ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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6話 留守番任されます!

吸血鬼との会談から数日が経過した。

 

会談の翌日にはエルメンヒルデから連絡があり、今日の深夜にリアス達は日本を発つ。

目的地はルーマニアの山奥だそうだ。

 

その日、学校を終えた俺は美羽とアリスを連れて修行に打ち込んでいた。

リアスの準備が整うまでの時間はそれなりにあるし、手伝いは朱乃達がやってくれている。

 

男子の俺はもちろん、こちらの裏の世界に疎い美羽とアリスでは準備の邪魔になるだろう。

 

そういうわけで、俺は二人と修行することに。

 

「はぁっ!」

 

「なんの!」

 

物凄い勢いで飛んできた槍の穂先をサイドステップでかわす。

 

アリスの攻撃を避けるときは割りと大きめに動かないといけないんだ。

槍にも白い雷を纏ってあるからギリギリのところで避けると感電するしね。

 

避けたとしてもこいつを相手に気を抜くなんてことはできない。

こちらの動きに即座に対応して連続の突きを繰り出してくる。

こちらの動きを先読みしながらの攻撃だ。

 

攻撃力とスピード。

白い雷を纏った状態のアリスはそれが桁違いに上がる。

しかも、悪魔化で『女王』となったから、更に出力が上がっている。

 

「っ!」

 

俺は気の残像を残してアリスの動きを撹乱。

 

こいつは目で追うのは無理だからな。

流石のアリスでも見失う。

 

アリスの背後に回り、手刀を繰り出す。

ベストなタイミング。

これならどうよ!

 

しかし、アリスを捉えた瞬間、アリスの姿がぐにゃりと歪み、そのまま消えた――――

 

こいつは・・・・・・

 

「幻影かよ!」

 

「油断大敵だよ、お兄ちゃん」

 

周囲を見渡すと、俺を囲むように無数の魔法陣が展開されていた!

 

一つ一つの大きさは小さいが、数えるのがバカらしくなるくらいの数だ。

 

我が妹ながらにやってくれるぜ。

 

しかも、美羽の方を見ると側にアリスがいて不敵な笑みを浮かべてやがる。

 

なるほど・・・・・・、俺が背後に回った瞬間に幻影を作り出すと共にアリスを強制転移させたってわけだ。

アリスの足元で輝いてる転移魔法陣がその証拠だ。

 

美羽も悪魔化で『僧侶』となり、その方面で色々と能力が向上している。

特に今みたいなサポート系の技に能力を伸ばしているようだ。

 

こうして模擬戦を通すことで、二人と駒の相性は良かったことがよく分かる。

 

と、この状況から抜け出さないと俺もマズいな。

 

俺を囲んでいる全ての魔法陣から砲撃が放たれた瞬間――――

 

俺は咄嗟に『領域(ゾーン)』に突入。

色彩が消え、スロー再生されたような世界に入り込む。

 

俺へと放たれる全ての攻撃の軌道が見える――――

 

 

ドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

 

俺がいたところが弾けて砂埃が舞う。

 

なんとか避けきった俺は額の汗を拭い、息を吐いた。

 

「はぁ・・・・・。やっぱ、鎧なしの状態でおまえら二人相手取るのはキツいな。つーか、コンビネーション良すぎだろ」

 

「今のを避けきる、あんたも相当よ」

 

「完全にいけたと思ったんだけどね」

 

アリスに続き、美羽もそう言う。

 

いや、今のはマジで危なかったぞ。

 

ってか、幻影と強制転移を同時にするってどーよ!?

全く気づかなかったんだけど!?

 

「全く、戦闘に関しては心強くて仕方がないな。事務職やらせたら不安しかないけど・・・・・・」

 

結局、魔法使いの審査も俺とレイヴェルだけでやってるし。

 

今後、俺の眷属に必要なのは仕事ができる子だな。

 

アリスと美羽はやればできる子だと思うんだけど・・・・・・。

コカビエルの時なんか、美羽はいつの間にか校舎の修理してるし。

この間の吸血鬼との会談でもアリスは上手くやってくれたし。

 

俺の呟きにアリスは少々むっとした表情で言い返してくる。

 

「仕方がないでしょ。ああいうの見ると眠たくなるんだから」

 

「それでも一国の王女か!?」

 

「そーいうのはニーナがやってくれてたし」

 

で、美羽はというと・・・・・・

 

「うーん、最初は面白かったんだけど・・・・・・・。色々見てたら皆同じに見えてきちゃって・・・・・・。ゴメンね」

 

そう少し申し訳なさそうに言ってきた。

 

な、なるほど・・・・・。

 

ハイレベルな魔法使いからの厳しいご指摘だ!

