1話 新モード発動!?
「おおおおおおおお」
俺の膝の上で変な声を出してるオーフィス。
どこで見つけてきたのやら、父さんの電動肩たたき機を持ってきて現在使用中だ。
どうやら気に入ったようで、かれこれ一時間近くこの状態。
本当に子供みたいだ。
いや、実際、心は子供のように純粋なんだけどね。
「イッセー、バナナ食べる?」
たまにこうしてバナナを分けてくれる。
いやー、うちの龍神さまはなごむね!
もう兵藤家のマスコットだよ!
まぁ、たまにスッポンポンで家の中をうろちょろする時があるのは色々と問題ありだとは思うが・・・・。
うちの女神さまと風呂に行くときなんか二人揃って裸だもんなぁ。
「眼福なくせにぃ」
「そりゃあもう! って心を読むない!」
「オーフィスちゃん、ポテチ食べる?」
「食べりゅ」
「オーフィスは口の中のバナナを飲み込んでから喋りなさい」
ったく、この二人が揃うと平和なんですね!
平和空間広がってるもん!
そんな感じで平和空間にいた俺のもとにやって来る者がいた。
ゼノヴィアだ。
「ここにいたのかイッセー。少しいいかい?」
「ん? 別にいいけど?」
俺がそう答えるとゼノヴィアは俺の腕を掴んで立たせようとする。
「では、オーフィス、イグニス、イッセーを借りるぞ」
「「はーい」」
「え、ここじゃないのか?」
「そうだ。ちょっと来てくれ」
そのまま俺はゼノヴィアに引っ張られてリビングから出た。
▽
夏に地上六階地下三階の大豪邸にリフォームされた兵藤家。
階ごとに部屋数も多いから入居者が続々と増えている現在でも部屋はまだまだ余ってる。
リビングから連れ出された俺はその空き室のひとつに連れ込まれた。
ほぼ何も置かれていない部屋にノートパソコンだけが床に無造作に存在し、俺は皆をその前に座らせられていた。
部屋にはアーシアとイリナもいて、俺が入った瞬間に鍵をかけられてしまい閉じ込められたんたけど・・・・。
「おい、これはいったい・・・・?」
不安しかない俺がそう訊く。
「うん、実はイッセーに見せたいものがあってね」
「み、見せたいもの・・・・?」
なんだか、ゼノヴィアのやつ、目を輝かせているんですけど・・・・・。
ふ、不安が増していく・・・・・。
こういう時のゼノヴィアは大概ろくでもないことをしでかすからな。
ゼノヴィアは一つ頷くとノートパソコンの裏からあるものを取り出した。
―――――それはゲームソフトの箱。
しかし、それは格ゲーやシューティングゲームのようなものではなくてだな・・・・
「桐生に頼んで新しい『エロゲ』を入手してきたんだ」
そう、それはどう見ても『エロゲー』!
パッケージにはエロエロな女の子が前面に押し出されている!
ゼノヴィアは嬉々としてそれを俺に見せつける。
「その名も『堕天使シスターズ ~信仰と肉欲の狭間で~』だ! タイトル通り、敬虔なシスターを次々と辱しめる内容の『エロゲ』のようだ。まったく、これだから日本人は無宗教過ぎるんだ。シスターは尊ぶべき神の従僕なんだぞ」
今度はゲームの箱を見ながら不満を漏らしてやがる・・・・。
まぁ、それは今はいいとしてだ、
「・・・・で? なぜに俺はこの部屋に閉じ込められた上にそれを見せつけられているんだ? ・・・・まさかと思うが、それを皆でプレイしようなんて言い出すんじゃないだろうな?」
目の前には電源の入ったノートパソコン、エロゲー、そしてアーシア、ゼノヴィア、イリナの教会トリオ。
この状況を見れば嫌でもその答えが出てくる。
その答えが間違っていることを切に願う俺だが・・・・
「流石はイッセーだ。話が早い。これを私達三人とイッセーだけでプレイして子作りの研究会としゃれこもうと思ってね」
その場で頭を抱える俺。
・・・・やっぱりかよ。
なんで!?
なんで、俺を巻き込んだ!?
プレイするなら三人でしてくれ!
おまえはエロゲーのことを分かってない!
エロゲーってのは一人でこっそりやるから良いんだぞ!?
男子が女子に囲まれながらするもんじゃないからね!?
「エロゲーは静かに一人でするもんなの!」
心からの叫び!
しかし、ゼノヴィアはそれをスルーして切々と語る。
「美羽、アリスときてついにはレイナまでもがイッセーと子作りしてしまった」
いや、子供は作ってない!
ゴムはしてるから!
