ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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12話 悪意の矛先

オカ研、生徒会のメンバーは職員室に集まっていた。

 

レイヴェルが言う。

 

「子供達、と父兄の方々の確認は終わりましたわ。皆さん、体育館に集まってもらっています」

 

「了解だ。リアス、連絡は取れそうか?」

 

俺がリアスにそう訊ねる。

 

リアスには外と連絡が取れるか確認してもらっていたんだが…………リアスは首を横に振った。

 

「ダメね」

 

転移魔法陣を床に描いていた朱乃も息を吐いた。

 

「こちらもダメですわ。遠くへジャンプできません」

 

外への連絡と転移はダメか…………。

完全に外部と遮断されたと言うことか?

 

京都の渡月橋と昇格試験―――――英雄派の襲撃の時はゲオルクが霧で俺達を別の空間に転移させていたが…………。

 

今回はそういうわけでもなさそうだ。

 

単純にこの地域一帯を結界で覆ったと見るべきか。

 

ソーナが連絡用魔法陣を展開しながら言う。

 

「アグレアスと町の集会場には繋がりました。映像を出します」

 

ソーナが魔法陣を操作すると、職員室内に立体映像が二つ浮かび上がる。

 

一つはアグレアスにいるサイラオーグさん、もう一つは町の集会場にいるゲンドゥルさんだ。

 

映像のサイラオーグさんが言う。

 

『これはどうなっている?』

 

その疑問にゲンドゥルさんが答える。

 

『この地域一帯丸ごと、敵の結界で覆われたと考えていいでしょう。いま、総動員で各々使役している使い魔に確認をさせてますが、どうやらこの町とアグレアスを楕円形にすっぽり覆っているようです』

 

この町だけでなく、アグレアスも…………。

なんつー規模で仕掛けてきやがる。

 

『加えて、私達術者は魔法の大半を封じられてしまっているのです。この通り』

 

額を指差すゲンドゥルさん。

そこには…………禍々しい輝きを放つ魔法陣。

 

魔法を封じられている?

 

ゲンドゥルさんの言葉を聞いた美羽が試しに魔法を発動させてみるが、普通に使えている。

 

他のメンバーも魔力や神器、光力を使ってみるが問題はなかった。

 

ここにいる者達にこれといった変化はない。

 

アリスが顎に手を当てて呟く。

 

「ここにいる皆に変化がないということは、集会場にいる魔法使い限定で力を封印された…………ということかしら」

 

『おそらく。まるで気配を感じさせないとは…………おそろしい者がいたものです』

 

集会に集まっていた魔法使い限定…………明らかに狙ってきているな。

 

「こんな大規模で大胆なことが出来るやつが敵にいるってのかよ…………」

 

匙が顔をひきつらせながらそう漏らす。

 

「ああ、規模もさることながら、前兆が感じられなかったことも驚異だぜ」

 

俺の脳裏に浮かぶのはあの白髪の少年――――異世界の神、アセムとその下僕達。

 

あいつらの力は強大で未知だ。

俺達の知らない術式でこれを成した…………とか?

 

すると、ゲンドゥルさんは思い当たったようで、静かに口を開いた。

 

『千以上の魔法を操ったという伝説の邪龍―――――「魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)」アジ・ダハーカ。かの邪龍ならば、魔法使いを封印する術も知っているでしょう』

 

―――――アジ・ダハーカ。

 

ヴァーリが襲撃を受けたという伝説の邪龍か。

 

邪龍アジ・ダハーカを復活させたのは新生『禍の団』――――クリフォト。

聖杯の力で邪龍を復活させ、量産型の邪龍まで作り出している者達。

 

この白い空もゲンドゥルさん達魔法使いの封印もアジ・ダハーカがやったというのか。

 

ここでイリナが疑問を口にする。

 

「しかし、規模があまりに…………。いくら伝説の邪龍だろうと、名だたる魔法使い達の封印と同時に土地を丸ごと封じるなんて…………」

 

確かに強化された邪龍だとしても逸脱しているような気もする。

広大な土地に外部と完全に遮断す結界を張り、その上に強力な魔法使い達の封印だからな。

 

だが、方法がないわけではない。

 

俺は舌打ちしながら呟く。

 

「あいつら、俺の複製を使いやがったな。力と能力を完全にコピーできているなら、譲渡の力も使えるはずだからな」

 

くそったれめ…………!

