ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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10話 これからも笑顔で!

初代バアルからの説明を受けた後、俺達はジオティクスさんと話し合った。

その結果、襲い来る危機を退けてから、過去を探ろうという意見で一応の決着を見た。

 

グレモリー城をあとにした俺達は、駒王町に戻り、アザゼル先生に初代バアルから聞いた話を伝えた。

 

先生もなんとも言えない表情をしていたが、

 

「………もう少しリアスを信用しても良かったのかもしれんと思う面もあるが………和平前はな、どうしようもない出来事なんて、割りとよく起こったよ」

 

多くは語らないが、先生も色々な物を体験したのだろう。

 

………どうしようもない、か。

 

俺も………俺達もそんなことはたくさんあったな。

ここでの意味合いとは少し違うかもしれないけどさ。

 

先生はリアスに言う。

 

「リアス、サーゼクスを恨むなよ? あいつはあまちゃんだ。兄バカ、究極のシスコンだ。だが、大王バアル派との折り合いでこの町以外をおまえに与えられなかったのだろう。でもな、この町は良い場所だ。駒王学園といい、その他の設備といい申し分ない。サーゼクスはできうる限りの配慮を尽くしたんだと思うぞ」

 

それを受けてリアスは頷く。

 

「わかっているわ。私はこの町で楽しい日々を送った。何の不自由もなく。………今回の件でそれがお兄さまの愛情だったのだと、改めて痛感したわ。たとえ、過去を捏造され、真実を語られなかったとしても………私にお兄さまを恨む権利なんて、微塵もないわ」

 

駒王学園もサーゼクスさんがリアスのために下準備してくれていたのだろう。

妹が何事もなく、平穏に生活を送れるために―――――。

 

俺は初代バアルの話を聞いて、彼らがしたことは間違っていたと言った。

今でもその気持ちは変わらない。

 

だけど、それとは全く違う疑問が話を終えた後に浮かんできた。

 

 

――――もし、その事件がなければ、どうなっていたのか。

 

 

過去にその事件がなければ、イリナとは一緒にいることは出来ただろう。

 

だけど、リアスはこの町ではなく、他の土地に行っていたはずだ。

 

そうなれば、俺はリアスと出会わなかったかもしれない。

アーシア、朱乃、木場、小猫ちゃん、レイナ、ギャスパー、ゼノヴィア、ロセ、アザゼル先生と出会うことはなかったかもしれない。

今みたいに皆で生活なんてしてなかっただろう。

 

更に言えば、アリスをこちらの世界に連れてくることも出来なかったはずだ。

ロスウォードとの一件も皆の力がなければ、どうしようもなかった。

 

八重垣って人とクレーリアさんの事件があったからこそ、今がある。

 

そんなことを考えているとリアスが怪訝な表情で訊いてきた。

 

「イッセー………? どうかしたの?」

 

俺はリアスの瞳をじっと見つめる。

 

過去の事件がなければ………こうしてリアスと話すこともなかったのかもしれない。

 

俺は小さく口を開く。

 

「リアスはさ………俺と出会って良かったか?」

 

「………っ」

 

目を見開くリアス。

 

おそらく、俺と同じことを思ったのだろう。

今があるのはその過去があるからだと。

 

リアスは一度、俯くと顔を上げて、真っ直ぐに俺の瞳を見て言った。

 

「ええ、もちろんよ。イッセーと出会えて私は幸せよ」

 

「………そっか。そうだよな。………俺もだよ、リアス」

 

俺はフッと小さく笑んだ。

 

―――――君達がいる楽園という名の駒王町は多くの犠牲の上に成り立った世界だ。

 

八重垣って人の言葉が脳内で再生される。

 

ああ、その通りだよ。

俺達の今は犠牲の元に成り立っている。

それは間違いない。

 

だからこそ守る。

今を守り、未来を作るために。

 

八重垣さん………あなたの恨みも憎しみも否定はしない。

 

俺は認めた上で―――――あなたを止める。

 

 

 

 

翌日。

 

俺達はトウジさんが運ばれた天界の第一天を訪れていた。

 

過去の事件の当事者であるトウジさんから改めて話を聞くというのもあったけど、あちらもこちらへ渡したいものがあるというのだ。

 

