ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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17話 終わる戦い、続く激戦

[木場 side]

 

デュリオさんが前に出る。

師であるエヴァルド・クリスタルディの前に立った、

 

エヴァルド・クリスタルディは弟子に問う。

 

「デュリオ、教会最強と称されたおまえは何のために戦う?」

 

「―――――皆が平穏に暮らせるために。それが唯一絶対の理由でいいじゃないっすか」

 

師の問いに彼は満面の笑顔でそう返した。

どこまでも優しい笑顔で。

 

十枚にも及ぶ純白の翼を広げ、黄金のオーラを纏った天界の『切り札』と呼ばれた男は手元に光を終結させていく。

 

それは光の槍でも剣でもなかった。

 

現れたのは―――――七色に光るシャボン玉。

 

シャボン玉はデュリオさんの手元を放れると無数に広がり、結界内だけでなく結界の外にまで広がっていった。

 

七色のシャボン玉が一帯を覆う幻想的なその光景にこの戦場にいる者達全ての動きが止まる。

 

デュリオさんが言う。

 

「『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』の応用技――――『虹色の希望(スペランツァ・ボッラ・ディ・サポネ)』」

 

スペランツァ・ボッラ・ディ・サポネ。

イタリア語で「希望のシャボン玉」を意味する。

 

シャボン玉が僕の手に落ちて儚く弾けて消えてしまう。

刹那、僕の脳裏に懐かしい記憶が甦る。

 

 

それは―――――僕が過ごしたあの施設での記憶だ。

 

 

 

『ねぇ、この施設を出たら、皆は何になりたい?』

 

僕達は夢を語った。

外に出たら、何になりたいか。

何がしたいか。

 

『僕は画家かな。イェスさまの絵を描いて表彰されたいな』

 

『私はシスターになりたいわ。あ、でも、お花屋さんにもいいなって』

 

『わ、私は皆と一緒に仲良く暮らせたら、それでいい…………かな』

 

僕も彼女と同じことを口にした。

 

そう、皆と一緒にいられればそれで――――――。

それで良かったんだ。

 

エクスカリバーのことなんてどうでもよかった………!

皆、夢があって、希望があって、普通の子のように生きていければそれでよかったんだ…………!

 

聖剣だとか、適正だとか…………それは僕達の夢のための要素のはずだった…………!

 

僕はこんな…………こんなことすら忘れていた。

一度は彼らの想いを受け取りながら、それなのに僕は忘れてしまっていた…………!

 

彼らは復讐なんて望んでいなかった…………!

ただ生きたかっただけなんだ…………!

 

そして、僕に託したものも…………!

 

僕は…………僕は…………!

 

あの人の声が脳裏に甦る。

 

『私のため、そして、自分のために生きなさい』

 

僕を救ってくれた紅髪の女性。

僕の幸せを願ってくれた、姉のような大事の人。

 

『本当に大切なものは何なのか、頭冷やして良く考えてくるんだ。それから帰ってこい。俺達はいつでも、おまえを待ってるからさ』

 

いつか、彼に言われた言葉だ。

エクスカリバーへの復讐心に囚われた僕に彼は言ってくれた。

 

僕は…………一体、彼の背中から何を学んできたんだ…………!

理解したつもりで、全く理解できていなかった…………!

大切なことを二度も忘れてしまっていた…………!

 

…………リアス…………姉さん、イッセーくん…………僕は本当に…………本当に大馬鹿野郎でした…………。

 

見れば、この戦場にいる誰もが号泣していた。

武器を地面に落として、ただただ泣いていた。

 

デュリオさんが言う。

 

「そのシャボン玉は触れた者に大切なこと大切な人を思い出させる。それだけの能力さ。けど、俺が一番欲しかった能力はこれだったから、応用で作り出したんだ」

 

あの虹色のシャボン玉にはそのような特性があったのか…………。

 

誰よりも優しい能力。

神滅具の力を破壊には使わず、全く別の能力として彼は――――――。

 

しかし、このシャボン玉を受けても剣を握る者がいた。

エヴァルド・クリスタルディは涙を流しながらも、その手にエクスカリバーを握っていた。

 

「だとしてもだ! 一応の決着を見なければ我らの決起は無駄になるのだよ! デュリオ!」

 

「―――――ならば、決着をつけましょう」

 

シスター・グリゼルダさんが六枚の翼を広げて、手元に光を集めて弓矢を作り出す。

 

一度、耳にしたことがある。

ハートのQが持つ独自の能力で、それは攻撃ではなく―――――。

 

イリナさんも呼応して立ち上がる。

 

「オートクレール、力を貸してね! エクスカリバーを使っていた者としては一矢ぐらいは報いたいから!」

 

イリナさんも四枚の純白の翼を広げて飛び出していく!

