一日一話のペースは無理なので・・・・・早くて一週間に一話のペースかな?
[木場 side]
下の階層に辿り着く直前に、その気配を捉えることが出来た。
重々しい邪悪なオーラの波動。
部長や他の皆も察知したようで、一様に表情を厳しくさせていた。
僕達が三つ目の階層の扉を開くと、その者はいた。
『グハハハハハッ! この間ぶりだなぁ、おまえら!』
黒い鱗に銀色の双眸を持つ巨大なドラゴン!
ゼノヴィアが叫ぶ。
「グレンデル・・・ッ!」
僕はその一言に眼を細めた。
あれがイッセーくん達が戦ったという伝説の邪龍・・・・!
天武の攻撃を受けてもなお立ち上がったというドラゴン・・・・!
『そうだぜぇ! おまえらをぶっ殺したくてたまんねぇ、グレンデルさまだぜぇぇっ!』
くっ・・・・強烈な悪意の波動を放ってくれる!
明らかに龍王かそれ以上のオーラだ!
グレンデルは僕達を順に見渡した後、首を傾げた。
『んだぁ? なんだよなんだよ! ドライグがいねぇじゃねぇかよぉ!』
ドライグ・・・・ここではイッセーくんのことを言っているのだろうけど・・・・。
美羽さんが呟く。
「あのドラゴン・・・・お兄ちゃんにすごい執着してたからね。自分と真正面から戦えるのお兄ちゃんだけだったし」
「でも、残念ながらイッセーはここにいないわ。ここは私達だけで何とかしなければいけないわね」
部長も魔力を高めながら、グレンデルに鋭い視線をぶつける。
こんなところで足止めを食らうわけにはいかない。
僕があれを使えば・・・・
「祐斗、まだ
「わかっています。後のことを考えると・・・ですね?」
僕の返しに部長は頷く。
この後に控えているだろうクロウ・クルワッハやリゼヴィム・リヴァン・ルシファー。
イッセーくんがいるとはいえ、目の前の邪龍か、それ以上の者がこの先には待ち受けている。
僕は会得してからの日が浅いこともあり、一度なってしまうと、その後の消耗が凄まじい。
ここで使ってしまえば、僕は後で確実に足手まといになってしまう。
この場で使うのは得策じゃない。
かといって、目の前の邪龍は手を抜いて良いような敵でもない。
ここはチームで挑むべきだろうね。
僕は聖魔剣を聖剣に変えて前に飛び出す。
もう一つの禁手により龍騎士を複数体造り出した後、龍騎士達にはジークフリートから得た魔剣群を持たせた。
そして、僕の手には聖剣ともう一振りの剣。
魔剣の王にして凶悪な龍殺しを持つ魔帝剣グラム。
話では龍殺しの耐性を持っているかもしれないとのことだったけど、グラムならどうだろうか?
僕を追うようにゼノヴィアとイリナも駆けつけてた。
三人による同時攻撃!
「はぁぁぁぁぁ!」
「とりゃぁぁぁぁぁっ!」
ゼノヴィアとイリナがデュランダルと量産型聖魔剣を勢いよく振るうが―――――
『軽いな!』
グレンデルの体にはかすり傷程度のダメージしか与えられていない!
デュランダルの斬れ味でもこの程度なのか!
「デュランダルの大きなオーラでなければ・・・・!」
自身の攻撃が通らなかったことに、ゼノヴィアは歯噛みしていた。
「はぁぁっ!」
イリナが空中で天使の翼を広げて、手元に強大な光を生み出す。
それを、グレンデル目掛けて放つが―――――
『グハハハハハ! なんだよ、こりゃ! 効かねぇな!』
ほとんどノーダメージに近い状態だった。
今のはかなりの光力が籠められていたはずだが・・・・。
デュランダルでも、量産型聖魔剣でも、光力でもダメ。
ならば――――
「グラムならどうだい!」
グラムの刀身に魔の波動を纏わせ、グレンデルに斬りかかる!
龍騎士達も僕に続いて魔剣を振るっていく!
