ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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2話 眷属、増えます!

[木場 side]

 

先日の集まりから二日が経った。

 

あれからライザー・フェニックスと王者ディハウザー・べリアルの件に関しては全く進展がない。

冥界、魔王さま方まで動く程の事態になったが、二人の発見には至っていないそうだ。

 

カメラの死角で何が行われていたのか、僕達には全く検討がつかないけど、イッセーくんの言うように今はただ無事を信じることしかできない。

 

僕達は対テロリストチーム『D×D』。

有事の際には動かなければならない身だ。

冥界が混乱している今だからこそ、落ち着いた対処が僕達に求められる。

 

そうは言ってもレイヴェルさんは実の妹だ。

僕達以上に心配しているだろう。

 

しかし、レイヴェルさんは普段通りに生活を送っていた。

早朝のトレーニングに励み、学校に通い、放課後は部活に顔を出す。

契約活動の方でもいつも通りの成果を挙げているようだ。

 

イッセーくん曰く。

 

『レイヴェルは俺達が思っているより強い。だから大丈夫だ。…………それに受け止める時はしっかり受け止めるからさ。それも俺の役目だ』

 

とのことだった。

 

後で美羽さんに訊いてみたところ、先日の集まりの後、一人泣きじゃくるレイヴェルさんをイッセーくんはずっと抱きしめていたらしい。

何も言わず、ただ優しく、彼女の不安や悲しみを受け止めるように。

 

レイヴェルさんがいつも通りに過ごせているのはそのお陰だろう。

 

そうして、いつも通りの生活を送ってきたこの二日だったけど、今日はちょっとしたイベントがあった。

 

それは―――――。

 

「そんじゃ、ちょっくら行ってくるよ」

 

イッセーくんが僕達を見渡してそう言った。

 

僕達オカルト研究部とアザゼル先生は再び、兵藤家上階にあるVIPルームに集まっていた。

 

実は今日、イッセーくんは異世界アスト・アーデに向かう。

理由はモーリスさんとリーシャさんを眷属にするため。

二人は向こうの世界でそれぞれ役職を持っている。

眷属にするためにはまず、それを何とかしなければならない。

 

そういうわけで、イッセーくんはモーリスさんとリーシャさんの三人で向こうの世界へ一旦戻るそうだ。

 

アザゼル先生が言う。

 

「結局、三人で行くのか?」

 

「一応。何かあった時のためにアリス達は置いていきます」

 

「まぁ、次元の渦ってのは何もかも不明なことだらけだ。毎回同じとは限らんしな」

 

次元の渦。

それに呑み込まれた者は異なる世界へ行けるというもの。

向こうで過ごした時間はこたらでは一瞬という何とも不思議な現象が起きる。

先生曰く、次元の渦によって強烈な時空の歪みが生じた結果、時間の流れがそこで変化しているのではないかと考えられるそうだ。

 

アウロス学園の際、クリフォトが使用した結界は覆った町と、その外での時間の流れを変えていた。

結界の内側では数時間経っていたにも関わらず、結界の外では数分だった。

次元の渦による時間のズレはこの歪みを更に強めたものだろう、とのことだ。

 

あくまでアザゼル先生の推測ではあるが。

 

前回は美羽さんが持つあちらの世界への指向性を利用したが、今回はモーリスさん達が鍵となる。

 

イッセーくんがアリスさんに言う。

 

「こっちは任せる。美羽とレイヴェルも」

 

「了解了解。こっちは私がいるから何も問題ないわ」

 

「…………本当に?」

 

「な、なによぅ…………わ、私だってね、やるときは殺るのよ!?」

 

「字が違う! 殺るってなに!? 不安しかねぇ!」

 

「どれだけ信用ないのよ、私!?」

 

あ、相変わらず二人は仲が良いと言うか…………。

 

でも、こんな二人の光景はもう見慣れてしまった。

レイヴェルさんも苦笑しているが、このような日常的な光景が彼女をほっとさせる要因の一つなのかもしれないね。

 