第一天の医療施設は人間界の電子機器のようなものがあると思えば、宙に浮かぶ寝台などがあり、近代的な様相と幻想的な造りが交錯しているような場所だった。

 

天使の看護婦さんに連れられて、トウジさんの病室に通された俺達。

 

昨日の今日だが、天界の治療もあって、毒はかなり和らいでいるうだ。

昨日みたく、無理をしている様子もないからね。

 

俺達は初代バアルから聞いた内容を伝えた。

 

話を聞き終えたトウジさんが上半身を起こして皆に言う。

 

「………我々は最後まで八重垣くんの説得を続けました。当時の概念………いえ、今でも根強いと思いますが、悪魔と信徒の恋愛は許されるものではありませんでした。相手は分家とはいえ、上級悪魔べリアルの者。………べリアルそのものも敵対してしまうことになる。現べリアルといえば………」

 

「レーティングゲームの王者ディハウザー・べリアル。その実力は魔王と並ぶと称されています」

 

リアスの言葉にトウジさんは頷く。

 

「………もし、失敗をすれば、皇帝が出てきてしまう。そうなれば、小競り合いどころではなくなるかもしれない………。だが、どうにもそれは悪魔側も同様だった。バアル派の悪魔が接触してきたのです。――――こちらも穏便に済ませたい、と」

 

戦争をしたくないのは教会側も悪魔側も同じ。

 

だから、当時の教会側―――――トウジさん達とバアル派の悪魔は裏で一時的な協力関係を築いた。

 

その結果、他者に知られることなく、内々に『反逆者』を始末することに成功した。

 

トウジさんは悲壮な面持ちで言う。

 

「………イリナちゃん。パパはね、とても手が汚れているんだ。天使のイリナちゃんの父親を名乗ることが出来ないぐらいに汚れているんだよ………。黙っていて、悪かった。パパが不甲斐ないばかりに………。もっと上手く生きることが出来ていれば、イッセーくんと離れることなんてなかっただろうに………。本当にすまなかった………本当に………すまない」

 

涙を流し、何度も謝り続けるトウジさん。

両手で顔を覆っても手の隙間から大粒の涙が零れ落ちていた。

 

そんな父親の手を取り、イリナは首を横に振った。

 

「………やめてよ、パパ。私だって………戦士なんだよ? その時のパパがどうしようもなかったって、わかるもの………。私、パパを守るわ。パパが過去に罪悪感を抱いていたとしても、私はパパを守るしかないもの。――――だって、家族だもん」

 

「………イリナ」

 

娘の言葉にトウジさんは何も言えなくなり、ただ涙を流し続けた。

 

リアスがトウジさんに言う。

 

「過去の出来事は………当時の両陣営の事情があったとはいえ、悲しい出来事です。ですが、クリフォトの力を借りてテロ活動をしている以上、捨て置くわけにはいきません。――――止めます。どんな結果になろうとも、今止めないと悲劇と憎悪は増えていくだけですから」

 

リアスの強い覚悟。

それに俺達は応じて頷いた。

 

トウジさんもそれを受けて、涙を拭う。

 

「イリナちゃん、パパはね、クリスマス企画のためだけに来日したわけじゃないんだ。イリナちゃんに渡したいものがあったから、来たのだよ」

 

言うなり、トウジさんはベッドの横に置いていた細長いケースを取り出した。

 

イリナにそれを渡し、開けるように促す。

 

ケースのロックを解除して、開けると――――――

 

「これは―――――」

 

中身を取り出すイリナ。

 

静かに聖なる波動を放つ、一振りの剣だった。

 

トウジさんが言う。

 

「デュランダルの持ち主だったローラン。そのローランの親友であり、幼馴染みであったオリヴィエが持っていた聖剣――――――オートクレール。これを君に」

 

聖剣オートクレール!

 

デュランダルの持ち主の親友が持っていた剣か!

ゼノヴィアとイリナの関係から、運命的なものを感じてしまうな!

