ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

350 / 421
本日三話目投下ァァァァァァァァァ!


10話 剣士達のレベルアップ

[木場 side]

 

「さーて、そんじゃ始めようぜ」

 

モーリスさんはマントをたたんで床に置くと、そう言った。

腕を伸ばしたり、屈伸をしたりと準備運動まで始めている。

 

「外では二時間に対して、この場所では一ヶ月。長い時間を得られたと思っているかもしれないが、そいつは間違いだ。たった一ヶ月、そう考えろ。俺達の相手はあの怪物共だ」

 

相手は神々ですら手に余る怪物。

トライヘキサと邪龍軍団。

加えてアセム。

 

一ヶ月の特訓で彼らに僕の剣が届くかと問われると、それは無理だろう。

次元が違いすぎる。

 

そう、僕達にはたった一ヶ月であの怪物達を相手に生き残れるだけの力を、大切な物を守れるだけの着けなればいけないんだ。

 

モーリスさんは僕に言う。

 

「祐斗、おまえは神器を二つ持っていると聞いたが、間違いないな?」

 

「はい」

 

僕が所有している神器は二つ。

魔剣創造と聖剣創造だ。

ありとあらゆる魔剣、聖剣を創ることができる。

 

「アザゼルから聞いた話だが、おまえの騎士王形態………禁手第二階層だったか。あの状態の出力は神滅具、もしくは準神滅具クラスに届くんじゃないか、だとよ」

 

「僕の神器の力が神滅具クラスに………?」

 

「らしいぞ。俺は神器のことは分からんが、おまえの力はいつか神に届く可能性を秘めているということだな。神滅具は神を滅ぼす可能性を持っているんだろう?」

 

魔剣創造はレアな神器ではあるが、神滅具ではない。

イレギュラーな禁手とされる聖魔剣ですらそうだった。

 

しかし、僕の禁手第二階層―――――『双覇の騎士王』なら届くというのか?

神をも滅ぼす領域に―――――。

 

考え込む僕にモーリスさんは笑みを浮かべながら言う。

 

「まぁ、おまえさんがその領域に達するにはまだまだ時が掛かるだろうがな。そいつは頭に入れておいて損はない。………でだ、おまえの修業内容だが………祐斗、おまえの強みはなんだ?」

 

僕の強み………それは騎士のスピードと多彩な能力の魔剣、聖剣。

第二階層へと至ってからはそこが更に強化された。

 

「そうだ。おまえの力はあらゆる状況に対応できる。だがからこそ、俺はそこを強化していきたい。ってな訳で、祐斗」

 

「はい」

 

「おまえ、聖剣創造も第二階層へと至らせろ。そんでもって、騎士王の力も更に引き出せるようになれ。この二つがおまえに与える最低課題だ」

 

「―――――ッ!」

 

聖剣創造を第二階層に………?

 

その考えは持っていなかった。

元々、神器を二つ持っていること自体、そうないことだ。

二つの神器を禁手に至らせることも普通はない。

 

そして、禁手を更に上の次元に至らせることがイレギュラーだった。

神器に明るいアザゼル先生ですら、あり得ないと口にしていた程だったからね。

 

それを………二つ目の神器の禁手を更に上へと引き上げる、だと………?

 

呆気に取られる僕にモーリスさんは言う。

 

「なにも絶対に出来ないわけじゃないだろ。おまえは既にイレギュラーを起こしている。だったら、もう一つや二つ、イレギュラーを起こしても問題ないだろ」

 

その言葉を受けて、イリナが言った。

 

「だけど、第二階層って意図的に至れるものなの?」

 

「知らね」

 

「な、なんて、テキトーな………。うん、この人、やっぱりイッセー君の師匠だわ。ところどころで似てるもの」

 

イリナの言葉には僕もつい頷いてしまった。

イッセー君の今の性格ってこの人の影響もあると思うんだ。

 

「そもそも、禁手ってやつも至る原因は個人によるんだろ。そんなこと俺に聞かれても答えられるわけがねぇ。だが…………」

 

モーリスさんは頭をかいた後、僕の胸に人差し指を当てて、トントンと叩いた。

 

「祐斗、おまえがイッセーの背中を追いかけるなら、己の限界を超えてみな。あいつにはまるで才能なんざ無かった。それでも今の領域に至れたのは、常に限界の壁をぶち破って来たからだ。あいつに出来て、おまえに出来ないってことはない。やってみろ。あのバカに追い付きたいのなら、まずはそれからだ」