 

俺の…………赤龍帝の力をこんな風に悪用されるのは胸くそ悪い。

 

無性に腹が立つが、それと同時に脅威を感じてしまう。

アセムの下僕の一人…………あのベルって子を何とかしないと俺の複製を量産されそうで恐ろしい。

 

「俺が誰かに力を譲渡して解呪の魔法を増大しても…………」

 

「そうくるのはあちらも想定済みでしょう。多分、カウンターの術式も用意されているはずです。下手にこの状況を打破しようとすると大惨事もあり得ます」

 

ソーナがそう続けた。

 

…………だよな。

 

俺は息を吐く。

 

「あの時、俺がベルに触れられてなければこうはならなかった、か…………」

 

少々落ち込みぎみに呟くとアリスが俺の肩に手を置いた。

 

「それは仕方がないわ。触れただけで対象をコピーできるなんてチートな能力、誰も想像できないもの。それに、私も…………あのヴィーカには一度負けているもの」

 

ベルにヴィーカ。

アセムの下僕四人のうち、能力が割れているのはこの二人。

もしかしたら、他にも能力を持っているかもしれないが…………。

 

「まずは相手の狙いを探るべきね」

 

リアスがそう言う。

 

ゲンドゥルさんが自身の胸に手を添えた。

 

『ひとつは私達、666に関する研究をしていた術者達でしょうね。彼らの狙いは私達にあります。しかし、彼らはアグレアスまで結界で覆った。他にも意図があるのでしょう』

 

あいつらはこの町とアグレアスを楕円形の結界で覆った。

集会に集まる魔法使いを狙うのであれば、この町だけで良いはずだ。

 

ゲンドゥルさんの言うように他にも狙いがあるのだろう。

 

「―――――旧魔王時代の技術」

 

レイヴェルがぼそりと呟く。

 

ソーナも頷いた。

 

「あのアグレアスには旧魔王時代の技術が使われています。未だ解明できていない部分もあり、アジュカ・ベルゼブブ様の研究機関が島の深部を調査中です。前魔王ルシファーの息子であるリゼヴィム・リヴァン・ルシファーはあの島にある何かを狙っているのかもしれません」

 

『旧魔王時代の遺産、あるいは兵器の類でしょうか。それとも666に繋がる何かがあるのかもしれません』

 

ゲンドゥルさんが顎に手をやりながら考え込むように言った。

 

…………まぁ、空中都市ってだけで何か秘密がありそうな気がするよね。

冥界を壊せる超破壊兵器とか?

 

サテライト兵器は…………ないか。

ありゃ、アザゼル先生だ。

 

「外部と遮断されているとはいえ、これだけの規模だ。結界の外にいる誰かが異常を察しているんじゃないか?」

 

アグレアスは冥界の観光名所。

観光客も大勢いる。

中には誰かと連絡を取っていた人もいるはずだ。

 

それが突然途絶えたら必ず不審に思う。

 

しかし、ソーナは眉間にしわを寄せる。

 

「そうなるのも彼らの想定内でしょう。おそらく、外の者達に気づかれぬよう時間と空間を歪めて外と遮断させている可能性があります」

 

「…………時空を歪める。こちらの一時間が結界の一分だったなんて魔法の事案でよく聞く話だけれど…………。それでも、高度な術者が念入りに下準備を整えてようやく実現できるレベルだわ。…………神滅具と禁術使いの邪龍が組むとここまで厄介な行動が出来るようになるのね」

 

リアスが続いた。

 

…………時空を歪める、か。

 

俺が次元の渦に巻き込まれてアスト・アーデに行ったときは向こうでの三年がこちらでは一瞬だったが…………。

今思えば、あの渦が二つの世界の時空を激しく歪めているのかもしれないな。

 

まぁ、今回の件はそこまでじゃないにしろ、厄介なことには変わりがない。

 

『ここまで大規模な術はドラゴンであろうと確実に心身を削ります。命を削ってもおかしくありません』

 

