ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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16話 赤龍帝眷属VS異世界神眷属

アグレアスにある広大な公園。

緑豊かなこの公園は既に形を変えていた。

 

―――――二人の剣士によって。

 

「はっはー!」

 

「ぬぅ!」

 

獰猛な笑みを浮かべて己の得物をぶつけ合うモーリスのおっさんとヴァルス。

本格的に剣を交えて間もないと言うのに、周囲には斬り倒された木々が並ぶ。

 

地面は割られ、倒れる木々から落ちた木葉が二人の剣圧で舞う。

 

「こいつを凌げるか?」

 

おっさんは両手に握る剣のうち、左手側の剣を逆手に持ち変えた。

ぐっと膝を沈め、腰を捻る。

高速………いや、神速の領域で行われる斬り合いの中では大きすぎるモーション。

大きな隙になるはずだ。

 

しかし、ヴァルスは何かを察知して大きく後ろに跳んだ。

 

次の瞬間―――――。

 

おっさんを中心に黒い竜巻が出現した!

 

「――――黒刀・大竜巻。触れたら最後………微塵も残さずにこの世から消えるぜ?」

 

黒い竜巻が通った場所にあったものは全てが斬り刻まれていた。

最初は真っ二つだったものが、更に半分、そのまた半分とあっという間に細切れになり、次第に粉塵と化してしまう!

おっさんの近くにあった木や噴水は跡形もなく、消え去っていく!

 

ヴァルスは苦笑しながら、手を翳す。

 

「ふふ、あなたと剣を交える度に感じますよ。剣聖と称されるに至った経緯、剣に宿る意思。本当、どこまでも規格外な方だ。しかし―――――」

 

小さな魔法陣が幾重にも重なったような魔法陣をヴァルスは展開する。

見たことがない不思議な形状をした魔法陣だ。

 

ヴァルスが何かを念じると魔法陣は強い輝きを放ち―――――複数の黒い竜巻を生み出した。

 

うねり、交わる二人が生み出した竜巻。

 

すると、その交わりが深くなるほど二人の竜巻は弱くなり、小さくなっていった。

やがて完全に消滅する。

 

ヴァルスが人指し指を立てながら言う。

 

「いかに強大な力でも同じ規模で逆転の力をぶつけてやれば弱まり、消滅する。たとえ剣聖の剣撃だろうとそれは同じ」

 

それを受けてモーリスのおっさんは口笛を吹いた。

 

「やるねぇ、兄ちゃん」

 

互いに笑みを浮かべるおっさんとヴァルス。

 

すると、サリィとフィーナを肩に乗せたリーシャが俺の横に立った。

 

「さて、モーリスが戦ってますし、私も出ましょうか」

 

リーシャが視線を向けたのはラズル。

 

彼女は魔法陣を魔装銃をもう一丁引き抜いた。

彼女は両手に魔装銃を握る。

 

「ラズルと言いましたね。確か引力と斥力を操るとか。高い攻撃力に高い防御力。格闘戦でイッセーを上回った。とんでもない戦闘力です」

 

リーシャの静かな言葉にラズルは笑む。

 

「赤瞳の狙撃手に誉められるとは光栄だな。だがよ、あんたと俺じゃあ、相性が悪すぎるんじゃねぇか?」

 

あいつの言う通りだ。

 

リーシャは格闘戦もこなせるが、あまり得意としていない。

後方支援、狙い撃つのがメインの狙撃手だ。

 

対してラズルは格闘戦メインの近距離ファイター。

しかも、相手を引き寄せたり、斥力で攻撃を防いだり出来る。

 

リーシャはラズルと相性が悪すぎる。

 

しかし、リーシャはラズルの前に立った。

 

「ええ。確かに私とあなたでは相性が悪い。ですが、やりようはあります」

 

相手の手の内は俺達が知る範囲で皆に伝えてある。 

当然、ラズルの力量や技、能力も俺が体験したこともだ。

 

リーシャには何か考えがあるのだろうか?

