ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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2話 ルーマニアへ! 課外授業スタートです!

ゼノヴィアを風呂に入れた後、俺は兵藤家上階にあるVIPルームに移動した。

 

そこには既にオカ研メンバー、ソーナ、真羅副会長、グリゼルダさんとデュリオが集まっていた。

 

遅れてきた俺とゼノヴィアにアリスが訊く。

 

「遅いわよ、イッセー。何してたの?」

 

「いや、ちょっと風呂にね・・・・」

 

「お風呂? ゼノヴィアさんと二人で?」

 

「ま、まぁ・・・・ね」

 

言えないよなぁ。

こんな時にゼノヴィアの体洗ってましたなんて・・・・。

 

ゼノヴィアが前に出る。

 

「イッセーに絶頂させられて、びしょ濡れになったんでね。隅々まで洗ってもらっていんだ」

 

「うぉぃっ! それ、ここで言うなよ!」

 

そりゃあ、ゼノヴィアのご要望通り隅々まで洗わせていただきましたよ!

あーんなところもこーんなところも洗わせていただきましたよ!

 

俺がゼノヴィアをびしょ濡れにさせたのも事実だよ!

 

でも、こんなところで言わなくてもいいんじゃない!?

ほとんど公開処刑じゃん!

 

家に住んでるメンバーだけならともかく、そうじゃない人もいるんだよ!?

 

ゼノヴィアは俺の腕に抱きついてくると、頬を赤らめながら小さく言った。

 

「あれは・・・良いな。また、やってくれないか?」

 

はうっ!

 

ゼノヴィアが上目使いだと!?

しかも、そんなに瞳を潤ませるなんて!

 

あの男勝りなゼノヴィアがこんな・・・・!

このギャップは強烈だ!

 

つーか、やってほしいってなに!?

 

「あ、ああれは一応、お仕置きだからね!? 分かってる!?」

 

「分かっている。だから、またお仕置きしてくれ」

 

「それもうお仕置き違う!」

 

あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

ゼノヴィアが何かに目覚めちまった!

やっぱりあの鬼畜モードは危険だ!

 

女の子を変な方向に目覚めさせてしまう!

 

「あのさぁ、とりあえずアザゼルさんの話聞かない?」

 

アリスからのチョップを食らった。

 

 

 

 

「リアス達が?」

 

俺達は魔方陣から映し出される立体映像の先生から事情を聞いて驚いた。

 

俺の驚きに先生も頷く。

 

『ああ、どうにもツェペシュ側で何か動きがあったようでな。ツェペシュ、カーミラの境界線で一時混乱状態になった。あちらでクーデターが起きたと見て良いだろう。リアスと木場はそれに巻き込まれた可能性が高い。というより今は拘束されているだろう。こちらから通信ができんからな。そちらも同様じゃないか?』

 

突然の報告に全員が息を呑んだ。

 

朱乃が通信用魔法陣を展開してリアスに通信を送るが・・・・。

朱乃は首を横に振った。

 

ダメか・・・・・。

 

「・・・・あぅぅ・・・・そ、そんな・・・・」

 

ギャスパーが顔を強ばらせていた。

 

こいつにとっちゃ故郷の大事だ。

しかも、そこには恩人がいる。

 

恩人を助けに行くと意気込んでいたところにこれだ。

心中穏やかではないだろう。

 

アリスが先生に訊く。

 

「クーデター、ね。それで、ツェペシュ側はどうなったの?」

 

『カーミラ側の幹部の話では、今回のクーデターでツェペシュのトップが入れ替わったそうだ』

 

『―――――っ!?』

 

全員がその一報に表情を激変させる。

 

トップが入れ替わった!?

 

先生が追加情報をくれる。

 

『現在、ツェペシュの当主、つまり男尊派のツェペシュの大元たる王が首都から退避したとのことだ』

 

「えらく早いわね。クーデターが起きて、そんな短時間でトップが入れ替わるなんて・・・・・。しかも、王が逃げた・・・・」

 

アリスが顎に手を当てて考え込んでいた。

 

確かにそうだ。

あまりに動きが早すぎる。

 

それに王さまが逃げ出すなんて、相当なことが起きた証拠だ。

 

ソーナが言う。

 

「おそらく、聖杯に関与した件で『禍の団』の介入があったのでしょう。ツェペシュは『禍の団』に裏から支配されたと見ても言いと思います」

 

