「
…………なんだ?
意識がぼんやりとする中、声が聞こえてきた。
早朝。
時計を見たわけでもないのに分かるのは普段からの習慣で、体内時計が割りと正確になっているからだ。
昨日はあれから美羽とおしゃべりして、早々に眠ることに。
子供達に授業をするという慣れないことをしたせいか、少し疲れてたんだよね。
美羽も用意された部屋には戻らず、俺と寝ることになった。
まぁ、それは置いておこう。
今気になるのは手に伝わるむにゅんとした、とてつもなく柔らかな感触と…………口の中にあるほのかに甘いもの。
それを飲むと不思議と体の底から力が沸いてくる。
―――――もっと欲しい。
そう思うと同時にぼんやりしていた意識も少しずつ覚醒してきて―――――
「あぁんっ…………ダメよ、イッセー………そんなに激しく………んんっ」
聞こえてくる甘い吐息。
視界に入るのは大きな二つの丸いものと、紅髪。
俺が手を、口を動かす度に紅髪の女性のからだはビクンと跳ねて―――――
「り、りりりリアスゥゥゥゥゥゥっ!? ちょ、なんでここに!? つーか、俺…………」
リアスのおっぱい吸っちゃってたぁぁぁぁぁぁ!?
おいおいおいおい!
朝から寝ぼけて何してんの、俺!?
ここ、ソーナの夢がかかった学校の寮だよ!?
子供達の未来を作る場所だよ!?
慌てて俺は口を離して起き上がる!
どれだけ吸っていたのだろう…………リアスのお体がもうすんごいビクンビクンしてる…………。
半分脱げた薄いネグリジェと、リアスの呼吸に合わせてぶるんと揺れるおっぱい。
先っちょは俺の唾液で濡れていて…………。
リアスはそれを指先で拭いながら微笑む。
「もう、イッセーったらあんなに夢中になって…………。赤ちゃんみたいだったわよ? そんなに美味しかったの?」
うぅっ…………寝ぼけてたとは言え、これは恥ずかしい。
いや、美羽のも寝ぼけて何度か吸ってたりするけど…………。
あと思ったんだけど、
「リアスも出るんだ…………」
「私も今知ったのよ。これでアリスさんに少しは追い付いたかしら?」
あー、なるほど。
スイッチ姫だから、出るようになったと。
ということは、アリス同様に俺限定で出るのかな?
アリスの場合は空腹が回復したけど、リアスの場合はオーラが回復するって感じなのかな?
体の内側から力が沸いてくるような感覚だ。
ついにリアスもスイッチ姫としてこのステージに来たということか…………。
うーむ、俺は朝からリアスの一番搾りをいただくことになろうとは!
俺は一度息を吐いた後、根本的なところを訊いてみた。
「いつここに?」
昨日、寝るときまではリアスはいなかった。
ということは俺と美羽が眠っている時にベッドに潜り込んだことになる。
「昨日の夜、ゼノヴィアとイリナがアーシアを連れて男子寮に入り込んでいたのよ。偶々、それを見つけた私と朱乃、レイヴェルがそれを追跡したら、この部屋に入り込もうとしていたから声をかけたの。どうやら、イッセーの寝込みを襲うつもりだったらしいわ」
あいつら俺の寝込みを狙ってきてたの!?
それはそれで嬉しいが、あいつらのその手の襲来はろくなことにならないんだよなぁ。
つーか、鬼畜モードが自動で炸裂してもしらないぞ!?
イリナなんて堕天しちゃうぞ!?
それでもいいのか!?
「それで私達はじゃんけんをしたのよ。――――勝った者がイッセーと寝ると。そして私は勝利したわ。あの時、チョキを出した自分を誉めてあげたいくらいよ」
リアスは誇らしげに語った。
んー…………なぜ、じゃんけんになったのか分からないけど、それでリアスがここで寝ていたのね。
そっかそっかと頷いていると途端にリアスが俺の首に手を回して抱きついてきた。
リアスのおっぱいが…………!
むにゅうって…………むにゅうってしてる!
流石はリアス!
この感触はたまらん!
朝からもう色々と元気になってます!