龍騎士達の魔剣がグレンデルの腹を切り刻み、正面からグラムで大きく斬りつけた。
並の相手ならこれだけで、オーバーキルだろう。
しかし・・・・グレンデルには小さな傷が数ヵ所に渡って出来ただけだった。
傷口からは青い血が流れてはいるが・・・・・。
僕が使いこなせていないとはいえ、龍殺しのグラムでこの程度とはね・・・・・。
「ちっ・・・・どうやら相当な強化がされているらしいな」
先生が手元に光の槍を出現させながら、舌打ちしていた。
「なら、これならどうかな?」
美羽さんが手元に幾重にも魔法陣を展開。
掌に七色の光が集まっていき、この空間を目映く照らしていく。
あれは確か、ゲオルクの疑似空間から脱出する時に見せてくれた―――――
「貫通力ならお兄ちゃんにも負けないよ! スター・ダスト・ブレイカー!」
放たれる七色の閃光!
規模こそは大きくないものの、かなりの力が濃縮されているようだ!
美羽さんが放った閃光は僕とゼノヴィアの間を抜けて、グレンデルに直撃した。
直撃した部位が弾け、青い血が吹き出る。
現段階では一番ダメージを与えられただろう。
・・・しかし、グレンデルは嫌な笑みを浮かべていた。
『グハハハハハ! 痛ぇな! やるじゃねぇか、小娘がよぉ!』
「・・・・本当なら体を突き抜けているはずなんだけど・・・・。もしかして、前回よりも防御力が上がってる・・・・?」
「魔法に対する耐性が付与されているのかもしれませんね。それも異常なほどの強化がされているのでしょう」
美羽さんが眉を潜め、ロスヴァイセさんがそう考察する。
龍殺しの耐性に魔法への耐性。
『禍の団』は聖杯を使ってどれほどの強化を施したと言うんだ・・・・?
『どうしたどうした! なに休んでんだよ! もっとこいや! そんなもんじゃ、俺の相手にならねぇよ!』
確かに今のままではこの邪龍は倒せない。
あの異常なまでの防御力にこちらの攻撃が通らないのだから。
さっき、部長にはああ言ったけど、ここで時間をかけるわけにはいかない。
やはり、ここは――――――
と、僕が覚悟を決めたところで、部長が口を開いた。
「ひとつだけ、あのドラゴンに致命傷を与えられる技があるわ」
部長の言葉に朱乃さんが反応した。
「リアス、あれを使うつもりなのね」
「ええ、朱乃。あれしかないと思うわ。けれど、あれを使うには時間が必要なの。魔力を練るだけの時間が稼げれば勝てる見込みは増すわ」
少し前に部長に見せてもらったことがある。
それは明らかに強大で強烈な威力を含んだ滅びの力。
レーティングゲームでは使用禁止になるレベルの圧倒的な滅びの力だった。
命中すれば、防御なんて無視で致命傷を与えられるだろう。
美羽さんが頷く。
「ボク達の役目は時間を稼ぐこと、だね?」
「そうね。お願いできるかしら?」
「もちろんだよ」
応じる美羽さん。
僕もそれに続く。
「ええ、時間稼ぎぐらいならいくらでも」
「うん、部長に秘策があるのなら、それに任せるべきだ。ここで無駄な消耗は避けたいからね」
「やりましょうよ、リアスさん!」
ゼノヴィアとイリナも声を揃えてくれた。
「私は前衛の援護で」
「では、私も」
「ボク達は後衛組だからね」
「うふふ、私もいきますわ」
「私も参りますわ」
レイナさんとロスヴァイセさん、美羽さん、朱乃さん、レイヴェルさんが後衛で僕達の援護。
これほど心強い後衛もそういない。
「では、皆。お願いするわ」
部長はそう言うと、足下に魔法陣を展開させて、自身の魔力を練り始めた。
同時に部長の頭上に滅びの魔力が集中していく。
この段階でも凶悪な力を放っているのに、これが更に高められるのか。
とにかく、僕達の役目はアレが完成するまで時間を稼ぐことだ。
「アーシア、ギャスパー、小猫を守る結界障壁も作ったことだし、俺も参戦すっかな」
先生も上着を脱いで僕達の横に並んだ。
全員が揃ったところで、僕達前衛組は飛び出していく!
ゼノヴィアとイリナのコンビが左右から攻め、僕は死角を突いて斬りかかる!
隙を見て美羽さん達後衛メンバーが次々と魔法、光、雷光、炎を放っていく。
『おもしれぇぇぇぇ! どんどんこいっ! どんどんよぉぉぉぉぉっ!』
グレンデルは僕達のチーム攻撃を嬉々として受け入れて、巨体からは想像できないほどの軽やかな体捌きで迎撃に出てくる!
