というわけで、今回はシリアルはないかもです。
午前の授業が終わり、昼休みに入った時だった。
オカルト研究部の部室に急遽集められた『D×D』メンバー。
俺達が集まった理由はアザゼル先生から呼び出しがあったからだ。
先生は集まったメンバーを見渡してから言った。
「ティアマットから情報がいってると思うが、こちらでも確認できた。というより、通知があった。ライザー・フェニックスは無事だそうだ」
そう、今回呼び出されたのはライザーの件についてでだ。
ティアからは改めて通知があると言われていたけど、先生を通しての通知だったとは。
隣にいたレイヴェルは再度の知らせに胸を撫で下ろしていた。
先の知らせで安心はしていたものの、改めて無事だということか確認できたからだろう。
心から安堵しているようだ。
他のメンバーもレイヴェルと同じで安堵の息を漏らしている。
穏やかなムードになったところで、俺は先生に訊ねる。
「通知はティアからですか? いや、それなら直接俺に来るか…………」
「だろうな。俺にメッセージを送ってきたのはティアマットじゃない。―――――魔王アジュカ・ベルゼブブ。ライザーの身柄を確保したのはやつさ」
▽
[美羽 side]
アザゼル先生から通知を受けたその日の夜。
『D×D』メンバーは一旦解散となった。
ライザーさんの身柄は後日、フェニックス家へと直接送られるらしいけど、その前に今回の件に関する説明があるらしく、ボク達『D×D』メンバーは魔王アジュカ・ベルゼブブと出会うことになった。
ボクはお兄ちゃんとお風呂に入った後に自室に戻った。
そして、今はリビングに向かっていた。
お兄ちゃんは自室に籠っている。
何やらすることがあるらしい。
階段を降りていくと、リアスさんとアーシアさんと鉢合わせする。
「二人とも、お風呂上がり?」
「ええ。美羽はもう入ったのかしら?」
「うん。さっき、お兄ちゃんとね」
「…………美羽、今度は譲ってくれないかしら? 私もたまにはイッセーの背中を流したいわ!」
「わ、私も! 私だってイッセーさんのお背中流したいです!」
「あはは………。それじゃあ、今度、順番決めよっか? 他の皆もいるし」
「ええ」
「そうですね。イッセーさんは皆のイッセーさんです」
ボクの提案に頷く二人。
お兄ちゃん、本当にモテモテだね。
まぁ、それだけお兄ちゃんに魅力があるってことかな?
ボクもその魅力に惹かれちゃったんだけど。
リビングに向かう途中、アーシアさんが言う。
「ライザーさん、ご無事で本当に良かったです」
ホッと胸を撫で下ろすアーシアさん。
リアスさんも微笑みながら言う。
「ええ、本当にね。一応、イッセーを通してティアマットの報告を受けていたけど…………。改めて確認できで良かったわ。…………それで疑問が晴れたわけではないのだけれど」
リアスさんのいう疑問。
なぜ、ティアさんがライザーさんの無事を知っていたのか。
なぜ、アジュカさんが彼を保護しているのか。
ティアさんとアジュカさんは一体どういう繋がりなのか。
そして――――――王者ディハウザー・べリアルはどこへ行ってしまったのか。
これらの情報は極秘事項らしく、極少数の者達にしか伝えられていない。
ティアさんもお兄ちゃんにですら、教えられないと言ったほどのことだ。
きっと、ボク達の予想を越える闇が隠されているのだろう。
おそらく、今度の邂逅ではその辺りが明らかになるはず。
お兄ちゃんはそう漏らしていた。
ボク達が湯上がりにアイスを食べようとリビングに入った時だった。
「あら、三人ともお風呂上がり? うふふ、アーシアちゃんの新しいパジャマ似合ってるわ」
お母さんがテーブルに色々と広げていた。
パジャマを誉められたアーシアさんは嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます、お母さん。…………ところで、何をなさっているのですか?」
「私? うふふ、これよ」
お母さんは一冊の本を広げて見せてくれた。
それはアルバムだった。
数多くのアルバムがテーブルの上に広げられていて、幼い頃のお兄ちゃんの写真が収まっていた。
「前にも見せたことがあったわね」
「あれは改築前、家で部活をしたときだね。リアスさん、すっごくテンション上がってた」
ボクが微笑みながら言うと、リアスさんは顔を真っ赤にして、
「そ、それは! 小さいイッセーがあんまりにも可愛かったからで! そ、それに私だけじゃないわよ!?」
うん、物凄くテンパってるね。
普段、凛としたリアスさんのこういうところは可愛いと思う。
同じ女子でリアスさんの方が歳上だけど、なんかこう抱き締めたくなっちゃう。
ボク達はソファに腰を下ろすと、それぞれアルバムを手にとってお兄ちゃんの過去を眺めていく。
あぁ…………ちっちゃいお兄ちゃん…………!