「ど、どうしたの?」
そんな興奮を理性を総動員して抑えながら尋ねてみるが、リアスは無言のままだった。
それから少しすると、リアスは離れていく。
「イッセー成分の補給よ。適度にイッセーに甘えないと生きていけないのよ」
ニッコリと微笑みながそう言うリアス。
…………以前も思ったんだけど、イッセー成分って何なんだろう?
まぁ、俺もリアス成分を吸収できたような気がするけど。
リアスはネグリジェを直すとベッドから降りる。
「今日も午前中から授業があるのだけれど、昨日よりも参加者が増えるようなの。イッセーもよろしく頼むわね」
「了解だ。今日は気についての話でもしてみようかな?」
「ふふふ、張り切ってるみたいね。私もソーナから頼まれているから頑張るわ」
そう言うとリアスは俺の頬にキスをしてから、部屋を後にした。
うん、今日も一日頑張れそうだ!
▽
朝食後、朝のミーティング前に俺はアーシア、匙とあることについて話していた。
「それじゃあ、ファーブニルもアルビオンのところに行ってるのか」
「はい、なんでも歴代の白龍皇さん達の残留思念を説得するのに苦戦しているそうでして、ドライグさんとアルビオンさんが呼んでいるから意識を飛ばして行ってくると昨夜ファーブニルさんが夢に出てきたんです」
匙もアーシアに続く。
「俺も夢にヴリトラが出てきてさ、二天龍から珍しく助成を頼まれたとか言って、あっちに行ってな。朝起きてから呼び掛けてもでてこないから、マジなんだなーって。神器はいつも通り使えるけど、ヴリトラがいないと制御で困る面もあるんだわ」
匙も大分と神器を扱えるようになってきてるけど、それでもヴリトラがいないと細かい制御は難しいらしい。
俺は息を吐いて、頭を下げた。
「なんか、すまん…………」
「気にすんなって。兵藤にも修業を見てもらったりしてるからな。それに子供達の前で実演するぐらいなら、ヴリトラの助けがなくても十分使える。こっちで何か起きたら帰ってくるだろ」
そう言ってもらえると助かる。
でも、匙の言う通りこちらで何か起こらない限りは大丈夫だろう。
それまでにドライグ達が何とかしてくれると良いんだが…………。
「最終手段は私ね」
実体化したイグニスが後ろから抱きつきながら言ってくる。
…………なんでそんなワクワクした顔してるの?
まさかと思うが、歴代の白龍皇相手にSMプレイするんじゃあるまいな?
そんなこと断じて許しませんよ、俺は。
『教官んんんんんっ! そろそろぶってくださいぃぃぃぃぃ!』
『踏んでください!』
『罵ってください!』
…………歴代の白龍皇達までこんなことになると思うと…………!
ヴァーリにツッコミが出来るとは思えないし。
つーか、ツッコミを入れるヴァーリとか想像できん。
「とりあえず、おまえは歴代の先輩達を黙らせてくれない? もう鞭でもロウソクでもいいから」
「いや、まだ早いわね。もう少し焦らすわ」
「焦らしプレイしてんのか!?」
あー…………もう疲れた。
息を吐く俺にイグニスが訊いてくる。
「それよりイッセーも歴代の女の子達の調教は?」
「…………もうした」
朝から騒ぐんだもん!
朝飯食う前からお望み通りにお尻ペンペンしてきましたよ!
なぜか用意されてた縄で縛って、なぜか用意されてたバイブ使いましたよ!
なんで、神器の中にそんなもんがあるんだ!?
『あれってイグニスさんが置いていったのよね?』
『ああ。他にも色々と揃ってるね。流石はイグニスさんと言ったところか』
うぅっ…………比較的まともなエルシャさんとベルザードさんですらこれだ!
お願いだから、あんた達もツッコミ入れてよ!
『『ごめん、無理』』
即答!?
もうやだ!
誰か俺の代わりにツッコミ入れてぇぇぇぇ!!
ふと横を見るとアーシアが頬を膨らませながら、こちらを見ていた。
…………え、なに?
イグニスが微笑む。
「あら、アーシアちゃんもイッセーとくっつきたいの?」
「私も…………イッセーさんに甘えたいです」
「それなら、ちゃんと言わなきゃダメよ? イッセーったら、未だに鈍感なところがあるから。イッセーももっと見てあげないとダーメ」
うーむ、最近はそうでもないと思ってたんだけどな。
やはり、俺はまだまだだと言うことなのだろうか?
