ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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再開早々、連続投下ァァァァァァァァ!


3話 切り札と結託

[アザゼル side]

 

同じ建物にある放送スタジオにて。

現在、サーゼクスとセラフォルー―――――現魔王ルシファーと現魔王レヴィアタンによる緊急放送が始まろうとしていた。

 

俺はスタジオの脇でその様子を見守っている。

 

全チャンネルを使って、魔王二名が冥界全土に向けて今回の件について語る。

 

カメラが回り、まずはサーゼクスがモニターに映る。

 

『冥界の皆さん。現在、冥界全土、堕天使領を含め、この悪魔の世界に未曾有の危機が襲っております』

 

サーゼクスは語りかけるように今回の事件の経緯を国民に話しかけていく。

リゼヴィムが全ての元凶であったこと、邪龍を操りトライヘキサという伝説の魔物を復活させたこと。

そして、そのトライヘキサが各勢力の領域で大暴れしていること。

 

モニターにとある映像が流れていく。

それは俺達首脳陣クラス、現場の者達しか目にしていないであろう戦争の現実。

トライヘキサの軍団が冥界、天界、北欧の世界を襲撃している映像だ。

 

『ご覧になられている生物は伝説の魔獣トライヘキサであり―――――』

 

神クラスまで参戦している光景は俺が見ても世界の終わりを思わせてしまう。

一般の者ならば尚更だろう。

 

映像はトライヘキサ達が退き、勝鬨をあげる戦士達の姿が映し出した。

サーゼクスが北欧戦線の防衛に成功した映像をバックに語る。

 

『戦っているのは悪魔だけではありません。同盟関係にある堕天使、天使の方々、更には他の神話勢力からと心強い味方が駆け付けてくれています』

 

そこで一度話を切ったサーゼクスは瞑目した後、カメラを真正面に捉えて口を開く。

 

『敵はあまりに膨大です。今回は退けることかできましたが、すぐに姿を現し、破壊を再開させることでしょう。その規模はかつてない程に大きい。しかし、心を強く持っていただきたい。我々にはまだ希望がある』

 

映像が切り替わる。

新たに映し出されたのは若き精鋭達。

赤龍帝たるイッセー、滅殺姫の二つ名を持つリアス、大王次期当主であるサイラオーグ天界のジョーカーたるデュリオ等々。

冥界の国民も良く知るメンバーが次々に写し出されていった。

 

『テロ対策チーム「D×D」をはじめ、悪魔世界が誇る勇猛な戦士達が冥界を、皆さんを、各勢力を、そして世界を救うために命をとして戦ってくれています』

 

すると、サーゼクスの前に顔を出したセラフォルーが笑顔をカメラの向こうに送る。

 

『私も前線に立っちゃうんだから心配しないでね!』

 

サーゼクスも微笑みながらも、力強くこう述べた。

 

『必ずこの冥界と皆さんを守ります。この命を賭けても』

 

 

 

 

放送が終わり、席を立つサーゼクスとセラフォルー。

 

俺はセラフォルーに話しかける。

 

「いつも通りなんだな」

 

「こういう時だからよ。――――さて、そろそろ私も前に出ないとね」

 

勇ましい顔つきのセラフォルー。

普段の軽い雰囲気はそこにはなく、一人の魔王としての顔がそこにあった。

 

サーゼクスが小さく笑う。

 

「君と君の眷属にはいつも迷惑をかけるな」

 

「そんなつれないことは言わないでよ。長く、一緒にやってきた仲じゃない? こういう時に動いてこそ『魔王』でしょ。それにソーたんも戦ってる。だったら、私も前に出ないとダメじゃない? だって、お姉ちゃんだもの☆」

 

ブイサインと共にウインクするセラフォルー。

 

魔王の自覚は出てもシスコンは変わらずか。

まぁ、こいつらしいと言えばそうだが。

 

やれやれと苦笑を浮かべる俺だったが、一つ、先程の放送について話があった。

 

「異世界の神については話さなかったな」

 

そう、先程の放送では敵勢力として伝説の魔物トライヘキサと、それに従う邪龍、複製赤龍帝の軍団について挙げられた。

それに関する現状と今後の対策、そしてレーティングゲームの不正。

 

しかし、異世界の神についての話は一切出なかった。

いや、出さなかったと言った方が正しいのか。

 

