「レイヴェルも良いお兄ちゃん持ったよな」
「これもイッセーさまの影響だと思いますわ。イッセーさまと出会う前のお兄さまはあんなこと言う人ではありませんでしたから」
あと、自分にすごく甘い人だったとレイヴェルは付け加える。
俺の影響、ね。
でも、今となればあれがライザーの本来の姿なんじゃないかな?
特に理由はないけど、何となくね。
ま、出会った頃とは本当に別人じゃないかって何度も思ってしまうけど。
すると、ふいに部屋のドアが開かれる。
「順調に進んでいるかしら?」
入ってきたのはお茶を運んできてくれた朱乃と――――
「お邪魔しています」
なんとソーナだった!
これはまた珍しい!
あ、ソーナの冬服姿可愛いな。
淡い水色のレースブラウスにデニムという格好で、紺色のコートを手に持っている。
「いらっしゃい。今日はどうしたの?」
「ええ、今後について朱乃達と少しお話しようと思いまして。後で椿姫もここに来ます。お邪魔かもしれませんが、少しの間だけお話をさせてくださいね」
へぇ、副会長も来るのか。
《あっしもお邪魔させてもらってますぜ》
そんな声が天井から聞こえてくる。
見上げれば天井に魔法陣が展開していて、そこから逆さで小柄な死神が頭を出していた。
シトリーの新眷属、ベンニーアだ。
「ごめんなさい、イッセーくん。この子もどうしてもあなたのお家に来たいと言っていたので、連れてきてしまいました」
謝るソーナの横にロリっ子死神が華麗に着地を決める。
《おっぱいドラゴンの自宅・・・・これはあっしにとっちゃ桃源郷ですぜ》
目を爛々と輝かせて俺の部屋を見渡すベンニーア。
ハハハ・・・・そういや、この子も俺のファンだったね。
「まぁ、家でよかったらいつでも来てよ。歓迎するからさ」
《マジですかい? それじゃあお言葉に甘えさせてもらいますぜ》
「おう。テキトーにくつろいでくれていいよ。あと、出来れば玄関から来てくれ。天井から来られるとなんか怖いから」
ドクロの仮面被って逆さの状態で来られるとね・・・・ほとんどホラーだよ。
と、そんな俺とソーナのやり取りを見てレイヴェルが言う。
「そういえば、イッセーさまがリアスさまやソーナさまのことを呼び捨てで呼んでいる理由も先日教えていただきましたね。まさか、イッセーさまが二十歳だったなんて・・・・それが一番の驚きでしたわ」
そーなのか!?
俺もその事実に一番驚いたよ!
なんか、ショックだよ!
注目するところはそこか!?
つーか、リアス達もそこに食いついてたよね!
「実は私もです」
ソーナまで!?
君もか!
君もなのか!
もっと驚くところがあるでしょーが!
「でも、歳上のイッセーくんというのも良いものですわよ?」
そう言いながら朱乃が俺の腕に抱きついてきたよ!
「後輩なイッセーくんも可愛いのだけれど、歳上ならこうして甘えることができますわ♪」
俺の肩に頭を置いて、本当に甘えるようにしてくる!
いつもの大和撫子なお姉さまはどこへ!?