とりあえず、アーシアちゃんも色々と心労が溜まってるし(主に変態龍王のせい)、いっぱい甘えさせてやろう。
俺はアーシアの肩を抱き寄せて、頭を撫でてあげる。
すると、さっきまで頬を膨らませていた顔も笑顔に変わり、俺に甘えるようにもたれかかってくる。
「アーシア。俺にやってほしいことがあれば、遠慮なく言ってくれよ? これぐらいなら、いつでもしてあげられるからな」
「はい! 私、イッセーさんにいっぱい甘えようと思います!」
うん、機嫌を直してくれたようでなにより。
でも、頬を膨らませているアーシアちゃんも可愛いんだよなぁ。
それを見るとかまってあげたくなるんだ。
「くっ…………朝から見せつけてくれるな、おまえは! これも異世界での経験の差というやつなのか!?」
横で見ていた匙が頭を抱えていた。
これに異世界はあんまり関係ないかも。
やっぱり、女の子を知って大人になったから、かな?
美羽のおかげでその辺りの根性がついたような気がする。
俺は苦笑しながら匙に言う。
「ソーナとはどうなんだよ?」
「…………ぜんっぜん。キスどころか手すら繋いだことがねぇよ」
「告白は?」
「…………まだ。つーか、俺は会長に相応しい男になれているのか!? 今の俺じゃダメなんじゃないのか!? ぐぉぉぉぉ! 俺はどうすればいいんだぁぁぁぁぁぁ!?」
「青春か…………」
「なにお爺さんみたいな顔してるのよ、イッセー? あなたも美羽ちゃんやアリスちゃんをはじめ、家に住む女の子達とイチャイチャしてるじゃない。二十歳で青春送ってるじゃない」
「アハハハ…………。まぁね」
出来れば二十歳は出さないでほしいなぁ。
そこに皆との差を感じてしまうから。
自分が十代でないことに、なぜだか泣けてくるから。
まぁ、アリスも二十歳なんだけどさ。
俺は未だに頭を抱えている匙に訊く。
今日の予定についてだ。
「そういや、午前はバアル眷属がいないんだよな? 何があるんだっけ?」
「ああ、それな」
匙は食堂の窓を指さす。
その先の風景には例の空中都市アグレアスが望める。
「アグレアスで
へー、サイラオーグさんとシーグヴァイラさん達も王者出演の映画に出るのか。
サイラオーグさんはレーティングゲームでの繋がりもあったからそれでなんだろうな。
シーグヴァイラさんは撮影場所がアガレス領ってこともあるのだろう。
グレモリーにシトリーにバアル、そしてアガレス。
と、リアス、朱乃、ソーナ、真羅副会長という三年生四人組が食堂に入ってくる。
リアスは俺と目が合うと頬を染めながら、こちらに手を振ってくれた。
…………やっぱり、早朝のあの一件は思い出すと恥ずかしいよね。
▽
俺は体術の授業をメインとして受け持っているが、他のオカ研メンバーも散会して各自担当の授業をサポートしていく。
まずは、ゼノヴィアと木場組。
二人はグラウンドにて『騎士』についての授業に参加していた。
ゼノヴィアは刀剣を片手に子供達に力説する。
「いいか? 剣は己を表す鏡のようなものだ。自身の迷いがあれば、それが刃にも出てしまう。常に平常心は、保って剣を構えなければならない。それとやられる前にやる。特に敵が話しかけてきた瞬間に問答無用で剣をぶつけるんだ!」
…………最後のはどうだろう…………。
木場も刀剣を実際に振りながら、ゼノヴィアとは違う側面から『騎士』を語った。
「でも、力に頼って剣を振るうのは危険だからね。『騎士』は技能とスピードが重要。戦場を誰よりも駆け回って相手を翻弄する。そして、隙を見つけて、的確に突く」
対照的な二人の話に子供達も関心をよせていた。
イリナとレイナは特別抗議として、天使と堕天使について語った。
特に天使は冥界ではレア中のレア。
子供達は天使を見たことがなかったようで、天使の真っ白な翼と頭上の輪はとても不思議で新鮮だったようだ。
「すっげぇ! 本物の天使だ!」
「お父さんが言ってた! 悪い子は天使に連れていかれるって!」
興味津々の子供もいれば、若干怖がる子もいる。
堕天使であるレイナもイリナほどではなかったが、少し怖がられていた。
同盟を結んだとは言え、まだまだ一般の悪魔には天使も堕天使も恐怖の対象のようだ。
イリナは力強く語る。
「そんなことしないわ! 天使は天に仕える皆の味方なの! さぁ、皆も一緒に祈りましょう! アーメン! さぁ、手作り自家製パンも配っちゃうわ! 食べると信仰が深まるの!」
あのパンはあれか!