サーゼクスは頷く。

 

「冥界はトライヘキサという神々ですら手に余る強大な魔物だけで混乱に陥っている。そこに異世界の存在が絡めば、いよいよ収拾がつかなくなってしまうだろう。今はまだその時でないと判断した」

 

「異世界アスト・アーデについては各勢力の首脳陣、幹部クラスしか知らないことだもの」

 

「ハーデスの件で異世界の神への認識が改められたが…………、異世界を認知する者の中には異なる世界そのものを危険視する者が出てくるかもしれない」

 

サーゼクスは冷静にそう語る。

 

確かにアセムの件で異世界アスト・アーデに対して危機感を持つ者も現れるだろう。

奴はそれだけの力を示してしまっている。

ハーデスの件もそうだが、今回、トライヘキサが引き連れている赤龍帝の複製体は奴らが生み出したものなのだから。

イッセーの技術や底なしのど根性まで反映できていないのは幸いだが、単純な攻撃力は魔王レベル。

あの複製体軍団だけで、どれだけ苦戦させれているか。

 

だが―――――異世界の存在は敵側にだけいるわけじゃない。

 

俺は北欧戦線の映像を思い出しながら言う。

 

「アスト・アーデ出身のメンバーが体を張って戦ってくれているんだ。あの姿を見ている奴らは大勢いる。その辺りは何とかなるだろう」

 

「そうね☆ 私も赤龍帝くんの妹ちゃんは可愛いと思うし、とっても良い子よ?」

 

セラフォルーが微笑みながらもそう言った。

 

美羽とアリスから始まり、現在ではモーリス、リーシャ、ニーナ、ワルキュリアと、赤龍帝眷属の大半のメンバーが異世界アスト・アーデの出身だ。

 

あいつらは北欧の戦場において、味方を守りながら、多くの敵を打ち倒していた。

トライヘキサの吐き出す業火を前にしても、あいつらはこの世界のために戦ってくれている。

 

映像を見て改めて思ったことだが、赤龍帝眷属のメンバーの殆どが異世界出身というのは、こういう面でも良かったのかもしれん。

異なる世界の存在がこの世界のために力を振るってくれる。

 

アセムによって、異世界を脅威として考えてしまうのは仕方のないことだろう。

だが、赤龍帝眷属の戦う姿は異世界への希望も見出だせるものだと俺は思う。

まぁ、俺は実際に向こうの世界を見てきたが。

 

セラフォルーがサーゼクスに問う。

 

「私は行くけど、サーゼクスちゃんはどうするの?」

 

「出るさ。私にも『魔王』をやらせてくれ」

 

サーゼクスが出るということは、真の姿になるんだろうな。

―――――あの滅びの化身に。

 

今回の敵はそれだけしないと勝てない相手だということだ。

 

「うん、そう言うと思ってたわ。それじゃあ、私は行くわね」

 

セラフォルーはこちらに手を振りながら、この場を足早に後にした。

 

後に残った俺とサーゼクス。

こうしてると、冥府に行ったときを思い出すぜ。

 

ただ………今のサーゼクスの言葉に俺は少し思うところがあった。

 

世界の終末みたいな状況だ。

本音を言ってみても良いかもしれんな。

 

俺はずっと言いたかったことを、サーゼクスに伝えてみることにした。

 

「なぁ、サーゼクス。おまえは本来のルシファーじゃない。真名は『サーゼクス・グレモリー』だ。別に悪い意味で言っているわけじゃないぞ? ただな―――――」

 

そこまで『ルシファー』を背負わなくても良いのではないか?

俺は常々そう思っていた。

 

こいつは悪魔としては若い。

一千年も生きていない若造だ。

ルシファーの家に生まれた者ではない。

ただ、力が強かっただけの貴族の坊ちゃんだ。

 

「フフフ、堕天使の長は優しいね。だがね、これは私が望んだことでもある。確かに私は本来の『ルシファー』ではない。偽りの魔王に過ぎない。それでも、この冥界を守りたいという気持ちは本物なのだ。それにグレモリーの家に生まれた私は元々、民を守る義務がある」

 

それを言われると何も言えなくなるじゃないか。

 

魔王として、グレモリーの者として、力ある者の一人としてこの冥界を守る。

そういや、イッセーに昇格推薦を出したときにも、そんなこと言ってたけな。

 