実はイッセーくん達もそれを分かっていたりして。

 

イッセーくんは咳払いすると改めて言う。

 

「ま、おふざけはこの辺で。すぐに帰ってこれると思うけど、頼んだぜ『女王』」

 

「任せときなさいな、主さま」

 

ドタバタから一転、笑みを浮かべる二人。

 

イッセーくんはモーリスさんとリーシャさんの二人と手を繋ぐと前回の時のように円陣を組んだ。

 

ジェットエンジンのような甲高い音が室内に響き始め、三人を光が包む。

 

やがて、その光は目を開けられないほど強くなって――――――。

 

「行ってくる!」

 

甲高いイッセーくんがそう言ったのが聞こえた。

 

それから少しして、光がおさまっていくとようやく目が開けられるようになる。

 

 

 

その時、僕の目に映ったのは―――――。

 

 

 

「皆さん、お久しぶりです! ニーナ・オーディリアです! これからお世話になります!」

 

…………なぜか人数が増えていた。

 

 

[木場 side]

 

 

 

 

向こうの世界で数日過ごしてきたけど、こっちの世界では一瞬の出来事だった。

それは前回と変わらず。

 

そして―――――。

 

『…………』

 

帰ってきてから早々に開かれた家族会議。

沈黙がリビングを支配している。

 

なぜこんなことになったのかは言うまでもない。

向こうに行って、帰ってきたらメンバーが増えていたのだ。

当然だろう。

 

しかも、新たに連れてきたのは…………。

 

「改めまして。アリス・オーディリアの妹、ニーナ・オーディリアです」

 

「イッセーさまのお父さま、お母さま。そして、皆さま。オーディリア家のメイド長、ワルキュリア・ノームでございます。この度、こちらの世界で暮らすこととなりしまた。よろしくお願いいたします」

 

アリスと同じキラキラと輝く金髪の少女とロスヴァイセさんのような長い銀髪が特徴的なメイド服姿のお姉さんがお辞儀をする。

 

そう、俺が新たに連れてきたのはニーナとワルキュリアだ。

 

このことはアザゼル先生ですら、口を開けて唖然としている。

美羽やリアス達、そして、父さんと母さんもポカンとしていた。

 

驚いていないのはアリスくらいだ。

 

沈黙が支配する中、リアスが口を開いた。

 

「えっと………ニーナさん?」

 

「はい、リアスさん。あと、ニーナでいいですよ? リアスさんの方が歳上ですし」

 

「それじゃあ、ニーナ。その………国の方は良いの? アリスさんの跡を引き継いだんじゃ…………?」

 

リアスの質問にニーナは胸を張って答えた。

 

「それなら問題ないです。オーディリアは王政を廃して、民主主義国家になりましたから」

 

「民主主義…………?」

 

少し飲み込めていない様子のリアス。

いや、ニーナの言葉の意味は理解しているのだろうけど、なぜそうなったのかが分からないと言った感じだな。

 

すると、アリスが立ち上がってニーナの後ろに立った。

ニーナの肩に手を置いて言う。

 

「これはずっと前から考えていたことなの。かつての王が選択した戦争への道が、国を深刻な不安に陥らせて、国民の命を危険に晒してしまったわ。だから、私とニーナは決めていたの。戦争が終わり、安定した後で国のあり方を変えていこうって」

 

「国の行く末を、王じゃなくて国民が選べるようにね。その答えがそれだったの」

 

俺が美羽を連れてこちらの世界に戻ってきた後。

アリスはまずは長年争ってきた魔族との真の和平に向けて動いていた。

各国を説得し、幾度の交渉を経てようやくそこへ漕ぎ着けたんだ。

 

そして、ある程度世界が安定した後、オーディリアの民主化へと動き出したそうなのだが…………。

 

アリスがため息を吐く。

 

「そしたら、ロスウォードが出てきて、それどころじゃなくなったのよね」

 

ニーナも続く。

 

「そうそう。それで、お姉ちゃんがお兄さんとこっちの世界でラブラブしている間に私が残りの仕事を引き継いで完遂させたということなの」

 

「なっ…………!? ラブラブなんか…………!」

 

「してないの?」

 

「ぅぅ…………それは…………。ぅぅぅ…………イッセー…………」

 

妹に追い詰められたからって、こっちに助けを求めるなよ!?