 

ラズルもそれが気になるのか、一歩前に出た。

 

「そうかい。じゃあ、そのやりようってのを見せてもらおうじゃないか」  

 

ラズルは手を突き出し、例の能力を発動する!

遠くにいるものを引き寄せる引力の能力!

 

ラズルの突き出した手の軌道上、その先にいるのはリーシャ。

リーシャの体がふわりと宙に浮き、そのまま奴に引き寄せられていく!

 

リーシャの防御力ではあいつの拳は耐えられない!

そう判断した俺は間に入ろうとするが…………。

 

リーシャは特に焦る様子もなく、ただ腕を突き出して魔装銃の照準をラズルに合わせ―――――。

 

「―――――アイス・バレット」

 

引き金が引かれ、銃口が輝く。

 

すると―――――。

 

「ぐおっ!?」

 

悲鳴をあげるラズル。

ラズルは手を引いて、引力の能力を止めた。

 

何が起こったのかと、奴の顔を見てみると―――――奴の右目から血が流れていた。

それだけじゃない。

奴の右肩も赤く染まり始めている。

 

ラズルが右目を抑えながら笑う。

 

「なるほど…………こりゃあ、俺にとってもやりにくそうだ」

 

リーシャが告げる

 

「だと思いますよ。あなたが引き寄せる能力はある意味諸刃の剣。あなたがその能力を使うと同時に引き金を引けば、私の弾丸はその分威力を増す。それに、イッセーの拳打を受けて倒れないあなたの防御力、タフさは脅威ですが、眼球まではそうはいかないでしょう?」

 

「ほぉ………だがな、目はともかく、俺の肩を撃ち抜いたのはなんだ? 俺は勇者殿の砲撃にも耐えるんだがな」

 

そうだ、奴は昇格強化した天撃状態で放った砲撃にも耐える堅牢な肉体を持っている。

どうやって、リーシャは今の一瞬にそれを突破した………?

 

リーシャは撃ち抜いたラズルの肩を眺めながら、こう続けた。

 

「イッセーの砲撃の威力は凄まじいです。攻撃力、制圧力では及びません。しかし、貫通力なら私の方が上です。それに―――――全く同じポイントに何十発も撃てば、どんなに硬いものでもいつかは貫かれます。私があなたの肩を撃ち抜くのに引いた引き金の回数は二丁合わせて二十。それだけ撃てばあなたの防御は突破することが出来るというわけですね」

 

その言葉に全員が仰天する!

 

ラズルが叫んだ。

 

「あの一瞬でそんなに撃ったってのかよ!? かぁー!

剣聖もそうだが、あんたも大概だよな、おい!」

 

リアス達も何と言えば良いのか分からないといった表情だ。

 

―――――ワンホールショット。

目標物に貫通痕を残し、その弾痕を的として連続射撃する技術。

 

リーシャの得意技だ。

早撃ちかつ、二丁でそれを可能とする技量の持ち主はアスト・アーデにおいてリーシャしかいない。

 

しかし、驚くのはまだ早い。

リーシャにはまだプロモーションがある。

『女王』になった時にはいったいどれほどの戦闘力を発揮するというのだろうか。

 

ラズルの油断もあった。

それでも、今の早業は俺達の理解の外にある。

 

いきなり傷を負ったラズルは傷口を抑えながら肩を震わせた。

顔を上げると―――――高らかに笑い始める。

 

「くっくっくくくく…………あーはっはっはっはっ! この傷は自業自得ってな! あぁ、そうだ。あんたは油断しちゃいけない相手だったな! 俺がバカだったぜ!」

 

自分の愚かさへの笑いとリーシャという強者と対峙するという喜びの笑いが混ざったような声だ。

 

ラズルの体から荒々しいオーラが吹き出す。

野獣のようなオーラ。

獰猛な笑みと共にラズルは吼えた。

 

「我が名はラズル! 『破軍』の二つ名を与えられし者! 赤瞳の狙撃手殿、手合わせ願おうか!」

 

