ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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14話 不死身の心

まず結論から言わせてもらおう。

 

 

 

 

ティアが参戦したことにより、グレンデルとグレンデルから生まれた小型ドラゴンは何とかなった。

 

グレンデルはティアとアリス、美羽の三人で相手取ったこともあり、未だに意識はあるものの、手足は切断されていて、俺と一対一でやり合った時から更にボロボロに。

 

眷獣と思われる小型ドラゴンはあれとの戦闘経験がある他のオカ研メンバーがオフェンスに回り、サポート力に優れるシトリー眷属が中衛、後衛を勤めることで難なく倒すことができた。

全て塵一つ残すことなく消え去った。

 

負傷したメンバーについてはアーシアがすぐに回復のオーラを送っていたので、重傷者はいない。

 

それはいい。

 

皆が無事で本当によかったと思う。

 

 

 

 

――――――代償は大きかったが。

 

 

 

 

「パンツ・・・・? パンツ龍王・・・・?」

 

ティアが精神的に大ダメージを受けてしまった!

 

俺の隣で!

体操座りで!

何かブツブツ言ってるんですけど!

 

「ご、ごめんね・・・・。変なタイミングで呼んじゃって・・・・・」

 

「げ、元気出してよ・・・・。うん、ティアさんはあんなパンツ龍王と違ってちゃんと龍王やってると思うわよ?」

 

うちの『女王』と『僧侶』がティアの背中を擦りながら慰めてる!

 

特にあのタイミングで呼んでしまった美羽は何とも言えない表情してるし!

 

『・・・・ティアマット・・・・その気持ち、分かるぞ』

 

『・・・・・昔のファーブニルはあんなのではなかったはずだが・・・・』

 

ドライグとヴリトラも相当にショックを受けているようだ。

 

そうか、昔はあんなのじゃなかったのか。

まともな龍王だったんだな。

 

「ティアはさ・・・・その、気にすることないって。今まで通りドラゴンの誇りを持って龍王を続けていってくれ・・・・・・な?」

 

たとえファーブニルがパンツ龍王になろうとも、ティアはティアだ!

これからも最強の龍王で俺の頼れるお姉さんでいいと思うんだ!

 

しかし・・・・

 

「ドラゴンの誇り・・・・? 龍王・・・・? ナニソレ、オイシイノ?」

 

「イッセェェェェェッ!! ティアさんが壊れたぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「しかも片言だよ!? 外国人タレントみたいになってるよ!?」

 

もうイヤだ!

なんでこんなことになってんの!?

 

意味がわからねぇ!

 

アーシアはパンツシスターになっちまうし、ティアは外国人タレントになっちまった!

 

全部あのパンツ龍王のせいだ!

 

『アーシアたんのおパンティー、くんかくんか』

 

「くんかくんかすんなぁぁぁぁぁっ!!」

 

あの野郎、鼻に引っ掛かったアーシアのおパンティーのニオイを嗅いでるよ!

鼻の穴を思いっきり広げて堪能してやがる!

すごく香りを楽しんでやがるよ!

 

何なの、あの龍王!?

 

あと、おまえが『アーシアたん』とか呼ぶな!

 

匙がゲンナリしながら、ヴリトラに訊く。

 

「な、なぁ、ファーブニルって本当に昔はまともだったのか?」

 

『うむ。黄金や宝剣といった宝には目がなかったが、それでもあんなのではなかった。・・・・・奴は一度滅ぼされて、北欧の神々に再生された。その時にバグが生じたのかもしれん・・・・』

 

と、ヴリトラは考察付きで教えてくれた。

 

そういや、ファーブニルって魔帝剣グラムで一度倒されたんだっけ?

今は木場がそれを持っているわけだが・・・・・。

 

なるほど、それならまだファーブニルに同情の余地はあるかもしれない。

 

だって復活させたのがあのオーディンのエロ爺さんが主神の神話だもん。

ありそうじゃん。

 

『もしくは、アザゼルが人工神器に封じる時に何かやらかしたか、だな』

 

「うん、それ超ありそう!」

 

あの人のことだから、『ドラゴンだし龍王だし頑丈そうだから色々試してみっか!』なんて言って無茶苦茶やりそうだよ!

 

ふざけ半分でやってそうだ!

 

すると、先程まで美羽とアリスに励まされていたティアがすくっと立ち上がった。

 

「ティア? ど、どした?」

 

(そうか・・・・)(そういうことだったのか・・・・)

 

何やらまだブツブツ呟いているが・・・・・・。

 

次の瞬間―――――

 

「アザゼルか! アザゼルがやったに違いない! おのれ、ドラゴンを侮辱しよって! ぶっ殺してやるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

ティアが暴走し出した!?