 

僕は彼女の背中を見ながら、自分の内側へと意識を向けた。

 

その時だった――――――。

 

体から聖と魔、二つの力が溢れ出てきた。

それは魔人と化したジークフリートと戦った時―――――禁手を越えた新たなステージへ至った時と似ている。

 

でも、決定的に違っていた。

 

この溢れ出る力は今までよりも澄んでいて、聖と魔の相反する力がより一つになって、新たに顕現する。

 

僕は再びその領域に至る。

見た目は変わっていない。

だけど、今までよりも静かに淀みのないオーラを纏っていた。

そして、聖魔剣の刀身も一点の曇りもなく、創った本人の僕が美しいと感じてしまうほどだった。

 

僕は呼吸を整えて、目を開く。

 

地面を蹴って前に出る。

体が、心が軽い。

どこまでも飛んでいけそうな、そんな気すらした。

 

突っ込んでいく僕とイリナさんに対して、エヴァルド・クリスタルディは分身を幾重にも作り出して僕達を翻弄しようとする。

 

ダメージを受けて、万全じゃないはずなのにイリナさんの身のこなしは戦う前よりも軽くなっていて、次々に分身を斬り倒していく。

 

僕は高く跳躍し、分身体の頭上を飛び越えて一体の分身へと斬りかかった!

 

その分身体が驚愕する。

 

「バカな…………! 見切ったというのか!」

 

見切った………というのは少し違う。

ただ感じた。

 

どれが分身で、どれが本体なのか。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

僕はただ真っ直ぐに剣を振り下ろす!

 

激しく衝突する聖魔剣とエクスカリバー!

 

聖魔剣を受け止めた瞬間、エヴァルド・クリスタルディは苦しげな表情を浮かべていた。

今の一撃、破壊の力を籠めた一撃が相当響いたのだろう。

 

「―――――っ! レプリカとはいえ、エクスカリバーにヒビを入れるか!」

 

彼だけでなく、エクスカリバー・レプリカにもかなりのダメージを与えられたようだ。

 

鍔競り合う中、驚くべきことが起きた。

 

エクスカリバーの聖なるオーラを僕の聖魔剣が吸いとり、逆に僕の聖属性が強化されたのだ。

聖なるオーラが聖魔剣と僕の体を包み、その出力を更に上げていく。

 

エヴァルド・クリスタルディは更に驚愕の声を漏らした。

 

「エクスカリバーの聖なる波動を魔剣の力で吸いとり、自身の聖属性を高めたというのか!?」

 

聖魔剣により聖なる波動を一時的に全て吸いとられたエクスカリバーは、刀身に生じたヒビを更に広げていく。

 

そこにイリナさんがオートクレールを振り下ろした!

 

「オートクレールよ! 浄化の力を!」

 

主の想いに応えたオートクレールがその特性を解き放つ!

 

オートクレールは浄化の力を持つ。

それを真正面から受ければ戦士達の偉大な師であろうと戦意を消し去られる。

 

しかし―――――。

 

「ハッ!」

 

エヴァルド・クリスタルディは気合いの一閃を放ち、その場をやり過ごす!

 

情念を失われつつあるなか、気合いで凌いだのか!

彼の気合いに応えるようにエクスカリバー・レプリカも失われた聖なる波動を取り戻していく。

 

その時、背後から特大の光力が籠められた矢がこちらに飛んできた。

それはイリナさんの背中に撃ち込まれると、彼女の体は莫大な光を放ち始めた!