「明らかに私達は遅れている。しかも、私達の前にはまだリアス部長と朱乃副部長がいる。このままでは・・・・っ!」
拳を握り、体をワナワナと震わせるゼノヴィア。
なにをそんな悔しがってるの!?
「そこでだ! 私達はイッセーを拘束するという強硬手段に出た! なぁ、そうだろう、アーシア、イリナ?」
「ゴメン! 意味分かんない!」
拘束しなくていいじゃん!
エロゲーしなくていいじゃん!
つーか、エロゲーで子作りの研究するのも間違ってるからね!?
訊かれたアーシアはもじもじしながら言う。
「た、確かに遅れてはいますけど・・・・。今はイッセーさんと楽しくお話しできれば・・・・」
イリナも赤面しながら続いた。
「えっと、わ、私もまだ・・・・昔のことを思い出しながら楽しめればいいかなーって」
やっぱりこの二人は純粋な面が強い。
レイナとのことを知ったときは真顔だったけど。
だが、それを聞いたゼノヴィアは語気を強めた!
「生ぬるいぞ! そんなことだから私達は次々と先を越されるんだ!」
「でも、やっぱり健全ではないわ! エッチなゲームをする以外にもイッセーくんと交流を深める術はあると思うの!」
うんうん、イリナの言う通りだ!
しかし、ゼノヴィアは目元をキラリと光らせる。
「そうは言うがイリナよ。私は知っているんだぞ?」
「な、何よ・・・」
生唾を飲み込むイリナにゼノヴィアは不敵な笑みを浮かべて言った。
「ふふっ、天界に訊いているそうだね。悪魔と一線を越えても堕ちない方法とやらを。ミカエルさまが真剣にご一考中というじゃないか」
な、なんだと!?
イリナのやつ、そんなことを天界に訊いているのか!
しかも、ミカエルさんが真剣に考えているだと!?
「わ、わわわ私はっ!」
耳まで真っ赤になるイリナ。
アーシアがそれを訊き驚愕していた。
「イ、イリナさんはそこまでお考えだったのですね!」
「そうだぞ、アーシア。イリナは既に子作りのことまで視野にいれている。だが、アーシアについても私は知っている」
ゼノヴィアはアーシアの肩に手を置いた。
「なんでも、例の疑似空間でイッセーに嫁入り宣言をしたそうじゃないか。そして、イッセーもそれを受け入れたと」
確かに嫁に貰うって言ったな。
リアス、朱乃、アーシア、レイナの四人が同時に「お嫁さんにしてください」って言ってきたっけ。
それを聞いて今度はイリナが驚いていた。
「アーシアさん、それホント!? お、おおおお嫁さん!?」
そういや、ゼノヴィアとイリナはあの場にいなかったな。
疑似空間から先に脱出して天界と冥界に非常事態を伝える役目だったし。
「アーシア、イリナ。どんなに取り繕っても分かるものはわかる。二人ともイッセーと子作りしたいのだろう? 私はしたい! だからこそ『エロゲ』なんだ! 『エロゲ』で子作りを研究し、先の三人を超える子作りをする!」
おかしい!
おまえはどんな子作りをするつもりなんだ!?
ゼノヴィアの決意を聞いて二人に変化が訪れる。
「わかりました! 私も『エロゲ』をプレイして研究していきます!」
「ええ! 私も来る時に向けて勉強するわ!」
「流石は私の親友達だ。さぁ、『エロゲ』をするぞ!」
いかん!
アーシアとイリナが流されている!
ほとんど洗脳じゃないか!
って、ゼノヴィアが服を脱ぎ始めたぁぁぁぁ!?
下着姿になったゼノヴィアがアーシアとイリナに言う。
「ところで知っているか? 『エロゲ』は本来全裸でやるそうだ。これも桐生から仕入れた情報なんだ」
―――――っ!
え、エロゲーを全裸でプレイだと!?
た、確かに聞いたことがあるが・・・・・それにしても女子が全裸でエロゲーってどうなの!?
それはやめよう!
ダメなやつだって!
アーシアもゼノヴィアの発言に驚く。
「ええっ!? げ、ゲームを裸でするのですか!?」
「そうだ。私も驚いたが、これも日本の様式美というやつなのだろう。」
そんな様式美はない!
万国共通でエロゲーを全裸でやるなんて様式美は存在しねぇよ!
イリナも衝撃を受けていたようだが、ワナワナと体を震えさせて叫んだ。
「わ、分かったわ! 私も脱ぐ! それが日本人なのよね!」
おいぃぃぃぃぃ!
おまえも日本人だろ!?
間違ってることに気づけ!
