ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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6話 集う若手

「・・・・てなわけなんだよね」

 

「・・・・・」

 

昨日の経緯を説明してみたけど・・・・ティアは何とも言えない表情をしていた。

 

うん、そうなるよね。

 

初対面ではあんな危ない人だったのに、まさか美羽の唐揚げで餌付けされるとは・・・・・。

 

それでいいのか、英雄の子孫!?

ご先祖様泣いてるよ!?

きっと血の涙を流してるよ!?

 

「マスターの唐揚げは私が求めてきた味だった。あの衣、あの肉汁。なんと言っても肉の下味が完璧だった。これはそう―――――運命だ」

 

なんかすっごいこと言ってるように聞こえるけど、内容はおかしいからね?

食レポになりかけてるの気づいてる?

 

「誉めてもらえるのは嬉しいけど・・・・。やっぱり『マスター』って呼ばれるのはちょっと・・・・」

 

美羽が困り顔で言った。

 

まぁ、美羽の性格からして誰かを従えるなんてことは出来なさそうだしね。

つーか、唐揚げ食べただけで下僕になるとか・・・・。

 

そりゃ、美味いけどさ。

 

「では、なんとお呼びすれば?」

 

「普通に美羽で良いよ。皆にも名前で呼ばれてるし」

 

「そんな・・・・主に対して無礼なこと・・・・」

 

「いや、主になった覚えはないよ・・・・」

 

ですよね!

美羽からすれば唐揚げ振る舞っただけだもんね!

そんなので『主』とか『マスター』とか呼ばれたら誰だって困っちゃうよね!

 

ってか、ディルムッドのやつどんだけショック受けてんだよ!

そんなに『マスター』って呼びたいのか!?

 

アリスが息を吐く。

 

「ねぇ、これどうするの?」

 

「・・・・美羽に任せるよ」

 

「ええっ!? なんとかしてくれないの!?」

 

美羽はかなり驚いている様子だけど・・・・・。

 

俺は親指を立てて、

 

「が、頑張れ?」

 

「うわーん! 丸投げされたー!」

 

「マスター、また唐揚げが食べたいです」

 

「作ってあげるけど、マスターはやめてー!」

 

うん、なんだかんだでまた兵藤家は賑やかになりそうだ。

そんでもって、しばらくは唐揚げが続きそうな気がするよ。

 

「姉さま!」

 

いつのまにかプールサイドに入ってきていた小猫ちゃんとギャスパー(女の子水着ver)が黒歌を捕まえていた。

 

「にゃー、白音とギャーくんじゃん。一緒に泳ぐ?」

 

とうの黒歌は既に一泳ぎした後で、着物を上から羽織るだけという大胆な格好で休んでいるところだった。

 

「修行をお願いします! 姉さまがここに滞在できるのもそれが大きいのですから!」

 

「こ、小猫ちゃん、僕はいつでもいいんだよ?」

 

「ギャーくんはイッセー先輩と同じぐらい姉さまに甘いよ」

 

おっと、これは手厳しい。

そうかそうか、俺は黒歌に対して甘いのか。

まぁ、あのおっぱいに誘惑されたらね。

 

でも、小猫ちゃんは黒歌と修行している時は楽しげなんだよね。

言葉には出さないけど、心の中ではお姉さんと過ごせるのが嬉しいんじゃないかな?

 

小猫ちゃんとギャー助に連行されていく黒歌が俺の前を通りすぎる寸前なか思い付いたかのように言った。

 

「ねーねー、赤龍帝ちん」

 

「ん? どした?」

 

俺が聞き返すと、黒歌はルフェイに指を指す。

 

「ルフェイを赤龍帝ちんの契約相手の魔法使い候補にはできないの?」

 

『―――――っ!』

 

思いがけない提案にこの場のほとんどが驚愕する!