青いオーラが嵐のように吹き荒れてる!

 

いつも冷静なティアがキレてるよ!

 

「と、止めろぉぉぉぉぉぉ! 皆でティアを止めるんだ! 何やらかすか分からんぞ! つーか、このままじゃ確実に先生が死ぬ!」

 

 

 

 

~そのころのアザ☆ゼル先生~

 

 

 

「っ!?」

 

「どうしたの、アザゼル?」

 

「い、いや・・・・何かとてつもない殺気が俺に向けられたような気がして・・・・・」

 

「?」

 

「まぁ、気にすんな、リアス。・・・・多分、気のせいだとは・・・・思う」

 

 

 

それは気のせいではなかった。

 

 

 

~そのころのアザ☆ゼル先生、終~

 

 

 

「ふー・・・・ふー・・・・・」

 

 

息を荒くしながらも全員で止めに入ったこともあり、とりあえずは落ち着いてくれたティア。

 

こ、怖かった・・・・・。

 

あれが龍の逆鱗か・・・・・。

 

『くんかくんか』

 

「くんかくんかすんなよ! この変態龍王ォォォォォッ!」

 

あぁ・・・・・もうやだ、このパンツ龍王。

 

ツッコミきれねぇ・・・・。

 

ぼろ雑巾のようになったグレンデルを囲むように魔法陣が展開される。

 

「流石に龍王に二体も来られればこうなりますか。グレンデル、もう良いですね? ・・・・・と言っても既に戦うことは出来ない体ですが」

 

『・・・・チッ』

 

銀のローブの男の言葉に舌打ちで返すグレンデル。

 

あいつ、手足全てを失ってるのに、まだ戦うつもりだったのかよ。

 

「実験は成功していましたし、十分なデータは取れました。ここは引きますよ」

 

グレンデルを囲んでいた魔法陣が輝くと――――グレンデルの姿は消えていた。

 

それを確認して、ローブの男はフードを取り払った。

 

そこにあったのは銀髪の青年――――。

 

その顔にはどことなく見覚えがあって・・・・・どこかで会ったような・・・・・。

 

銀髪の男が言う。

 

「私はルキフグス。ユーグリット・ルキフグスです」

 

―――――っ!

 

ルキフグス・・・・・ルキフグス!?

 

「あんた・・・・グレイフィアさんの・・・・?」

 

「ええ。私はグレイフィア・ルキフグスの弟です」

 

なるほど・・・・・どうりで気の質も似ているわけだ。

 

「あんたがボスってわけじゃないんだろう? じゃあ、誰が『禍の団』の残党をまとめあげたっていうんだ!?」

 

匙が訊くが、男――――ユーグリットは目元を細めるだけだった。

 

「その正体はいずれわかりますよ」

 

ユーグリットの正体を聞いてソーナは何かを得心した。

 

「・・・・なるほど。この町に侵入し、魔法使いを招き入れたのはあなたですね? グレイフィアさまと同質のオーラを有する者であれば、結界を通過できてもおかしくはありません」

 

っ!

 

そうか・・・・そういうことか。

 

ユーグリットは静かに口を開く。

 

「グレモリーの従僕に成り下がった姉に伝えておいてください。――――あなたがルキフグスの役目を放棄して自由に生きるのであれば、私にもその権利はある、と」

 

それだけ言い残すと、ユーグリット・ルキフグスと名乗った男は魔法陣に消えていった―――――

 

それと同時にこのフィールドの端々が役目を終えたように崩れ出していく。

 

空間が崩壊し始め、次元の狭間特有の万華鏡の中身みたいな景色が見えだしていた。

 

あれだけ暴れれば、こうなるのも当然か。

 

「この領域は崩壊するようです! 早く脱出しましょう!」

 

「皆! 魔法陣に乗って!」

 

ソーナの指示のもと、美羽が展開した転移魔法陣の上に全員が飛び込む。

 

すると、レイヴェルが手元に小型魔法陣を発生させて培養カプセルの方に放っていく。

 

「せめて、これぐらいはさせていただきますわ」

 

「なるほど、そういうことですか」

 

ソーナもそれを見て、同様に小型魔法陣をカプセルのほうに投げていった。

 

あれは・・・・・

 

それに察しがついた時、俺達は転移の光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

戦いを終え、無事に仲間を救出することができた俺達はあのフィールドから帰還。

 

今はオカルト研究部のある旧校舎に戻っていた。

 

俺はグレンデルとの戦闘もあるが・・・・・突然襲ってきた痛みのせいで疲弊。

今は部室のソファに寝転んで休息を取っていた。

 

・・・・あのグレンデルの防御力。

 

あれは異常だった。

 

「あのグレンデルはイッセーくんの攻撃はおろか、龍殺しの力を受けても、立ち上がってきました。何かを付与されているのは間違いないでしょう」

 

と、ソーナもそのように言っていた。

 

龍殺しの耐性でも付与したのか?

