ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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5話 クソ神父との再開です!

その日の夜。

 

「こんな時間にお疲れ様です」

 

「悪魔のお仕事も大変だね」

 

玄関から俺を見送ってくれるのはアーシアと美羽だ。

 

「まぁ、お得意様のご要望だからな」

 

これから俺はイリナ達と合流するんだけど、二人には悪魔の仕事で出かけると言ってウソを着いている。

 

正直、二人を騙すのは罪悪感があるけど、これも巻き込まないためだ。

 

「じゃあ、行ってくるよ。部長が帰ってきたら言っといてくれ」

 

「分かりました」

 

「頑張ってね」

 

俺は二人に見送られながらイリナ達と待ち合わせているところへと向かった。

 

 

 

 

 

 

俺達はアーシアを助けたあの廃教会に集まっていた。

 

ここなら、部長や会長も気が付かないだろう。

 

そして、俺、木場、匙、小猫ちゃんの悪魔組の全員が黒い神父服を着ている。

 

理由はフリードがエクスカリバーを使って次々に神父を殺して回っているからだ。

 

ようするに、囮捜査だ。

 

神父の格好をしておけば、フリードの方から仕掛けてくるだろう。そう考えてのことだ。

 

ちなみに発案者はイリナ。

 

「悪魔が神父の格好をするなんてな」

 

「抵抗はあるだろうけど、我慢してね」

 

ぼやく匙にイリナがそう言う。

 

「目的のためなら、どんな手段でも使うさ」

 

木場はある程度の落ち着きは取り戻しているみたいだな。

 

一人で突っ走ってる時よりはるかにマシだ。

 

危うさが完全に消えたわけではないけど………。

 

俺達の準備が出来たのを確認してゼノヴィアが言った。

 

「効率を考えよう。これだけ人数がいるんだ、二手に別れたほうが良いだろう」

 

「力を二分するならイッセー先輩を一人とそれ以外を纏めるしかないです。それでも二分出来ている気がしませんが………」

 

小猫ちゃんの言葉に木場と匙がうんうんと頷いている。

 

ちょっと待てよ、おまえら。

 

俺をボッチにするつもりかよ。

 

「つーか、なんで匙まで頷いてるんだよ」

 

「いや………。この間、会長にグレモリーとフェニックスのゲーム映像を見せてもらったんだけどよ。あれ見れば誰でも同じ反応すると思うぜ?」

 

そう言う匙に今度は木場と小猫ちゃんがうんうんと頷いている。

 

ゼノヴィアとイリナは何のことか分からないという表情をしているな。

 

『実際そうだろう。この場にいる全員で相棒に襲いかかっても相棒は倒せまい』

 

ドライグまでそんなことを言ってきやがる。

 

なんだよ。

そんなに俺をボッチにしたいのか、おまえら。

 

拗ねるぞ?

 

その後、ゼノヴィアの提案により悪魔組と聖剣組に別れることになった。

 

「じゃあ、俺達は町の東側に行こう」

 

「では、我々は西側を回るとしよう。何かあったらイリナの携帯に連絡してくれ」

 

「了解だ」

 

そう言って、二手に別れようとしたとき。

 

「ああ、ちょっと待ってくれ」

 

俺はゼノヴィアに呼び止められた。

 

「どうしたんだ、ゼノヴィア?」

 

「キミには世話になったからね。お礼と言うわけではないが一つ情報を」

 

情報?

 

俺への情報ってなんだ?

 

俺がそんなことを考えているとゼノヴィアはその情報を明かしてくれた。

 

「―――白い龍は目覚めているぞ。気を付けろ、兵藤一誠」

 

その言葉に俺以外が戦慄した。

 

白い龍―――白龍皇バニシング・ドラゴン。

 

ドライグと同じ二天龍の一角でもある。

 

そして、赤龍帝に相対する存在。

 

ドライグから話は聞いていたけど、やっぱりいるんだな。

 

そいつと俺とは戦う運命にあるらしいが………。

 

「ああ、サンキューな、ゼノヴィア。気を付ける」

 

今は白い龍よりも木場のことだ。

 

俺は頭を切り替えて、町へと向かった。

 

 

 

 

町を歩き初めてから数分。

 

「なかなか、見つからないな」

 

「そうだね。どこかに身を潜めているんじゃないかな」

 

なんて会話を俺の後ろでしている木場と匙。

 

まぁ、流石に聖剣持ってその辺りをうろちょろするほど、フリードのやつもバカじゃないだろう。

 