現『禍の団』が滅んだ邪龍を連れている以上、生命の理を司るという聖杯を持つツェペシュと繋がりがある可能性が高い、というのは俺も報告を受けていた。

 

『禍の団』がツェペシュに接触し、聖杯の力を得た。

その力で邪龍を復活させた。

 

そう考えるのが自然だと、各陣営共通の見解だった。

 

『ああ、裏で奴らが手引きしたのは間違いないだろう。カーミラにしろ、ツェペシュにしろ、吸血鬼の連中は他勢力との接触を避けてきた閉鎖的なやつらだった。だからこそ、『禍の団』も付け入る隙を見つけたのだろう。現政権を疎む連中なんざ、どの勢力にも必ず一派はいるもんだ。そいつらを通して、裏からじわじわと浸食したんだろうぜ』

 

「ちょっと待って。過激派の動きに全く気付かなかったわけでもないんでしょう? いくら閉鎖的だからって他に救援を呼ぶこともしなかったの?」

 

アリスがそう言う。

 

まぁ、普通は気づくよな。

全貌までとは言わなくても、一端くらいは掴めていたはずだ。

 

それなら何らかの対処は講じるだろう。

自分達ではどうしようもなかったなら、助けを呼ぶことぐらいする。

 

しかし――――

 

『自分達のことを至高の存在と位置づけ、誇りとやらを重んじた結果だろう。死んでも他に助けを求めたくなかった。または聖杯の存在を意地でも他に漏らしたくなかったってところだろう』

 

それを聞いたアリスは額に手を当てて盛大にため息をつく。

 

「・・・・アホね。国を背負ってる者がその誇りで国を混乱させてどうするのよ。そんなもんより、民を優先させなさいっての! 大体ね、純血の吸血鬼ってのはどいつもこいつも誇り誇り言ってるけど、意味を履き違えているわ。あいつらのはただの錘よ」

 

アリスの吸血鬼への当たりが強いな・・・・・。

どうにも前回の会談から吸血鬼へのイメージは最悪らしい。

 

まぁ、こいつも一国を率いてたもんなぁ。

 

書類関係はニーナに投げてたけど。

 

先生もアリスの意見に苦笑していた。

 

『まぁ、そういうわけだ。俺はカーミラに向かう。ツェペシュの本拠地が気がかりなんでな。リアス達も心配だ』

 

立体映像の先生が俺達を見渡す。

 

『おまえらを召喚することになる。てなわけで直ぐに飛んでこい。リアス達と合流しつつ、ツェペシュ側の動向を探らなければならん。おまえ達の戦力は必要だ。どうにもヤバい連中が絡んでいるようだからな』

 

ま、そうなるよね。

 

ったく、穏便に済んでくれればと願っていたんだけど、どうにも俺達は波乱に巻き込まれる運命のようで。

 

だが――――

 

「リアス達が危ないなら行くしかねぇよな! それにギャスパーの恩人も助けねぇと!」

 

「はいっ! ヴァレリーは僕が助けてみせますぅ!」

 

「違うぜ、ギャスパー。そこは俺達だろ? おまえの恩人だ。俺達も協力するぜ。なぁ、皆!」

 

『もちろん!』

 

全員が合意してくれた。

 

そうさ、こいつが行くって言うなら、俺達も行かなきゃダメだろう?

 

『だが、戦力をこちらに集中させるわけにもいかん。そこは一度襲撃を受けているからな。こちらに来るのはグレモリー眷属とイリナとレイナーレだけでいい。シトリー眷属とグリゼルダ、ジョーカー、鳶雄は町に待機してもらう』

 

「アリスと美羽はどうします?」

 

俺が問うと先生は表情を渋くさせた。

 

『んー・・・・美羽はともかく、そっちの王女さまはなぁ・・・・。こっち着くなり吸血鬼の政権に殴り込みに行きそうで恐いんだが・・・・』

 

「失礼ね! ・・・・・ちょっと刺すだけよ」

 

『アウトだろ! ダメだ不安しかねぇ! 置いてこい! そいつだけは置いてこい!』

 

「うわーん! あのおっさんがいじめるー! 私をのけ者にするー!」

 

アリスが泣きついてくるんだが・・・・・。

 

うん、置いていこうかな。

こいつ、何しでかすか分からないもん。

 

悪魔と吸血鬼の関係を最悪にしそうで恐い。

 

だけど、戦力としては申し分ないんだよなぁ。

 

「え、えーと、アリスの面倒は眷属全員で見るんで、連れて行っていいですかね?」

 

『そこはおまえが見るんじゃないのかよ・・・・?』

 

「後が恐いので・・・・」

 

だって、アリス怒ると恐いんだもん!