以前、教会トリオが三人で秋葉原に行ったときに買ったというパン製造器『ホームベーカリー』で作ったパンか!
ホームベーカリーは材料を入れるだけでパンを作れるとのことで、教会トリオは心底驚愕し、それと同時に思ったそうだ。
―――――これで迷える子羊達が救える、と。
ホームベーカリーは三万円ほどで、高校生であるイリナ達にとっては少々お高い商品であったが、天界のクレジットカードを使うことでなんとか買えたらしい。
ただ、パンの材料費はイリナ達で払うように言われたとのことだったんだが…………。
あの配ってるパンを見るに自腹で出したんだろうなぁ。
しかし、自称パン屋天使による布教活動が始まってしまい、親御さんからのNG。
イリナによる特別講義『天使』編は中々のカオスぶりを見せた。
で、その後のレイナによる特別講義『堕天使』編はというと――――
「――――と、このように私達グリゴリでは神器の保管から研究、そして人工神器という神器を習って開発したものもあり、シトリー眷属の方々もこれを使用しています」
と、ホワイトボードや予め用意していた資料を用いてのまともな授業を行っていた。
親御さんはうんうんと頷きながら興味深そうに聞いていたが、子供達にとっては少し授業が真面目すぎたようで、反応はいまいちだった。
授業後、落ち込むレイナを見かけたので、そっと缶コーヒーを渡してあげた。
他にもアーシアは教会で得たエクソシストの知識を、キャスパーは吸血鬼、小猫ちゃんは妖怪としての、それぞれの立場で特別講義を担当。
ロスヴァイセさんは引き続き魔法の授業を担当し、美羽もこちらに着いている。
オカ研部長リアスと副部長朱乃は一番大事な授業ともいえる『王』と『女王』について子供達に語っていた。
「眷属の『王』の『女王』の関係はプライベートでも、レーティングゲームでもとても重要よ。『王』は『女王』に常に傍らについてもらうことで―――――」
二人は講師として、というよりは先輩としての話を子供達に語りかけていた。
二人ともまだ若手で学ぶことが多いので初めは謙遜もしていたけど、今までの経験、知識を伝えられるだけ伝えようとしていた。
レーティングゲームを学ぶためにこの学校を志望した子供達にとって、二人の話は貴重なもので、真剣に聞き入っていた。
俺とアリスも休憩時間を使って話を聞きに来ていたんだが、やはり先輩だけあって、勉強になる話だった。
俺は隣で話を聞いていたアリスに言う。
「おまえもよーく聞いておけよ? 『女王』は『王』に自分が起こした不祥事を擦り付けたりしないんだぜ?」
「えー、なんのことー? 私、イッセーが何言ってるのか全然分かんなーい。それよりもイッセー」
「ん?」
「これよろしく!」
ドンッと俺の腕に乗せられるプリントの束…………というよりプリントの山。
すんごく重い。
「…………これは?」
「さっきボランティアの人に頼まれちゃったんだけど、疲れたからイッセーよろしく!」
「これ全部!? 手伝うんじゃなくてか!?」
「もちろん!」
「あ、このやろ、どこ行くつもりだ!?」
「…………じゃ、そういうことで」
「おいぃぃぃぃぃ!」
この時、俺は絶対にお仕置きしようと心に誓った。
▽
用意された教室で俺も授業の真似事してみた。
傍らにはレイヴェルもいて、おれをサポートしてくれている。
俺は体術や気についての話もしていくなか、これまでの経験について語ったりもしていた。
異世界については伏せておいたけどね。
世界中に知られてしまったとはいえ、それを知っているのはあくまで各勢力の上層部。
一般には情報が出回っていないからだ。
で、話の内容なんだが……………俺がどういう理由で力を得ようとしたのか、どんな想いで力を振るってきたのか。
子供達には少し難しい話かもしれないが、これだけは伝えておきたいということを話していた。
教卓の前に立って、俺をじっと見る子供達やその親御さんを見渡しながら口を開く。