「ん?」

 

俺は気配を察知して足を止める。

 

そんな俺を見て皆は怪訝な表情を浮かべる。

 

「………イッセー先輩、どうかしたんですか?」

 

小猫ちゃんが尋ねてきた。

 

「ああ、この先でフリードの気配がした。聖剣の気配と混ざってるから分かりにくかったけど、間違いない」

 

「おまえ、そんなことも分かるのかよ?」

 

「まぁな。修業すれば匙だって出来るさ」

 

「本当か!」

 

才能が皆無だった俺にでも出来るようになったんだ。

 

匙も修業すれば出来るようになるだろう。

 

ただし、地獄の修業をするはめになるけどな………。

 

「とりあえず、行ってみるか」

 

俺の言葉に三人は頷いた。

 

それから気配のした方へと足を進めると、そこははぐれ悪魔バイサーを倒した場所だった。

 

「なるほど、確かにここにフリードはいるみたいだね」

 

そう言う木場の視線の先には神父の死体があった。

 

全身が切り刻まれ、凄惨な状態だった。

 

匙は人の死体を見たのは初めてなのか手で口を押さえている。

 

「匙、大丈夫か?」

 

「………ああ、大丈夫だ。もう落ち着いた」

 

その時、寒気が俺を襲った。

 

この感覚、イリナ達と出会った時に感じたものと同じ、聖剣の気配!

 

「上だ!」

 

匙が叫び、全員が上を見る。

 

すると、聖なるオーラを放つ長剣をかまえた白髪の神父が降ってきた!

 

「神父御一行にご加護あれってね!」

 

瞬時に魔剣を作り出した木場がフリードの剣を受け、弾く。

 

フリードは宙返りしながら建物の屋根に着地する。

 

「おやおや、折角神父をチョンパしようと思ったのに悪魔のコスプレかよぉ~」

 

相変わらず、ふざけた口調だな。

 

「んん~? そこにいるのはイッセー君じゃあ、あーりませんかぁ。会いたかったぜぇ」

 

フリードも俺がいることに気づき、話しかけてくる。

 

「兵藤、あいつと知り合いなのか?」

 

「まぁな。出来れば二度と会いたくなかったけど」

 

俺の言葉を聞いて、フリードはさらにふざけた口調で言ってくる。

 

「そんなつれないこと言うなよぉ。あの時の仕返しをずっと、したかったんだからよぉ。この聖剣、《天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)》で今度こそイッセー君をズタズタにしてやるぜぇ!!」

 

はぁ、本当に懲りないやつだな。

 

今度こそ、再起不能にしてやろうか?

 

「一人で盛り上がっているところ悪いけど、おまえの相手は俺じゃない」

 

「はっ?」

 

俺の言葉に間抜けな声を出すフリード。

 

そして、その瞬間、俺の横を物凄い速さで通り過ぎるものがあった。

 

木場だ。

 

木場は魔剣をかまえてフリードに突っ込んでいく。

 

「キミの相手は僕だよ!」

 

「はっ! 脇役はすっこんでなぁ!!」

 

そこから始まる二人の剣士による剣撃の応酬。

 

空中に激しく火花が散る。

 

フリードのやつ、木場のスピードについていけるのか。

 

もしかしたら、あれが聖剣の能力なのか?

 

どちらにしても木場の騎士としての優位性が無くなったな。

 

剣の質は向こうの方が上だ。

 

「木場のやつヤバイんじゃないのか? 加勢しなくて良いのかよ? 兵藤、おまえが行けば楽勝だろ?」

 

匙の意見は正しい。

 

だけど、俺は匙の意見に反対する。

 

「いや、これは木場の復讐だ。もし、ここで俺が出ていけば木場は納得しない」

 

まぁ、本当にヤバくなったら助けるけどな。

 

「それに………俺達の相手はそこにいる、はぐれ神父どもだ」

 

そう言う俺の視線の先には黒い神父服をきたはぐれ神父がぞろぞろ姿を現していた。

 

ざっと十人くらいか。

 

さっさと片付けよう。

 

俺が前に出ようとしたとき、匙と小猫ちゃんに止められた。

 

「これ以上、おまえばっかりに良い格好させるかよ。俺だって兵士の駒を四つも消費したんだぜ? あれくらい余裕だ」

 

匙の左手の甲にデフォルメされたトカゲの顔らしきものが現れる。

 

「俺もおまえと同じ神器持ちでな。神器の名は《黒い龍脈(アプソープション・ライン)》!ラインを接続して相手の力を吸い出すことができる神器だ!」

 

おお!