丸焦げにされそうなんだもん!

 

俺は美羽とレイヴェルの肩に手を置いて真剣な眼差しで言う。

 

「頼んだぞ。『女王』の暴走は皆で止めような?」

 

「う、うん」

 

「わ、わかりましたわ・・・・」

 

「酷い! 私、今晩泣くからね!? イッセーの横で!」

 

なんで、俺の横限定!?

 

慰めてほしいのか!?

頭撫でてやろうか!

 

こんな俺達のやり取りに先生はため息を吐く。

 

『なんで毎回毎回、こうもシリアスが続かないのかねぇ。・・・・まぁ、いい。とりあえず、神滅具所有者が複数いる以上はそっちとこっちで分散させた方がいいだろう』

 

俺は先生の言い方に引っ掛かった。

 

「もしかして、そっちにも味方の神滅具所有者が?」

 

『ああ、ヴァーリがこちらに潜入している。そっちにジョーカーと刃狗、こっちに二天龍。こんなときにあれだが、豪華すぎてワクワクするぞ』

 

吸血鬼の領域にヴァーリがいるのか・・・・。

 

聖杯か、それとも邪龍に絡んだことか。

いや、両方か?

 

あいつならあり得そうだ。

 

そんな風に思慮していると、ソーナが挙手した。

 

「いい機会です。うちの新人二名も連れていってもらえないでしょうか?」

 

「ベンニーアとルガールさんを?」

 

「ええ、彼らはまだ悪魔としての戦いの経験が不足しています。それに今回の一件、彼らの力は役立つはずです」

 

経験値稼ぎってところか。

 

ベンニーアは死神だけど、ルガールさんの能力は分からないんだよね。

今回はそれが分かるのかな?

 

先生は顎に手をやり、うんうんと頷いた。

 

『確かにな。特にルガールは戦力になりそうだ。送ってくれるなら助かる』

 

「では、連れていってもらいましょう」

 

ルーマニアにベンニーアとルガールさんも参戦か。

中々の面子が行くことになったな。

 

先生が俺達を再度見渡す。

 

『詳しいことは現地で話す。準備ができしだい、こちらに飛んでくれ。カーミラ側に受け入れ用の転移魔法陣を敷く。―――――状況開始だ』

 

『はいっ!』

 

 

 

 

 

 

「ルーマニアって寒いんだよな? カイロも入れとこ」

 

などと言いながら旅行鞄に必要物品を入れていく俺。

あの後、すぐに解散となって各々出立の準備を急ぎで進めていた。

 

しっかし、クーデターと来ましたか・・・・。

本当に俺達って訳のわからんことに巻き込まれるよなぁ。

 

息を吐く俺。

 

すると、部屋のドアがノックされた。

 

入ってきたのは匙だった。

 

「おー、見送りに来てくれたのか?」

 

「まぁな」

 

匙は頷くと椅子に座る。

 

その表情は困惑しているようだった。

 

「・・・・吸血鬼がクーデターとはな。まったく、いろんなことが起こるもんだ」

 

「ああ。リアスがあっちに行っている間にそんなことが起きるなんてな」

 

「ギャスパーくんの秘密を訊こうとしていたんだろう?」

 

「そうだ。リアスからの報告じゃ、ヴラディ家との交渉は上手く続いているようだったんだけどな・・・・」

 

多分、それもクーデターによって中断されているだろう。

通信も出来ないし・・・・・。

 

「そういや、シトリーの方はどうなんだよ? ベンニーアとかルガールさんとか」

 

新メンバーが増えて色々と変化があっただろうし。

 

匙が机に頬杖をつきながら言う。

 

「新しいフォーメーションは定まってきたよ。まぁ、俺達はそれ以上に重要なものが本格スタートしようとしてるけどな」

 

「へぇ、なんだそりゃ?」

 

「会長が出費した学校の建設だよ。今度、正式に着工することになってさ」

 

「学校? あ、レーティングゲームのか。そいつはスゲーな! 確か、上級も下級も関係なく悪魔なら誰でも入れるところだろ?」

 