何度見ても可愛いなぁ!
ずっと見ていても飽きないよ!
実は以前、アザゼル先生にお兄ちゃんを小さくする道具を作ってもらったんだけど…………。
もう皆の反応が凄かった。
お兄ちゃん、ほとんどぬいぐるみ扱いだったもんね。
何度かこのアルバムを見たことがあるけど、その度に思うことがある。
アルバムの写真は事あるごとに撮られていて『イッセー、初めての○○』というタイトルで収められているんだ。
お兄ちゃんが作ってくれたボクのアルバムもそうだけど、かなり細かく成長を記録しているみたいで、
「お兄ちゃんって実はお母さんに似たのかな?」
「そうかもね。…………一人息子だもの。なんだかんだ言って、私にとってもあの人にとっても可愛い子供なのよ。だからかしら、たまにね、赤ちゃんの頃から最近の写真まで見たくなるの。あの頃は可愛かったなぁってね。今ではすっかり大きくなってしまって『本当に私のお腹に入っていたの!?』って思っちゃうわ」
冗談混じりに言うお母さん。
ずっとお兄ちゃんの成長を見てきたお母さんだからこその感想なのかも。
最初は抱っこ出来る大きさだったのに、今ではお母さんよりも大きくて、逆に抱き抱えることが出来るくらい。
それは当たり前のことなんだけど、お母さんからしてみれば、驚くことなのだろうね。
もし、ボクが母親になった時は今のお母さんのようになるのだろうか?
自分はどんな母親になっているのか気になってしまう。
一つ一つのアルバムに目を通していくと、ある物を見つけた。
アルバムとは別に置かれていたのは母子手帳。
リアスさんがそれを手に取った。
「これは………」
「それは母子手帳と言って、妊娠中から出産、その後の子供の成長や健康状態を記録するものなの。冥界や外国ではどうなっているかは知らないのだけれど、日本では母親になるとその手帳に記録していくのよ」
ページを捲ると一つのページにぎっしりと文字が詰められていた。
お腹の中の状態から、お医者さんの言葉まで。
「あ、そうそう。エコーの写真もあるのよ?」
そう言ってお母さんは別のアルバムを取り出した。
中にはお母さんのお腹の中にいる時のお兄ちゃんの写真がいくつも貼られている。
この写真を見せてもらったのは初めてかも。
母子手帳を捲っていくと、とある物が挟まれていることに気づく。
安産祈願のお守り。
それが二つ。
二つ…………?
ボクが首を傾げていると、お母さんが教えてくれた。
それはとても悲しそうな目で…………。
「これはね…………イッセーが生まれる前、私の中にいた赤ちゃんの分なの」
「え………?」
思わず聞き返してしまうボク。
リアスさんとアーシアさんもお母さんの言葉が何を意味しているか分からない、そんな表情だった。
しかし、時間が経つにつれてその言葉の意味を理解していく。
お兄ちゃんの生まれる前にお母さんのお腹にいた。
でも、お兄ちゃんの上には誰も…………。
つまり、それは―――――。
お母さんは深く息を吐くとボク達の目を見つめながら言った。
「これはイッセーも知らないこと。イッセーが生まれてからは話したことがなかったから…………。でも、いつかあなた達も子供を作る時が来る。だから、皆には話しておくべきなのかもね。いえ、母親になるなら知っておくべき事だと思う」
お母さんは語り始める。
お腹に手を当てて、昔を思い出すようにボク達に教えてくれた。
「私はね、生まれつき子供を宿しにくい体質だったの。それが分かったのは結婚してから数年後。なかなか赤ちゃんが出来なかったけど、ようやく出来たのよ。最初は私もお父さんも舞い上がったわ。ようやく、ようやくだってね。けれど…………」
途端、お母さんの表情は暗くなった。
「その後の検査でお医者さんに言われたのよ。お腹の子は諦めてくださいって。…………私がそういう体質だったから。お父さんは気にするなって言ってくれたけど、私はずっと…………。でも、それから二年後のことよ。また赤ちゃんが出来たの。その時のお父さんの喜びようはもうね」
その時のお父さんは物凄くはしゃいでいたらしい。
二人で本屋に行って、出産、育児関連の本を大量に購入したそうだ。
今思えば過剰に買いすぎたとお母さんは言うけど、それほどまでに待ち望んでいたことだったのだろう。
二人で本を読んでは、出産のために他の産婦人科…………いわゆるセカンドオピニオンもしたそうだ。
今度こそ、今度こそはきちんと生んであげたい。
その一心で二人は動いていた。
しかし、またも悲劇が二人を襲った。