 

「―――――はいっ!」

 

僕は力強く答えた。

 

やってみるさ。

己の壁を、限界を超えてみせる。

 

僕の返事にモーリスさんはニンマリと笑みを浮かべていた。

 

モーリスさんが次に話しかけたのはゼノヴィア。

 

「ゼノヴィア。おまえはストラーダの爺さんが言ってたように一刀でも二刀でも戦える戦闘の申し子。デュランダルとエクスカリバー、伝説の聖剣に選ばれた者だ。おまえの持つ潜在能力はかなりのものだろう」

 

かつてデュランダルとエクスカリバーの二刀を振るった聖剣使いはいなかっただろう。

ゼノヴィアはエクスカリバーの多種多様な能力を十全に使いこなせてはいないが、この先、彼女はそれを会得するはず。

 

「考えるな、感じろ。あの爺さんもそう言っていた。俺もそう思う。おまえは頭でどうのこうの考えるより、剣と体で戦場を感じ、持ち前の思いきりの良さで斬り開け」

 

「ああ。どんな相手だろうと私とデュランダル、エクスカリバーのパワーで―――――」

 

ゼノヴィアが意気揚々と言おうとすると、モーリスさんが掌を向けてそれを止めた。

 

「………分かっていると思うが、パワーって言うのは何も力任せに戦うことじゃないからな? 感覚でも良い、相手を理解した上でのパワーだからな? 闇雲に突っ込んでも無駄死にするだけだ。そこは理解しているよな?」

 

「わ、分かっているとも!」

 

「この間、それで俺にコテンパンにされたよな? 思いきりの良いところはおまえの良い点だが、思いきりが良すぎるのはおまえの悪いところだ。考えるなって言っても丸っきり考えないのはただのバカだ」

 

「むぅ………ぅぅっ」

 

指摘されたことに反論できないようだ。

赤面しながら黙り込んでしまった。

 

うーん、確かにゼノヴィアの猪突猛進振りは顕在というか………思いきりが良すぎるね。

 

ま、まぁ、モーリスさんの力が異常だとも思うんだけどね?

パワーが持ち味であるゼノヴィアも真正面から突っ込んで力負けしていたし………。

僕もモーリスさんを相手に一太刀も掠めることすら出来なかったし………。

 

………良く見ると半分涙目になっている。

最後の一言はゼノヴィアにかなり突き刺さったようだ。

 

そんなゼノヴィアにモーリスさんは苦笑しながら続けた。

 

「その辺りの感覚は今から磨いていけば良い。そのためにおまえを鍛えるんだ。その感覚を磨きあげた時、おまえのパワープレイは一味も二味も違ってくる。その第一歩として、おまえにはこいつを覚えてもらう」

 

モーリスさんは鞘に納められた剣の内、一振りを抜き放つ。

 

次の瞬間、刀身が黒く染まり―――――黒い斬戟が放たれた!

 

剣気による攻撃………。

剣を極めたモーリスさんが会得した絶技だ。

 

「こいつはイッセーが使う『気』や『闘気』と似ているが、少し違う。剣と共に歩み、共に戦う者だけが得られる技だ。こいつには理屈なんてない。感覚で放つものだからな。この三人の中じゃ、ゼノヴィアが一番会得が早いと俺は思う」

 

「私がか?」

 

「そうだ。おまえに細かい技術を頭ごなしに押し付けても身に付かん。剣の型や技を教えたところで中途半端に終わるだろうさ。そういうのは祐斗かイリナ向きだ」

 

「なぜか、酷く貶されたような気がするのだが………気のせいだろうか?」

 

「気のせいだ。もしくは被害妄想だな、そりゃ。脳筋………ゴホン、誰よりも感覚で戦うゼノヴィアにはそれに合った力を教えた方が良い」

 

「今、脳筋って言った! 脳筋って言ったぞ!」

 

「落ち着きなさいよ、ゼノヴィア。いつものことじゃない」

 

「いつものことなのか!?」

 

「今更!?」

 

そこからはいつもの展開。

『自称天使』と『自称剣士』という言葉が飛び交い始めた。

 

最初はテクニックのことやパワーといった戦闘についての内容だったんだけどね。

段々話がずれていって、どうでも良い日常のこととかを言い合い始めてしまった。

 

学校のこととか、家でのこととか。

 

その内容も通過すると、今度は―――――。

 

「私の方が胸は大きいぞ!」

 

「私と同じでしょ! イッセー君は私の方が柔らかいって言ってたもん!」

 

「張りは私の方が良いらしいぞ! つまり、イリナの胸はたるんでいるということだ!」

 

「たるんでないもん! 張りだってあるもん! ゼノヴィアのは張りじゃなくて、ただの筋肉でしょ!? やーい、頭もおっぱいも筋肉ぅ!」

 

イッセー君はともかく、他の男性の前でする話じゃないよね…………。

君達、ここに僕とモーリスさんがいることを忘れてないかい?