「良いでしょう。私の主――――弟の道を切り開くのも姉の役目。あなたを狙い撃ちます! サリィ、フィーナ、いきますよ!」

 

「「了解!」」

 

リーシャは妖精二人を肩に乗せ、悪魔の翼を出して飛翔する。

周囲にいくつもの魔法陣が展開され、そこから空飛ぶ魔装銃と空飛ぶ盾が出現する。

 

リーシャは構えながら呟く。

 

「数は揃っていませんが…………このままでいきます! プロモーション『女王』!」

 

刹那、リーシャから放たれるプレッシャーが数段上がる。

『女王』に昇格したことでスピード、魔力、攻防が強化されたんだ。

 

強化された状態で空中を飛び回り、ありとあらゆる角度からラズルを狙撃していく!

 

ラズルは雨のように降り注がれる氷の弾丸を拳で粉砕、あるいは斥力の盾で防ぎながら、地面を蹴って空へと躍り出た。

 

「らぁっ!」

 

拳を引くと、一気に繰り出す。

生まれた衝撃波が広範囲に広がり、リーシャを襲う!

 

空飛ぶ盾で防ぐが、完全には防ぎきれていない。

 

リーシャは衝撃波に呑まれて、後ろに飛ばされた。

 

「………遠当てですか…………厄介ですね!」

 

宙返りして態勢を立て直し、すぐに魔装銃を構える。

構えたと思えば、すぐに撃ち出される氷の弾丸。

加えて、ライフルビットからは圧縮された炎の弾丸が飛び出していく。

 

しかし、ラズルはそれら全てを打ち払い、リーシャへと迫る。

引力の能力を使わないのは下手に使えば、先程と同じ目に会うと分かっているからだろう。

ラズルは極力、引力は使わず、斥力と己の拳のみで戦っている。

 

ラズルが掌を胸の前で合わせる。

合わせた掌にオーラで形成された球体が作り出される。

 

それをラズルは投げた。

 

野球の球のように投げられた球体はカーブを描いて、右側からリーシャを狙う。

 

ここで目を凝らして見ると球体が徐々に大きくなっていることに気づく。

 

怪訝に思う俺だったが、次の瞬間―――――。

 

 

バァァァァァァァァンッ!

 

 

凄まじい炸裂音を出して、球体は弾けた!

球体を起点に衝撃波が広がり、辺り一帯を破壊していく!

 

ラズルが言う。

 

「どうよ! 俺は斥力を圧縮して放てるんだぜ! 更に―――――」

 

ラズルは地面に拳を叩きつける!

陥没し、抉れる地面!

板のように剥がれた舗装路が空中を舞う!

 

ラズルは舗装路の塊を殴り付けて粉砕。

割れた塊をリーシャの方へと飛ばす。

 

単なる牽制じゃない。

こいつは…………!

 

リーシャの周囲へと飛ばされた破片は空中に留まった。

その時、その破片に吸い寄せられるかのように周囲の瓦礫が集まっていく。

 

「能力の付与か! リーシャ、気を付けろ!」

 

「分かってますとも!」

 

反応したリーシャは展開していたライフルビットで引力の起点になっている塊を破壊する。

小さいものを数えれば相当な数だったが、あっという間に撃ち抜かれ、撃墜された。

 

リーシャがフィーナに指示を出す。

 

「フィーナ、あれをやります。いつでもいけますね?」

 

「はい。既にこの一帯は私の領域です。あとはサリィの力が加われば―――――」

 

フィーナの言葉にリーシャは頷く。

 

悪魔の翼を広げたリーシャは上空を目指し、ぐんぐん高度を上げていく。

 

当然、ラズルはそれを追いかけた。

斥力の球体を投げたり、拳圧を飛ばしたり。

 

ラズルの弱点は射程が短いことなんだろうな。

これまでの戦いやリーシャとの戦闘を見ていると、遠距離戦に持ち込まれると後手に回りやすい。

 

そういう意味でも、ラズルもリーシャとの相性が悪いと言える。

 

かなりの高さにまで達したリーシャはラズルを見下ろすと、両手に握る魔装銃を連結させた。

 