つーか、押しに弱くなってないかい!?

 

アリスの反応にニッコリと微笑むニーナ。

なんか、すごく満足そうな顔だな…………。

 

モーリスのおっさんが言う。

 

「ま、アリスを嫁に出すってことで、あの時は議会の奴らに話をしたんだがな…………。まぁ、すんなり決まったのなんの。これも国民から愛されてるゆえなのかね」

 

「そうだよねぇ。お姉ちゃん、何だかんだで人気あったし。やっぱりツンデレが良いのかな?」

 

「いや、今のアリスはツンデレじゃないぞ? ツンデレデレだからな」

 

「え、そんなにデレデレしちゃてるの? うわぁ、貯まってた分、出てきちゃった?」

 

「この間なんて、イッセーの背中流していましたよ? それはもう新婚夫婦のようで。うふふ、私としては微笑ましくて良いんですけどね♪」

 

「リーシャお姉ちゃん、それほんと!?」

 

「ええ。朝なんておはようのキスをしているとのこと。もうデレッデレッです」

 

「そいつは初耳だぞ? もう昔の面影がねぇな、おい」

 

「ツンデレデレというより、ツンデレデレデレってことかな?」

 

「そこはツンデレデレデレデレデレだと思いますよ?」

 

「それなら、いっそのことデレだけで良いんじゃねぇのか?」

 

「いえ、私も最初はそう思ったのですが、やはりツンなところも残っているようで。まぁ、それがアリスの魅力なんでしょうね」

 

ニーナ、リーシャ、おっさんがアリスについて語っていく!

もう会話の全てに『デレ』が出てくるよ!

 

ワナワナと体を震わせるアリス!

 

「あんたら、デレデレデレデレうるさい! そんなにデレデレしてないわよ!」

 

「結局、デレしてるんだよね?」

 

「デレしてるってなに!?」

 

あははは…………。

何とも賑やかな姉妹なことで…………。

 

ま、まぁ、甘えてくるアリスは…………可愛い。

最高に可愛くて、一緒に弁当を作ったときはドキドキしたなぁ。

 

そういえば、とニーナが思い出したように手を叩く。

 

「お姉ちゃんって、お兄さんと子作りしたの?」

 

「はぁっ!? あんた、いきなりなんてこと聞いてくるのよ!?」

 

「え、だって、お兄さんが…………」

 

「イッセー!? あんた、話したの!?」

 

「俺かよ!? 話してない! 話してませんよ!?」

 

俺は全力で首を振って否定した!

そんなこと話すか!

 

アリスの反応にニーナはふっと勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 

「つまり、お兄さんとしたんだよね? うふふ~」

 

「ニーナ…………かまかけたわね…………っ!」

 

というか、君達…………こんなところでその話は止めてくれませんか?

父さんと母さんもいるし…………。

 

「「孫は近い…………!」」

 

「平常運転じゃねぇか! ツッコめ! 少しはツッコミしてくれ!」

 

「何を言っているの! 孫よ、孫!」

 

「そうだぞ、イッセー! 俺達は孫の顔が見たいんだ! 上級悪魔なのだろう? サッカーリーグくらいは面倒見れるのだろう?」

 

「あんたらもサッカーかよぉぉぉぉぉ!」

 

サッカーリーグって!

最初からリーグを求めてきたよ!

いったいどれだけ孫の顔が見たいんだ、あんた達は!?