どういう反応をすればいいのか分からないんだけど………。

 

 

「祐斗、イッセーを叩き起こしてこい。これじゃ話が進まん」

 

「無茶言わないでくださいよ………。そもそも、ここから出られませんし」

 

 

五分後………結局、僕が二人の仲裁に入ることに。

 

落ち着いたところで、モーリスさんはイリナに言った。

 

「よし、最後にイリナ。おまえはゼノヴィアみたいなパワープレイも少ないし、木場のような超高速で多彩な剣を用いた戦いもない」

 

「いきなり全否定された!?」

 

「誰も全否定はしてねーよ。確かに二人に比べたら見所がないように見えるが―――――」

 

「ガーン!」

 

「いや、人の話を聞き終える前に落ち込むなって。おまえは真正面からも戦えるし、細かいサポートも出来る。光力を使った後方支援も出来る。戦士としては祐斗とゼノヴィアよりも幅が広い。所謂、オールラウンダーってやつだ。近接戦寄りだけどな」

 

そう言えば、イリナが量産型聖魔剣やオートクレールを得る前は光の槍を使って僕達の後方支援をしてくれていた。

今では前衛として戦うことが多いから、忘れていたけど、サポートとしての面でも彼女は活躍できるんだ。

 

モーリスさんはイリナさんの腰に帯剣されているオートクレールを指差した。

 

「加えて、そのオートクレール。斬った相手を浄化する力というのは邪龍や魔物にはかなり有効だ」

 

オートクレールの浄化の力は僕もこの目で見ている。

 

エヴァルド・クリスタルディ氏ですら、浄化の力を受けて、戦意を揺るがされていた。

 

モーリスさんはイリナに告げる。

 

「俺がおまえに与える課題はオートクレールの浄化の力を自在に扱えるようにするということ。ただ剣を振るって放つだけでなく、光の槍に纏わせて後方からも撃てるくらいにはな。そして、サポート役としての力をつけること」

 

「分かりやすいですね。木場君やゼノヴィアよりもアレなような………」

 

「そうでもないさ。前衛もこなせて、中衛、後衛もこなせる。戦場では臨機応変に味方をサポートする。………言うだけなら簡単だが、やれることが多いってのはそれだけ機転が利かないと難しいもんだ。それに戦況を理解し、広く見渡せる力が必要だからな。ある意味、おまえの修業が一番難しいかもな。………いや、これからやる修業は一人一人がハードなやつだ。本当に殺したりはしないが、命を懸けてもらう。アーシア、この修業にはおまえの力も必要だ。もしもの時には頼む」

 

「はい! ゼノヴィアさん達の傷は私が治します!」

 

気合を入れるアーシアさんの頭を優しく撫でるモーリスさん。

それからモーリスさんは前に立つと、僕達を見渡した。

そして、二本目の剣を鞘から引き抜いた。

 

「始めるぞ。俺達は前に出て、敵を斬る。そして、後ろにいる仲間を守ることが役目だ。俺達が倒れたら、仲間が危うくなる。だから、絶対に負けられないのさ」

 

モーリスさんの言う通りだ。

僕達は主の、仲間の剣であり盾でもある。

僕達の敗北は仲間の危機へと繋がるんだ。

 

「俺はおまえ達の力と覚悟、可能性を信じる。だからこそ、俺も本気でいかせてもらう」

 

―――――静かだ。

静寂がこの空間を支配している。

でも、圧倒的なプレッシャーが放たれていて………。

 

僕達三人はそれぞれの剣を握った。

 

僕達の姿にモーリスさんは笑みを浮かべ―――――。

 

「若き剣士たちよ――――――己の限界を超えていけ」

 

 

[木場 side out]

 

 




再開してから、十話目。
我ながら中々のペース(ニヤッ)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。