「ま、そういうわけだ。強くなるのは良いことだ。より大きな力が手に入るからな。………だけどな、力を振るうにはそれに見合う覚悟と責任が必要だ。むやみに力を振るうようでは大切なものを守るどころか逆に壊してしまうことになりかねない」
俺の言葉に真剣に耳を傾ける子供からノートにメモをする子供。
よく見ると親御さん達もとても真剣な表情で聞き入ってくれていた。
俺は言葉を続けていく。
「強くなりたいなら、自分が何のためにそうなりたいのかよく考えてくれ。そして、それを決して忘れちゃダメだ。それがあれば迷っても、悩んでも、挫けそうになっても真っ直ぐ歩いていける。その先に本当の強さがあると俺は思う。…………っと、中々難しい話になったな。レイヴェル、そろそろいいか?」
「はい。それでは、これからは『おっぱいドラゴンの質問コーナー』に移ろうと思います! おっぱいドラゴンに質問のある方は挙手を!」
レイヴェルが元気よく声をかけると、先程までの真剣な表情から変わって子供達も元気よく手を挙げていく。
「はいはいはい! どんなおっぱいが好きですか?」
「いい質問だ! 俺は小さくても大きくても好きだぜ! おっぱい大好きだからな!」
「アハハハハハハ!」
俺が親指を立てながら笑顔で返すと教室に爆笑が響く。
だが、この気持ちは男の子には伝わってほしいものだ!
この後も質問が次々に降り注いでくる。
「おっぱいを吸ったことはありますか?」
というおっぱい関連の質問から、
「いつもどんなトレーニングをしてるんですか?」
「おっぱいドラゴンも契約したりするんですか?」
という、普段の生活や悪魔の仕事についての質問まで。
子供達が俺のどんなところに興味を持っているのかよく分かる質問コーナーだった。
一通りの質問に答えた後、今度は俺から訊いてみる。
「皆はなりたいものはあるか?」
そう訊くと再びあちこちから元気よく手が上がる。
「おっぱいドラゴンになりたい!」
「レーティングゲームのチャンピオンになりたいです!」
「私は魔王領の研究所で働きたいです!」
「魔王さまの近衛兵になりたい!」
子供達は次々に夢を語る。
皆、なりたいものがあるんだ。
夢を持つ―――――。
そこに人間も悪魔も関係ない。
「僕はここの生徒になりたい!」
それを聞いた子供達は「僕も!」「私も!」と同調していく。
そうだよな、それがこの場にいるこの子達の一番の望みであることには違いない。
この学校は子供達の夢を叶える、そのための大きな一歩になるはずだ。
一人では無理でもその子の可能性を引き出してくれる人がいれば、より夢へと近づける。
俺だって師匠がいなけりゃ、どうなってたことか…………。
だから、俺は願う。
この子供達がこの学校に通えますように―――――。
その時だった。
全身に気味の悪い寒気が走った。
妙な感覚に捕らわれた直後、冥界特有の紫色の空が白く塗り替えられていくの怪現象が起こる。
突然のことに学内にいた全ての者が空を見上げて驚愕していた。
次第に紫色は消えていき、空は真っ白に。
これは何かのイベント…………なわけないか。
もしそうなら、予め連絡があるはずだし、ここまで大がかりなことをするのだから、今朝のミーティングでも確認があったはず。
レイヴェルが俺に寄ってくる。
「イッセーさま、これは…………」
「ああ、そうなんだろうな」
この町では魔法使いの集会が行われている。
そこに集まるのはトライヘキサについて研究していた者ばかり。
そして、彼らは拉致される可能性が高かった。
その拉致を行う相手は―――――
『グラウンドにいる体験入学生、父兄の方、講師、スタッフの皆さんは速やかに構内に入ってください。繰り返します。グラウンドにいる体験入学生、父兄の方、講師、スタッフの皆さんは――――――』
思慮する俺の耳に構内放送が届いてくる。
「レイヴェル。まずは子供達を避難させよう。誘導を頼む。俺はリアス達と連絡を取る」
「了解しましたわ」