 

だけど、それってアザゼル先生達が言ってたように雑兵って言ってるのと同じだからね!?

 

まぁ、でも、美羽の言うことはごもっともなんだよね。

 

今のところ、目ぼしい魔法使いは見当たらない。

美人でエッチそうな魔法使いの人はいたけど・・・・・・。

 

そんなことを思っているとトレーニングルームに入ってくる人影があった。

 

「あ、赤龍帝さま、お邪魔してます」

 

「にゃはは、お邪魔してるにゃん」

 

ルフェイと黒歌だ。

 

この二人、あれ以来、本当にたまに兵藤家を訪れている。

特に黒歌!

勝手に家の冷蔵庫開けて、牛乳とか飲んでるんだぜ?

つーか、この間は俺が取っておいたプリン食われたしよ!

風呂上がりのデザートだったのに!

 

まぁ、黒歌が勝手をするたびに、ルフェイが必死に頭を下げて謝るから、俺も怒れないわけで・・・・・・・。

 

「ちょっと、このへん借りるにゃん」

 

そう言って黒歌が魔法陣を展開すると、そこから分厚い本が何冊も出てきた。

 

俺が黒歌に近づき、本の中身を確認すると、人体の図式と、手から発するオーラ的な絵が添えてあった。

 

「これって・・・・・仙術か?」

 

俺が訊くと黒歌がにんまりしながら頷く。

 

「さっすが、赤龍帝ちんにゃ。これはオーラとか仙術とか闘気のこととか、生命に関する本にゃ」

 

うん、そのあたりは何となく分かる。

 

俺も生命の根元たる『気』を扱ってるからな。

 

でも、黒歌は会得してるし、今更この手の本を読んでも仕方がないんじゃ・・・・・・?

新技でも開発するのかね?

 

首を傾げる俺にルフェイが小さく笑いながら言う。

 

「妹さんにどうやったらよく教えられるか、本を見て研究されているんですよ」

 

おぉっ、しっかりお姉さんしてるじゃないか!

 

黒歌が本の表紙をなぞりながら言う。

 

「白音は赤龍帝ちんが教えてくれていたから、『気』の基本的なところは分かってるみたいだけどね。赤龍帝ちんのと仙術は似ているけど運用方法が違うにゃん」

 

まぁ、そうだな。

 

仙術では硬気功なんてないし。

似ているようで違う。

微妙なところだけど、それは重要な差だ。

 

「小猫ちゃんのこと頼むよ。変なこと教えんなよ?」

 

「それってエッチなことかにゃ?」

 

うーむ・・・・・・、それはありかな?

 

小猫ちゃんも出会った頃と比べると大胆になったよね!

膝に座ったときのお尻の感触が最高です!

 

とりあえず、今はその話は置いておいておこう。

 

俺は本に目を通し始めた黒歌の頭にポンと手を置いて言った。

 

「前にも言ったけど、小猫ちゃんと仲良くしろよ? よりを戻すならいつでも協力するからさ」

 

この世にたった二人の姉妹だ。

よりを戻すなら、俺は協力を惜しまない。

 

まぁ、小猫ちゃんも何だかんだで分かってると思うけどね?

 

二人がまた笑顔で話せる日が来るのはそう遠くない。

俺はそう思っているよ。

 

俺の言葉を聞いて、黒歌は目を丸くしていた。

 

「・・・・・・・」

 

それから、可笑しそうに笑い出す。

 

「にゃははは。うんうん、にゃるほどねぇ。こりゃ惚れるわ。白音の気持ちも分かる気がするにゃん。赤龍帝ちんは下手なイケメンよりずーっと魅力的よ?」

 

「そりゃどーも」

 

そう言われるのは悪い気はしないが、赤龍帝やるのも大変なんだぜ?

