ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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意外とシリアス………




19話 ○○○○と書いて、魔法少女と読む!

[美羽 side]

 

ヒーローは遅れて現れるという言葉がある。

 

ピンチの時、ここぞという場面で主役はやってくるものだ。

アニメやマンガを見ているとそういうことが多い。

ボクがコレクションしているマンガの中にもそういうストーリーのものは結構あったりする。

 

世界の命運をかけたこの戦い、この危機的状況で来るのって、どう考えてもお兄ちゃんだと思うよね?

小猫ちゃんが強い気を感じたって言ってたから、皆も確信してたよね?

 

なんで………なんで――――――。

 

「なんで、ここでミルたんさんんんんんんんんんッッ!?」

 

ボクの全身全霊のツッコミが戦場に響き渡った!

 

巨木のごとき太さの上腕。

明らかにサイズの合わないマジカルな衣装を張り裂かんばかりの見事な分厚い胸板。

フリフリのスカートからはボクの腰よりもふとい足。

そして頭には――――猫耳。

 

この戦場に場違いな格好をした歴戦の戦士のような人が一人、戦場に佇んでいた。

全身から凄まじいオーラをたぎらせて。

 

リアスさんが目を見開いて言った。

その声には明らかに戸惑いがあって………。

 

「え………? え? え? あ、あの人って、イッセーのお得意様よね? え、えっと………今のって、イッセーじゃなくて、あの人が………?」

 

ボク達の後方、味方陣営から放たれた極大の砲撃は超巨大魔獣の壁に大穴を空けて、遥か彼方まで飛んでいってしまった。

光に呑まれた魔獣や邪龍は瞬く間に姿を消した。

 

今の攻撃で危機的な状況を乗り越えたことは間違いない。

 

ただ―――――。

 

「ミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖いミルたん怖い…………」

 

「アリスさん!?」

 

どうしよう、アリスさんがボクの後ろで震えてる!

完全にトラウマ刻まれちゃってる!

 

初めて依頼を受けた時の記憶が甦ってくる。

あの時もミルたんさんが一人ではぐれ魔法使いの集団を殲滅していて………本当に人間!?

 

すると、モーリスさんが目を細めて言った。

 

「あの格好………。そうか、あいつもこの世界の人間だったな」

 

え………?

ちょっと待って、なんで、モーリスさんがミルたんさんのこと知ってるの?

なんで、知ってるような口ぶりなの?

 

ボク達の視線がモーリスさんに集まる中、モーリスさんは顎髭を撫でながら言った。

 

「ん? あー、そういや、おまえ達は知らないんだよな。ロスウォードの件が終わった後、おまえ達は戻っていただろう? その直後のことさ。あいつ、アスト・アーデに来たぞ」

 

『えええええええええええええええええええっ!?』

 

衝撃的過ぎる事実に全員が心底驚愕した!

 

ミルたんさん、アスト・アーデに行ってたの!?

ボク達がこっちに戻ってきた直後に!?

 

もう謎過ぎるよ!

元から存在が謎だけど、ここまでくると何なのさ!?

 

リーシャさんが頬に手を当てて、にこやかに言った。

 

「どうにも、イッセーと同じパターンらしくて、彼女も意図せずしてアスト・アーデに召喚されたみたいなんです。戻る方法は分かっていたのですが、折角ということで、とりあえずはオーディリアに数日滞在することになりまして」

 

「そうそう。あいつがオーディリアの復興作業を手伝ってくれてなぁ。想定以上のスピードで終わったよ。で、魔法に興味があるってことで、魔法学校の見学にも行ってな」

 

「ええ。それはもう熱心に私の授業を聞いてくれましたよ。それに学校の皆には魔法少女なるものを熱く語ってくれました。おかげで、一部の生徒の間であの格好がプチ流行しましたよ」

 

次々と明かされる真実に開いた口がふさがらなくなった。

 

ミルたんさん、リーシャさんの授業を受けてたの!?

魔法学校の生徒に魔法少女について語ったの!?

そんでもって、プチ流行させちゃったの!?

 

もうなにがなんだか分からないよ!

