ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今回は真面目にレーティングゲームの闇を語ります!


9話 レーティングゲームの闇

「これは―――――『王』の駒だよ」

 

『―――――っ!?』

 

アジュカさんのその一言に俺達は目を見開き、驚愕してしまう。

 

悪魔の駒…………それの『王』!? 

 

あれを出された時に何となく、その可能性は頭に浮かんだ。

何故なら、俺達が知っている悪魔の駒のどれとも形状が違うからだ。

 

しかし、それは冥界で常識とされてきたものを覆すもの。

上級悪魔になると、各領の領主の城、または魔王領の魔王の城のみに存在する『石碑』に触り、『王』であることを登録する。

そうすることで、眷属を有する権利と悪魔の駒を渡される。

俺もそうやって上級悪魔になった。

 

『王』の駒はないと俺達は教えられて来たんだ。

リアスやソーナ、レイヴェルでさえも。

 

俺達が『王』の駒の存在に驚くなか、一人だけ冷静に見ている人がいた。

―――――アザゼル先生だ。

 

「………噂には聞いていたが、見るのは初めてだ」

 

「………知っているんですか、先生?」

 

「噂だけならな。もっとも、悪魔側と協定を結んでからは、俺の中で日に日に真実味を帯びていったがな」

 

昔から噂はあった、と。

 

しかし、リアスは信じられないという面持ちでアジュカさんの持つ駒を見つめていた。

 

「………『王』の………駒? そんな、『王』の駒は作成の技術が未だ確立できず、『王』の登録を石碑に済ませることでシステムを動かすことになったと聞いているのですが…………」

 

「そう、『王』の駒は本来あり得ない。悪魔の駒のシステム上、『王』とは登録制だった。…………いや、登録制にあえてしたのだ。この『王』の駒を表に出さないために。それと眷属悪魔が昇格した時、既に内にある駒と『王』の駒の重複及び融合を懸念した面もある」

 

アジュカさんは駒を手の中で遊ばせながら続ける。

 

「この駒の特性は単純な強化だ。ただし、それは力が二倍や三倍というものではない。少なくとも十倍から百倍以上の強化が可能なのだよ。文字どおり力が跳ね上がる。そのため、『王』の駒は使用を禁止にした。力を得ることで政府に害意、邪な感情を抱く者が出てしまうことを恐れてね。絶大な力とは、それだけ目を曇らせる」

 

単純な強化…………十倍から百倍…………。

効果で言えば、オーフィスの蛇と同等の効果ってことか。

 

絶大な力は人の目を曇らせる―――――。

それが己の鍛練の末に得られた力ならともかく、楽に力を得たとなるとそうなるんだろうな。

オーフィスの蛇を使った旧魔王派とかはまさにそれだ。

あいつらは完全に力に溺れていた。

 

もし、この『王』の駒が公表され、使用も認められていたら絶対に使う奴が出てくるだろう。

…………ディオドラとか、間違いなく使っていただろうな。

あいつもオーフィスの蛇もらって調子に乗ってたし。

 

アジュカさんは手元に小型の魔法陣を展開させる。

すると、この砂浜に数十名の人物データが表示される。

 

「ここに映し出されているのはレーティングゲームのトップランカーだ。共通点は元七十二柱―――――純血の上級悪魔の出身者ということ。そして彼らは―――――この『王』の駒を使用した者達なのだよ。冥界の上役達の思惑によってな。当然、公表などはしていない。結果、使用した者の中には、いわゆる最上級悪魔クラス、または魔王級と言っても過言ではないレベルに達した者が出たほどだ」

 

『王』の駒は使用者の力を跳ね上げる。

それも十倍から百倍以上…………。

そのことを考えるとそれだけの力を持っても不思議ではない。

 

生唾を飲み込んだ後でソーナが訊ねる。

 

「………では、ここに映し出された現トップランカーの実力は………」

 

「彼らは公表されていないルール外の力によって実力を向上させている。ゲーム運営の執行委員の大半は真っ黒でね。『王』の駒の使用に留まらず、賄賂、八百長などの不正は当然のように行っている。今のレーティングゲームは非常に不誠実な競技となっているのだよ。むろん、実力でトップランカーに上り詰めた者もいる。元龍王タンニーン、リュディガー・ローゼンクロイツなど、主に転生悪魔に見られる傾向だ」