そんなことが可能なのか?

 

それから気になることはまだある。

 

グレンデルから生まれた眷獣らしき小型ドラゴン・・・・そして、それを見たときの俺の変化。

 

あれは・・・・・なんだったんだ?

 

頭痛や胸の苦しみもそうだけど、頭に響いたあの声。

 

――――殺意と敵意、激しい怒りが伝わってきた。

 

『・・・・・』

 

イグニスは何か分かったのか?

 

『あれはね・・・・。あの子の怒りよ』

 

あの子・・・・・?

 

イグニスはあれが何か知ってるのか?

 

『ええ。でも、今のイッセーが触れることは叶わないわ。それに・・・・・まだ確証が持てないのよ』

 

確証・・・・?

 

『ずっと昔に終わったはずなのに・・・・終っていなかった。多分、そういうことなのでしょうね。でも、それがどうして・・・・?』

 

そう言うと何やら考え出すイグニス。

 

イグニスには心当たりがあるのは間違いなさそうだが・・・・全然わからない。

 

終わったはずのものが終わっていない・・・・?

 

それってどういう――――――

 

「イッセーさま・・・・お茶を買ってきましたわ」

 

部室の扉が開き、学内の自販機で買ってきたのであろうお茶を握ったレイヴェルとそれに付き添う小猫ちゃんが入ってきた。

 

俺はレイヴェルから手渡されたそれを受け取った。

 

「小猫ちゃん、ギャスパーは?」

 

「救護班に運ばれていきました。アーシア先輩達も一緒です」

 

「そっか」

 

ソーナ達はこの町に常駐する冥界、天界スタッフの人達と話し合っている。

アリスと美羽も動けない俺の代わりにそちらへと向かってくれている。

 

・・・・・実はもう動けるんだけどね。

 

ただ、こっちに戻ってくるなり「あんたは寝てなさい」と言われてしまった。

強引なんだよね、結構。

 

少しの静寂。

 

すると、レイヴェルが言った。

 

「私、許せません」

 

はっきりとした口調だった。

 

先程まではぐれ魔法使い達が作った『工場』の有り様を見て泣いていたとは思えないほど、瞳は強く輝いていた。

 

「あんなこと、絶対に許せない」

 

「私もだよ、レイヴェル。・・・・いつでも力になるから」

 

小猫ちゃんはレイヴェルの手を取り微笑むと、この場をあとにする。

 

部室に残される俺とレイヴェル。

 

俺は頭を下げた。

 

「ごめんな。助けるのが遅くなって」

 

フェニックスのクローンについてはいずれレイヴェルの耳にも入ることになったかもしれない。

 

だけど、今回は状況が最悪だった。

 

クラスメイトを人質に誘拐され、不安と恐怖で一杯の中での残酷な告知。

それがレイヴェルをどれだけ傷つけることになったか。

 

もっと早く・・・・できれば連れ去られる前に助けたかった。

 

「嬉しかったです」

 

レイヴェルがそう言ってきた。

 

嬉しかった・・・?

 

レイヴェルは頬を染めながら続けた。

 

「・・・嬉しかったんです。イッセーさまが私のことを見ていてくださったこと・・・・。私のことを守ってくださったこと・・・・」

 

レイヴェルは左手首を撫でる。

そこには小さく魔法陣が描かれていて、俺の左手首にも同じものがある。

 

それは美羽に頼んでしてもらっていたマーキング。

レイヴェルの位置を補足して、俺と入れ替えるための刻印型の魔法陣だ。

 

普段は隠れていたが、術式を発動させたことで浮かび上がってきたのだろう。

 

「あー、それな。美羽から聞いたかもしれないけど、保険ってやつだ。メフィストさんからはぐれ魔法使いがフェニックス関係者と接触してるって聞かされてたから一応ね。まぁ、今回はその保険が役立ったわけだけど・・・」

 

「はい・・・・。だから、私、嬉しくて・・・・。イッセーさまに守られていたことが・・・・嬉しかったんです」

 

そう言うと目元を僅かに潤ませた。

 

「いや、そんな大袈裟な・・・・。レイヴェルにはいつも世話になってるし・・・・。それに、レイヴェルを守るのは俺の役目だからさ」

 

俺の大切な後輩で、マネージャーで、今では家に住む大事な家族だ。

 

そんなレイヴェルを守るのは当然のことだろう?