 

「私の矢は天使の力を高めます!」

 

そう、シスター・グリゼルダさん、ハートのQが持つ能力だ。

彼女によって矢を撃ち込まれた天使は一時的にその力を飛躍的に向上させる。

 

イリナさんの力が高められたことで、オートクレールも強さと特性を増す。

 

僕の聖魔剣によって聖なる波動を吸いとられたところに、強化されたイリナさんの一撃。

 

その一撃により、エクスカリバー・レプリカは限界を迎える。

――――――エクスカリバーの刀身が上下に分かれた。

 

「―――――先生、いきます」

 

デュリオさんがそう告げる。

 

空には広大な雷雲。

周囲には鋭い冷気が流れ、エヴァルド・クリスタルディの足と砕けてもなお握られるエクスカリバーを氷で覆う。

 

そして――――――。

 

上空から降ってきた極大の雷は十字架の結界を破壊し、戦士達の師を包み込んでいった―――――。

 

 

 

 

地面に横たわるエヴァルド・クリスタルディ。

ジョーカーの一撃を最後のとどめに、戦士達の師は倒れた。

 

部下の女性戦士の回復を受けたおかげで、彼は致命的なものは回避したようだが、神滅具の威力は凄まじく、立つことが出来ないでいる。

 

師が倒れたこともあり、他の戦士達は既に戦意を失っている。

 

結果的にこの勝負は僕達の勝ちに終わった。

 

横たわりながら、エヴァルド・クリスタルディはデュリオさんに言う。

 

「…………最初からあのシャボン玉を作ればもっと楽に勝てただろうに。いや、禁手になれば、私達を容易に一網打尽に出来たはずだ」

 

彼の言う通りだ。

 

デュリオさんがあのシャボン玉を出していれば、戦士達の戦意は早々に失われていただろうし、禁手になれば、戦況は一気にこちら側に傾いただろう。

 

しかし、それでは―――――

 

「剣で語れなきゃ戦士ってのは満足できないって思ったんで。ある程度経ってから使おうって決めてただけです。不完全燃焼よりは出しきれた方が良いでしょ? それに俺の禁手はどうしようもなく聞き分けのない相手か、まったく反省の色も見えない悪者に使うって決めてるんで」

 

「…………まったく、甘いな、おまえは…………。昔からそうだ。…………デュリオ、おまえの勝ちだ。好きにするがいい。だが、あいつらは見逃せ。あくまで私が連れてきたのだ。私にこそ咎がある」

 

全てを受け入れると言った表情のエヴァルド・クリスタルディ。

今回の罪を全被りするつもりなのだろう。

 

その言葉に戦士達が異を唱える。

 

「待ってくれ、デュリオ!」

 

「殺すならば我らを殺せ! 先生は私達の想いに応えてくれただけなんだ!」

 

「咎を受けるべきは俺達だ!」

 

必死に師を包み込んで庇おうと立ち上がる戦士達。

この光景だけて、この男がどれだけ敬われているかが分かる。

 

しかし、彼らの師は首を横に振った。

 

「…………ここにいる皆は悪魔や吸血鬼に人生を狂わされた者ばかりだ。私もそうだったよ。それらを倒すことでしか生き方を見いだせなかったたけだ。…………さあ、私だけを罰せよ。この子達はここから生き方を変えられる」

 

彼の表情はこれまでの厳しいものと違い、とても温和なものだった。

これがこの男の本来の顔つきなのだろう。

 

「…………なにもしないっすよ?」

 

ため息を吐いたデュリオさんはその場に座り込んでしまった。

 

師は訝しげな表情で問う。

 

「なぜだ?」

 

「先生を倒したら、そっちの方が恨まれるに決まっているでしょう? それに生きてりゃ美味いもん食い放題っす。…………世の中、それがどれだけ尊いか、知らない奴が多すぎなんです」

 

師の問いにカラカラと笑いながら弟子は答えた。

まるで今までの戦闘が嘘だったかのような、そんな優しげな笑みで。

 

エヴァルド・クリスタルディの目にうっすらと涙が浮かぶ。

 

「…………甘い。おまえは本当に…………甘いな」

 

 

[木場 side out ]

 

 

 

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

俺の悲鳴が辺りに響く。

俺は強烈な一撃をくらい、瓦礫の下敷きになっていた。

 

今の俺の姿は鎧のあちこちが壊れ、赤く染まった生身が晒されている状態。

 

俺は完全に追い込まれていた。

 

「ほらほら、もっと頑張りなよ。そんなんじゃ、いつまで経っても僕は倒せないよー?」

 

空から聞こえてくる呑気な声。

 