 

確かにこのデータの中にタンニーンのおっさんはない。

 

まぁ、おっさんが使うとは思えないけどね。

おっさんはドラゴンの中のドラゴン。

誇り高い龍の王だ。

そんな恥知らずな真似はしないだろう。

 

モーリスのおっさんが言う。

 

「変な思惑が絡んでいるからとはいえ、こいつらは作られた力で勝って嬉しいのかね? ………場合によっちゃ、俺も使うとは思うが」

 

「なっ!?」

 

おっさんの爆弾発言に全員が硬直した。

 

目の前に『王』の駒があったら使うのか!?

そんな…………俺に剣を教えてくれたこの人がそんなこと………。

 

俺は信じたくない。

おっさんの剣はどこまでも高潔で真っ直ぐなもの。

偽りの力で満足するような人じゃない。

 

俺達の表情におっさんは呆れたような表情となる。

 

「おいおい、場合によるって言ったろ。―――――本当にどうしようもなくなった時。それを使わないと大切な物を守れないという状況ならどうだ? そうなったら、俺は最後の手段として使わせてもらう。俺が恥をかくことで救えるなら安い取引だからな」

 

その言葉にリーシャが笑む。

 

「うふふ、モーリスらしいですね」

 

「ま、使った後は剣を捨てて、ひっそりと暮らすことになると思うがな。恥を掲げて人前を歩けるほど俺ぁ、図太くはない。今流行りの孤独死してやる」

 

おっさんのため息混じりの言葉に全員が息を吐いた。

 

ったく、そういうことかよ…………。

変な気を使わせやがって。

 

でも、本当にそんな時が来たらおっさんは使うんだろうな。

きっと、苦渋の決断になるだろう。

死ぬほど悩んで、あがいて、何をしても通用しない。

それでもどうしようもなくなった時が来たら―――――。

 

俺はおっさんの肩に手を置く。

 

「大丈夫だって。おっさんはしっかり見送ってやるから。今は悪魔になったから、寿命かなり長いんだけどね?」

 

「そうかい。そんじゃ、使わなくて済むように鍛えとくわ」

 

おっさんがこれ以上鍛えたらとんでもないことになる気がする…………。

つーか、今の段階で『王』の駒使ってる者と渡り合えるよね?

余裕で渡り合えるよね?

 

あれ…………俺、おっさんを悪魔に転生させる際に『戦車』の駒を二つ使ったけど…………。

何気に最強の『戦車』にしてしまったような………。

 

というか、この間、模擬戦したら負けたんですけど………。

 

おっさんの答えに先生は苦笑する。

 

「おまえさんのような精神の持ち主ばかりなら、その駒も公表しても良かったと思うが、残念ながら世間はその逆だ。絶大な力に酔いしれる者の方が多いのさ。………思ったんだが、おまえが『王』の駒を使わざるを得ない時って相当ヤバい時だろ。世界の終末ぐらいか?」

 

「知らね。ロスウォード級が来たときぐらいじゃね?」

 

…………うん、それって単機で世界滅ぼすレベルの相手だよね。

そんな敵が来てたまるか!

 

アジュカさんが俺達を見渡して言う。

 

「狭き門とはいえ、実力さえあれば誰でもレーティングゲームで大成できる可能性がある。これは嘘ではないが…………今のトップランカー達を砕くには君たちのように突出した異例中の異例でない限り、不可能となっている」

 

「では、トップランカーのランキングがあまり動かないというのは…………」

 

「そういう拮抗状態になるよう絶妙なバランス調整がされているだけだ。裏で利権を貪っている古い悪魔達によってな。トッププレイヤー同士の試合はそれだけで莫大な金を生む。試合を操作できればその分旨みも大きいのだ。いくら転生悪魔が目立ってきているとしても、『王』の駒を使用し、古い悪魔達の思惑が絡んだトッププレイヤー達に挑むのは多くの挑戦者にとってあまりに高すぎる壁だ」

 

その最後の一言にソーナはその場に膝をついた。

 

「なんてこと…………!」

 

誰もが通えるレーティングゲームの学校の設立を目指す、ソーナにとって語られた事実は猛毒。

彼女の頬には汗が伝っていた。

 