「ふふふ、これはリアスが見たら何て言うでしょうね?」
ソーナが微笑ましそうに見てくるが・・・・。
そうなれば、多分・・・・というより絶対に荒れるな。
リアスの朱乃への対抗心は強いからなぁ。
親友だからこそ譲れないものがあるっていうのかなんと言うのか・・・・・。
と、ここでソーナが俺とレイヴェルがカーペットに広げていた書類の数々に視線を配らせる。
「うちの眷属達もそこにちょうど選考しているところです。今頃皆で集まって苦慮しているところでしょう。私もアドバイスしていますが、できる限り自分で決めてほしいと思っています」
どうやら、匙達も絶賛苦戦中のようだ。
「魔法使いとの契約、か・・・・。魔法の研究成果ってのが悪魔にとってのメリットなんだよね?」
「ええ。魔力は悪魔の力であり、魔法はその悪魔の力を解析して人間が扱えるようにしたものです。精霊、北欧式など、今では多種多様な術式があり、中には神々が生み出したものがあります。一般的な術者が使うものの大半は大魔法使いマーリン・アンブロウジウスの流れを汲むものだといわれています」
朱乃がソーナに続く。
「魔法は独自の進化、変貌を遂げていて、中には悪魔ではできない力も生まれました。それは未だに変化し続けていて、底が見えない領域ですわ。そのため魔法の研究成果というのは冥界の技術発展に必要なものとなっているのです。マグレガーさまも魔法の研究で冥界に貢献なされてますわ」
レイヴェルがカーペットに広がっている資料を整理しながら頷く。
「今回の魔法使いとの契約、私達悪魔にとって魔法使いの才能を買うといっても良いでしょう。魔法使いへの先行投資のようなものです。だからこそ、選考は慎重にしなければならないのですが・・・・今のところ『天龍』『赤龍帝』のパートナーとして相応しい人物は見当たりませんわね」
つぶさに調べていたレイヴェルが言うのだから、その評価は概ね合っているのだろう。
ってか、美羽が皆同じに見えるとか言ってたし・・・・。
元々、美羽がハイレベルな魔法使いだからいっそのこと美羽をパートナーに・・・・・ってのはダメか。
「いっそのこと次回に持ち越そうか?」
俺が紅茶を飲みながら言うと、レイヴェルもうーむと頭を悩まさせていた。
「正直、私もそれでいいのではと思い始めています。短期でとっても良いのですが、新人ゆえのうっかりミスで変な評価を抱かれるのは避けたいですし・・・・」
「イッセーくんの場合は特にですね。おっぱいドラゴン、飛び級での昇格などであらゆる業界で注目を浴びていますから、少しのミスでも今後の活動に支障が出ることになるかもしれません」
うっ・・・・なんかすっごいプレッシャーが・・・・。
一度のミスが俺の今後に影響を及ぼす。
これが上級悪魔の現実、責任ってやつか・・・・!
胃が痛くなりそうだ・・・・・。
「胃薬・・・・買いに行こうかな」
「うふふ、そんなに気負わなくてもイッセーくんなら何とかなりますわ」
朱乃が肩にポンと手を置きながら励ましてくれた。
なんとかなるかぁ・・・・・。
まぁ、最初からミスを恐れて動かないってのもどうかと思うしな。
俺には支えてくれる皆がいるし、自信を持っていこう。
なんとかなる!
多分!
あ、今の話で思い出したけど・・・・・
「そういえば、この間捕まえた『ニルレム』の連中はどうなったんだ?」
ニルレムというのは『禍の団』に所属するはぐれ魔法使いの一派。
俺がレイヴェルのトレードを行っている間にアリスと美羽が捕縛したんだ。
「あの者達は現在、冥界の専門機関で尋問にかけられています。はぐれ魔法使いは仲間意識はそれほどないようで、次々と吐いているようです」
ソーナはそう教えてくれる。
まぁ、レイヴェル拐った連中もそんな感じだったしな。
我が身可愛さに情報を出しているのかもな。
レイヴェルが息を吐きながら言う。
「流石に驚きましたわ。まさか、はぐれ魔法使いの拠点を一つ潰してしまうなんて・・・・」
「私もですわ。・・・・イッセーくんのお得意様からの依頼を回しただけなのに、どうしてああなってしまったのでしょう?」
朱乃も苦笑していた。
うん、俺も経緯を聞いて思ったよ。
どうしてこうなった、と――――――
▽
[美羽 side]
はぐれ魔法使いとの騒動があった次の日。
昨日の一件もあって、今日の授業はお休みです。
破壊されたところの修復は終わったんだけど、被害を受けた一般生徒を落ち着かせる意味も兼ねてのこと。
特に人質にされた子はね・・・・。
そういうわけで、今日も学校に顔を出しているのは先生方達と生徒会、それからボク達オカルト研究部くらい。
「ねぇ、これどうかな?」
部室に設けられていた試着室から出てきたのは駒王学園の制服を着たアリスさん。
何でも以前から着てみたかったということで、今日試着することに。
「よく似合ってるよ」
「アリスさん、すごく可愛いです」
「・・・制服がブランド物に見えてきます」
ボクに続いてアーシアさんと小猫ちゃんも感想を言う。
アリスさんって背が高くて足も長いからモデルさんみたいにスタイルがいいんだ。
だから、スーパーで買った安物の服でも格好よく着こなすんだよね。
ボクももう少し背が欲しいところなんだけど・・・・。
夜更かししてるからかなぁ。
ボク達の感想にアリスさんは少し照れながら言う。
「ありがとう。やっぱり制服って良いわね。向こうじゃこういうのは着たこと無かったから新鮮だわ」
「わかるよ。ボクも一緒だもん」
ボクもアリスさんも初めて制服を着たのはこっちの世界に来てからになる。
ボクが着たのは中学生からだけど・・・・今はもう着れないなぁ。
胸がおっきくなっちゃって・・・・。
最近はブラジャーもキツくなってきたんだよね。
やっぱり、お兄ちゃんに揉まれたり吸われたりしてるからなのかな?