「だけど、向こうには聖杯があります。いくら命を使おうと何度でも復活させることが出来る」

 

『つまり、何度でも今回と同じことが出来る、というわけですか…………。神滅具とは恐ろしいものですね。聖杯が彼らの手元にある限り、今後の対策も難しくなるでしょう』

 

聖杯…………ヴァレリーのこともあるが、早急に奴らから奪取しないと後々で面倒なことになるな。

いや、既に面倒なことになってるか。

 

奴らの目的を話し合っていると、この職員室の扉が勢いよく開かれた。

 

何事かと思い、そちらに目をやると息を切らしているスタッフの姿。

 

「どうかしたの?」

 

リアスが怪訝な表情で訊く。

 

スタッフは息を整えた後、窓を指差して答えた。

 

「上空に映像が映し出されています」

 

 

 

 

 

 

スタッフからの報告を受けた俺達は一斉に校庭に飛び出した。

 

上空を見上げると花畑が空一面に広がっており、

 

「…………しばしお待ちください? ふざけてんの、あれ?」

 

アリスが空に浮かぶ悪魔文字を指差して、そう呟いた。

 

…………ふざけてるんだろうな、多分。

 

皆が身構えるなかで、空からふざけた口調の声が聞こえてくる。

 

『え? なになに? もう放送始まってんの? マジで? ちょっと待ってよ~。おじさん、まだお弁当全部食べてないって』

 

『それじゃあ、僕が食べといてあげるよ。そのお肉美味しそうだし』

 

『あ、それ楽しみにしてたやつだから、一切れだけね? あー、ちょっと待ってって。すぐ行くすぐ行く』

 

そんな軽いノリのやり取りが聞こえた後、爽やかな映像から移り変わり銀髪の中年男性が映し出された。

 

その後ろにはモグモグ口を動かしている白髪の少年。

 

リゼヴィム・リヴァン・ルシファー…………それにアセムの野郎か!

 

つーか、あいつ、いつも口に何か入れてない?

 

リゼヴィムがウインクしながら話始める。

 

『んちゃ♪ うひゃひゃひゃひゃひゃ! どもども、リゼヴィムおじさんです☆ 皆、はじめまして、あるいはお久しぶり! いきなりのサプライズで皆、ビックリしてるかな? そんな君達にネタバレしてあげようかなーって思ってます! ほら、敵方が説明するのってあるじゃん? こっちが不利になっても種明かしするのがお約束じゃん?』

 

相変わらずふざけた野郎だ。

 

『まぁ、なんとなーく分かってると思うけど、この辺一帯を結界で覆ってまーす! やってくれたのは俺達の協力者、邪龍軍団のラードゥンさんです!』

 

奴の背後に巨大な生物が見える。

 

ドラゴンの形をした木…………?

いや、木のドラゴンなのか?

 

『まぁ、彼も俺達のキーアイテム「せい☆はい」で復活したわけなんだけど、うーん、流石は伝説の邪龍! 彼の持つ強力な結界はすんごいねぇ! そこにベルお嬢ちゃんが複製した赤龍帝くんの譲渡の能力で倍プッシュですげーのよ!』

 

リゼヴィムの傍らに立つユーグリットの姿が映し出される。

 

その手には聖杯が握られていた。

 

「…………ッ!」

 

俺の近くではギャスパーが双眸を危険なほどに輝かせて奥歯を激しく噛んでいた。

闇のオーラも滲み出ているほどだ。

 

今のこいつにとって、この映像は耐え難いものなのだろう。

 

『そして、この町にいる諸君! そこも結界で包囲したあげくに名だたる魔法使いの皆の魔法力を封じちゃいました! 封じたのは千の魔法を操る邪龍、アジ・ダハーカさん! こちらもお見事! もちろん、複製した赤龍帝くんの力で強化済みです!』

 

リゼヴィムの背後にもう一体の巨大なドラゴンが現れる。

 

三つ首のドラゴン。

…………あれがアジ・ダハーカか。

 

話じゃ、あのクロウ・クルワッハと同格と称された最強の邪龍の一角。

ヴァーリチームの攻撃を受けても全く倒れる気配が無かったというほどの実力。

 

