ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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12話 シトリーニューフェイスの実力!

[木場 side]

 

 

地下への階段を下りていく僕達。

 

ここまで来るのに小さな戦闘は二度だけだったけど、今のところ苦労なくここまで来れた。

 

外からは激しい戦闘の音が聞こえてきて、どんどん苛烈になっているのが分かる。

その攻防戦の流れ弾が飛んできて、城のあちこちを壊していた。

 

「ま、地下には流れ弾は来ないだろう」

 

先生が苦笑しながら言う。

 

実はさっきも、僕達が廊下を進んでいると、窓ガラスを突き破って流れ弾が飛んできたんだよね。

少し危なかったよ。

 

地下への階段をしばらく歩いていくと、最初の階層に出た。

 

開けた空間。

天井の照明で奥まで光が届いていて、意外と部屋の中は明るい。

 

そして、僕達の視線の先には―――――空間の半分を埋め尽くす吸血鬼の兵士達。

全員が鎧を着込み、手には剣や槍といった得物を握っている。

 

赤い瞳を輝かせ、殺気をこちらに放ってくる。

 

百はいるだろう。

 

彼らは元人間の吸血鬼。

その証拠に影もあるし、肌にも生気が感じられる。

 

吸血鬼としての特性は純血の吸血鬼に比べると劣るが、その身体能力は高い。

 

先生が手元に光の槍を作り出して言う。

 

「さて、誰が行く? 結構な数だ。この先に手練れがいると考えると、ここで無駄な体力は使いたくない」

 

「アザゼルは後でお仕事があるのですから、ここで無駄に消耗してもらっては困りますわ」

 

と、朱乃さんが言う。

 

聖杯にたどり着いた際、それを何とか出来るのはアザゼル先生だけだ。

 

神滅具はかなり繊細な物と聞く。

それを扱うとなると、その方向に明るい先生の力が必須。

つまり、ヴァレリーさんを救うためには先生の技術と知識が必要になるということ。

 

「監督は前線を引いた身。こういう集団戦の時は後方で指揮してくれた方が良いと思います」

 

レイナさんもそう言った。

 

アザゼル先生は頼もしいものを見るようにして答える。

 

「それじゃあ、ここは若いもんに任せようか」

 

ゼノヴィアがデュランダルを肩に担ぐ。

 

「私が開幕の合図としてデュランダルのオーラを出したいところだが、それはよした方がいいんだろう?」

 

部長が頷く。

 

「ええ。あれはそう連発出来るものではないのでしょう? なら、邪龍クラスに使うのが妥当だわ」

 

「ゼノヴィア、ちょっとは考えて。テクニックも少しは身につけたと思ったのに、やっぱりパワーなんだから!」

 

イリナもそう続く。

 

それに対してゼノヴィアが首をかしげた。

 

「どうもな、やっぱり木場がいると私は細かいことをしなくて良いように思えてな」

 

いや、その理屈はおかしいよゼノヴィア・・・・・。

 

君も『騎士』なんだからテクニックを全部僕に丸投げしようとするのはやめてくれないかな・・・・。

 

はぁ・・・・。

 

「祐斗先輩、頑張ってください」

 

小猫ちゃんがそう励ましてくれた。

 

ありがとう、小猫ちゃん。

僕、頑張るよ。

 

イリナが僕に謝ってくる。

 

「ごめんなさいね、木場くん。ゼノヴィアは昔からこうなの。人手が足りないときは率先して穴を補おうとするんだけど・・・・人手が足りている時は途端に抜けちゃうの」

 

ああ、そういうことだったんだね。

最初のクールだったイメージが日に日に消えていったのはそういうことなんだね。

 

ゼノヴィアがこめかみをピクピクさせて口を尖らせた。

 

「失敬な! これでも私は日々考えているんだぞ!」

 

なんて説得力のない言葉なんだ!

初対面の時の君ならいざ知らず、今の君からは威厳を感じないよ!

 

美羽さんがゼノヴィアに訊く。

 

「ちなみに、どんなことを考えてるの?」

 

「そうだな・・・・。どうすれば、イッセーと良い子作りができるか、とかだ」

 

やっぱり考えてないじゃないか!