ボク達がそんなやり取りをしていると部室の奥から朱乃さんが歩いてきた。
「今日も依頼が来ています。魔法使いとの契約もありますが、こちらも疎かにするわけにはいきませんわ」
リアスさんが吸血鬼の領土に行っていて不在だから、副部長である朱乃さんが部を仕切っている。
それで、朱乃さんがリアスさんの代わりに眷属の皆に届いている依頼を伝えていく。
ボクとアリスさんはまだ新米だからビラ配りしかしていない。
悪魔である以上、いつかは契約を結ばないといけないんだけど・・・・
「イッセーくんへの依頼ですが・・・・・、今は冥界に向かっていますし、誰に任せようかしら?」
朱乃さんが顎に手を当てて少し考え込んでいた。
お兄ちゃんはレイヴェルさんと一緒に冥界、フェニックス領に向かっている。
理由はレイヴェルさんのトレードをするため。
帰ってくる頃には眷属が一人増えることになるね。
そういうわけで、お兄ちゃんは不在なんだ。
となると、この中の誰かが代わりに行くことになるんだけど・・・・・。
すると、朱乃さんは何か思い付いたように言った。
「美羽ちゃんかアリスさんが代わりに行くというのはどうでしょう?」
「ボク達が・・・・ですか?」
「ええ。二人もそろそろビラ配りを卒業する頃ですわ。これも良い機会なので二人に契約を結んで来てもらおうと思います」
契約かぁ・・・・。
初めてのことだから緊張するけど・・・・大丈夫かな?
アリスさんが挙手する。
「それって二人で行っていいものなの?」
「ええ。二人のうちどちらかが契約を結び、残った一人はサポートという形にすれば問題ありませんわ」
「どちらか・・・・。うーん、そこはテキトーにじゃんけんで決めましょうか」
アリスさん・・・それはテキトー過ぎないかな?
それからボクとアリスさんはじゃんけんをした。
その結果、ボクが契約を結び、アリスさんがサポートとして契約に向かうことになった。
▽
朱乃さんから指定された場所へとジャンプしたボク達。
お兄ちゃんのお得意様だもん。
失礼なことしないようにしなきゃ。
そう意気込んでいたボクの前に現れたのは――――
「・・・・いつもの悪魔さんと違うにょ」
巨木のごとき太さの上腕。
明らかにサイズの合わないマジカルな衣装を張り裂かんばかりの見事な分厚い胸板。
フリフリのスカートからはボクの腰よりもふとい足。
そして頭には――――猫耳。
この人をボクは知っている。
以前に一度だけ目にしたことがある。
お兄ちゃんと互角に渡り合える実力を持つ白龍皇ヴァーリ・ルシファーでさえも思わず二度見してしまうほどの存在・・・・・!
お兄ちゃん曰く、『地上最強の漢の娘』・・・・!
ミルたんさん!?
しばしの間停止していたアリスさんが声を漏らした。
「美羽ちゃん」
「うん」
「集合」
「うん」
それからボク達はその人に一時、背を向けてひそひそと話し合うことに。
(ねぇ、あの人なに!? イッセーのお得意様なの!? というより、本当に人なの!?)
(お、落ち着いて・・・・。お兄ちゃんのお得意様なのは間違いないよ。ボクも以前に少しだけ見たことがあるから。人だと・・・・思う)
(その間はなに!? というより、何で猫耳!? 何でもあんなフリフリの格好してるの!?)
(え、えっと、魔法少女を目指してるとかで・・・・。ほら、アニメであるあれだよ)
(魔法少女!? 魔王の間違いでしょ!? そもそも性別違うじゃん! 少女じゃないじゃん!)
(そう、だよね・・・・・やっぱり)
明らかに拳法に重点を置いた体つきだもんね。
魔法戦士の方がまだ納得できるかも・・・・・。
「いつもの悪魔さんは来ないにょ?」
後ろから野太い声が投げ掛けられた。
う、うーん・・・・この人もお兄ちゃんのお得意様だし・・・・。
失礼のないようにしないといけないんだけど・・・・。
ボクはどうしたらいいの!?
教えてよ、お兄ちゃん!