匙は咄嗟にソーナを支えるが、こちらも苦悶の表情を浮かべていた。

他のシトリー眷属も同様。

 

そうだよな…………ソーナの夢は匙達の夢でもあるんだ。

 

『王』の駒の使用。

加えてトッププレイヤーのランキング操作。

 

これはあまりに衝撃的で、許しがたい事実。

 

アザゼル先生がアジュカさんに訊く。

 

「サーゼクスもこいつを動かすのは辛いってか」

 

「表向きは上手く回っているように見えますからね。下手に介入すれば冥界のバランスは崩れ、内部抗争は加熱してしまうでしょう。切っ掛けがあれば一気に崩せるかもしれませんが、相手は老獪な古い悪魔。彼らは貴族社会と利権を得られるなら何でもしますよ。超越者と呼ばれる俺とサーゼクスも政治面では一進一退を余儀なくされている」

 

レーティングゲームは古い悪魔達の利権争いの場になっているということか。

裏で政治的なものが絡んでいるのはバアル戦でも聞かされていた。

しかし、あれは若手悪魔のゲーム。

プロのゲームとなれば、更に闇は深く…………。

 

アリスが目を細めて呟く。

 

険しい表情のリアスが訊ねる。

 

「しかし、なぜその情報を私達に? いくら『D×D』といえど、これは魔王クラスでもない限り知ることが許されない極秘事項なのではないでしょうか?」

 

すると、その問いに答えたは――――――。

 

「そ、それは………知ってはならない者が、あえて知らされなかった者が、あんっ………その事実をしってしまったのだ………はぅ!」

 

砂浜に押し倒され、駄女神に揉みくちゃにされているティアだった。

 

…………あの駄女神、緊張感ゼロか!

 

あぁっ………ティアがあられもない姿に…………!

服が剥ぎ取られて…………!

おっぱいなんて鷲掴みされてるし!

 

「なんて、うらやま…………ゲフンゲフン! なんてうらやましい!」

 

「お兄ちゃん、全然隠せてないよ!? ハッキリ言っちゃったよ!?」

 

おわっ!?

ハッキリ言ってしまったか!

ええい、俺も欲望に忠実だというこだな!

 

って、そうじゃなくて!

 

俺は改めてツッコミを入れる!

 

「ちったぁ、自制しろやぁぁぁぁぁぁぁ! 駄女神ぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

「我輩の辞書に『自制』という文字はない!」

 

「なんて自分勝手な辞書!」

 

「我輩の辞書には『○○○(バキューン)』とか『×××(ドカーン)』とか『△△△(チュドーン)』という文字しかない!」

 

「放送禁止用語ばかりじゃねぇか!」

 

それ、もう辞書じゃないし!

ただのエロ本だし!

 

もういや!

あいつ、全然、今回の話の重さが分かってねぇ!

 

「だって、『王』の駒とか使ったところで、お姉さんの方が強いもーん♪ ベッドの上なら圧勝出来る自信があるわ!」

 

「知ってる! あんたに勝てる奴を見つけてくる方が難易度高いわ!」

 

「私に暗い話は似合わない! というわけで、ティアちゃんのおっぱい揉み揉み~♪」

 

「あっ、はぁんっ! そこ、摘まむ………なぁ………っ。は………ひゃうっ!」

 

やめて!

それ以上はやめてあげて!

ティアのお体がビクンビクンしてるから!

 

つーか、唐突にシリアス壊すの止めてくれる!?

怒るよ!?

 

………と、とりあえず話を戻すか。

 

それで、ティアが言う知ってはならない者とは―――――。

 

先生が言う。

 

「ディハウザー・べリアルか。ディハウザーは生粋の?」

 

「ええ、彼は純粋なまでに突出した才能で王者になった悪魔です。『王』の駒を使わずに頂点に上り詰めた本物。それゆえに先日の行動を起こしてしまった。―――――リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。彼がアグレアスを強奪出来たのも王者の助力があったからだ。全ては真実を知るためだろう」

 

『―――――っ!?』

 

皇帝がリゼヴィムに協力していた!?