ソーナは誰でも通えるレーティングゲームの学校を建てることが夢だったもんな。

 

匙はそこの教師になるのが夢だった。

 

「ああ、第一号がようやくな。サイラオーグの旦那の協力もあって予定を早めることができたんだ」

 

サイラオーグさんも協力してたのか。

 

いや、サイラオーグさんだからこそなのかもな。

 

あの人がソーナの夢を聞いて共感しないわけがない。

 

「階級関係なしで募集し始めていてよ、魔力に乏しい子供達も受け入れようってことになってる。もう、親御さん達が子供を連れてきてさ、入学も希望してくれている」

 

匙は嬉しそうにその話をしながらも語気に勢いがなかった。

 

複雑そうに深く息を吐きながら匙は続ける。

 

「冥界の学校の教師になるのが俺の夢なんだけどさ・・・・。いざ、話が現実味を帯びてくると怖くもなってさ。もし、その学校が建ったら、将来ちゃんと教師になれっかなって・・・・。最低でも中級悪魔にならないとあっちで教員の免許が取得できないって言うんだ。俺、まだ下級だしな・・・」

 

「おいおい、下級だのなんだのはこれからどうにでもなるだろ。おまえは中級の実力は十分にあるぜ? 試験受けたら通るって」

 

俺がそう言うと匙は「ありがとよ」と返してくるが・・・・。

 

匙は目を細めて続けた。

 

「それだけじゃないんだ。・・・・俺さ、分からないんだ。子供達に何を教えていいのか・・・・。サイラオーグの旦那は魔力の乏しい子供達に体術を教えるって張り切ってる。俺は・・・何を教えたらいいんだろうな・・・・」

 

悩める匙は自身の手のひらを見つめる。

 

「神滅具所有者達との合同訓練でも俺は・・・・禁手に至れないヘタレだしさ」

 

匙が言うように俺達は合同でデュリオや幾瀬さんとトレーニングをした。

 

使い手であるデュリオと幾瀬さんは噂以上の実力で、俺も苦戦した。

能力の相性が悪いんだろうな。

中々に懐に入らせてくれないもんで・・・・。

 

といっても、本気でやったわけではない。

 

本気を出したら互いに無事に済まないし、何よりトレーニングルームが吹き飛ぶ。

本気でやるなら、ヴァーリとの模擬戦みたいに専用に強固な空間を用意する必要がある。

 

で、匙は俺達に混じってトレーニングに付き合ったものの、禁手には至れていない。

 

「禁手ってのはそう簡単に至れるもんじゃないからな。ただ力をつけるだけじゃダメだ。それは俺が体験したことだから、よく分かる」

 

師匠のところで無茶苦茶な修行をして強くなった俺だが・・・・・修行中に禁手に至ることはなかった。

 

俺が至ったのは戦場で、敵に追い込まれた状態でアリスの胸を押したからだ。

 

そう、禁手に必要なのは―――――

 

「おまえの中でまだ劇的な変化がないんだろうな。まぁ、焦ることはない。今は力を蓄えていけよ。そしたら、いざ禁手に至れたときにはその蓄えたものが一気に爆発するからさ」

 

「・・・・そうだな。悪い、俺どうにも焦っててさ」

 

ったく、こいつらしくもない・・・・。

 

俺は匙に指を突きつけて言ってやった。

 

「いいか? おまえにはおまえの強さがある。思い出せよ、レーティングゲームで木場とやりあった時のことを。あの時のおまえはメチャクチャ強かったじゃねぇか」

 

レーティングゲームの時の匙はただただ、ソーナを勝たせるために突き進んでいた。

実力差のあった木場に涙を使わせるくらいの力を発揮したんだ。

 

俺は匙の胸に拳を当てて、続けた。

 

「難しく考えすぎなんだよ。禁手のことも学校のことも。悩んでいるなら原点に戻ってみろ。おまえは何のために強くなりたい? おまえはなんで子供達に教えたいと思ったのか。それが答えだろ」

 

「―――――っ」

 

俺の言葉に匙が目を見開いた。

 

匙は熱い男だ。

それだけに誰よりも努力して前に進もうとする。

今回はそれが空回りしてるんだ。

 

「一度、頭を冷やして戻ってみるのも悪くないぜ?」

 

「・・・・兵藤、おまえ・・・・やっぱ年上の言うことは違うな」

 

「おうよ。こちとら三年分、おまえらよりも経験積んでるんでな」

 

俺がニッと笑うと匙も苦笑を浮かべる。

 

すると、少し吹っ切れたような表情で匙が言う。

 

「今度、皆と学校を見に来てくれよ! 兵藤達が来る頃にはいい感じに工事も進んでいるだろうからさ」

 

「それは楽しみだ。ああ、皆で行くさ」

 

「だから、リアス先輩を連れて帰ってこい。ギャスパーくんの秘密を探ってさ」

 

「ああ、もちろんだ」

 

必ず全員で行くぜ。

シトリーの夢が詰まった学校にな!