リーシャがラズルに問う。

 

「ご存じですか? 水は酸素と水素に分解出来るんです。それはこの世界でもアスト・アーデでも同じこと」

 

「なんだぁ? いきなり授業かよ? ………そういや、あんたは教師をやってたか。それくらいは知ってるぜ」

 

怪訝な表情で答えるラズル。

 

リーシャは意味深な笑みを浮かべた。

 

「では、続けて問いましょう。―――――そこに火を近づけるとどうなるか、知っていますか?」

 

「あ? そんなもん――――――っ!? まさか………!」

 

ラズルが周囲を見渡す。

特にこれといったものは存在しないが、ラズルは顔を青くしていた。

 

リーシャは笑みを浮かべたまま―――――二丁の引き金を引いた。

 

「―――――ブラスト・シューター」

 

 

次の瞬間――――――。

 

 

このアグレアス上空を覆うほどの大爆発が起こった。

 

 

 

 

モーリスのおっさんとヴァルス、リーシャとラズルの二組が激戦を繰り広げる。

 

公園のあちこちで金属のぶつかる音が聞こえ、木々が薙ぎ倒されて地響きがしている。

上空では未だ赤々と燃える爆炎。

 

二組の戦いを息を呑んで見守っていると、こちらの陣営から前に出る者達がいた。

 

――――美羽とアリスだ。

 

二人はそれぞれ、ベルとヴィーカの前に立った。

 

美羽が言う。

 

「とりあえずは何度も戦ってきてるしね。あの二人の相手はボク達がするよ」

 

「そろそろ決着をつけないといけないのよ。幾度とぶつかってきたからこそね」

 

美羽に続きアリスもそう述べた。

 

美羽とベル、アリスとヴィーカ。

この二組はいつの間にか因縁の相手のような関係になっていた。

アウロス襲撃の時も、先日の冥府調査の時も彼女達はぶつかってきた。

 

まだ幾つか手札を隠していると思われるが、こちらの陣営の中でベルとヴィーカの戦闘スタイルを理解しているのは美羽とアリスだ。

 

ヴィーカが頬に手を当てながら笑んだ。

 

「良いわね。この間はやられちゃったし………どっちが強いか、決める?」

 

「ええ、もちろん。どのみち戦わないといけない相手。この場で決めてしまいましょうか」

 

槍を構え、不敵に笑むアリス。

 

二組から莫大なオーラが解き放たれ、衝突する。

オーラが衝突する場所では空間が軋み、悲鳴をあげていた。

 

ふいに美羽がこちらを振り向く。

そして、笑顔で言ってきた。

 

「心配いらないよ? ここは任せてね、お兄ちゃん」

 

その笑顔に俺は―――――。

 

「任せる。眷属を信じるのも主の勤め。妹信じるのも兄の勤めだ」

 

「ちょっと、そこに嫁も付け加えてよ」

 

アリスがぷくっと頬を膨らませながらそう言ってくる。

 

こんな戦場でなんて緊張感のない…………って、思ってしまうけど、平常通りで逆に安心するな。

 

俺はため息を吐くと、ニッと笑んだ。

 

「おう。嫁を信じるのも夫の役目ってな。信じるぜ、美羽、アリス。約束は…………分かるな?」

 

俺がそう問うと二人は―――――。

 

「「一緒に家に帰る。約束だからね?」」

 

それだけ言い残して、二人は飛び出していく。

 

俺は二人の背中を見送りながら、再び息を吐いた。

四人には負担をかけることになっているのは分かる。

相手はそれだけ強い。

 

信じると言ったばかりだけど、やっぱり心配はするもんだ。

 

でも………それでも俺は信じた。

俺の眷属、家族を。

 

「イッセー………」

 

リアスが心配そうな表情で声をかけてきた。

 

「大丈夫だ。美羽たちなら、何も問題ないさ。―――――俺達は俺達の役目を果たそう」

 

俺達は美羽たちにこの場を任せた後、庁舎目掛けて駆け出していった。

 

 

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