驚いてないのはティアとイグニスのお姉さまコンビぐらいだ。

 

まさか、ルフェイを俺の契約相手に推薦してくるとは・・・・・。

 

「黒歌さん!?」

 

驚いていたのはルフェイも同様だった。

ルフェイにとっても想像していなかったことだったのだろう。

 

黒歌は濡れた髪をかきあげながら続ける。

 

「この子、やり手の魔法使いだし、名家の出よ? んでもってあんたのファンだし、申し分ないんじゃないかにゃー?」

 

黒歌の意見に美羽も頷いていた。

 

「ボクもルフェイさんの魔法には色々勉強になるところがあるね」

 

美羽でもこう言うレベルだし、俺も実力は相当なもんだと思うけど・・・・・。

 

黒歌は肩をすくめながら更に続けた。

 

「そりゃ、アーサーは家宝であり、国宝であり、至宝でもあった聖王剣を持ち出して、強者求めてこっちの世界に飛び込んじゃった問題児だけどね。でも、ルフェイはそんなお兄ちゃんを心配して追ってきちゃったのよ。本来ならペンドラゴン家の魔術師としてつとめを果たすはずだったのにねー」

 

そんなことがあったのか・・・・。

 

ルフェイはモジモジしながら言う。

 

「お父さまとお母さまもお兄さまのことを心配されてましたし・・・・」

 

なんてお兄ちゃん想いの妹なんだ!

 

俺がアーサーの立場だったら土下座して家に戻るね!

こんな可愛い妹に心配かけたくないもん!

 

まぁ、でも、それを聞けば納得だ。

ヴァーリチームの中ではこの子は浮いていたしな。

明らかにテロリストには向いていない性格だ。

 

しかし、俺の眷属兼マネージャーのレイヴェルは異を唱えた。

 

「大変心苦しいですが・・・・あなた方はテロリスト。既に脱退し、追われる立場になったといえども『禍の団』に加担していたという事実は覆すことはできません。どの勢力にも迷惑をかけてお尋ね者なのは周知のことでしょう? 私はイッセーさまの立ち位置を最優先しなければいけない立場なのであえてキツいことを言わせていただきました」

 

レイヴェル・・・・。

こんなにも俺のことを考えてくれているなんて・・・・俺は感動が止まりません!

 

・・・・と同時に申し訳なく思ってしまった。

 

良く良く考えれば俺、テロリストを家に招き入れたもん。

 

「マスター、また美味しい物をお願いします」

 

「マスターはやーめーてー!」

 

・・・・・今はただの残念美人と化してしまったが。

 

つーか、美羽に対して完全に敬語じゃん。

恐るべし、餌付けの効果!

 

レイヴェルの意見に黒歌は苦笑していた。

 

「まーねー。それを言われちゃったらどうしようもないわよねー。それにこの子が以前在籍していた魔法使いの組織からも除名されているだろうし」

 

黒歌は手を合わせて可愛く懇願する。

 

「でもさぁ、とりあえず、口頭で軽く面接だけでもしてあげてよー、小鳥ちゃん♪」

 

「レイヴェルですわ! もう、イッセーさまの契約相手がテロリストだなんて考えたくもありませんのに!」

 

「まーまー、俺も興味あるし、ルフェイには世話になったこともある。話を訊くだけでもいいじゃないか」

 

俺は怒るレイヴェルにそう言った。

 

ルフェイは悪いやつじゃないし、それに黒歌がこうして頼み込んでくるのも理由があると思うんだよね。

 

多分、同じ妹を持つ者としてアーサーの気持ちが分かるんじゃないかな?

 

俺の勝手な想像だけど、アーサーは自分を追ってきてしまった妹には表の世界で平穏に過ごしてもらいたいと考えていると思う。

黒歌もその想いを理解したから、こういう行動に出たんじゃないだろうか?

 

少なくともヴァーリチームよりは俺の周囲の方がまだ安全だと思うしね。

 

レイヴェルは口元を可愛くへの字にしながら渋々頷いてくれた。

 

「・・・・分かりましたわ。イッセーさまがそう仰るなら・・・・ルフェイさん!」

 

「は、はい!」

 

「私の質問にお答えくださいましね!」

 

「わ、分かりました!」

 

 

 

 

 

 

ルフェイの面接を行って数分後。

 

「・・・・魔法の形式は黒も白も北欧も精霊もいける、と。契約している存在は・・・・・ふ、フェンリル!? ご、ゴグマゴグ!? あり得ませんわあり得ませんわ・・・・!」

 

そりゃ、驚くよね。

 

契約相手がフェンリルだもんな。

あんなおっかない最強クラスの魔物と契約したとか、単純にスゲーよ。

 

まぁ、その点ならアーシアと負けてないけど・・・・

 

『アーシアたんのスク水、食べたい』

 

うぅっ・・・変態だ!