後衛からの攻撃は防がず、そのまま受けながら、僕達に巨大な拳を繰り出してくる。
一撃一撃の威力が高い。
僕は足下を狙って斬りかかるが、グレンデルは軽く上に飛んで、これを回避。
そこから僕目掛けて火炎を吐き出した!
「くっ!」
僕はグラムで火炎を斬り裂くと、宙に七つの聖魔剣を作り出した。
手をグレンデルに突き出し、号令を出す。
「いけっ!」
僕の指示に従い、七つの聖魔剣は高速でグレンデルに迫り、その身を斬り刻んでいく。
正直、これでグレンデルの体につけられるのは本当にかすり傷程度。
グレンデルはこんなものはものともしないだろう。
だけど、グレンデルの目を攪乱することは出来る!
「ゼノヴィア!」
「ああ! 分かっている!」
僕とゼノヴィアはグラムとデュランダルを構え、床を蹴る!
『おらおらぁ! 潰してやるぜぇぇぇぇ!』
グレンデルの尾が横凪ぎに僕達に迫る・・・・が、それは僕達に当たることはなかった。
見れば、グレンデルの尾は魔法陣によって動きを抑えられていた。
「攻撃は通らなくても、動きは封じれるからね。ロスヴァイセさん!」
「はい!」
ロスヴァイセさんが魔法陣を展開させて、そこから装飾が施された銃が出現する。
あれはリーシャさんから譲り受けたという、魔装銃!
銃口に魔法陣が幾重にも展開され、光が収束されていく。
ロスヴァイセさんがトリガーを引くと極太のレーザーが放たれた!
レーザーはゼノヴィアに繰り出されていた、拳に命中。
その軌道を大きくズラすことに成功した。
「ダメージを与えられなくても、弾くことは出来ます。木場くん達への攻撃は私が弾いてみせましょう」
ロスヴァイセさんはそう言うと次弾を装填し始める。
ロスヴァイセさんのレーザー攻撃に体勢を僅かに崩したグレンデル。
「はぁぁぁぁぁっ!」
そこにゼノヴィアが大きく振りかぶったデュランダルを振り下ろす!
刀身には濃密な聖なるオーラが纏わせられている!
グレンデルの肩口に大きな斬り傷が生まれた!
僕は背後に回り、ゼノヴィアと同じく魔のオーラをこれでもかと言うぐらいに纏わせ、横凪ぎに斬りつける!
裂けるグレンデルの背中。
傷口から青い血が流れ、石の床を染めた。
『痛ぇな! 痛ぇよ、おまえら!』
だが、これでは倒れない。
それは分かっている。
このドラゴンの鱗は恐ろしく硬い。
その上にこのしぶとさ。
いくら斬りつけようとも、倒れない。
そんな風にも思えてしまう。
ならば――――――
僕は宙に浮かぶ聖魔剣を操り、今の攻撃で生じた傷に突き刺していく。
傷口に深々と突き刺さる七つの剣。
そこに―――――――
「どいてちょうだい!」
朱乃さんの声が響き、僕達はグレンデルから距離を取る。
グレンデルに龍の形をした雷光が三匹飛んでいき、その全身に巻き付いていった!
『グガガガガガガガガガガガッ!!』
痺れるグレンデル。
傷に突き刺さった聖魔剣を通して、体の内側にも雷光が流れていき、外と内の両方から邪龍の体を感電、その身を焦がしていく!
雷光が止んだ後、グレンデルは大きな口から煙を吐き出した。
いくら外側が硬くても内側はそうはいかない。
そして、ここから!
「いこうか、ゼノヴィア!」
「ああ、こういう時の破壊力だからな!」
魔帝剣グラムとエクス・デュランダルの刀身から絶大なオーラを放つ!
伝説の剣二本から放たれた聖と魔の極大の波動は感電中の邪龍を包み込んでいった!
『グオオオオオオオオオオオオオッ!!』
悲鳴をあげるグレンデル!
グラムとエクス・デュランダルの特大の砲撃だ。
ただの強者なら、ここまでの攻撃を受けて立っていることは難しいだろう。
だけど、目の前の邪龍はそうではない。
今の攻撃がどこまで効いているか・・・・・。
僕とゼノヴィアの砲撃が止み、そこにあったのは―――――全身から煙をあげ、血を吹き出すグレンデルの姿。
そして―――――
ズンッという重々しい音を立てて、グレンデルが床に膝を落とした!