 

ルフェイが話題を変えるように訊いてくる。

 

「魔法使いさん達との交渉はどうですか?」

 

「んー・・・・、微妙かな。人数も多くてなぁ。今は書類選考で落としてるんだけどね。あんまりパッとしない・・・・・と、こちらの魔法使いさんが」

 

「ええっ!? ボク、そこまで言ってないよ!? ね、アリスさん!」

 

「いやー・・・・・・、ほとんど言ってるも同じだったような」

 

「もうっ! お兄ちゃんもアリスさんも酷いよっ!」

 

「まぁまぁ、そんなに怒るなって。レイヴェルも似たようなことは言ってたしさ」

 

俺は笑いながらプンスカしてる美羽の頭をポンポンと頭を撫でてやる。

 

相変わらず、可愛い反応を見せてくれるな。

 

そんなやり取りをしていると、ルフェイが微笑んでいた。

 

「うふふ、いつも仲が良くていいですね」

 

「まぁな。ルフェイもアーサーとは仲が良いんだろう?」

 

「はい。兄はいつも良くしてくれますよ」

 

ヴァーリによるとアーサーも妹想いらしいからな。

 

黒歌曰くシスコンらしいが、それは黒歌も同じだろうと思う。

 

あ、俺もか・・・・・・。

 

そんなことを思っていると美羽がルフェイにお礼を言っていた。

 

「この間はありがとうね、ルフェイさん。すごく参考になったよ」

 

「いえいえ。私の術式がお役に立てたのなら何よりです」

 

話の内容からして魔法関連のことだろう。

 

「何か教えてもらったのか?」

 

俺が問うと、美羽は思い出させるように言った。

 

「ほら、あれだよ。例の件の」

 

例の件? 

 

あー、あれか。

 

色々不安になるような情報が入ってきたから一応ってことで美羽に相談しておいたんだけど、あれってルフェイを借りてたのか。

 

「あれは相手の虚を突くにはもってこいだと思いますが・・・・・・。美羽さんから相談を受けたときは驚きました。ご本人には知らせてないんですよね?」

 

「ああ、余計な不安はかけたくないしな。それに、その方が相手側も引っ掛かるだろうさ。まぁ、本当ならそんなことにはなってほしくないけどな」

 

出来ることなら、このまま何も起こらずに平穏が続いてくれればいいと思う。

 

だけど、何かが起こる可能性は十分にあるわけだ。

対策はしておくに越したことはない。

 

 

 

 

 

 

それから魔法関連の話は続き、話は俺の新しい使い魔スキーズブラズニルの話になったんだが・・・・・・

 

今、このトレーニングルームに出したスキーズブラズニルは小型船舶くらいには大きくなっている。

 

この成長ぶりを見た美羽とアリスは感嘆の声を漏らしていて、

 

「今度、どこかへ連れていってよ。この子に乗せてね」

 

なんてことを言ってきた。

 

まぁ、ちょっと海に行くぐらいなら良いかな?

 

スキーズブラズニルは俺のオーラに反応しているようで、これからまだまだ大きくなっていくそうだ。

 

今後の成長が楽しみでもある。

 

目指せ、空飛ぶハーレム御殿!

 

黒歌が訊いてくる。

 

「ところで、その子の名前は決まったのかにゃ?」

 

よくぞ聞いてくれました!

 

「こいつの名前は龍帝丸だ! 日本の舟ってそういうネーミングだろ?」

 

「ださ」

 

黒歌にバッサリ切られてしまった・・・・・・

 

うるせーやい!

 

こいつの名前は龍帝丸だもん!

 

変えるつもりはないからな!

 

などと抗議しようとするとトレーニングルームにアーシアが入ってきた。

 

「イッセーさん、皆さん」

 

「おっ、どうしたアーシア」

 

「リアスお姉さまがもう日本を発つそうです」

 

「予想より数時間早いな」

 

今日の夜に発つとは聞いていたけど、こんなに早いなんてな。

 

まだ夕方だぞ?