 

と、ここでワルキュリアがアリスとニーナの間に入る。

 

「お二人ともこのような場所で男女の話はお止めください。元とはいえ、お二人は国を率いていた身。場所をわきまえてください」

 

おおっ!

流石はワルキュリア!

まともなお姉さん来たよ、これ!

 

しかし…………次の瞬間、ワルキュリアの鋭い視線が俺を捉えた。

 

「イッセーさま。アリスさまにどのようないかがわしい行為を行ったのか…………後でお聞かせ願います」

 

「聞くの!?」

 

「冗談です」

 

「心臓に悪いから、止めてくれる!? ワルキュリアが言うと冗談に聞こえないよ!」

 

微笑むワルキュリアだが、目が笑っていない!

どんなプレイしたと思われてるの!?

 

ふいにリアスがワルキュリアに訊く。

 

「メイド長のあなたがここに来たということは…………。他の使用人達はどうしたのかしら? あの城には結構な数がいたと思うのだけれど」

 

「それに関しても問題ございません。彼らには新たな働き口を用意してから、こちらに参りましたので。皆、優秀ですので、彼らを欲しがる者は多いのです」

 

 

 

 

ワイワイと賑わう兵藤家のリビング。

母さんとアーシアが全員分のお茶を注ぎ直したところで、話題を変えることに。

 

先生が訊いてきた。

 

「それで? こうして第二王女さままでお持ち帰りしたってことは、モーリスとリーシャの件も済んだってことで良いんだな?」

 

その問いにおっさんとリーシャは頷く。

 

「まぁな。こっちは無事に引き継ぎを終えてきた。これで、俺もお役御免ってわけだ」

 

「私もです。ただ、学園長である母からは、たまには帰って来るように言われましたけどね」

 

「そりゃそうだ。娘が次元越えて男のところに行こうって言うんだ。心配もするだろうさ」

 

そうだよね。

だから、これからはちょくちょく向こうの世界に行こうと思っている。

 

先生は顎に手を当てると呟いた。

 

「なんとかして、こちらの世界とあちらの世界を繋ぐことが出来れば良いんだが…………。時間のズレが生じるのも問題だが、何とかして安定させてやれば…………。二つの世界を繋ぐトンネルでも作れれば…………」

 

二つの世界を繋ぐトンネルか…………。

 

互いの世界が認知されている以上、二つの世界が交流を望む日が来るかもしれない。

もちろん、それはまだまだ先の話になると思う。

それまでに解決するべき問題も山積みだ。

 

でも、いつかは二つの世界が繋がりを持てる日が来るのかもしれないな。

 

先生は改めて俺に訊いてくる。

 

「とりあえず、おまえの眷属に加わるメンバーってことで良いんだな?」

 

「はい。四人とも俺の眷属になってくれると言ってくれましたから」

 

「…………ちょっと待て。四人………だと? まさか、この二人も―――――」

 

先生の視線がニーナとワルキュリアに向けられる。

とうの二人は微笑みながら頷いた。

 

ニーナが言う。

 

「だって、お兄さんと一緒にいたいですもの。お姉ちゃんともまた一緒になれますし」

 

ワルキュリアも続く。

 

「私の役目はアリスさまとニーナさまにお仕えすること。イッセーさまの眷属になるのは…………まぁ、ついでです」

 

ついで…………。

眷属になってくれるのは嬉しいけど、ついでって…………!

涙が出てくるよ!

 

ちなみにだが、ワルキュリアもそれなりの戦闘力を有している。

ありとあらゆる武器に精通していて、魔法も使える。

普段は薙刀を使っているけど、隠し武器とかも使っていてだな。

実力で言えば…………中級悪魔の上位クラスかな?

 

ニーナは戦闘力は皆無。

ただ、俺やアリスと一緒にいたいと言ってくれたので、眷属にすることにした。

多分、戦闘よりも事務の方で活躍してくれるだろう。

俺も大歓迎!