サーゼクスはにこやかに微笑む。

しかし、こいつの瞳は真っすぐで―――――

 

「戦うさ、私も。この命に代えても皆を守って見せる。それにね、義弟が、妹が戦っているのに兄が何もしないのでは格好がつかないだろう?」

 

「義弟ねぇ……。ま、そいつは確定しているようなもんか。この戦いが終わったら『お兄ちゃん』とでも呼んでもらえ。最近、『お兄ちゃん』と『お姉ちゃん』って単語を耳にする機会が増えてな。なぁ、サーゼクス………シスコンって伝染するのか?」

 

「フフフ………当然さ! 私も久しぶりに『お兄ちゃん』と呼んでもらいたいものだよ! もしくは『おにーたま』でも可!」

 

親指を立ててウインクを送ってくるサーゼクス。

 

うん、こいつは話を振った俺が悪いんだろうな。

こいつも底なしのシスコンだったわ。

なるほど、この非常事態においてもセラフォルー同様、こいつのシスコンはぶれないらしい。

 

妙な納得をしていると、俺達の目の前に現れる者がいた。

血のように赤い瞳をした、金髪の少女。

足元に影はなく、気配から吸血鬼だと認識できる。

 

俺はこの少女とは面識があった。

そして、この少女の登場を待っていたのだ。

 

「よく来てくれた―――――エルメンヒルデ」

 

俺の声にエルメンヒルデ・カルンスタインか軽く会釈した。

 

吸血鬼カーミラ派カルンスタイン家の娘、エルメンヒルデ。

吸血鬼サイドと協議をする際、駒王町へと赴き、吸血鬼の町では俺達の案内役を務めたあの高圧的な少女。

 

だが、以前のような高慢な態度は鳴りを潜めていて、今は儚い雰囲気を出していた。

 

祖国が壊滅的な被害を受け、一から再建しなければならない状況だしな。

国の危機とあって、カーミラはあちこちに援助を仰ぐようになっている程だ。

この娘はその尖兵として各地に派遣され、相当な気苦労をしているのだろう。

 

そんなエルメンヒルデに俺は訊ねた。

 

「どうだった?」

 

すると、彼女は俺に端子つきのメモリを一つ手渡してきた。

 

こいつは…………やはりな。

 

エルメンヒルデが言う。

 

「元総督さまの予想通りです。マリウス・ツェペシュが秘匿していた研究データが見つかりました」

 

俺は探していた。

リゼヴィムも知らないであろう聖杯の情報を。

 

マリウスは吸血鬼の王子でヴァレリーの聖杯を研究していた。

そんな奴もリゼヴィムに騙され、利用されるだけの器量しかなかった。

 

だが、純血の吸血鬼、しかも王家の血を引く者が他の種族にみすみす研究成果を渡してしまうものだろうか?

たとえ渡すとしても、それはすぐに分かるようなことだけで、核心に迫るような情報は隠しているではないだろうか?

 

そう考えた俺は調査員を派遣して、現地のカーミラ派と共同でツェペシュの王宮の隅々から、マリウスと関与した者達のプライベートまで全てを調査してもらった。

 

そして、俺の考えは的中する。

 

エルメンヒルデが言う。

 

「マリウス・ツェペシュの食料係………つまり、吸血鬼に血を与える人間の一人が未公開の聖杯の情報を持っていました。体に術式を刻まれる格好で、です」

 

「なるほどな。秘匿情報を術式として刻んだわけか」

 

「はい。リゼヴィム・リヴァン・ルシファーを国内に招き入れる直前にその者を食料係の任から解いて、国外追放していたようでして、探すのが難航しました」

 

「そりゃ、中々に用意周到だな。マリウスも利用されるだけの馬鹿じゃなかったってことか。苦労をかけたな、エルメンヒルデ。助かったぜ」

 

俺はメモリを見つめながら、エルメンヒルデに礼を言った。

 

………ふと思ったことなんだが、

 

「ついでにイッセーの顔を見ていくか? 近くの病院で入院中だが?」

 

俺がそう言うと、エルメンヒルデは顔を紅潮させる。

 

「ど、どどどとうして赤龍帝の名前が出てくるのですか!? わ、私と、か、か関係ありません!」

 