あの日、映画の撮影があるからとついでにアグレアスへと足を運んだようだが…………。

あの時には既にリゼヴィムと通じていたのか。

 

俺は疑問を口にする。

 

「しかし、真実を知るための方法は他にもあると思います。態々、テロリストに荷担しなくても………」

 

「その辺りは彼にも事情がある。………突き詰めれば、古い悪魔達のせいだと言える。年寄り達の思惑は少しずつ、だが、確実に冥界の屋台骨を歪めていった。そして、限界が訪れていたところに楔を打ち込んだのが、王者だったということだ」

 

「冥界を敵に回すだけの理由があったということですか?」

 

俺の問いにアジュカさんは瞑目して頷いた。

 

あの人にそれだけの理由があった。

冥界のバランスを崩しすことになっても、動かなければならない事情があった。

…………リゼヴィムに協力しているのもそのためなのか…………?

 

しかし、そうなると次に浮かんでくる疑問は…………。

 

レイヴェルが訊ねる。

 

「ディハウザーさまはなぜ兄との試合で動いたのでしょうか?」

 

「俺を呼ぶためだろうね。彼は『無価値』という特性事態を無効化してしまう力を有するのだが、レーティングゲームのシステム、リタイヤを無効化してしまった。ゆえに緊急時のプログラムが発動した。………ティアマットが裏の審判者として動いたのはそのためだ」

 

なるほど、それが今回の不正行為の真実か。

 

…………とうのティアはおっぱい揉みまくられてるけど。

どれだけ激しいスキンシップしてるの、あの駄女神は!?

そんなに寂しかったの!?

 

「王者がなぜそのような行為に走ったのかが気になって、俺もその場に転移させてもらった」

 

「では、そこで話を聞いたんだな?」

 

アザゼル先生の問いにアジュカさんは頷く。

 

「ええ。『王』の駒と、リゼヴィムに協力していることを打ち明けてくれました。………だが、それだけではその場にいたライザー・フェニックスに危険が及ぶ。レーティングゲームは運営側、上役が確認するための監視カメラがある。おそらく、俺と彼の会話は上役に見られただろう。そうなると…………」

 

「その場にいたライザー・フェニックスの関与が疑われる、か。おまえ達の会話は上役にとって極秘事項のオンパレードだろう。下手すれば処分されることになる」

 

「処分………! そんな…………」

 

非情な言葉にレイヴェルの体がぐらつく。

咄嗟に俺が支えるが…………。

 

その場に居合わせただけで、身内が処分される。

しかも、上役達は手段を選ばないとなれば…………。

 

アジュカさんは続ける。

 

「年寄り達は体裁を保つためなら、何でもやる。過去に『王』の駒の真実に辿り着いた者を容赦なく始末していたからな。それを恐れた王者はライザー・フェニックスを利用した上で、身柄を俺に預けた。年寄り達も俺には手を出せないと踏んでね。結果、彼の思惑通りに進んだわけだ」

 

「それでは…………兄が行方不明とされていたのは…………」

 

「彼の無事を確保できるまでは解放できなかったからだ。未来ある若者が年寄り共の思惑で殺されるのは納得できないのでね」

 

………この人はライザーを庇ってくれていたのか。

ティアも。

そして、今回の騒動を起こした王者も。

 

王者とは一度、話してみる必要があるみたいだが…………それは置いておく。

 

俺の中ではまだ疑問が解決されていない。

 

「でも、それならどうしてライザーとの試合で? 他の相手でも良かったのでは?」

 

そう、今の話だとライザー以外でも良かったはずだ。

一番目の試合でも実行できたはず。

 

ゲームフィールドの関係だろうか?

観客からは見えない場所である必要があったみたいだしな。

 

すると、アジュカさんは小さく笑みを作った。

 

「それについてはいずれ分かる。彼は意外とめざとい」

 

その答えに俺もレイヴェルも首を傾げる。

 

ライザーでないといけない理由が他にあったということなのだろうか。

今はまだ分からないが、いつかそれが分かる………?

 

この人がそう言うのだから、それは俺達にとって害となることではないと思うが…………。

 

まぁ、でも―――――。

 

レイヴェルは深く頭を下げた。

 

「アジュカさま、この度は兄を………ライザーを救っていただき、ありがとうございます…………! このご恩は一生忘れません………!」

 

「気にしないでくれ。俺は俺の役目を果たしたに過ぎないからね」

 

深々と頭を下げるレイヴェルにアジュカさんは微笑みを浮かべた。

 

 

 

 




真面目だった…………かな?

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