 

匙も神器持ちだったのか!

 

『あれは五大龍王の一角黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)ヴリトラの力を宿した神器の一つだ』

 

へぇ、あれもドラゴン系の神器なのか。

 

一つってことは他にもあるのか?

 

『ああ、ヴリトラの力を宿した神器はいくつかあってな。まぁ、そのあたりの解説は今度にしよう』

 

そうだな。

今は目の前のことに集中しないと。

 

「………イッセー先輩は祐斗先輩をお願いします」

 

そう言って小猫ちゃんと匙ははぐれ神父達のところへと突っ込んでいった。

 

うーん。

ああ言われたら俺も下がるしかないな。

とりあえず、サポートに回るか。

 

俺は籠手を展開して力を溜める。

 

いつでも譲渡出来るようにしておこう。

 

というより、たまには籠手の力を使っておかないとドライグが拗ねる。

 

『誰が拗ねるだと? まぁ、出番が少なくて暇なのは確かだが………』

 

などと話していると………。

 

「クソッ、早く斬られろよ! クソ悪魔がぁ!」

 

聞こえてくるのは苦戦するフリードの声。

 

今見て気づいたけど、木場のやつ案外冷静だ。

修業で教えたことが出来ているから、フリードに遅れを取っていない。

技量で剣の差を埋めてるようだ。

 

このままいけば、木場だけでフリードに勝てるかもしれない。

 

匙達も俺の助けは要らなさそうだ。

 

そう思った時だった。

 

「随分、苦戦しているじゃないか。フリード」

 

男性の声が聞こえてきた。

 

声がした方を見るとそこには初老の男性。

 

「魔剣創造と赤龍帝の籠手、か。随分と厄介な代物が揃っているようだな」

 

「何しに来やがった、バルパーのじいさん!」

 

「っ!? おまえがバルパー・ガリレイか!」

 

フリードの言葉に木場がいち早く反応した。

 

まずい、仇敵を目の前にしてあいつ、冷静じゃいられなくなっていやがる!

 

「フリード、聖剣に因子を込めろ。さすれば聖剣の力をさらに引き出せる」

 

「へいへい。流れる因子よ、聖剣に!なんつってな!」

 

すると、フリードと聖剣のオーラが強くなった。

 

「さぁ、クソ悪魔君。さっさとチョンパといきましょうかぁ!」

 

っ!

 

速い!

木場の速度を越えてやがる。

 

「ぐっ!」

 

木場が魔剣で受け止めるも折られてしまう。

 

このままじゃ流石にまずいな。

 

俺も前に出ようとした時だった。

 

木場に迫る聖剣を受け止める者がいた。

 

「やぁ、遅くなったね」

 

ゼノヴィアだ。

 

「やっほー。連絡もらったから来たわよー」

 

イリナもいるな。

 

そういえば、フリードと交戦したときに小猫ちゃんが連絡入れてたな。

 

「フリード・セルゼンとバルパー・ガリレイだな。神の名のもと、断罪してくれる!」

 

「俺の前でその憎たらしい名前を出すんじゃねぇよ!クソビッチが!」

 

「待て、フリード」

 

フリードがゼノヴィアに斬りかかろうとした時、バルパーが止める。

 

「流石にこの状況では不利だ。ここは出直すとしよう」

 

「ちっ! しょうがねぇな」

 

フリードはバルパーの側に行くと俺達を見渡す。

 

「バルパーのじいさんにこう言われたんで、ここは引くとしますか。じゃあな、クソ悪魔共! この次はズタズタに切り裂いてやるよ! じゃあ、ばいなら!」

 

フリードは懐から何かを出したかと思うとそれを地面に叩きつける。

 

そして、それから激しい光が放たれた。

 

閃光弾か!

 

俺はフリード達の一番近くにいた小猫ちゃんと匙を回収した後、その場を離れた。

 

「………ありがとうございます。イッセー先輩」

 

「まさか、閃光弾を使ってくるなんてな。兵藤、木場達は?」

 

「木場とイリナ、ゼノヴィアの三人はフリード達を追って行ったよ。俺もこれからそこに向かう」

 

俺が二人にそう言って、木場を追おうとした時だった。

 

後ろから数人の気配が現れる。

 

こ、この気配は………

 

「どこに向かおうと言うのかしら? ねぇ、イッセー?」

 

振り返るとそこには会長と副会長、朱乃さん、そして部長がいた………。

 

 

 


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