 

トウジさんがオートクレールの刀身を見つめながら続ける。

 

「真に清き者以外は触れられないとされた剣。斬った者の心ですら洗い直してしまうとされる。適正の結果、イリナちゃんが一番適していると結論づけられた。もちろん、天使になったことが因子の力を後押ししたようだけどね。それに、デュランダル使いのゼノヴィアさんの相棒を長く務めていたのも作用したのだろうと、研究者は言っていたよ」

 

そう言われて、お互いに見つめ合うゼノヴィアとイリナ。

 

デュランダルを持つゼノヴィアと新たにオートクレールに選ばれたイリナ、か。

 

こうなったのは、マジで運命だったのかもな。

 

トウジさんが言う。

 

「………イリナ。これで、八重垣くんを止めてくれ」

 

オートクレールを受け取り、強い目で頷くイリナ。

 

「ありがとう、パパ。私………あの人を止めるよ!」

 

 

 

 

イリナがオートクレールを受け取った後、俺達は暫し会話をした。

 

報告と見舞いも終わり、皆が退室していく中、ふいにトウジさんが俺に言った。

 

「………申し訳ないのだが、イッセーくんだけは残ってもらえないだろうか。話したいことがあるんだ」

 

そう告げられた俺は視線でリアスと無言の合意をして、部屋に残った。

他のメンバーはリアスと共に退出していく。

 

………俺に話したいこと、か。

 

ちょうど良い、俺も言っておきたいことがあったからな。

 

二人になった病室。

 

トウジさんが一拍開けた後、口を開く。

 

「………イッセーくん、天使となったイリナちゃんはその特性上、普通の女の子としての生活は出来なくなってしまった。天使は純白で、清楚であることが必然なのだからね。しかも、天使長ミカエルさまのA(エース)。二度と普通の女の子には戻れない」

 

「ええ」

 

天使は欲を持つことが出来ない。

欲を持ってしまえば、堕天してしまうからだ。

 

イリナはミカエルさんのA。

そのようなことになるわけにはいかない立場だ。

 

つまり、イリナは女の子として当たり前のことができなくなってしまった。

 

しかし、トウジさんは厳しい言葉の後に微笑みを浮かべた。

 

「――――でも、例外を得られた。あの子は君の前でだけ、普通の女の子になれることを許されたんだ」

 

トウジさんは俺の手を取り、懇願した。

 

「どうか………どうか、イリナを大切にしてあげてほしい。あの子は………幼い頃から教会の思想に育った。女の子として知らないことが多い。それを得られる機会があるのなら、どうか………見せて上げてほしい。感じさせてほしい。君達なら、きっと思想や立場を越えて仲良くできると信じているよ」

 

トウジさんは肩を震わせて、止めどなく涙を流す。

 

俺の手を握る力が強くなった。

 

「………私は………どうして、こんな簡単なことを彼に………八重垣くんと彼女に言ってあげられなかったのか………。たとえ、それが私達のルールに反していたとしても………。どうして、私は………何も出来なかったんだ………」

 

震える手。

 

俺はその手にそっと手を重ねた。

 

「種族なんて関係ないです。イリナが何者でも、俺の大切な幼馴染みの大切な女の子ですから。――――俺達はずっと側で笑い合えます。それはイリナだって分かってるはずです。おじさん………一つ俺と約束をしてくれますか?」

 

「………なんだい?」

 

涙に濡れる顔を上げるトウジさん。

 

俺はトウジさんの目をじっと見た後、口を開いた。

 

「―――――復讐を受け入れて、死ぬ………なんてことは絶対にしないでください」

 

「………っ」

 

言葉を詰まらせるトウジさん。

 

トウジさんはずっと悔いていた。

過去に自分がしたことを。

八重垣さんとクレーリアさんを引き裂いたことを。

 

彼に殺されても文句は言えない。

それだけの理由があると、言っていた。

 

今もその贖罪の気持ちでいっぱいになっている。

 

もし、八重垣さんがこの場に現れて、剣を向ければ、トウジさんは受け入れてしまうだろう。

 

だけど、それは――――――。

 

「ここで復讐を受け入れたら、イリナは………一生消えない心の傷を負います。父親を………大切な家族を守れなかったと」

 

俺は胸を抑えて続ける。

 

「俺も………失うことの辛さも苦しみも散々味わってきました。大切な人を目の前で失って………。その光景は今でも目に焼き付いています。その時、負った傷は俺のここにずっと残っていて、思い出す度に胸が締め付けられるんです………。多分、この先もずっと………」

 

「………イッセーくん。君は………」

 

トウジさんが何かを言いかける。

 

だけど、俺はそれを遮って言った。

 