 

 

 

と、なんとなく思ったんだが・・・・

 

 

 

俺は人差し指を上に向けて指すと匙に言った。

 

「――――ソーナのおっぱいをつつけば匙も禁手に至れるんじゃないだろうか」

 

こいつも結構なスケベだからな。

以前、ソーナとできちゃった婚をするのが夢だと語ってたし。

 

もしかしたらと思ったんだが・・・・・。

 

すると、匙は顔を真っ赤にしながら―――――

 

「んなっ!? か、かかかか会長のおっぱいを、お、おおおおお俺がぁぁぁぁぁ!?」

 

直後、匙は噴水のように鼻血を噴き出したのだった。

 

 

 

 

 

兵藤家地下にある巨大魔法陣。

その中央にルーマニア出発組が集結していた。

 

それを見送るのは母さん、ティア、ソーナ、匙、グリゼルダ、黒歌、ルフェイ、ディルムッド、オーフィス。

 

転移先はカーミラの領土。

 

本来は複雑なルートを通って入らなければいけないんだけど、今回は直接あちらの本拠地に転移できるように先方が配慮してくれた。

 

ま、リアス達が出発する時からそうしてくれれば良かったのにと思うが・・・・。

 

でも、今回は緊急の召喚。

吸血鬼側も危機感を持ったからこそ、特例として俺達の本拠地直入りを認めたのだろう。

 

「サジ、それはどうしたのですか?」

 

ソーナが鼻にティッシュを詰めた匙を見て、そう訊く。

 

「い、いえ! こ、転んだだけです! なにも疚しいことは考えてません!」

 

「?」

 

焦りすぎだろ、匙よ。

ま、おまえもいつかはつつけるさ。

男になれ、匙!

 

美羽がディルムッドに言う。

 

「ディルさん、家のことお願いするね」

 

「了解です、マスター。ここは私にとって最高の食事処。死守します」

 

そっかぁ・・・・。

ディルムッドにとって、家は食事処なんだな。

こんなことになるなら、京都の時から餌付けしとけば良かったかも。

 

俺はティアに言う。

 

「ティアもこっちは任せるよ」

 

「それは構わんが・・・・私も行った方がいいのではないか?」

 

「こっちもそれなりに戦力はあるしな。それにヤバくなりそうなら、その時に改めて呼ぶよ。それまでは母さん達を頼む」

 

「分かった」

 

俺は視線を黒歌とルフェイに向ける。

 

「黒歌、ルフェイもこっちのこと頼むぞ」

 

「にゃはは♪ ま、私もこの家だけは死守してあげるにゃん」

 

「あちらでヴァーリさまや兄に会うことがありましたら、よろしくお伝えくださいませ」

 

「了解」

 

頷いた俺は次にオーフィスに視線を移す。

ラッセーを頭に乗せた龍神さま。

 

「イッセー、邪龍はしつこい」

 

・・・・オーフィスはなんとなく俺達が邪龍と遭遇する予感があるのかもしれないな。

 

俺もそんな気はしてるけど。

 

「わかってるよ」

 

今回の一件、『禍の団』が絡んでいる以上、邪龍と戦う可能性も十分ある。

 

邪龍のしぶとさはグレンデルで学習済み。

気を引き閉めないとな。

 

最後に母さんへと視線を移す。

 

「それじゃあ、行ってくるよ」

 

「気を付けるのよ? 皆も無事に帰ってくること。いい?」

 

『はい!』

 

母さんの言葉に皆も応じた。

 

「あ、イッセー。お土産もよろしくね」

 

俺にだけは平常運転だな!

ったく、こんなときにお土産かよ!

ぶれないな、うちの親は!

 

朱乃が転移魔法陣を操作すると、光が強くなり――――弾けた。

 

うーん、お土産何にしよう・・・・・・・。

 

 


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