~そのころのイッセー~
「っ!?」
「イッセーさま? どうかされました?」
「いや、今・・・・美羽が助けを求めてきたような気がして・・・・。」
「美羽さんがですか?」
「多分、気のせいだとは思うけど・・・・。美羽に何かあれば美羽は俺のところに強制転移してくるはずだし・・・・」
妹の叫びは兄に伝わっていた。
~そのころのイッセー、終~
心を落ち着かせるために一度大きく深呼吸した後、ボクは口を開いた。
「えっと、今日はお兄ちゃん・・・・・兵藤一誠は別件でこちらに来れなくて・・・・代わりにボク達が依頼を受けることになりました」
「それは残念だにょ。悪魔さんによろしく伝えといてほしいにょ」
「は、はい・・・・」
悪い人ではないんだよね・・・・・。
心はすごく純粋なんだと思う。
だけど、見た目の迫力というか、インパクトというか・・・・とにかくすごい。
オーラなんて、下手すればお兄ちゃんより強いかも・・・・本当に人間!?
「そ、それで依頼というのは?」
恐る恐る尋ねるとミルたんさんは部屋の奥へ。
少しすると手に何かを持って戻ってきた。
それは―――――
「この間捕まえた悪い魔法使いさんにょ」
「「・・・・・え?」」
ミルたんさんが手に持った人を見てみると、それは確かに人だった。
ローブを被っていて顔まではよく見えないけれど・・・・。
すると、ボク達の存在に気づいたのか、その人・・・・魔法使いはガバッと顔を上げで叫んできた。
「お、おまえ達は確か赤龍帝の眷属の・・・・! ちょうど良い! 俺を助けてくれ! 冥界でも何処でも良いから、この空間から救いだしてくれ! もう・・・・もうミルキーはもういやだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
滝のような涙を流して、懇願してくる魔法使い。
うん、ごめん・・・・全く状況が理解できないよ。
「すいません。状況の説明をお願いします」
「この間、ミルたんが森の中をさ迷っていると―――」
もうすでに意味がわからないよ!
なんで!?
なんで、森の中をさ迷ってるの!?
そこから、おかしいよ!
「何人かの魔法使いさんが村人を襲っていたにょ。それでミルたんが追い払った時にこの人を捕まえたにょ」
ミルたんさんは続ける。
「もう二度と悪いことをしないようにこの人にミルキーを見せて正義の魔法使いについてずっと語っていたにょ」
「もう嫌だ・・・・。こんな超生物が魔法少女を熱烈に語っているところなんてもう見たくないぃぃぃぃぃぃ!!」
魔法使いは再び絶叫をあげる。
その姿にどことなく同情してしまった。
よほど長々と語られたのかもしれない。
というか、ほとんど拷問だよね・・・・。
アリスさんが目元をひくつかせながら訊いた。
「と、とりあえず、はぐれ魔法使いを捕まえたって認識で良いのよね? それであなたの依頼というのは?」
色々と驚くことが多すぎて忘れてたよ・・・・。
ボク達がここに来たのはこの人の依頼を受け、その願いを叶えるためだった。
でも、この人の依頼って何だろう?
あ、もしかして、この魔法使いを引き取ってほしいとか?
この魔法使いからボク達悪魔に引き渡すように言われてボク達を呼び出したとかかな?
「
・・・・・
んー・・・・・耳がおかしくなった、かな?
耳は良い方だったはずなんだけど・・・
今、
「あの、ごめんなさい。もう一度お願いできるかしら?」
言葉の意味が理解できなかったのか、アリスさんが聞き返した。
すると、ミルたんさんは巨大な手ではぐれ魔法使いの頭を撫でながら、
「この魔法使いさんが悪い魔法使いさん達が集まっている場所を教えてくれたにょ。正義の魔法使いを目指しているミルたんにとって、これは見逃せないにょ」
聞き間違いであってほしかった・・・・・!
なんなら耳が悪くなってた方がずっとましだったよ!
この人、なに考えてるの!?
一人で殴り込みに行くつもりだったの!?