「だけど、イリナはまだ間に合う。おじさんは生きてますから。俺はイリナが泣く姿なんて見たくありません。俺の幼馴染みには笑っていてほしいから………。だから………死のうとしないでください」

 

「………だが、私は………彼は………」

 

「分かってます。当時の事情もあったのも理解しています………。だけど、おじさん達がしたことは間違っていた。俺もそう思ってます。復讐されても文句が言えないのも分かってます。だから、背負ってください。向き合ってください、自分の罪と。―――――生きて、彼に償い続けてください。それがおじさんがするべきことだと俺は思います」

 

贖罪の方法なんて分からない。

どうすれば、許してもらえるか。

もしかしたら、許してもらえる方法なんて無いかもしれない。

 

それでも、生きて自分の罪と向かい合う。

 

それが、こうして生きている自分に唯一出来ることだから―――――。

 

 

 

 

「イッセーくん、ちょっといいかな?」

 

病室を出た俺を待っていたのはイリナだった。

 

俺はイリナのおでこを指で押した。

 

「こーら。女の子が立ち聞きなんてはしたないぞ、って誰かに言われるぞ?」

 

「立ち聞きなんてしてないよ。話は聞こえなかったし。というか、それって誰よ?」

 

「知らん」

 

「もう、相変わらずテキトーね」

 

俺達は第一天にある高い建物の屋上に移動した。

 

そこからは第一天の風景が一望でき、ある意味名所だと思った。

 

天使の前線基地とはいえ、人間界や冥界の都市部のように建物がずらりと並んでいる。

空には宙に浮かぶ建造物。

 

幻想的であり近代的な場所だよな、ここって。

 

屋上の手すりに身を任せながら、イリナが訊いてくる。

 

「ねぇ、イッセーくん。この間のこと覚えてる? 皆に私達の子供時代の話をしたってこと」

 

「ああ。そうしているうちに皆と仲良くなったってやつか?」

 

「うん。あの町に戻ってから友達がいっぱいできたわ。オカルト研究部の皆だけじゃなくて、クラスメイトとも、他の学年の人とも。龍神のオーフィスさんともお友達になれた」

 

「そうだな。イリナは色々な人と分け隔てなく仲良くなれる。ある意味、才能なんじゃないかな? あの自然な接し方は見習いたいところだよ」

 

俺がそう言うと、イリナは表情を陰らせた。

 

「………本当は心の中で『この人と仲良くなれるのかな?』って不安ばかりなのよ? けれど、私はミカエルさまのA。誰とでも隔てなく接することができないといけない。私は………ミカエルさまの慈悲を少しでも体現しなくてはいけないから。………でもね、一つだけ思うところがあるの」

 

「思うところ?」

 

俺が聞き返すと、イリナは頷く。

 

「うん。………もし、私もゼノヴィアと一緒にあの町に残っていたらどうなっていたのかなって。………今と違ったのかなって。イッセーくんは悪魔で、私は天使。子供の頃は同じ人間だったのに、今では種族が違うね」

 

異世界に行ったりと色々あったものの、俺は今年の四月までは人間だった。

イリナも夏頃に天使に転生した。

 

………種族が違う。

 

イリナは駒王町で起きた過去の悲恋を気にしているのだろう。

悪魔の俺と、天使である自分を重ねている。

 

俺はイリナの隣に行くと手すりに手をかける。

 

「種族が違う、か。それがどうした。俺とイリナの仲だぜ? そんなもんが関係すると思うか?」

 

俺はそう問いかけるとイリナの顔を見る。

 

「人と人を繋ぐのは種族なんてもんじゃない。互いを想う気持ち――――絆だ。とっくに絆で繋がっている俺達に禁じられた関係なんてものはない。もし、そんなこと言い出すやつがいたら往復ビンタして蹴り飛ばしてやるぜ」

 

ニッと笑みを見せる俺。

そんな俺を見てイリナもクスリと笑った。

 

しかし、途端に顔を俯かせて―――――

 

「もし………もしだよ? イッセーくんの大切な人と私に危険が及んだら―――――」

 

「全部だ」

 

俺はイリナが言い終える前にハッキリと断言した。

 

だって、そんなもの決まりきった答えだったから。

 