変態がいるよ!

 

ダメだ、あっちの声は耳に入れないようにしよう。

 

ようやくペンを置いたレイヴェルだが、その表情は信じられないといった感じだ。

 

「・・・・なんてことでしょう。ルフェイさんは私が設けた基準を遥かに超えてますわ。今までに見てきた魔法使い達のステータスよりも優秀な面が多々見受けられますわね・・・・」

 

「まぁ、選考にあった魔法使いはパッとしないって美羽も言ってたし」

 

「言ってない言ってない! ボクが言ったのは皆、同じに見えるって言ったの!」

 

「・・・・ほとんどストレートよ、それ」

 

「マスターは天然か」

 

アリスさんに一票。

あと、ようやくディルムッドがまともなこと言ったな。

 

レイヴェルは続ける。

 

「家柄も良し、実力も良し。テロリストという点を除けば理想的な契約相手となりますわ」

 

「・・・・ですが『禍の団』に荷担していた事実は重いですね」

 

ソーナが冷静にそう漏らしていた。

 

問題は一点だけ。

だけど、その一点が重すぎるってところか。

 

兄を心配してのこととはいえ、各勢力に目の敵にされている組織にいたことが盛大に引っ掛かったな。

 

「・・・・・」

 

ルフェイも複雑そうな面持ちだ。

 

黒歌が重い空気を吹き飛ばすようにカラカラと笑う。

 

「ま、今はそんな評価でいいんじゃないかにゃ? 契約なんて後でもできるわけだし、その頃にはなんとかなってるかもだしー。ところで白音、あんたの縄張りが取られているけど、いいのかにゃ?」

 

黒歌が小猫ちゃんにそう訊く。

 

俺の膝上にはゼノヴィアが座ってるもんな。

小猫ちゃんにとって俺の膝上は縄張りなのか・・・・。

 

「後で座り直せば問題ないです。あそこは独立自治区なので」

 

独立自治区!?

そんな場所なの、俺の膝上って!?

 

テーブルの下にいたベンニーアが何やらメモをしていく。

 

《おっぱいドラゴンの膝上は独立自治区・・・・と。今日は新事実ばかりで勉強になりやすぜ。特に鬼畜に目覚めたところは興味深いですぜ》

 

「そんなのメモしないで! 泣くよ!?」

 

「うふふ、イッセーくんの鬼畜プレイ。味わってみたいですわ。イッセーくんに縛られて、あんなことやこんなことまで・・・・・」

 

朱乃を縛ってあんなことやこんなこと・・・・・。

そ、それは・・・・やってみたいような・・・・。

 

 

 

『あぁんっ・・・・ダメですわ、そこは・・・・っ』

 

『もうこんなになってる。縛られて感じてるのかな? 朱乃はエッチな子だ。ほら、ここも――――』

 

『イッセー・・・くん、そんなところぉ・・・・はぁぁんっ』

 

 

 

 

いかんいかん、つい想像してしまった。

 

あれ・・・・やっぱり俺、Sに目覚めてる・・・?

 

「ふふふ」

 

ああっ、イグニスが意味深な微笑みを!

 

全てがあの駄女神の掌の上だとでもいうのか!

なんということだ!

恐るべし、最強のお姉さん!

 

と、そこに新たに来訪者の声が。

 

「地下にプールだなんてとても楽しそうですね」

 

皆がそちらに視線を送ると、そこにはシスター服のお姉さん、グリゼルダさんがいた。

シスターの後ろに男性が二人いるけど・・・・

 

「申し訳ございません。お宅を訪問いたしましたら、兵藤一誠さんのお母さまがおむかえくださいまして、ここに通されたしだいです」

 

あ、母さんが通したのね。

 

「ごきげんよう」

 

グリゼルダさんは丁寧な挨拶と微笑みを俺達にくれるが・・・・

 

グリゼルダさんの登場に表情を強ばらせる者がいた。

ゼノヴィアだ。

 

ちなみに、イリナは既に俺から離れて姿勢を正していた。

天使のおっぱいが離れてしまった・・・・。

 

グリゼルダさんが微笑みながらゼノヴィアの頬を引っ張る!