 

「天候が回復して、小型ジェットが飛べるようになったそうです」

 

なるほど、それでか。

 

「そんじゃ、ちょっと行ってくるわ」

 

俺は美羽達を連れてその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

兵藤家地下にある巨大な転移魔法陣。

 

そこにオカルト研究部のメンバーとアリス、ソーナが集っていた。

 

リアスと木場、アザゼル先生を見送るためだ。

 

吸血鬼の領地を訪問するためには、まず兵藤家から魔法陣を介してヨーロッパまで飛ぶ。

そこから専用の小型ジェットをチャーターするとのことだ。

 

吸血鬼は独自の結界を張っていて、幾つかの移動手段を駆使しないと彼らの王国に入国できないらしい。

 

話ではルーマニアまで魔法陣、そこから小型ジェット、更に車に乗り換えて山道を登るそうだ。

 

荷物を持ち、魔法陣の中央に向かうリアス、木場、先生。

 

ヴラディ家を直接訪問するのはリアスと木場。

カーミラ側に一度接触してからヴラディ家に向かうのは先生だ。

 

リアスはギャスパーを抱き締める。

 

「ギャスパー、あなたのことは必ず守ってみせる。何も心配しなくていいわ。ヴラディ家とのことも私がきちんと話をつけてくるわ」

 

「はい、部長・・・・・」

 

ギャスパーもリアスの抱擁に甘えるようにしていた。

 

リアスが母性を発揮してるな。

 

ギャスパーが羨ましいっ!

 

・・・・・・・少し自重するか。

 

リアスは朱乃に顔を向ける。

 

「朱乃。皆のことは頼むわね」

 

「ええ、リアス」

 

俺は木場と拳を打ち付け合う。

 

「リアスのこと、頼むぜ。まぁ、おまえがいれば問題ないと思うけどな」

 

「もちろんだよ」

 

今の木場だったら、大丈夫だろう。

ま、更に言えばリアス自身も腕を上げてるしな。

 

先生の方はというと、ソーナとロスヴァイセさんに笑みを向けていた。

 

「じゃ、学校の方は頼むわ。ソーナ会長♪ ロスヴァイセ先生♪」

 

「「忙しいので早く帰ってきてください」」

 

「んだよ、つれない反応だな」

 

二人の素っ気ない反応に先生は不満げだ。

 

学校のスケジュール的にはもうすぐ年末突入だもんな。

その時期に教師が一人いなくなるのは学校に深く関わるこの二人からすれば困ったものなのだろう。

 

「遊ばないで下さい、ね?」

 

「お、おう。わーってるよ」

 

レイナが笑顔の圧迫をかけている!

 

先生があっちで外遊びなんてこともあり得るしなぁ・・・・・。

 

レイナちゃんはしっかりと見張り役の仕事を果たしているわけだ。

 

先生が皆に伝えてくる。

 

「例のフェニックス関係者を狙っている魔法使いどもが不気味だ。気を付けろよ」

 

『はい!』

 

返事をする俺達。

 

「アーシア、オーフィス」

 

先生がアーシアとオーフィスを呼ぶ。

 

「アーシア、例の件だが後はおまえ次第だ。オーフィスにアドバイスをもらいながら進めてみろ。龍神のおまえが側にいればなんとかなるだろう。龍神のありがたい加護ってのを頼むぜ?」

 

「はい、と、とても恥ずかしいけど、が、頑張ります」

 

「我、アーシアのこと、きちんと見る」

 

先生の言葉にアーシアとオーフィスが応じていた。

 

アーシアが顔赤くしてるけど・・・・・・・気になる・・・・・。

 

アーシアとオーフィスで何かしてるのか?

 

その後、リアス、木場、先生の三人は皆と最終確認と別れを述べ、転移魔法陣の中央に並ぶ。

 

「それじゃあ、いってくるわね」

 

魔法陣が輝きを放つ。

 

朱乃が魔法陣の術式を最後に確認した後、転移の光が室内に広がり、弾けた―――――

 

光が止むとそこには三人の姿はない。

 

三人ともこっちは任せてくれ。

 

留守はしっかり守るよ。

 

 

 

 

 

 

 

 


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