どうしよう・・・・先日の一件もあるから、はぐれ魔法使いをほっとくわけにはいかないし・・・・。
流石にこの人を一人でそんな危ない場所に行かせるわけにはいかないし・・・・・。
ボクも契約とらないといけないし・・・・・。
う、うーん・・・・・・。
「美羽ちゃん・・・・私達もついていってあげるのがいいんじゃない? 私達でこの人を守りつつ、はぐれ魔法使いを捕縛すれば・・・・・」
「そ、そうだね・・・・。えっと、それじゃあ――――」
こうしてボク達は三人ではぐれ魔法使いが潜伏する隠れ家に向かうことになった。
▽
それから十分後――――
「て、敵襲だと!?」
「相手は誰だ!? さ、三人!?」
「おいおい、あの二人って赤龍帝の眷属じゃねぇか!」
「いや、それよりもだ!」
「「「「あの怪物はいったい何者なんだ!?」」」」
はぐれ魔法使い達の絶叫が隠れ家に響き渡る。
ボク達が転移してきたのはとある山の洞窟の中だった。
転移したボク達にはぐれ魔法使い達は完全に虚を突かれた形で、既に混乱に陥っている。
初めはボク達の登場に驚いていたんだろうけど・・・・・今は完全に違うことに頭が持っていかれてると思う。
驚愕に包まれながらも、すぐに思考を取り戻したはぐれ魔法使いの何人かが魔法陣を展開し、炎、雷、水と様々な属性魔法をこちらに放ってきた。
それに対して、ボクとアリスさんは応戦しようとしたんだけど・・・・・
「悪い魔法使いは許さないにょ!」
と、叫んでボク達よりも素早く行動に移ってしまった!
飛来する魔法!
人間が生身でなんて無謀だよ!・・・・と警告しようとしたけど必要なかった。
「ミルキィィィィィィ・スパイラルボォォォォォムァァァッ!!!」
だって、拳で魔法を粉砕してるんだもん!
拳を振るった風圧で洞窟が激しく揺れた!
「ミルキィィィィィィィィ・サンダァァァァ・クラッシャァァァァァ!!!」
あの太い足から繰り出される蹴り!
その凄まじさでミルたんさんの前方に巨大なクレーターが!
吹き飛ぶはぐれ魔法使い!
その拳が!
その蹴りが!
ありとあらゆる魔法を粉砕していく!
本当にどういう人なの、あの人!
本当に普通の人間なんだよね!?
「ね、ねぇ・・・・私達、いらないんじゃない?」
アリスさんもそんなこと言い出しちゃった!
でも、ボクもそう思ってます!
すると―――ミルたんさんの真上に巨大な魔法陣が展開される。
そこからは無数とも言える光の槍が!
いけない!
あんなのをまともに受けたら!
「くたばれ、化け物ぉぉぉぉぉぉ!!!」
はぐれ魔法使いが魔法を放つ!
しかし――――
「ミルキィィィィィィィィ・ブラスト・バスタァァァァァァ!!!!!」
ゴゥォォォォオオオオオオオオンッッッッッ!!!
天に向けて繰り出さられる剛腕!
そこから生まれる衝撃波!
それが降り注いでいた光の槍を全て消し飛ばすと同時に、洞窟の天井に巨大な孔を開けた!
穴から青空が見えた。
「・・・・・わぁ、空ってキレイ」
アリスさん!?
現実逃避してない!?
落ち着いて!
気持ちは分かるけど落ち着こうよ!
そして、ミルたんさんが最後の大技を放つ!
「これで終わりにするにょ!」
掌を合わせて、全身に力を入れていく。
腕が、背中が、足が、いっそう隆起して巨大に膨れ上がっていく!
オーラも今までの数倍・・・・ううん、これはもっと大きな・・・・・っ!
「悪魔さんに教えてもらったことを今、ここで使うにょ!」
悪魔さんに教えてもらったって・・・・・もしかして・・・・
もしかして―――――
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴツ・・・・・・
こ、これはミルたんさんの力に応じて山が・・・大地そのものが揺れている・・・!?
あれって――――
「錬環勁気功っ!?」
「あのバカァァァァァァ! なんてもんを教えてのよ! なにちゃっかり最強クラスの戦士生み出してるのよ!」
「戦士じゃないにょ。魔法少女だにょ」
こっちの声聞こえてたの!?
バジッ バジッ
ミルたんさんの体を何かが弾けていく――――
あ、これ、ダメなやつだ・・・・・。
「美羽ちゃん!」
「うん!」
「「逃げよう!」」
ボクとアリスさんはダッシュでその場から退避した。
洞窟の外へ出たと同時に―――――
「ミルキィィィィィィィィ・ファイナル・フラァァァァァァシュゥゥゥゥッッ!!!」
山が一つ跡形もなく消え去った。
この日、『禍の団』所属のはぐれ魔法使い集団ニルレムの構成員、その半数を捕らえることができた。
ちなみにボクが契約の代価として貰ったのはミルキーの限定フィギュアだった。
お兄ちゃんが昇格したお祝いも兼ねているとのことらしいです。
[美羽 side out]