こうも次々、強力な邪龍を復活されるとな…………。

 

リゼヴィムは嬉々として続ける。

 

『なお、外界からは時間ごと隔絶されているから、外にいる者達には気づかれてないよん。援軍なんて来ないってわけ! うひゃひゃひゃひゃひゃ!』

 

やっぱり、そうなのか。

となると、この場にいるメンバーでこいつに対処するしかないってわけね。

 

『でよ、なーんでこんなことをしたか気になってるでしょ? 理由は簡単♪ そこにいる魔法使いの皆が俺達に協力してくれないなら、邪魔になりそうだし、まとめて吹っ飛ばしちゃおうかなって! あと、アグレアスの技術もちょいと盗ませもらおうと思った次第なのよ。まぁ、僕のパパ達が作ったものだし? 息子の俺が相続してもいいでしょ?』

 

リゼヴィムが愉快そうに目を細めながら、俺達に指を突きつけた。

 

『そこに俺達の打倒を企てて結成したって言う「D×D」がいるんだろう? それなら、今ここで勝負といこうぜ? 量産型邪龍軍団と、伝説の邪龍さまがそちらとアグレアスに向かう。蹂躙するためだ。俺達の打倒を掲げるなら止めてみろよ』

 

指を鳴らすリゼヴィム。

 

刹那、町を覆うように紫色の巨大な火柱が天高く立ち上がった!

 

なんだ、あれは!?

しかも、この肌を刺すような感覚は…………!?

 

「紫炎ですか。厄介な者が絡んできましたね」

 

その声に振り返ると、ゲンドゥルさんがいた。

集会場からここに移動してきたようだ。

 

ゲンドゥルさんは忌々しそうに紫色の巨大な火柱を見上げていた。

 

その火柱は――――十字をかたどっていた。

 

「これは『紫炎際主による磔台(インシネレート・アンセム)』! 所有者がクリフォトに協力しているとは聞いていたけど…………まさか、ここに来るなんて!」

 

レイナが火柱を見上げながらそう叫んだ。

 

『紫炎際主による磔台』の所有者ははぐれ魔法使い集団『魔女の夜(ヘクセン・ナハト)』に所属する魔法使いだったはず。

 

あれは聖遺物の一つで、あの紫炎に触れれば悪魔は必滅を免れないと聞く。

 

リゼヴィムが横に一歩動くと映像にはアセムとヴィーカが映し出された。

 

アセムはこちらに手を振ってくる。

 

『やっほー♪ 吸血鬼の一件以来だね、勇者くん。僕もここに来ちゃった☆ リゼ爺のお弁当が美味しそうで、つい釣られちゃったよー』

 

『お父さま、お弁当はもういいですから…………。口にケチャップ付いてます』

 

『アハハハ♪ ゴメンゴメン。長々話すのもあれだから、簡潔に言うよ? 今回はね、僕の下僕達も参加するからよろしくね。前回、君と戦えなかったーって文句言われてさ。とりあえず相手してあげてちょーだい』

 

ちっ…………邪龍と神滅具所有者だけでも厄介なのにあいつらまで参加かよ。

 

しかも、話からして俺を狙ってくるか。

 

ヴィーカがこちらにピースサインを送ってくる。

 

『ウフフ、貧乳ちゃんは元気してる? 前回はボロボロになってたけど、今回はどうなるかしら?』

 

「貧乳言うなー!」

 

『つるぺた?』

 

「あいつ嫌い! ねぇ、私の胸、つるぺたじゃないよね? まだあるわよね? ね? ねぇねぇねぇ?」

 

アリスが涙目になって俺にすがりついてくるんだけど…………。

 

うん、アリスはつるぺたではないかな。

 

ヴィーカもそこばかり言うの、止めてあげてくんない?

アリスのおっぱいも日々成長してるんだぜ?

 

そりゃあ、スタイル抜群のヴィーカと比べると小さいけどさ。

 

空に映し出されるヴィーカが口許に手を当てて不敵に笑む。

 

『私が言ったことを覚えていれば、今回はもう少し楽しめると思うけど。まぁ、頑張ってちょうだいね』

 

「…………っ! ええ、良いわよ…………楽しませてあげる!」

 

その言葉にアリスが怒りのオーラを放っていた。

 

ヴィーカに向けられた怒りというよりもアリス自身に向けられているような…………。

 

何を言われたんだ?