 

「昼間から殿方の膝上に乗っているなんて・・・・随分と破廉恥な子になったようですね、ゼノヴィア?」

 

「ひゃ、ひゃい、ごめんなひゃい・・・・」

 

あらら、ゼノヴィアが涙目で謝ってら。

 

うーむ、本当にグリゼルダさんには頭が上がらないようで、何とも可愛いらしい顔を見せてくれる。

 

と、グリゼルダさんはコホンと咳払いをしてから、頭を下げる。

 

「申し訳ございません。グレモリーさんとシトリーさんがお話をするということで、私達もお邪魔しようと思いまして・・・・」

 

テーブル席の一つに腰をおろすグリゼルダさん。

 

だけど、俺の興味は違うところ――――彼女が連れてきた二人の男性にあった。

 

一人は神父服、金髪にグリーンの瞳という端正な顔立ちの青年。

俺とそう変わらない歳だろう。

 

もう一人は日本人でこちらもイケメンだと思う。

 

こちらの男性の傍らには大型の黒い犬がいた。

漆黒の毛並みに金色の瞳。

 

纏うオーラから異形の類なのは分かるが・・・・。

 

俺がその犬を見ていると、神父服の男性が挨拶をくれた。

 

「ども、初めまして。自分、デュリオ・ジェズアルドといいまっす。お見知りおきを~」

 

「デュリオ・・・・ということはあんたが天界の切り札、ジョーカーってわけか」

 

俺がそう言うと男性――――デュリオは笑顔で答える。

 

「そうっすよ。いやー、かの有名な赤龍帝殿に名前を覚えられてたなんて光栄っすね~」

 

うーん、なんというかマイペースだな。

 

デュリオはうちの女子メンバーに視線を配らせ、うんうんと頷いた。

 

「赤龍帝殿は美人の嫁さんをたくさん持ってるって有名だけど、マジだったんすね。羨ましい限りだ、うんうん」

 

「デュリオ? あなたは天界の切り札たるジョーカーなのですよ? 失礼のないようになさい」

 

グリゼルダさんはデュリオの耳を遠慮なく引っ張っていく。

 

「いてててて。・・・・あはは、グリゼルダ姐さんには敵わないっす」

 

どうやら、グリゼルダさんはゼノヴィアだけでなく、デュリオも管理しているらしい。

 

ジョーカーの話は何度か耳にしたことがあるけど・・・・。

まさか、こうも早くに会うことになるとはね。

 

デュリオの紹介を受けていると黒歌が楽しげに言った。

 

「これは珍しいにゃん。うちのヴァーリがいたら喜んだかもね」

 

「知ってるのか?」

 

俺が訊くと黒歌はニンマリと意味深に笑んだ。

 

「―――刃狗(スラッシュ・ドッグ)。『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』の所有者で、曹操以外でヴァーリに覇龍を使わせた『人間』にゃ」

 

「マジで!?」

 

この人がそうなのか!?

 

実力者なのは雰囲気で分かってたけど、ヴァーリに覇龍を使わせるって・・・・。

とんでもない人が来たもんだ。

 

男性が挨拶をくれる。

 

「初めまして、幾瀬鳶雄といいます。今日はアザゼル元総督の代行でここへ来ました。こっちは刃。神滅具そのものだと思ってください。こいつは独立具現型の神器だから、意思を持ってるんだ。今後は裏方要員として皆さんのサポートに入ります」

 

ついでに犬の紹介もしてくれたが・・・・・。

 

独立具現型の神器。

サイラオーグさんところのレグルスみたいな感じなのか?

いや、後天的になった向こうとは違うのか?

 

レイナが幾瀬さんに話しかける。

 

「幾瀬さんもこちらに来ていたんですね」

 

「連絡いってなかったかな? てっきりアザゼルさんから伝わっていると思ってたんだけど・・・・」

 

「はぁ・・・あの人、私への報告雑すぎ! 今度、お説教よ!」

 

先生、戻ったらレイナちゃんからのお説教があるそうです。

この感じだととっても長いと思います。

 

自業自得だけど。

 

そういえば、この二人って顔見知りなんだな。

同じ組織に所属しているから、過去に何度か会ったことがあるのかも。

 

ソーナが眼鏡をくいっと上げる。

 

「三大勢力の神滅具所有者が集ってしまいましたね」

 

そうなるな。

 

俺は悪魔側、デュリオは天界、幾瀬さんは堕天使側だもんな。

ここにサイラオーグさんまで来たら三大勢力の神滅具所有者は全員集合になっちまう。

 