 

部長が額に手を当てて言う。

 

「・・・・この状況どうしましょうかね。各個撃破が良いのかしら? 倒せるにしてもこの数は少し時間がかかりそうね」

 

すると、一歩前に出る二人の影があった。

 

「・・・・問題ない」

 

《ま、ここはあっしらってことで》

 

ルガールさんとベンニーアだった。

 

二人でこの数を相手取ろうと言うのか。

 

僕は二人の戦っているところを見たことがないから、その実力は分からないが・・・・・。

 

そんな風に思っているとベンニーアは手元に自身の身長よりも長い鎌を亜空間から出現させる。

 

《あっしも働かないとこっちに来た意味がなくなりやすからね~》

 

緊張感のない声音で言う彼女は―――――音もなく飛び出していく。

走るというよりは滑るといった感じで、吸血鬼の兵士に斬り込んでいく。

 

《ほらほら死神っ娘のお通りですぜ》

 

軽い口調の彼女は残像を作りながら高速で吸血鬼へと迫る。

その分身の数に彼らも狙いを定められずにいるようだ。

 

数名の兵士が斬りかかるが、分身を切り払うだけで実体にダメージを与えることは出来ていない。

 

・・・・あの残像は魔法でも魔力でもない。

超高速の動きによって出来たものだ。

 

実際に捕まえようとしてもそう容易くはいかない動きだ。

 

《死にやすぜ・・・・あっしの姿を見たら死んじまいやすぜ》

 

ベンニーアが鎌で兵士を切り刻む―――――が、外傷らしきものは見えない。

しかし、鎌で斬られた兵士は例外なくその場で崩れ落ちていく。

 

先生が言う。

 

死神の鎌(デスサイズ)。あれに斬られた者は外傷もなく、魂だけが刈り取られる。魂に与えるダメージ量は持ち主の技量にもよるが・・・・。聖杯で強化された吸血鬼を一太刀で沈めるということは、ベンニーアの実力は相当なものだってことだ。最上級死神の娘ってのは伊達じゃないな」

 

僕達も死神とは戦ったことがある。

冥界で英雄派に襲撃された時、ハーデスから派遣された死神達とね。

 

ベンニーアは少なくともあの死神達よりは上の実力を持っているようだ。

動きも速く、鎌の一太刀が鋭い。

 

更には『騎士』の駒でスピードも底上げされたとなると・・・・・

 

「本人の資質と『騎士』の駒は好相性だ。ゼノヴィア、よく見ておくんだよ」

 

「・・・・それは皮肉か?」

 

ハハハ・・・・。

ゼノヴィアも速いとは思うんだけどね・・・・・。

 

ベンニーアが斬り込んでいるなか、ルガールさんがコートを脱ぎ捨てた。

シャツの上からでも鍛え上げられた肉体が見てとれる。

 

「・・・・・いくぞ」

 

そう、一言呟くと―――――彼の体の節々が脈動し、隆起していった!

 

盛り上がっていく彼の肉体に、衣類が耐えきれず破れていく。

 

ルガールさんの口には鋭い牙が生えそろい、獣のように口が突き出ていく。

爪が鋭利に伸び、全身に灰色の体毛が出現していった。

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオン・・・・・!

 

 

地下室に響き渡る獣の咆哮。

 

そうか、彼の能力・・・・いや、正体は――――――

 

変化したルガールさんが首をコキコキと鳴らす。

 

『俺もシトリーの者としてやらせてもらう』

 

構えるルガールさんを見て、吸血鬼達にどよめきが生まれた。

 

「狼男だと!?」

 

「まさか! 悪魔に転生した狼男がいたというのか!」

 

そう、彼の正体は狼男。

 

彼らがここまで動揺するのも無理はない。

 

吸血鬼と狼男は

古くから争いあっている仲。

つまりは、お互いに天敵同士。

 

自分達の天敵がいきなり現れたとなれば、動揺もするだろう。

 

『吸血鬼を相手にするのは慣れている。容赦はせん』

 

そう言うなり、ルガールさんは高速で飛び出していき、吸血鬼達をその鋭い爪で引き裂いていく!

 

「おのれ!」

 

吸血鬼達が剣や槍で攻撃を仕掛けるが――――ルガールさんの肉体には傷ひとつついていない。

逆に刃が欠けているほどだ。

 

狼男は獣人の中では上位種。

身体能力も肉体強度も高い。

そこに『戦車』の特性が追加され、高い防御力を持ったのだろう。

 

そう考察していると、ベンニーアが鎌を振るいながら言った。

 

《ルガールの兄ちゃんはただの狼男じゃありやせんぜ》

 

見るとルガールさんの両腕に魔法陣が浮かび上がっていた。

 

魔法陣が輝きを見せルガールさんの手元に炎が出現した。

手に炎を纏わせながら、吸血鬼を豪快に殴り付けていく。

 

彼は魔法まで使えるのか!