見上げると宙には黒い城を背にして俺を見下ろす青年(・・)が一人。

 

その容姿はどこかヴァーリに似ているような気がする。

白いパーカーを被っているあたりは相変わらずだが、左腕には黒い籠手。

パーカーの下からは青年の青い瞳がこちらを捉えていた。

 

そう、あの青年はアセムだ。

 

あいつは状況に応じて体を変えられるらしく、今は戦闘用の肉体らしい。

幼い少年の姿から変わり、今は俺とそう変わらない青年の姿をしている。

 

「アハハッ♪ パワーは凄いけどまだまだだねぇ。せっかく君の得意な肉弾戦で受けてるのにさ」

 

俺達の戦いは先程までいた部屋を突き抜け、城の外で繰り広げられているのだが、完全に俺が押されていた。

こっちはEXAまで使っているのに全く歯がたたない。

しかも、純粋な格闘戦で圧倒されている。

こちらの攻撃は一切当たらず、一方的な戦いになっていた。

 

楽しげな笑みを浮かべるアセムは手元にテニスボールサイズの黒い球体を作り出すと、こちらへと投げてきた!

 

今くらったダメージで俺は動くことが出来ず、真正面から受ける形になる!

 

両手で受け止めているのに…………押されている!

こんな小さいエネルギー弾なのになんて重さだ!

リゼヴィムの比じゃねぇぞ!

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!』

 

倍加した力の全てを使ってエネルギー弾を食い止める。

しかし、それでも、じわりじわりと俺の体は後ろに下がってしまっていた。

 

足が地面にめり込み、潰れそうになる!

 

俺は全身の力に籠めて全てを出し尽くすように叫んだ!

 

「ぐぬ………うぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

何とか体を反らし、エネルギー弾の軌道を上空へと変える。

軌道を変えたエネルギー弾は弧を描いて遥か遠くの地に着弾。

 

そして―――――――。

 

 

ドゴォォォォォォォォォォォォン!

 

 

冥府全体を揺らす大爆発を起こした!

巨大なキノコ雲が発生し、衝撃波がこちらまで伝わってくる!

核ミサイルかよ!?

 

アセムは少し感心したような表情で言った。

 

「あらら、今のを流すとはね。致命傷ぐらいは与えるつもりだったんだけどね」

 

「はっ、はっ、はっ………致命傷で留めるつもりだったのかよ、今ので………」

 

「そう? 今の状態で(・・・・)出せる力の半分ぐらいは使ったんだよ?」

 

「おいおい、嫌な情報だな、それ………」

 

今の状態、しかもその半分の力であの威力。

あの籠手は俺の複製体や『システム』を覗いて参考にしたっていうくらいだから、おそらく禁手(バランス・ブレイカー)に似た何かがあるはずだ。

 

つまり、あいつのてっぺんはまだまだ見えないってことだ。

 

マジで嫌になるぜ。

EXAでも手が届かないなんてな…………!

 

俺は飛び上がると、アセムがいる高さまで飛翔する。

 

城のあちこちから爆音が聞こえてくる。

 

皆もまだ戦ってるんだろうな。

 

アリスはヴィーカ。

 

美羽はディルムッド達のところに向かわせた。

ベルの相手はディルムッドとレイヴェルだけじゃキツいからな。

 

…………こっちに残るって言ってきたけど、今の美羽じゃ俺達の戦いには着いてこられない。

ま、俺も相当ヤバイんだけど。

 

で、ヴァーリは――――――。

 

「ガハハハハ! オラオラ、もっとかかってこいよ、白龍皇さんよぉ!」

 

「いいだろう! 『破軍』のラズル! おまえとの戦いは心が躍るな!」

 

うん、ラズルと場外戦やってるわ。

滅茶苦茶楽しそうにしてやがる。

あいつらは好きにやらせておこう。

バトルマニアめ!

 

皆の戦いの気配を感じながら、俺はアセムへと突貫する。

 

フェザービットを全基展開した後、気の残像を生み出しアセムを翻弄するように軌道を変えて接近していく。

 

ビットによる全方位からの砲撃。

加えて、接近戦で繰り出す拳。

 

打ち出すだけで大気を揺るがす程の威力を持った拳だが、アセムはそれを難なく受け止めていく!