 

ヴィーカがその場から退いて、再びリゼヴィムの姿が映りこむ。

 

『てなわけで! 三時間後に行動開始だから、頑張ってくれよ! うひゃひゃひゃひゃひゃ!』

 

 

 

 

 

 

上空に映し出された映像が終わった後。

 

俺達はすぐに行動を始めていた。

 

『そうか、既に避難は始まっているのだな』

 

サイラオーグさんがリアス宛に連絡用魔法陣を飛ばしてきて、俺とリアスが対応していた。

 

リアスが言う。

 

「ええ。今、ソーナが住民を学校のシェルターに案内しているわ。この町の人口はさほど多くもないから、三時間もあれば避難は完了するはずよ」

 

『町からの脱出はどうだ?』

 

「この町は一帯を覆う結界とは別に障壁か張られているわ。加えてあの紫炎の十字架も囲んでいる。つまりは三重のシールドが張られているのよ。攻撃で吹き飛ばしてもすぐに修復されてしまったわ。解呪しようとしたけど、結果は同じ」

 

ちなみにゼノヴィアが地面を掘って障壁の外に出ようとしたんだが、炎の十字架は地下にまで伸びているらしい。

 

俺達だけなら、ともかく住民を連れてとなると結界の外へ出るのは難しい。

 

仮に俺達の誰かが結界の外に出て、援軍を呼んだとしたも結界の外と内で時間の流れが異なるため間に合うか…………。

 

つまり、脱出に関しては原状手詰まり。

 

だが、脱出の準備はしている。

集会に集まった魔法使い全員が学校の地下シェルターで新しい転移型魔法陣の構築中なんだ。

 

封印されていない術式を応用して、そんなことが出来るのはやはり、呼ばれていた魔法使いの人達の実力の高さ故だろう。

 

サイラオーグさんが息を吐く。

 

『こちらも似たようなものだ。アグレアスを覆う障壁の破壊は出来るが、瞬時に修復してしまう。この都市にいる者達を運び出すことすら叶わん。それに―――――既に邪龍に囲まれているようでな』

 

サイラオーグさんが一つの映像を展開してくれた。

 

空一面が黒く覆われた映像だった。

 

その黒は邪龍の群れ。

百や二百じゃきかない数がそこにあった。

 

なんて数を出して来やがるんだ…………!

 

それに気になるのは邪龍の中心にいる、明らかに別格のオーラを放つ三つ首のドラゴン。

六枚の大きな翼を羽ばたかせてアグレアスの眼前に待機している。

 

アジ・ダハーカはアグレアスに向かったのか。

 

『こちらは俺達バアル眷属とシーグヴァイラ・アガレスとその眷属、それにディハウザーさまのチームも滞在している。ただではやられん。特にシーグヴァイラは大公の臨時代行として動いてくれていてな。頭の固い委員会の年寄り達とアグレアスの市長を説き伏せて都市機能の実権を握ってくれた。これで少しは楽に動ける。彼女は本当に有能だよ』

 

なるほど、シーグヴァイラさんは既に動いてくれているのか。

 

うーむ、最初の印象が怖かったから、未だに厳しそうなイメージがあるんだよね。

 

サイラオーグさんが俺を真正面に捉えて言う。

 

『兵藤一誠、正念場だ。俺達はアグレアスを、この町を、そこにいる子供達を守らねばならん』

 

「もちろんです。何がなんでも守りますよ。それが俺達の役目ですよね?」

 

『ああ。冥界の希望を守ることが「D×D」を結成した俺達の役目だ。誰一人として死なすわけにはいかない。そして、奴らを誰一人として許すわけにはいかない。向かってくる者は全て薙ぎ倒すぞ。それが力を持つ俺達の宿命だ!』

 

俺はサイラオーグさんのその力強い言葉に笑みを浮かべた。

 

「こっちが片付いたら、必ず駆けつけます」

 

『俺もだ。早急に終わらせるとしよう』

 

 


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