 

これを受けて先生が言う。

 

「厳しいことを言うがニーナに関しちゃ、戦闘では使えない。それは分かっているな?」

 

「もちろん。それでも俺はニーナを眷属にしますよ」

 

「…………ま、誰を眷属にするかなんて、そいつの自由だしな。当人同士の間で合意が取れているのなら尚更だ。おまえらがそれを望むなら俺は何も言わんさ」

 

先生はそう言うが…………。

 

リアスはむしろそれで納得みたいな表情をしていて、

 

「というより、モーリスとリーシャが加わるだけで十分ではないかしら?」

 

木場もそれに頷く。

 

「歴代最強の赤龍帝であるイッセーくん、白雷姫と称されたアリスさん、異世界の魔王の娘である美羽さん、不死のフェニックスであるレイヴェルさん。そこにモーリスさんとリーシャさん。既に常軌を逸したチームになっているね。…………ところで、駒はもう決めているのかい?」

 

「まぁな」

 

俺は家族会議が始められる前に持ってきていたケースを取り出す。

重厚なケースを開けると、中に入っているのは悪魔の駒だ。

 

現在、俺の手元に残っているのは『兵士』が八、『騎士』と『戦車』が二つ。

 

問題は誰に、どの駒を使用するかだが…………。

 

「モーリスのおっさんには『戦車』、リーシャとワルキュリア、ニーナは『兵士』を任せようと思う」

 

そう言うと、皆は少し首を傾げていた。

俺の駒の選択にやや疑問を抱いているらしい。

 

木場が訊いてくる。

 

「ニーナさんとワルキュリアさんは良いとして…………モーリスさんが『戦車』なのかい?」

 

「そうだ。知っての通り『騎士』は機動力を上げる。つまり、スピードを活かした奴が的確だろう。木場、おまえはその特性を活かして戦っているだろう?」

 

「そうだね。スピードが僕の持ち味だと思っているよ」

 

「じゃあ、おっさんはどうだ?」

 

俺が話をモーリスのおっさんに振ると、おっさんは首を横に振った。

 

「俺は祐斗みたいに駆け回るタイプじゃないだろ。こんなよぼよぼのおっさんが走り回るように見えるか?」

 

「どこがよぼよぼ!? あんたがよぼよぼなら、世界中よぼよぼだらけだよ! …………ま、まぁ、そういうわけだ」

 

俺も初めは『騎士』も考えたんだけどね。

でも、おっさんのスタイルに合わせるなら『戦車』がベストだと判断したんだ。

 

続いてリーシャだが…………。

 

「リーシャを『兵士』に考えた理由だけど、それはリーシャの新しい戦闘スタイルにある」

 

以前までの狙撃スタイルなら『戦車』を選んでいた。

そのまま、威力を底上げして一撃の威力を高めた方が良いと思ったからだ。

 

しかし、サリィとフィーナを従えた新しいスタイルは乱戦を想定したもの。

戦場を駆け回り、弾幕を張り、そして狙い撃つ。

 

「機動力、魔力量、そして攻撃力。これら三つを底上げするには―――――」

 

「プロモーション…………それで『兵士』の駒なんだね?」

 

「そういうこと。プロモーションして『女王』になれば、乱戦スタイルに合った強化になる。それにそのまま狙撃もできるしな」

 

「でも、ゲームでは特殊なルール…………例えばダイスとかでない限りは相手の陣地に入らなければ昇格できないよ?」

 

「まぁ、それはそうなんだけどさ…………。元々、リーシャの射程は長いし、魔力量だってかなりのものだ。これはおっさんにも言えることなんだけど…………」

 

俺の言葉を続けるようにロセが言った。

その表情はどこか呆れたような、諦めたような顔で、

 

「お二人とも駒の特性なしでも十分ということですね…………」

 

「うん…………」

 

再び部屋の空気が静まり返る。

 

主にグレモリー眷属の面々。

笑顔がひきつっている…………。

 