ほほう、これは面白い反応じゃないか。

年明けにイッセーと再会した時に色々あったと聞いてたんで、もしやと思い鎌をかけてみたら…………。

 

あいつ、また異種族の女を落としたのかよ。

悪魔に天使に堕天使、異世界の姫二人に吸血鬼。

 

なんというか、あいつって実は結構モテてるよな。

学園でも隠れファンなるものがいるらしいし。

 

エルメンヒルデは気を取り直した後、一礼してこの場を去っていった。

 

エルメンヒルデを見送りながら、サーゼクスが俺に言う。

 

「それでは、私は眷属と話し合ってくるよ」

 

「んじゃ、俺はあいつらと会ってくる」

 

リゼヴィムとの一戦から眠りっぱなしのイッセーの容態も気になるしな。

あれだけ滅茶苦茶な力を使ってたんだ、それだけ負荷も大きいだろう。

 

俺はサーゼクスとその場で別れた後、息を吐いた。

 

…………さて、早いとこ、こいつの解析を済ませますかね。

 

 

[アザゼル side out]

 

 

 

 

[三人称 side]

 

 

《貴公から接触してくるとはな》

 

アポプスは開口一番にそう言った。

 

北欧世界から引き上げたトライヘキサとその軍団。

彼らは一度、限界を迎えた聖杯を休ませた後、次の目的地へと侵攻する予定だった。

 

しかし、彼らの予定は変更となった―――――アスト・アーデの神、アセムの接触によって。

 

「いやぁ、良い感じに暴れているみたいだねぇ。リゼ爺と違ってストレートすぎる分、過激さもまた違っているねぇ。世界はもう大混乱じゃないか」

 

《そのようなことを言いに来たわけではないだろう? ………この場所はなんだ? ここが貴公らのいた世界、というわけではあるまい?》

 

アポプス達はアセムによってとある場所へと案内されていた。

そこはアポプスが見たことのない場所。

 

それは当然のことだった。

 

なぜなら―――――ここは完全なる別世界だからだ。

 

「まっさかー。アスト・アーデはこんなに寂しい場所じゃないよ。ここはね――――」

 

いつもの笑みを浮かべながら、アセムはこの場所について語りだす。

その言葉は邪龍筆頭格である彼にとっても想像を越えていて―――――。

 

《そのようなことが………。なるほど、異なる世界の神が持つ力、か。貴公に訊きたい。我らに接触してきた理由は想像がつく。貴公はこの戦いの先に何を見ている?》

 

アセムの目的は世界を滅ぼすことでも、自分のものにするためでもない。

そのようなことに興味はない。

 

アセムは血のように赤い、真っ赤な空を見上げて自嘲気味に笑んだ。

 

「なに、僕の願いなんて、君達が訊けば鼻で笑ってしまうような甘っちょろいことさ。世界はそんなに甘くない。それを分かっておきながら、僕は動いた。ほんの僅かな可能性に賭けてね」

 

《その可能性というのは今代の赤龍帝か?》

 

アポプスの問いにアセムは笑みで返した。

アポポスもそれ以上、踏み込むような問いかけはしなかった。

 

「君達には少しだけ僕に協力してほしい。ただ、その代わり、僕達も万全の状態で君達を支援しよう。―――――世界中の神達と、歴戦の戦士達、英霊達と真正面から全面戦争。僕と手を組めばこの戦いを更に激しく、もっと楽しいものになることを約束しよう。これは君達にとっても望むところじゃないかな?」

 

全ての勢力と全面戦争。

現状でも世界中を巻き込んだ戦いにはなっているが、こちらが仕掛ける一方で全面戦争というレベルには達していないだろう。

 

―――――更に激しく、もっと楽しく。

世界中の猛者達が集結し、かつてない戦いを繰り広げられる。

 

アセムの協力があれば、それが叶う。

この神はリゼヴィムよりもドラゴンというものを理解しているらしい。

冥府を一人で壊滅させた実績を持つことからも、その力は確かなもの。

アセムであれば、それだけの戦力を揃えることも可能なのだろう。

 

異世界の神の言葉は最強クラスの邪龍を高揚させるには十分だった。

 

《良いだろう。まずは貴公の話を詳しく聞かせてもらおうか》

 

「アハッ、そうこなくっちゃ♪」

 

[三人称 side out]

 

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