 

驚く僕達にベンニーアが言う。

 

《高名な魔女と、灰色の毛並みで有名な狼男一族の間に生まれたハイブリッドっつーチートウルフガイですぜ》

 

それは確かにとてつもないね・・・・。

 

「・・・・とんでもない逸材を『戦車』に据えたものよね、ソーナったら」

 

部長もルガールさんの戦闘力に舌を巻いていた。

 

強力な攻撃力に堅牢な肉体。

それに加えて魔法も使えるとは・・・・・。

動きも狼男だけあって、軽やかでスピードもある。

 

いや、ルガールさんに目が行きがちになってしまうが、ベンニーアも相当な実力だ。

ルガールさんが取りこぼした相手を次々に狩っていっているからね。

 

会長は本当に良い人材を手に入れたと思うよ。

 

と、ここで僕達の後方から複数の足音が聞こえてくる。

 

先生が舌打ちした。

 

「ちっ、増援か・・・・。こんなときに面倒だ」

 

「それじゃあ・・・・」

 

美羽さんが後方――――扉の方へと手をかざした。

 

大きな魔法陣が展開したと思うと、次の瞬間―――――

 

『ぐおおおっ!? なんだ、これは!? か、体が・・・・!』

 

そう複数の吸血鬼達の苦悶の声が聞こえてきた。

 

美羽さんがウインクしながら言った。

 

「重力魔法で足を止めさせてもらったよ。といっても、長続きはしないけどね。先のことを考えると力は温存しておきたいし」

 

「よくやった。相変わらず、おまえの魔法は便利なこった。ベンニーア! ルガール! こっちは任せても良いか?」

 

先生が二人に問う。

 

ベンニーアは鎌を振るいながら答える。

 

《もちろんですぜ。そのために派遣された面がありやすからね》

 

『さっさと悪魔としての戦いに慣れろということなのだろう。我が主はスパルタだ』

 

ルガールさんも吸血鬼を引きちぎりながら頷いた。

 

僕達は頷き合い、戦闘の合間をぬって戦場を駆け抜ける。

 

奥にある地下への階段にたどり着いた僕達。

 

部長が振り返りながら、戦う二人に言った。

 

「ここを頼むわ、ベンニーア、ルガール!」

 

ベンニーアとルガールさんは親指を立てて応じてくれた。

 

なんて頼もしい二人なんだ。

 

僕達はシトリーの新人にこの場を任せて、次の階層へと向かった。

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 

 

 

ティアをこちらに召喚し、町を駆ける俺とアリス、ティア。

 

そして――――――

 

「・・・・・」

 

顔を真っ赤にしながら涙目で俺を見てくるエルメンヒルデ。

 

そ、そんなに睨まれても・・・・・。

まさか、上から降ってくるなんて思わなかったし・・・・。

 

「え、えっと・・・・その・・・・ゴメンな?」

 

「・・・・・」

 

一応、謝ってはみるが無言のままだ。

 

何かを言うどころか、更に睨んできたんだけど・・・・。

 

お、俺、悪くないよね?

だって、降ってきたのはエルメンヒルデだし・・・・。

 

いや、これを言うのは止めておこう。

彼女もある意味、被害者だし。

 

話を聞けば、ベンニーアが彼女を転移させたらしいしな。

後で、ベンニーアはお説教だ。

 

俺は苦笑しながら言う。

 

「その、なんだ・・・・可愛いよな、クマさん」

 

「~~~~っ!」

 

あ、ヤベ・・・・地雷踏んだ。

 

俺の隣を走っていたアリスが吹き出した。

 

「プークスクス! クマさんって! あんた、随分可愛いの履いてるのね!」

 

おおーい!

それを今、言ってやるなよ!

 

エルメンヒルデも顔を真っ赤にしながら叫ぶ。

 

「い、いいじゃないですか! わ、私がどんな下着を身に付けようと勝手でしょう!?」

 

「別に悪いなんて言ってないわよ。ただ・・・あんな上から目線の発言する割りには、お子さまパンツ・・・クスクスクス」

 

「こ、このぉ・・・・! わ、笑わないでください!」

 

おおっ、エルメンヒルデがキレた。

なんというか、この場面にきて随分年頃の女の子らしくなったな。

 

あの上から目線の高慢な振る舞いをしていた彼女はどこへやらだ。

 

こっちの彼女の方が可愛いと思えるけどね。

 

まぁ、俺は良いと思うよ、クマさん。

 

あと、色々ごちそうさまでした。

まだ顔に感触が残ってます。

 

「せ、赤龍帝! さ、先程のことは忘れなさい! いいですね!?」

 

わ、忘れろと言われましても・・・・それは無理かな。

あのクマさんはしっかり目に焼き付いてます。

 

アリスが嘆息しながら言う。

 

「あー、これにそんなこと言っても無駄無駄。今も走りながら、あんたの太ももの感触でも思い出してるわよ」

 

うっ、鋭い!