その赤ちゃんを生んであげることが出来なかったのだ。
「あの時は本当に辛かった。お医者さんは私達だけじゃないと言ってたけど…………どうして私達なんだって。何でまた私達から赤ちゃんを奪うのって神さまを恨みさえしたわ」
それからは二人とも赤ちゃんは半ば諦めて、二人で生活することを決めた。
二人で旅行して、二人でショッピングをして、二人で釣りをして。
まるで新婚のようだったとお母さんは言う。
ふいにお母さんは母子手帳を手にとって、その表紙を撫でた。
「結婚してから八年。私達も諦めてたんだけどね、また赤ちゃんが私に宿ってくれたのよ。本当にあの時は涙で前が見えなくなるくらいに泣いたわ。それからはもう私もお父さんも鬼気迫るものがあって…………。ある日、お父さんが裸足で帰ってきたんだけど…………何してたのって聞いたら、何て返ってきたと思う?」
お母さんの問いにボク達は顔を見合わせた。
ボクだけでなく、リアスさんもアーシアさんも首を傾げてしまっていた。
ボク達三人の様子にお母さんは微笑む。
「お父さんね、裸足でお参りしてたのよ。雪が降るくらい寒い夜だというのに。それを聞いたときは流石に怒ったわね。『あなたが体を壊したらどうするの!』ってね」
「でも、それだけお父さんも必死だったってことだよね?」
「そう。その気持ちは本当に嬉しかった。本音を言えばちょっとプレッシャーもあったけど。またダメだったらどうしようって考えたこともあったわ。でも、今度こそ、今度こそは、三度目の正直で! って、嫌な考えは出来るだけ無くして、今度こそは生んでやるんだってね。そうして生まれたのが―――――」
お母さんは母子手帳に記された名前を指でなぞった。
お母さん達にとって三人目。
それが『兵藤一誠』。
「『一誠』って名前はお父さんが考えたのよ? 一番、誠実に生きてほしいって。…………まぁ、スケベすぎて名前負けしてるところはあるのが残念だけど」
その言葉には流石に苦笑しか返せない。
でも、お兄ちゃんは誰よりも優しい人になったと思うよ?
ちょっとエッチ過ぎるけど、その分、誰よりも優しい人。
お母さんもそれは分かってるんじゃないかな?
お母さんも微笑む。
「皆のイッセーへの反応を見ているとあながち名前負けでもないのかしら? あんなに逞しくなって、結構深く考えていて…………。私達の知らないところで大人になったのよねぇ。それでも、私の可愛い息子だということは変わらなくて…………不思議なものだわ」
「やっぱり産むときは大変だった?」
「そりゃあもう! ものすっごく痛かったわよ。『このままだと私が死んじゃう!』ってくらいには」
「そ、そんなに痛いんだ…………」
「でも、母親になるなら誰もが通る道。ヴェネラナさんもリアスさんを産むときは大変だったって言ってたわよ?」
「母とそのような話をされていたのですね」
「うふふ、ママ友ですもの♪ まぁ、ともかく、我が子っていうのはいつまで経っても可愛いものよ」
お母さんはウインクするとアルバムのページを捲っていった。
小さい時のお兄ちゃんから始まり、成長を記録した写真達。
お兄ちゃん一人を写したものから、三人並んだ家族写真まで。
すると、とあるページから人数が一人増えた。
そこにはボクがこの世界に来た日付が記されていて――――――。
お母さんは優しい瞳でボクに語りかけた。
「ここから娘が出来た。兵藤美羽―――――私達の娘。大切な、本当に大切な娘」
初めて出会った時、受け入れてもらえるか不安だった。
お兄ちゃん…………イッセーがいてくれたとはいえ、本当に不安で怖かった。
得体の知れない自分を受け入れてくれるのか。
でも、お父さんとお母さんは嫌な表情一つせずにボクを家族だと娘だと言ってくれた。
名前をつけてくれた。
ボクはアスト・アーデの魔王シリウスの娘、ミュウ。
それは今でも変わらない、変えたくない事実。
シリウス…………お父さんの娘だったことはボクの誇りだから。
でも、今、ボクを娘と呼んでくれるお父さんとお母さんも大切な家族なんだ。
お母さんはボクの頭を撫でると優しく微笑んだ。
「美羽、あなたは私達の娘よ。たとえ血が繋がらなくても、お腹を痛めて産んだ子じゃなくても、あなたは私達の大切な娘。いつでも、どこにいてもそれは変わらないわ」
その瞬間―――――ボクの頬を熱いものが伝った。
悲しい訳じゃない。
そんな感情は微塵もない。
ただ…………ただ嬉しかった。
もう何年も家族として過ごしてきたのに、改めて言われると嬉しくて…………嬉しくて…………!