効いている。
今までの僕達の重ねに重ねた攻撃がグレンデルに膝をつかせたんだ。
しかし、グレンデルは口元を不気味に歪ませた。
『・・・・いいじゃねぇか! 楽しいぜ! ああ、クソみてぇに楽しいなぁぁぁぁぁああああ! グハハハハハハハハッ!!』
全身傷だらけになり、焦げ付かせながらもグレンデルは笑って立ち上がってくる!
この光景に僕達は絶句する。
「・・・・このダメージで立つっていうの・・・!?」
「・・・・心底楽しそうだ。死をも笑って受け入れるというのか・・・!」
「・・・・戦いを忌避すべきだと言われるわけですわ」
イリナ、ゼノヴィア、朱乃さんもグレンデルの異常なまでの戦闘意識に顔を強ばらせていた。
この邪龍は死ぬことすら楽しんでいる!
「んじゃ、こいつも喰らっとけ」
先生が特大サイズの光の槍を作り出して、グレンデル目掛けて投げつける!
『おほっ! こいやぁぁぁぁ!』
真っ正面から迎え撃つグレンデルだが・・・・光の槍は直撃する寸前に四散して、無数の細かい矢となって襲いかかる!
グレンデルの腹部に数えきれないほどの光の矢が突き刺さった!
形状変化する光の槍。
流石はグリゴリの元総督というべきだろう。
「レイヴェルさん、ボクに合わせて」
「分かりましたわ」
美羽さんが魔法陣を前面に展開、レイヴェルさんが炎の翼を広げる。
すると、レイヴェルさんの炎が美羽さんの魔法陣と混ざり――――――
魔法陣から特大の炎の渦が放たれる!
美羽さんの風の魔法とレイヴェルさんの炎を組み合わせた技!
薄暗い空間を真っ赤な炎が照らし、熱気を生む。
炎の竜巻は石の壁を焦がしながら、傷だらけのグレンデルを呑み込んでいった。
暴風と火炎が収まり、目を開けるとグレンデルは壁に叩きつけられていた。
鱗も焦げて、炭化している箇所も見られる。
フェニックスの炎はドラゴンの鱗にすら傷をつける。
それが魔法と組合わさり、強化されるとこれほどの威力と熱量を発揮するのか。
イッセーくん、赤龍帝眷属の『僧侶』は『王』と『女王』が不在の時も良い活躍を見せてくれているよ。
美羽さんもだけど、レイヴェルさんもね。
~そのころの赤龍帝眷属『王』&『女王』~
「ねぇ、イッセー」
「ん?」
「残念なお知らせがあるの」
「なんだよ?」
「・・・・・迷ったわ」
「・・・・・マジ?」
「・・・・・マジ」
赤龍帝眷属『王』と『女王』は地下通路で迷子になっていた。
~そのころの赤龍帝眷属『王』&『女王』、終~
『熱いじゃねぇか! これだよ、これ! こういう一撃をもっと撃ってきやがれぇぇぇぇっ!』
っ!
体を焼かれて、まだ向かってくるか!
グレンデルは体を起こすとこちらに向かって火炎を放ってくる!
それも複数!
僕達は火炎を斬り裂く、または横に跳んで避けるなどをして回避するが、その隙にグレンデルがこちらへと迫っていた!
なんというスピードだ!
これだけの傷を負って、これほどの動きを見せるとは!
僕達はそこから更にグレンデルと激しい攻防戦を繰り広げていく。
こちらの攻撃はことごとく、相手に当たる。
誰かが傷を負えば後方からアーシアさんが回復のオーラを送ってくれる。
普通ならもう倒していてもおかしくない。
・・・・それなのに、一向に終わりが見えない。
傷は確実に負わせているのに・・・・!
『焼けちまいなぁぁぁぁぁ!』
グレンデルが今までよりも大きな火炎を吐き出した!
かなり広範囲だ!
この狭い空間では・・・・・!