しかし、この二人が増援として来てくれるとなると心強い。

なにせ相手は凶悪な上にしぶとい邪龍だからな。

強いメンバーがいてくれると非常に助かる。

 

幾瀬さんが言う。

 

「アザゼルさんから君達のトレーニング相手になってほしいと頼まれているだけど、どうかな?」

 

「あ、俺もミカエルさまからそんなこと命じられてたかも。赤龍帝殿、グレモリー方々、俺も練習相手にどうかな? まぁ、赤龍帝殿はメチャ強いって話だから俺だと力不足かもしんないけど」

 

幾瀬さんの言葉にデュリオも思い出したようにそう言ってきた。

 

神滅具所有者が修行相手なのはありがたい。

 

今までの戦いからだけど、神滅具ってのはどれも強力だ。

聖槍にしろ、絶霧にしろ、その出力はもちろん、強力な能力ばかりだった。

 

今までは敵方だったから、修行なんて出来なかったけど、今度は味方として修行に付き合ってくれる。

こんな機会はめったにないだろう。

 

俺は立ち上がって二人と握手を交わした。

 

「刃狗にジョーカー。二人が付き合ってくれるなら俺も良い経験になりそうだ。よろしく頼むよ」

 

「そう言ってもらえると俺も嬉しいかな。あ、俺のこと呼び捨てで良いからね。俺もイッセーどんと呼ぶからさ」

 

イッセーどん・・・・そんな呼び方をされるのは初めてだ。

ま、いいけどね。

 

「それじゃあ、主共々私達もよろしく」

 

「よろしくお願いします」

 

アリスと美羽も二人と握手を交わす。

 

「私も修行しますわ!」

 

レイヴェルも手を挙げていた。

 

俺の眷属になってからはレイヴェルも強くなろうと本格的に修行に参加している。

現段階では美羽、アリスよりも数段劣っているけど、これからぐんぐん伸びるだろう。

 

まぁ、心配なのは無理に鍛えようとしているところか。

同じ眷属である他の二人との差を意識しているところが多々見られるんだよね。

 

オーバーワークにならないよう、しっかり見てやらないとな。

 

俺のすぐ横ではゼノヴィアとイリナが燃えていた。

 

「これはいいぞ。トレーニング相手が神滅具所有者複数だなんて、そうあることじゃない!」

 

「そうね、私も天使パワーを高めたいわ!」

 

「そうだな、自称天使は天使というものをジョーカーに習った方がいい」

 

「もう! ゼノヴィアこそ、刃狗さんからテクニックを覚えればいいんじゃないかしら!」

 

「お二人も張り切ってますね! 私もファーブニルさんとの連携を鍛えます!」

 

ゼノヴィアとイリナに続き、アーシアも燃えている!

教会トリオもレベルアップしそうだな!

 

ソーナも挙手する。

 

「よろしければうちのヴリトラ使いも参加させたいのですが、いかがでしょうか? そろそろあの子を禁手に至らせたいと思っていますので」

 

「いいんじゃないっスかねぇ。龍王も追加ってことで」

 

「私もか。では噂のジョーカーに鍛えてもらうとしようか」

 

「いやいやいや、おまえは鍛える側だろ」

 

ニヤリと笑みを浮かべるティアにツッコミを入れる俺。

 

ティアはどう見ても教える側だよね。

俺もティアにはまだまだ教わるところもあるし。

 

力もそうだけど、それだけティアは経験が多いってことだ。

 

「フフフ、私も・・・・本気を出す時が来たわね!」

 

「おまえが本気出したら全部燃え尽きるからやめようねー」

 

顎に手をやり格好よく決めてるつもりかもしれないけど、やらせねーよ。

駄女神の本気はマジで怖いからやめてくれ。

 

まぁ、でも、このメンツなら何とか匙を至らせることができる・・・・・かも。

 

禁手に至るには劇的な変化が必要だからな。

どれだけ修行してもただのパワーアップで終わるパターンもある。

匙の中で何か強い想いがあれば・・・・・。

 

俺の場合はアリスのおっぱいだったわけだけど。

 

「・・・・・なんで私の胸見てるのよ」

 

「いや、なんというか・・・・・禁手に至らせてくれてありがとう」

 

「とりあえず、グーで良い?」

 

「すいませんすいません! ごめんなさい! だから、バチバチさせないで!」

 

うちの『女王』はおっかない!