ああっ、イリナまでもが脱ぎ出した!
イリナの行為にゼノヴィアは頷く。
「流石はイリナだ。こうと決めれば勢いがいい。さて、アーシアはどうする?」
ブラを外し、豊満な乳をぶるるんと解き放ちながら、ゼノヴィアはアーシアに問う。
「私も脱ぎますぅ! 脱いでイッセーさんと『エロゲ』をしますぅ!」
アーシアまで脱いじゃったよ!
眼前には生まれたままの姿の三人!
なんということだ・・・・・このままじゃ・・・・!
――――全裸でエロゲーをプレイすることになっちまう!
「さぁ、イッセーも脱ぐんだ」
俺の服にゼノヴィアの手がかけられる。
その時、俺の中のスイッチが入った。
あぁ、やっぱり俺ってこうなるんだな。
こいつはもうしないと封じたことなのに―――――
俺はゼノヴィアの手を掴むと、強引に引き寄せる。
すると、ゼノヴィアは胡座をかいた俺の中にスッポリと収まる形に。
「イッセー・・・・?」
怪訝な表情を浮かべるゼノヴィア。
そんなゼノヴィアに俺は――――
「勝手に服を脱がせてくるようなゼノヴィアには――――お仕置きだ」
ゼノヴィアの耳たぶを甘噛みした。
「あっ――――――」
その瞬間、ゼノヴィアの体がビクンッと跳ねた。
▽
数分後。
「あっ・・・・はぁっ・・・んっ・・・・ぁぁっ」
俺の横で体をビクンビクン震えさせているゼノヴィア。
顔は赤く、呼吸も荒い。
しかも、ゼノヴィアの周囲はびっしょり濡れているという状況。
耳たぶからたっぷり俺の気を流して、感覚をこれでもかというぐらいに鋭敏化させた。
そう、サイラオーグさんとのレーティングゲームで俺がコリアナさんにしたやつ・・・・・のもっとスゴイやつをゼノヴィアにくらわせたんだ。
これは夜の時にしか使わないと決めてたのにな・・・・
『鬼畜モード』が発動しちまったか。
イグニスとの修行の成果―――――その名も『鬼畜モード』。
俺の中の内なる鬼畜を呼び覚ました状態・・・・らしい。
イグニスに従ってたらこうなっちまった。
「イ、イッセーくんってドS・・・・?」
「イグニス曰く、内なる鬼畜だってさ。ま、まぁ、少しやり過ぎたかな・・・・」
今のゼノヴィアを見てるとそう思う。
くっ・・・俺はまだ鬼畜モードの制御が出来ていないというのか!
「はわわわっ・・・・ゼノヴィアさん凄いことになってますぅ! ゼノヴィアさん、大丈夫ですか!?」
「待て、アーシア! 今のゼノヴィアは――――」
ゼノヴィアに触れようとするアーシアを止めようとするが間に合わない。
アーシアがゼノヴィアの肩に触れた瞬間、
「んあっ!・・・あ、アーシア・・・・今、触られると・・・・うぁぁっ」
ゼノヴィアの体が大きく仰け反った。
とてつもなく敏感な状態だから、触るだけでこうなるんだよね。
うん、やっぱりやり過ぎた。
今度、鬼畜モードを制御する修行をつけてもらおう。
とりあえず謝っとくか。
ゴメンね、ゼノヴィア。
「風呂に入れてあげてくれ。このままじゃ、風邪ひいちまう」
「やったのイッセーくんだけどね」
「ま、まぁね」
本当にやり過ぎました!
ゴメンなさい!
ゼノヴィアが震える声で言う。
「イ、イッセーが・・・・入れてくれ・・・・んっ。ちゃんと・・・・体の隅々まで洗ってくれると・・・・嬉しい・・・・!」
「おまえ・・・結構余裕あるのな」
その時、ふと部屋の扉が開けられる。
そこから現れたのは俺の横で『僧侶』にしてマネージャー―――――レイヴェルだった。
「イッセーさま、皆さん、ここにいらっしゃいます―――っ!?」
レイヴェルはそこまで言いかけると、言葉を詰まらせた。
部屋には男と裸の女子三名、内一名はびしょ濡れ状態だもん!
色々アウトだよ!
やったの半分俺だけど!
「え、あの・・・・ゼノヴィアさんはいったい――――」
やっぱりそこに目が行くよね!
俺は話をそらすように大きな声で訊いた。
「レイヴェル! 何か報告があるんじゃないのか?」
「あっ、そうでした! イッセーさま、皆さん、アザゼル先生から直通の回線が開かれましたわ! 事態が変化したそうです!」
どうやら、向こうで動きがあったようだ―――――