「四壁封陣・小型バージョン!!」
美羽さんがそう叫ぶと、グレンデルを四方から囲むようにクリアーブルーの障壁が作られる。
そして、その障壁はグレンデルの火炎を防ぎきり、グレンデルは自ら放った火炎に焼かれていく。
しかし、それでもグレンデルの火炎は強力なようで、障壁を維持する美羽さんの頬に汗が流れていた。
『ちぃっ! 面倒な魔法を使いやがる!』
グレンデルは火炎を吐くのを止め、障壁を殴り付けた。
フルスイングからの一撃はあまりに強力で、美羽さんの障壁にヒビを入れる。
「くぅっ・・・・! これ以上は暴れさせない! キミにはそこで大人しくしてもらうよ!」
美羽さんは右手を横に伸ばすと、そこに新しく魔法陣を展開。
魔法陣に描かれる魔術文字らしきものが高速で動いていく。
「あれは・・・・こちらの魔術文字とは違いますね。あちらの世界の術式でしょうか」
ロスヴァイセさんがそう漏らす。
アスト・アーデの魔法――――――
魔法陣が完成し、美羽さんが右手を天にかざす。
「今のボクでどれだけ使えるか分からないけど・・・・!」
すると、グレンデルの頭上に美羽さんが右手に先程展開したものと同じ紋様の魔法陣が展開される。
そこから、何かが複数飛び出してきて、グレンデルに降りかかる。
あれは・・・・鳥居のようにも見えるけど・・・・。
その鳥居のようなものが、グレンデルの尾、足、腕、胴、首と次々に降っていき、その巨体を床に縫い付けた。
『・・・・ッ! んだっ、こいつは・・・・! 体が動かねぇ・・・・ッ!!』
「はぁ・・・はぁ・・・・。それはキミと再戦することを考えて、練習しておいた魔法だよ。倒すことは出来なくても、動きを封じることができれば・・・・。そのスピードを抑えるだけでも、かなり違うからね」
邪龍を想定した魔法・・・・というよりは確実に相手の動きを封じるための魔法なのだろう。
ただ、相当な力を使うのか、かなり疲労してしまっているようだ。
これはチャンスだ。
動きを完全に封じられている間に決定的なダメージを与えることが出来れば―――――
「―――――ありがとう。もう大丈夫よ。ものは出来上がったわ」
部長の声が届いた。
振り返ると――――――そこには強大な滅びの球体を生み出した部長の姿。
離れているのに感じるこの悪寒。
あれに触れれば、跡形もなく消し飛んでしまう。
見ただけでその危険性が伝わってくる。
部長は滅びの球体と共にこちらに移動しながら嘆息する。
「私の攻撃が効かない相手が多くて嫌になるわ。けれど、いつまでも眷属や後輩に格好悪いところを見せてはいられないものね。―――――だから、私も作ってみたの。必殺技っていうのをね」
「皆、離れて! リアスの後ろに下がりなさい!」
朱乃さんの一声に皆がグレンデルから一斉に離れた!
魔法を維持しているせいで動けない美羽さんを先生が抱え、全員が部長の背後にまで後退する。
「さぁ、いくわよグレンデル。―――――消し飛びなさい!」
部長が強大な滅びの魔力を前方に放った!
ゆっくりと前に進む球体。
宙を移動するだけで、床まで削りきるほどの威力を持っているが、遅い。
容易に避けられるレベルだ。
滅びの球体がグレンデルの近くに辿り着くと、部長が美羽さんに言う。
「美羽、もう魔法を解除してもいいわ」
「え? でも・・・・」
「大丈夫。あれから逃れることは出来ないから」
美羽さんは怪訝な表情を浮かべるが、部長の指示通りに魔法を解除。
押さえ付けられていたグレンデルが解放される。
『あっ? どういうつもりだよ?』
グレンデルも間の抜けた声を出すが・・・・・。
注意深く見ると、球体は徐々に内部で紅と黒の魔力のオーラを渦巻かせていくのが分かった。
そして―――――グレンデルの巨体が球体に引き寄せられていた。
グレンデルもそれに気づき、抵抗するが、無駄だった。
巨体がどんどん引き寄せられていき、ついには宙に浮いてしまう。
『ぐおっ!? なんつー吸引力だ!』
次第にグレンデルと球体が接触し始める。
グレンデルの鱗が球体に触れた瞬間―――――弾けた!
『グオオオオオオオオオオオオオッ!!』
絶叫をあげる邪龍!
あのグレンデルの体が滅び球体によって崩されていく!
部長が紅色の髪を払って言った。
「―――――『
巨大な滅びの球体が輝きを増していき、邪龍を包み込んでいった―――――――。
[木場 side out]