「俺は俺が守りたいやつは全部守る。それが答えだ。無茶だと、無理だと言うなら、世界の法則ねじ曲げてでも守って見せる」

 

「………すっごい発言したよね、今」

 

「おう。って言うかさ………」

 

俺はイリナの頭をポンポンと撫でると抱き寄せた。

 

イリナの頭が俺の胸に当たる。

 

「今の質問、答えは最初から一つじゃないか。イリナだって、俺の大切な人の一人なんだからさ」

 

正直な答えだ。

イリナは俺の幼馴染みで、大切な女の子。

守りたい人だ。

 

イリナは声を震わせる。

 

「………イッセーくんってズルいよね………。そんなこと言われちゃったら………ダメじゃん………っ。ずっと、そばにいたくなっちゃうよ………!」

 

「じゃあ、いろよ。まぁ、離れようとしても逃がさないけどな?」

 

「やっぱり、強引だよね………イッセーくんって」

 

「最強の女神さまから鬼畜教育受けてるんだ。強引にもなるさ。――――これからも、この先も、ずっと一緒に笑いあおうぜ」

 

「………うん!」

 

 

 

 

しばらく屋上にいた俺達は皆がいる休憩所へと向かうため、建物の階段を下りていた。

 

建物の中は天使の人でいっぱいで、色々と書類を運んでいる人の姿も見えた。

 

流石に前線基地だけあって忙しそうだな。

 

建物の中を眺めながら階段を降りていく中、イリナが言う。

 

「ありがとう、イッセーくん」

 

「ん? 何が?」

 

俺が問うとイリナは頬を赤くしてモジモジし始める。

 

「え、えっとね………私のこと、大切な人って言ってくれて………嬉しかった」

 

「当然だろ? イリナも家族みたいなもんだし。大切な女の子だからな」

 

俺は微笑みながらそう答える。

 

すると、イリナの顔がますます赤くなって………。

 

「あ、あのね、実は昔―――――きゃっ!」

 

イリナが何かを言いかけたと思えば、足を滑らせやがった!?

 

ここ、階段の上だよ!?

 

こんなところで転げ落ちたら、結構なケガするぞ!?

 

「ちょ、まっ、危ねぇ!」

 

俺は慌ててイリナを庇おうとして――――――。

 

イリナと一緒に階段から落ちた。

腰から思いっきり。

 

ギリギリのところで庇えたと思うけど………。

 

あー………腰痛ぇ………。

 

「イテテテ………。イリナ、大丈夫か?」

 

「わ、私は大丈夫! ご、ごめんね! 私の不注意で――――ひゃぁっ!」

 

途端にイリナが嬌声をあげた。

 

何事かと思ったが、よくよく見てみると―――――――

 

イリナが半裸………ほとんど裸になってるんですが!?

服のボタンは全て外れてパンツもズレ落ちてる!?

 

これやったの、俺か!?

あの一瞬で何がどうなればこうなるんだ!?

 

俺の右手はイリナのもっちりとしたおっぱいを鷲掴みにし、左手はイリナの下半身に―――――

 

「い、イッセーくん………こんなところで………わ、わたしを堕とす気なのね………? はぅんっ!」

 

左手の指を動かすとイリナの体がピクンっと跳ねた!

 

これはまずい!

 

「こ、こここここれはわざとじゃないからね!? 助けようとして………不可抗力だ!」

 

ちょ、人集まってきてるから!

幸いにも男性天使は見当たらないが、女性天使が集まってきてるから!

 

敵を見るような目で俺を見てくるんですが!?

 

………あれ?

見知った気配が………俺の横にいるんですけど………。

 

ギギギと錆びたネジのように首を横に回すと―――――そこにいたのは仁王立ちのアリスさん!

 

目元をひくつかせて、怒りのオーラを纏っていらっしゃる!

 

「あんたねぇ………」

 

「ちょい待ち! 落ち着こう! とりあえず、俺の話を聞こう! 暴力からは何も生まれないぞ!? これは不可抗力………事故なんだ!」

 

「事故で裸になるかぁぁぁぁ! 場所を選べぇぇぇぇぇぇえ! このドスケベ勇者ぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ギャァァァァァァァァァァァッ!」

 

俺の悲鳴は第六天のミカエルさんにも届いたそうです。

 




最後のはリトさん的なあれです(笑)

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