お母さんがアーシアさんへと視線を移す。
「アーシアちゃんも。私達のこと、お父さん、お母さんって言ってくれた。そうね、私達にとってもアーシアちゃんも大切な娘なの」
「…………っ!」
真っ直ぐ『娘』と言われたアーシアさんも、止めどなく涙を流してしまっていた。
嗚咽を漏らし、お母さんに抱きつく。
アーシアさんはお母さんの胸の中で号泣し始める。
「はい…………! 私はお母さんの、お父さんの娘です…………! ずっと、一緒です!」
お母さんはアーシアさんの髪を撫でながら苦笑する。
「あらあら、こんなに泣いちゃって。イッセーに見つかったら怒られちゃうわ。でも…………今は本当に幸せよ。イッセーが産まれて、あんなに逞しくなって。美羽が来て、アーシアちゃんが来て、リアスさんが来て。今ではたくさんの娘が出来た」
お母さんは過去を振り替えるような目で呟いた。
「長かった。本当に長かった。でも、私達の人生はこの幸せのためにあったかもしれない。そう思うとここまで頑張ってきた甲斐があった…………なーんてね」
冗談っぽく言ってるけど、本当にそうなんだと思う。
お母さんの笑顔は本当に今を幸せだと感じている。
そうじゃなかったら、こんな笑顔は出来ない。
「…………」
…………リビングのドアの近くに影が見えたけど…………。
あれってもしかして…………。
その事に気づいたのはボクだけなのか、お母さんはボク達の肩を持って言った。
「イッセーをお願いね? あの子、結構頑固なところがあるから…………もしかしたら見えないところで無茶するかもしれない。私も本当はあの子の支えになってあげたい。でも、私達に出来るのはあの子の帰る場所を守ることだけだから…………」
息を吐くお母さん。
ボクは…………ボク達はその手を握った。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんは皆を悲しませるようなことはしないよ。必ずボク達のところに帰ってくる。どんなときでも」
「そうですわ。私達もイッセーを支える仲間で家族です。彼には及びませんが、私達も共に戦ってきた仲ですわ」
「イッセーさんがケガをした時は私が治してみせます!」
[美羽 side out]
▽
俺は自室に入ると一人、ベッドに突っ伏していた。
突っ伏して…………泣いていた。
たまたまリビングから聞こえてきた美羽達の会話。
話題が俺のことだったから、少し気になって立ち聞きしてしまったんだけど…………。
知らなかった。
父さんと母さんがどんな想いだったのか。
どんな想いで俺という一人息子を育ててきたのか。
俺が産まれる前、俺の兄、もしくは姉になる赤ちゃん達。
本当なら俺にも兄姉がいたのかもしれない。
母さんの話を聞いたら、色々な思い出が自然と沸き上がってきて…………涙を抑えられなくなっていた。
「…………泣いてるの?」
そう声をかけられたので、そちらを向くと赤い髪のお姉さん――――イグニスが立っていた。
俺は目元を袖で覆いながら呟くように言う。
「知らなかったんだ。母さんがどんな想いで俺を産んだのか…………。知らなかった。父さんがどれだけ俺が誕生するのを待ち望んでいたか。今日、初めて知ったよ」
「そう」
イグニスは頷くと俺の隣に腰を下ろした。
そして、俺の頬を撫でながら微笑む。
「親の愛情というのはとても深いもの。子供が感じている以上に親は子供のことを想ってる。母は強し、なんて言うけど、あれ本当のことなのよ?」
イグニスはクスリと笑う。
母は強し、か。
確かにその通りだ。
なんだか、一生かかっても勝てる気がしないや。
あ、それは父さんもか。
「イッセー、あなたは祝福されて生まれてきた。神とかそんなものではない。父に、母に愛されてこの世に生を受けた。これはとっても幸せなことなのよ?」
「そう、だな………」