 

「それ、消さなくてもいいのか? 美羽に頼めば消してもらえるぞ?」

 

「いえ、これはこのまま置いておこうかな、と・・・・。イッセーさまが助けてくれた・・・・記念、といいますか・・・・」

 

なんてことを言うレイヴェルの顔はみるみる赤くなっていく。

 

ハハハ・・・・記念ですか・・・・・。

 

まぁ、レイヴェルがそう言うなら、それで良いかな?

 

一応、美羽がいれば発動は何度でも出来るから緊急時には役立つだろうし。

 

てか、これって・・・・・

 

「お揃いだな」

 

同じ術式だから当たり前なんだけど。

 

「お、お揃いですか・・・・・?」

 

「あ、ごめん。嫌だっ―――」

 

「い、いえ! 全然っ光栄ですっ!」

 

おおっ・・・・。

こちらが言い終わる前に言われてしまった。

しかも、すごい迫力だ。

 

レイヴェルはコホンッと咳払いしてから改めて口を開いた。

 

「少しだけ・・・・昔話をしてもいいですか?」

 

「昔話?」

 

俺が聞き返すとレイヴェルは頷く。

 

そして意を決したように言った。

 

「私は幼い頃、執事が読んでくれていた英雄譚に心を躍らせておりました。こんな英雄を支える女性になりたいと幼心に夢を膨らませていたのです。けれど・・・それは成長するにつれて、いつの間にか忘れてしまって・・・・・。ですが、イッセーさまを見ていて思い出したんです。幼いときに抱いていた夢を。性的だけど、熱くて、誰よりも仲間思いで、自分の守りたいもののために戦うその姿がとても耀いていて・・・・。その姿は私が憧れた英雄そのものでした」

 

レイヴェルは続ける。

 

「イッセーさまの側にいたい。これは私の勝手な幻想です・・・・ここに来たのだって私の身勝手な・・・・。でも、イッセーさまのマネージャーに任命されたのが本当に嬉しくて・・・・・。叶うことならこれからもお側でお仕事がしたいです・・・・・」

 

すこし驚いていた。

この子がそこまで言ってくれることが。

 

だけど、同時に嬉しく思ったよ。

俺の側にいたいって言ってくれたことが。

 

「俺もレイヴェルにいてほしい。今後もずっとずっとマネージャーをしてほしいと思ってる。頼めるかな?」

 

「もちろんですわ! これからもっと盛り上げていくという野望だって抱いています!」

 

心強いもんだぜ、この小柄なお嬢様は!

 

「でも、まずはフェニックスをないがしろにした奴らをぶっ飛ばす! あんなふざけたこと、これ以上させるわけにはいかねぇ!」

 

「はい! 私だってフェニックス家の長女として絶対に許しませんわ!」

 

レイヴェルが懐から一枚のメモ用紙を取り出した。

そこには複数の魔法陣と魔術文字が描かれている。

 

これって―――――

 

「もしかして、あそこにあった?」

 

「あのフィールドにあったカプセルや機器に刻まれていた魔術文字ですわ。既にこの町に常駐している冥界、天界スタッフ、そしてフェニックス家にも伝えてあります。これらの情報だけでもかなりのことが分かりますわ。それから、フィールドにあったあのカプセル。私とソーナさまの魔力でマーキングしておきました。フィールドが崩壊した今は次元の狭間を漂っているかもしれまん。もし存在しているなら私とシトリーの魔力を頼りに次元の狭間の探索をすることで見つけられるでしょう。時間がかかろうとも彼らの情報は出来うる限り回収します。ーーーー私達フェニックス家は彼らの目的を徹底的に追求しますわ!」

 

やっぱり、最後に放ってた小型魔法陣はマーキングだったんたな。

この娘も抜け目ないよね!

 

『禍の団』とはぐれ魔法使い達は知らないんだな。

 

この娘は不死身のフェニックス。

その精神まで不死のごとく、強くなろうとしているんだ。

 

レイヴェルを捕らえたことが奴らの運の尽きなのかもしれないな。

 

 

そんなことを考えていると―――――

 

 

 

バタンッ!!

 

 

 

部室の扉が勢いよく開かれた。

 

何事かと思ってそちらを見てみると――――息を切らしたライザーがいた。

 

「レイヴェル! 無事か!」

 

「お、お兄さま!?」

 

「連絡を聞いて駆けつけてきたのだ! ケガはないか!?」

 

「私は大丈夫です! んもー、少しは落ち着いてください!」

 

いやはや、ライザーもいい兄ちゃんしてるよ。

 

レイヴェルもいつもの調子に戻ったみたいで何よりだ。

 

 


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