分かる…………言いたいことはよく分かるつもりだよ。

 

さて、どの駒にするかは良しとして…………。

 

「あとは駒の数だな」

 

「絶対、一つじゃ済まんだろ」

 

「ですよね…………」

 

とりあえず、俺はおっさんの前に『戦車』の駒を一つ置いてみる。

 

…………うん、案の定、反応ないや。

 

となると―――――。

 

俺は二つ目の駒をおっさんの前に置いた。

そこで、駒は赤く光を放ち、おっさんの体の中へと入っていった。

 

『戦車』の駒二つかぁ…………。

分かっていたけど…………。

 

「駒価値でいうと十………」

 

同じ『戦車』である小猫ちゃんがボソリと呟く。

 

これ、バアル戦のルールだと中々出せないよね。

駒価値十だもん。

 

おっさんは頭に疑問符を浮かべている。

 

「ん? 悪魔になったんだろ? 何か問題でもあるのかよ?」

 

「いや、なんでもないよ。これからもよろしくな、おっさん!」

 

「おう。任せときな。こらからもビシバシ稽古つけてやるよ! はっはっはっ!」

 

にこやかに笑うおっさん。

 

ま、これで良しとするか。

 

続いてリーシャだ。

リーシャの前に『兵士』の駒を一つずつ置いていく。

 

 

一つ…………反応なし。

 

 

二つ…………やっぱり反応なし。

 

 

三つ…………うん、分かってた。

 

 

四つ…………ですよね。

 

 

五つ…………う、うーむ

 

 

そして、六つめ。

ここで、ようやく『兵士』の駒が赤く輝いた!

 

六つの『兵士』の駒はリーシャの体内に入っていく。

そして、赤い輝きが収まり、リーシャは俺の眷属となった。

 

リーシャが胸に手を当てた。

 

「これで私もイッセーの眷属なのですね」

 

「うん。リーシャ、色々といたらない『王』だけどよろしくな」

 

「イッセーはもう立派だと思いますよ?」

 

俺とリーシャは握手を交わす。

 

さて、残るはニーナとワルキュリアだ。

 

俺は二人の前にリーシャと同じく『兵士』の駒を一つずつ置いた。

次の瞬間、モーリスのおっさん、リーシャと同じく『兵士』の駒は二人の中へと入っていく。

 

赤い光が収まると…………ニーナが抱きついてきた!

 

「やった! これで私もお兄さんと同じだね!」

 

おっぱいが…………!

あのニーナのおっきなおっぱいが顔に押し付けられて…………!

 

く、苦しい…………けど、嬉しい!

もっとこの柔らかさを堪能したいぜ!

 

ワルキュリアも少し安堵したような表情で呟く。

 

「まさか、私がイッセーさまの配下になるとは…………人生分かりませんね」

 

「俺もワルキュリアを眷属にするとは思ってなかったさ。でも、俺、頑張る。ちゃんとワルキュリア達の『王』を勤めあげてみせるさ!」

 

手をつき出す俺。

 

ワルキュリアは俺の手を取り、満面の笑顔で頷いた。

 

「ええ、よろしくお願いいたします。私も可能な限り、イッセーさまに力をお貸しします」

 

こうして、俺達赤龍帝眷属は新たなメンバーを迎え入れて、再スタートしたのだった。

 

 

 

 

赤龍帝眷属

 

王  兵藤一誠

女王 アリス・オーディリア

僧侶 兵藤美羽(変異の駒)

僧侶 レイヴェル・フェニックス

戦車 モーリス・ノア(駒二つ)

兵士 リーシャ・クレアス(駒六つ)

兵士 ニーナ・オーディリア

兵士 ワルキュリア・ノーム

 

 

 

 




赤龍帝眷属、増員!
ということで、駒はこんな感じです。

リーシャはサバーニャのトランザム思い出して、それで決めちゃいました(笑)
高機動狙撃兵(乱れ撃ち)!

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