 

デュリオと幾瀬さんの好意に皆が活気づくなか、グリゼルダさんが言う。

 

「テロリストの動きが不気味な以上、各勢力の強化が必要なのですが・・・・・残念ながら、各陣営の実力者の大半が上役であり、政治的な意味合いで動きにくい立場にあります。特に神を失う事態になっては世界に影響を及ぼします。ですから、あなた方のようにいつでも動ける強い若手が必要なのです。負担を強いることになるのは重々承知です。・・・・どうか、三大勢力だけでなく、各神話体系のため、そして人間界のために力を貸してください。私達も最大限尽力致します」

 

頭を深く下げるグリゼルダさん。

 

そんな彼女に俺は言う。

 

「頭を上げてください。お願いなんてされなくても、俺達は動きますよ。自分の守りたいものを守るために、な?」

 

俺が振り返ると皆も頷いていた。

 

ここにいるメンバーはそれぞれ守りたいものを持っているはずだ。

それを守るために、全力でぶつかっていく。

これまでも、これからも。

 

「ま、無茶だけはするなよ?」

 

「あんたが言うか」

 

「イテッ」

 

アリスのチョップが俺の額を捉えた。

 

ま、まぁ、確かに俺が一番無茶してきたかも・・・・。

ハハハハ・・・・・。

 

俺は額を擦りながら言った。

 

「それじゃあ、デュリオと幾瀬さんの歓迎会でもするか? せっかく来てくれたんだしな」

 

「お、いいねぇ。流石はイッセーどん。美味しいものがあると俺は嬉しいよ」

 

「それなら任せとけ。うちの飯は美味いぞー」

 

「そりゃあ、楽しみだ」

 

俺とデュリオがそんな会話をしていると、ソーナが冷静に一言。

 

「その前に今後についての話し合いです」

 

 

それから俺達は話し合いをした後、二人の歓迎会を開いたのだった。

 

やっぱり平和が一番ってね。

 

 

 

 

 

 

深夜。

 

悪魔の仕事を終えた俺は一人、風呂に入っていた。

大浴場ではなく、一般家庭サイズの方。

 

今日はお得意様からの依頼が四件入って、それを俺と俺の眷属である三人で分担したんだ。

 

俺は森沢さんからの依頼だったんだが、アニメについて長々と語り合っただけだった。

結局、四時間ぐらい話してたおかげで風呂に入るのもこんな時間になっちまった。

 

ま、休日だからいいんだけどさ。

 

美羽達も今ではちゃんと契約を取ってくる。

最初の契約のお陰で不安は無くなったとか。

 

アリス曰く、

 

『あれ以上のことって起きないでしょ?』

 

だそうだ。

 

まぁ、はぐれ魔法使いの拠点を潰すようなことは早々起きないだろう。

 

いや、しかし・・・・依頼者がミルたんの場合、何が起きるか分かったもんじゃない。

 

あれ?

 

そういや、俺、ミルたんに関して何か忘れているような・・・・。

 

確か、松田と元浜が――――――

 

「・・・・ないな。うん、ないない」

 

俺は首を横に振って、それを否定した。

 

そんな光景、見たくない。

想像しただけで恐ろしい・・・・・。

 

その記憶を消し去った俺は風呂から出ようとした。

 

 

 

その時――――――

 

 

 

「お、お邪魔します・・・・・」

 

と、タオルで前を隠しながらレイナが入ってきた。

ほとんど先日と同じ状況だ。

 

「起きてたの?」

 

「うん。・・・・というより、イッセーくんが帰ってくるのを待ってた」

 

「待ってた? こんな遅くまで?」

 

用事があるにしても、結構な時間だぞ?

俺が家に戻った時には深夜一時を過ぎてたからな。

 

よほどのことなのだろうか?

 

「・・・・・」

 

などと考えた俺だ、よく見るとレイナの頬は赤く染まっていて、瞳も潤んでいるようだった。

 

「レイナ?」

 

怪訝に思った俺は声をかけてみる。

 

 

すると―――――

 

 

「イッセーくん・・・・」

 

レイナはタオルを床に捨てて全裸で抱きついてきた!

 

むにゅんとおっぱいが俺の胸に押し当てられる!

乳首が乳首に当たってる!