 

「良い拳だよ。受け止める度に響いてくる。だけど―――――僕を倒すには威力不足だ」

 

奴の左の拳、黒い籠手に黒いオーラが集まっていく。

すると、奴の掌に薄い紫色をしたガラス球のようなものが作り出される。

 

「―――――結晶球」

 

奴は俺の腕を掴んで引き寄せると、ガラス球を俺の腹に撃ち込んできた!

 

回避しようと右手で庇うが、ガラス球は俺の手を飲み込み、次第に全身を覆ってしまう!

 

俺は大きくなったガラス球に閉じ込められてしまった!

 

しかも最悪なことに――――――。

 

「くっ………! 動けねぇ…………!」

 

閉じ込められた俺は指一本動かせなくなっていた。

どれだけ力を籠めようともガラス球はびくともしない。

 

まるで、全身をコンクリートにでも固められたような感覚だ。

 

「ほーら、早くしないと撃っちゃうよ? 三数える前に抜けないとキツい一撃が君を襲うよ?」

 

「っ!」

 

「はい、イーチ」

 

その瞬間、奴から放たれたエネルギー弾がガラス球ごと俺を吹き飛ばした!

ガラス球は砕けて、俺は脱出できたものの、今の衝撃で更にダメージを負ってしまった!

 

つーか、あの野郎…………!

 

「二と三は!?」

 

「知らないねぇ、そんな数字は。男は一だけ覚えていれば生きていけるんだーよ。…………って、アニメでやってた」

 

「またアニメかよ!」

 

ちくしょう、ふざけやがって!

こんなふざけた奴に俺はやられてるの!?

泣けてくるわ、色々と!

 

ええい、リゼヴィムとは別の方向で腹立つけど、やっぱ強ぇ!

 

アセムは腕を組みながら不敵に笑う。

 

「さてさて、このままじゃどう見ても一方的だ。決着もつけようと思えばいつでもつけられる」

 

「だったら、なんでそうしない?」

 

俺が問いかけると、アセムは楽しいことを思い出したような表情で答えた。

 

「天界で君が見せてくれただろう? あれを待っているんだよ。あれなら今の僕(・・・)になら届くからねぇ。なんでしてこないの? 君も分かってるだろう?」

 

あれか………。

 

俺もあれが出せるならとっくに出してるよ。

今の状態だと出せないから、ここまで苦労してるんだろうが。

 

俺は無言のまま構えを取った。

 

アセムが言う。

 

「あれ? やっぱり出さない感じなの? もしくは前回みたいに途中で止まってしまう感じ? まぁ、どちらにしても僕にとっては残念な話なんだけどね」

 

アセムはゆっくりと腕を上げて、掌をこちらに向けた。

そこに黒いオーラが、先ほどの核ミサイルみたいな威力を持ったエネルギー弾がチャージされていく。

 

「それじゃあ、今日はここで終わり―――――」

 

アセムがこの戦いの終わりを宣言し、俺を倒そうとしたその時だった。

 

俺の耳元に通信用魔法陣が展開される。

 

連絡を取ってきた相手、それは――――――――。

 

『おう、イッセー! 生きてるか?』

 

アザゼル先生だった!

 

いきなり生存を訊いてきたよ、あの人!

生きてるわ!

ボロボロだけど!

 

魔法陣の向こうからアザゼル先生の声が続く。

 

『そっちの状況は分かってる。結構やばそうだな。だが、何とか間に合ったぜ』

 

「間に合った? 先生、それはまさか――――――」

 

俺の声に、先生は自信に満ちた声で返してきた。

 

『ああ。おまえのEXA、乳力(にゅー・パワー)を安定させるための装置の調整が今しがた終わった。今からそっちに送る!』

 

すると、俺とアセムから離れたところに魔法陣が展開される。

それは転送用の魔方陣。

 

魔法陣から現れたのは―――――――一機の戦闘機のようなものだった。

 

大きさは俺の上半身よりやや大きいくらい。

全体が赤く、機体の各所に赤龍帝の鎧にある宝玉が埋め込まれてある。

 

あれが――――――。

 

『そうだ。そいつが乳力安定補助装置。その名も―――――』

 

 

 

 

先生はその名を告げた。

 

 

 

 

 

『―――――――オッパイザーだ!』

 

 




シリアスブレイク投下ぁぁぁぁぁぁ!

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