「イッセーのお父さんもお母さんも、あなたが戦場に赴く度、心が締め付けられそうになっているわ。それでも止めないのは、それがイッセーが望まないことだから。止まってしまえばイッセーは必ず後悔する。それも一生消えない後悔。だから、二人は自分の気持ちを抑え込んでいる」
俺のため…………。
そういや、ロキが襲撃してくる直前にもそんな話をしたな。
母さんは泣いて俺を止めようとしたけど、父さんは俺の想いを汲んでくれていて…………。
父さんも母さんと同じくらい心が悲鳴をあげていたんだろうな。
「俺って、親不孝者だよな…………」
ボソリと呟いた俺だったが…………。
いきなり、イグニスが両の頬を摘まんで引っ張ってきた!
「イダダダダダダ!
慌ててイグニスの手からのがれようとするけど、離してくれねぇ!
イグニスってこんなに力強かったっけ!?
しばらくもがいていると離してくれたけど…………うぅ、ヒリヒリするぅ…………。
俺が頬を擦っていると、イグニスは俺に指を突きつけて言ってきた。
「もう、分かってないわね。あなたが無事に帰ってくる。それだけで親孝行ってものでしょう? 二人にとってはイッセーと、皆と、家族と過ごす何気ない日常こそが幸せなんだから」
「…………っ!」
「良いこと? 二人に感謝しているのなら、これからも二人のそばで笑ってあげなさいな。それが何よりなんだから」
…………。
…………。
…………ヤバい。
俺、また泣きそうになった。
駄女神が女神してる!
エロエロお姉さんがちゃんとお姉さんしてる!
あ、ヤベッ、涙が止まらなくなってきた…………。
ちくしょう、ダブルパンチかよ…………!
俺は涙を拭うと笑顔で頷いた。
「ああ!」
俺の返事にイグニスはニッコリと笑みを浮かべて満足そうに頷く。
あぁ…………いかんね、涙もろくなってる。
俺も歳なのかな…………ってまだまだ若いじゃん、俺!
しかし、イグニスが良いこと言うと泣けるんだよなぁ。
良い意味で。
なんか、こう感動するんだよ!
…………これが俺の油断だったのかもしれない。
イグニスは微笑んだまま、いきなりベッドに押し倒してきた!
そして、どこからか出した鎖で俺の手足をベッドの角にくくりつけていく!
「な、なに!?」
「うふふ~。良い機会だから試してみようと思って☆」
イグニスが懐を探る。
取り出したのは―――――――性転換銃!?
「え、お、おい!? それ隠してただろ!?」
「え? あれで隠してたの? ふっふっふっー、私にかかればあの程度の隠し場所、隠してるとは言わないわ! あ、そーれ、性転換♪」
ビビビビビビビビッ!
「ギャッ!」
銃口から放たれたビームが俺を捉える!
次の瞬間、髪は伸び、体つきは丸みをおび…………おっぱいも大きくなってしまった!
また女の子ですか!?
最近、そいつの出番、多くないですか!?
女体化した俺を見て、イグニスは舌なめずりをした。
ゾクリと体に悪寒が走る…………!
「さてさて…………女の子イッセー…………」
じわりじわりと寄ってくるイグニス!
俺は後ずさりしようとするが、繋がれた鎖のせいで動けない!
「いや…………いやいや…………ま、待て! お、落ち着け! 俺が喘いで需要あると思うか!?」
「私にはある!」
「バカ! この間、ティアを襲っていただろう!?」
「それはそれ、これはこれよ。そ・れ・に、女体化したイッセーって可愛いんだもーん。おっぱいも大きいし~、食べごたえがあるっていうか~。ま、そういうわけで…………」
「お、おい…………ば、バカ…………や、やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」
「いっただっきまーす!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
またやっちゃった☆