 

なんだなんだ!?

 

どうしたんだ、レイナちゃん!?

 

「・・・・・()

 

「て?」

 

なんて言ったんだ?

声が小さすぎて、密着してるのに聞き取れなかった。

 

『て』がなんだって?

 

すると、レイナは顔を上げて更に潤ませた瞳で―――――

 

 

 

 

 

「・・・・・抱いて」

 

 

 

 

 

あ、あれ・・・・・

 

今、なんて言った・・・・?

 

いや、雰囲気からして分かるけど・・・・流石に唐突すぎると言うか・・・・・。

 

俺は何とか声を絞り出した。

 

「な、何があったんだ?」

 

「・・・・・・もう・・・・出来ないの」

 

「出来ないって・・・・?」

 

「・・・・我慢」

 

が、我慢?

 

ダメだ、余計に分からなくなってきた。

 

「私・・・・前に言ったよね。イッセーくんが・・・・美羽さんとアリスさんがしちゃってるところ・・・・見たって」

 

「う、うん」

 

あれには心臓止まるかと思ったよ。

 

まさか、見られてるとは思わなかったもんで・・・・。

気付かなかった俺も俺だけど・・・・。

 

「あれを思い出す度に・・・・その・・・・一人で慰めてて・・・・今日もトイレでこっそり・・・・」

 

そんなことしてたの!?

 

トイレって・・・・俺の膝から降りた後のあれか!?

 

なんてカミングアウトなんだ!

衝撃過ぎる!

 

「でも、もう我慢できないから・・・・イッセーくんにしてほしいなって」

 

「マジ・・・・?」

 

「マジよ。・・・・この間のデートで気持ちを受け取ってもらえたのが嬉しくて・・・・。でも、そしたら、余計に我慢できなくなっちゃった」

 

レイナはそう言うと俺の手を取って自身の胸に当てた。

 

手を通して、レイナの鼓動が伝わってくる。

 

「もうこんなに高鳴ってるの」

 

確かにレイナの心臓は強く脈打っていた。

体も火照っているのも分かる。

 

いや、でも・・・・

 

「私は魅力ない・・・・? こんなエッチな私はイヤ?」

 

「そんなことないさ。誰にも渡したくないくらい魅力的だし、エッチな女の子も大歓迎だよ」

 

俺だってレイナにここまで迫られたら、我慢できない。

その証拠に愚息が天に向かってファイト一発してるし。

 

でも、毎度のごとくアレを所持していない。

アレを持っている美羽も今は寝ているから、入手する術がない。

 

となると、俺はレイナにも言わなくてはいけない。

 

「このまましたら赤ちゃんできちゃうだろ? 学生の間は流石に、な?」

 

「あ、それなら・・・・」

 

レイナはそう言うと一度、風呂場から出て洗面所で何やらごそごそし出した。

 

おいおい・・・・この展開は・・・・・

 

まさか・・・・

 

まさか――――――

 

「ゴムならここにあるわ」

 

洗面所の引き出しから引っ張り出してきたぁぁぁぁぁ!?

 

なんでだ!?

なんでそこにあるんだ!?

 

しかも、レイナが持ってきているのはそれだけじゃなかった!

 

「そ、そのボトルは?」

 

「ローション」

 

「なんであるの!?」

 

「美羽ちゃんがここにあるって言ってたから」

 

美羽ぅぅぅぅぅ!?

 

なんで用意してたんだ!?

 

また桐生か!

また桐生経由なのか!?

 

「あとマットもここに」

 

そう言ってレイナはピンク色のビニールのマットを洗面所から持ってきた!

 

用意よすぎだろ!

 

どこにあった!?

そんなのどこにもなかったぞ!?

 

ってか、美羽に聞いたってことは・・・・

 

「もしかして、美羽はこのこと知ってる?」

 

「『ファイト!』って応援もらったわ」

 

美羽・・・・・おまえ・・・・。

そんなエールまで送ってたのか・・・・・。

 

どうやら、俺は妹の手によってハーレム王に近づいていくようです。

 

俺はレイナのおでこにキスをした。

そして、レイナの手を取って宣言する。

 

この宣言は二度目になる。

それでももう一度言っておきたい言葉だった。

 

「この手は絶対に離さない。この先何があってもね」

 

「私もよ。―――――イッセーくん、大好き」

 

 


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