、しばらくは安静だ。
俺は持ってきておいたお茶を湯飲みに注いでアリスに手渡す。
「水分は取っておけよ?」
「ありがとう・・・・・はー、暖まる」
「それにしても、俺の眷属が二人揃って風邪を引くとはなぁ・・・・・。今後は体調管理も徹底するか?」
俺がそう苦笑していると、アリスが訊いてきた。
「話は聞いたけど、悪魔だけの風邪なんでしょ? 私達、どこで病気をもらったのかしら?」
「あー、それな。俺達、地下室でたまに商人を呼び寄せてるだろ? その時にウイルスが二人に感染したんじゃないかってさ」
「でも、それって私達が悪魔に転生する前でしょ?」
「人間でも体の中に留まることはあるらしいからな。その状態で悪魔に転生したから発症したんだろうって」
「なるほど、そういうこと。今度から商人には消毒を受けてから来てもらいましょうか」
「だな」
冗談を言いながら笑う俺とアリス。
ま、元気でなによりだ。
「とりあえず汗拭くか」
俺はアリスに近づくと、用意しておいたタオルでアリスの顔を拭いていく。
アリスが終わったら美羽も拭いてやるか。
「冷たくて気持ちいい・・・・・」
アリスは目を閉じて息を吐く。
「だろ? キンキンに冷やしておいたからな。風邪引いてる時にこれで顔拭くと気持ちいいんだ」
昔、こうやって母さんにも拭いてもらったっけな。
「やっぱ、結構寝汗かいてるな」
アリスの頬を汗が伝い、それが胸の方へと落ちていく。
体の方も汗で濡れてるかも。
「ええ、後で下着も変えないと・・・・・」
「そうだな。体の方と下着はリアス達にやってもらうといい。皆もおまえ達の看病手伝ってくれているからな」
今頃、母さんとお粥でも作ってくれているんじゃないかな?
「これでよしっと。次は――――」
アリスの汗を拭き終わり、手を離そうとすると――――アリスに手を掴まれた。
「どうした? 何か欲しいものでもあるのか? だったらすぐに持ってくるけど」
などと訊いてみたが、アリスは首を横に振る。
それじゃあ、もう少し拭いて欲しいのだろうか?
冷たいタオルで顔拭くの気持ちいいしな。
「・・・・・・体の方も拭いて・・・・・イッセーが・・・・・」
「お、俺?」
俺が自分を指差すとアリスはコクリと頷く。
熱が出てきたのか、アリスの顔がみるみる赤くなっていく。
「早く・・・・・してよ」
「・・・・お、おう。えっと、じゃあ、パジャマ脱いでくれるか?」
「・・・・・イッセーが脱がせて」
「え・・・・」
ええええええぇぇぇぇえええ!?
な、なんでこんなに積極的・・・・・ってか甘えてるのか、これは!?
「・・・・お願い」
ぐっ・・・・・そんな潤んだ瞳でお願いされたら・・・・・・
断れないじゃないか!
可愛いじゃないか、俺の『女王』!
俺は一度大きく深呼吸すると、何も言わずにパジャマのボタンに手をかける。
上から順に一つ、また一つとボタンを外していくと現れるのは透き通るほどに綺麗な白い肌。
ボタンを外し終えた瞬間に伝わってきた熱気が俺の心を大きく揺さぶる!
「・・・・・下着も」
アリスの言葉に頷き、ブラジャーを外す。
抑えるものが無くなり、ぷるんと解き放たれるアリスのおっぱい。
あれ?
「また少し大きくなった?」
サイラオーグさんとの試合の前、あの浴場での一件の後、アリスの胸は僅かに大きくなっていた。
それがわかった時、アリスは泣いて喜んでいたが・・・・・。
今のはあの時よりも大きい。
「う、うん・・・・。あんたとその・・・・した後から少しね」
マジか!
あの後に成長したと!
美羽やリアス達のような巨乳のアリスは想像できないが、それでも俺は嬉しいぞ!
感動に涙すら出る!
俺が一人、感動しているとアリスは俺の首に両手を回した。
「また・・・・・する?」
「へ?」
「私はいいよ・・・・・あんたが望むなら私は――――」
いいよって・・・・・・・それはつまり―――――
「ボクもいいよ? お兄ちゃんとならいつでも」
声がしたので振り向くと美羽が起きていた!
いつの間に!?
つーか、なんでパジャマ脱いでるの!?
「おまえも汗かいてるだろ! 体冷やすと悪化するぞ!? ちょっと待て、拭いてやるから!」
「大丈夫だよ・・・・・。今から汗いっぱいかくと思うし・・・・・」
まぁ、確かに汗を拭いても、どうせすぐに――――ってなるかぁぁぁぁぁあ!!
つーか、確定か!?
今からするのは確定なのか!?
おまえら風邪引いてるのに元気だな、おい!
などと思っていたら、アリスに続いて美羽まで上半身裸で抱きついてきた!
え、なに、この展開!?
二人共、俺は看病するためにここにいるの分かってる!?
嬉しい申し出だけどさ!
「お兄ちゃん・・・・・」
「イッセー・・・・・・・」
二人が俺に迫る――――――
ガチャ
「イッセー、お粥出来た・・・・・・・え?」
ドアが開き、入ってきたのはお盆にお碗を乗せたリアス!
「リアスお姉さま? はうっ! イッセーさん!?」
アーシアまで!
って、この流れには身に覚えがある!
予想通り、他のメンバーも次々に集まってきては、この光景を見て言葉を失っていく!
「「「「「よ、夜の大運動会!?」」」」」
この後、俺が皆から問い詰められたのは言うまでもない。
それから、一つ付け足すが・・・・・・・。
二人から風邪をうつされた俺はナースのコスプレをした女性陣から看病を受けることになる。
というわけで、番外編は赤龍帝眷属の二人が風邪をひくお話でした。
最近は色々と忙しくて更新スピードが落ち始めています。
くそぅ!
なんで同時に課題が七つも出るんだ!(泣)
まぁ、そういうわけで、今後の更新は少し遅くなりますが、頑張って書いていきたいと思います!
あと、気づいている方もいると思いますが、番外編のナンバーを外しました。
これは、その章に新たに番外編を書くときに邪魔になるかなと思ったからであります。
内容は全く変わりません。
番外編で読んでみたいお話があれば、いつでも言ってください。
気分次第で書きます!(笑)