 

た、確かにエルメンヒルデの太ももはひんやりしてて、スベスベでした!

ありがとうございます!

 

「ま、そういうこと。イッセーの上に落ちてきたのが運の尽きよ」

 

「何その言い方!?」

 

ひでぇ!

 

確かにエルメンヒルデとしてはショックだったと思うけど!

そこまで言わなくていいじゃん!

 

『うーん・・・・・』

 

俺がアリスにツッコミを入れていると、俺の中でイグニスが何やら悩んでいた。

さっきからずっと真剣に考え込んでいるんだ。

 

珍しいな、イグニスが頭を悩ませるなんて。

 

やっぱりアセムのことが気になるのか?

 

『それもあるんだけど、それよりも深刻な問題よ』

 

深刻な問題?

 

何かあったのか?

 

『ええ。どうしよう・・・・イッセーの属性が増えてしまうわ』

 

は?

 

『考えてみなさい。シスコン、おっぱい、ケモミミ好き、鬼畜、それに加えてラッキースケベまで・・・・。今後、他の属性も増えたら・・・・キャラが定まらなくなるわ』

 

そんなことで悩んでたの!?

 

なんだよ、キャラが定まらなくなるって!

 

つーか、鬼畜にしたの、おまえ!

あの鬼畜化プロジェクトのせいだろ!

 

しかし、イグニスは続ける。

 

『ラッキースケベは前々からあったけど・・・・今回はまさかの顔面騎乗。これは私も予想外だったわ。イッセー、あなたにはラッキースケベの才能があるわ』

 

ラッキースケベの才能ってなんだ!?

それって才能なの!?

 

『決めたわ! 日本に帰ったら、ラッキースケベの修行よ! もう、この際ありとあらゆる属性を身に付けましょう! それがハーレム王へと繋がるわ!』

 

すいません、ラッキースケベの修行なんて聞いたことがないです!

 

そもそも、それってラッキーじゃなくなるじゃん!

ほとんどわざとじゃねぇか!

 

ええい、どこまでもマイペースな駄女神め!

 

「おまえ達はぶれないな・・・・。いや、分かってはいるが」

 

ティアがやれやれと息を吐く。

 

ゴメンね!

シリアスに入れなくてゴメンね!

 

「クーマーさーんーパーンーツー♪」

 

「どこまで言うんですか!」

 

アリスのやつ、ここぞとばかりにエルメンヒルデを弄ってる!

 

その辺にしとこうよ!

 

いいじゃん、クマさんパンツ!

貴族の女の子がクマさんって意外な組合せだけど、可愛いじゃん!

 

「エルメンヒルデ! 俺はクマさんパンツはアリだと思うぞ!」

 

「そんな大きな声で言わないでください! もおー! 泣きますよ!? 私、泣いちゃいますよ!?」

 

エルメンヒルデが手で顔を覆いながら叫んだ!

 

ティアが俺とアリスを嗜めるように言う。

 

「アリス、どんな下着を履こうと人の勝手だ。イッセー、そんなに大きな声で女子の下着について語るものではないぞ」

 

「「ご、ごめんなさい・・・・」」

 

全くもってその通りだよ。

 

こんな公然の場でクマさんだのパンツだのを大声で言うもんじゃないよね。

 

俺がうんうんと頷いているとティアは人差し指を立てて真顔でこう言った。

 

「ちなみに私はノーパンだ」

 

「「「えええええええええええっ!?」」」

 

重なる俺とアリス、エルメンヒルデの驚愕の声!

 

マジでか!?

ティア、履いてないの!?

ノーパンなの!?

 

そんな衝撃のカミングアウトをこんな状況でしてくるとは!

 

嘘だと言ってよ、バーニィ!

 

「冗談だ」

 

「冗談かよ!」

 

「なんてな」

 

「え!? どっち!? 履いてるの!? 履いてないの!?」

 

「ふっ・・・・」

 

いや、そんなクールに笑われても困ります!

 

とりあえず、そこだけはハッキリさせてよ!

 

履いてるんだよね? ね!?

 

つーか、ティアもふざけ始めたよ!

唯一の良心が!

 

あー、もう!

ここは俺が話を変えるしかない!

 

「エルメンヒルデ! とりあえず、城への近道はあるか? 美羽から地下へ向かうって知らせがあったんだけど」

 

「それでしたら、この近くに城へ続く隠し通路があります。それを使えば追い付けるでしょう」

 

「了解だ! 案内を頼む!」

 

俺達は戦場と化した町を駆けていった。


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