 

「とにかく、熱心で心が澄んでいた奴でな。腕っぷしもある。俺と軽く手合わせしたが、結構、追い込まれたぜ。騎士団に勧誘したんだが、残念ながら断られちまった」

 

「あの勝負は凄まじいものでしたよ。モーリスがあれほど追い込まれたのはシリウスと戦って以来でしょうか。とりあえず言えることは………」

 

モーリスさんとリーシャさんは口を揃えて言った。

 

「「とにかく凄くて良い人だった」」

 

ダメだ、もう思考が追い付かない。

手合わせして、モーリスさんを追い込んだって………。

確かに良い人だと思うけど………。

 

そうこうしていると、向こうから物凄いスピードでミルたんさんが飛んできた…………って、どうやって飛んでるの!?

 

ミルたんさんはボク達の前でブレーキをかけると手を振ってくれた。

 

「悪魔さんの妹さんだにょ。お久しぶりだにょ」

 

「あ、はい。お久しぶりです………。あ、あの、どうやって飛んでるんですか? 飛行魔法とか使ってませんよね?」

 

「悪魔さんに教えてもらった技を自分なりに練習してたら、飛べたにょ」

 

「お兄ちゃんに教えてもらった技って、錬環勁気功だよね………。錬環勁気功って、空飛べたっけ?」

 

ボクは後ろに隠れているアリスさんに聞いてみた。

 

アリスさんは首を捻りながら、首を横に振った。

 

「う、ううん。飛べるようになる技はなかったと思うわ。イッセーは奥義を修めるくらいのレベルだけど、飛んだことなかったし」

 

ということは、お兄ちゃんの知らないような技を自分なりに編み出してしまった………って、ことだよね。

 

うーん、これは流石というのか、何と言うのか。

どう言えば良いんだろう………。

 

リアスさんが根本的な疑問をミルたんさんに投げ掛けた。

 

「あなたはなぜ、ここに?」

 

すると、ミルたんさんはとても真っ直ぐな目で答えてくれた。

 

「数日前、ミルたんは虹色の輝きを見たにょ。そしたら、悪魔さんの声が聞こえてきたにょ」

 

それって、お兄ちゃんが覚醒した時のことだよね。

あの虹色の粒子は次元を越えて駒王町に広がってたし、ミルたんさんにもお兄ちゃんの声が聞こえてもおかしくはない。

 

ミルたんさんは続ける。

 

「その数日後に空に穴が開いて、そこから白髪のお兄さんが攻撃するとか言ってたのを聞いたにょ」

 

それはアセムが世界に向けて発信した宣戦布告だよね。

やっぱり、一般の人間にも彼の声は届いていたみたいだ。

 

ミルたんさんは拳を強く握ると、とても熱い眼差しで言った。

 

「悪魔さん達が世界のために頑張ってるにょ。なら、ミルたんも皆を守るために力を使うにょ。そのためにここに来たんだにょ」

 

「この人、やっぱり良い人だ! 良い人過ぎる!」

 

この人はどこまで純粋なんだ!

もう、見た目が気にならないくらいヒーローしてるよ!

 

自分でも訳が分からない感動をしていると、ミルたんさんが『門』の方を指差した。

 

見ると、いつの間にか『門』からは超巨大魔獣や赤龍帝の複製体が出現してきていて、既に連合軍と激戦が繰り広げられていた。

………ミルたんさんに気をとられ過ぎて気づかなかったよ。

 

「悪魔さん達はあの穴に向かうにょ?」

 

「は、はい。ボク達はあの『門』から相手の陣地に入って、敵を止める役割なんです」

 

今思ったけど、一般の人に作戦を伝えてよかったのかな?

もう遅いけど。

 

ミルたんさんは一つ頷くと、ボク達に向けて言った。

 

「ここはミルたんが引き受けるにょ。その間に悪魔さん達は先に進んで欲しいにょ」

 

「っ! 危険だわ! あなた一人にそんな重荷を背負わせることなんて出来ない!」

 

リアスさんが真剣な表情で言ったけど………なんだろう、このおかしな状況は。

もっとツッコミを入れるところがあると思うんだけど………。

 

ミルたんさんは前に出ると半分だけ、こっちに顔を送る。

そして―――――。

 

「ミルたんはミルたんの役目を果たすにょ。皆のためなら、どんな困難だって乗り越えられる。それが――――本当の正義の魔法少女だと思うにょ」

 

男前だ!

ところどころ変だけど男前過ぎる!

というか、ミルたんさんの役目ってなんなの!?

 

ああっ、止める前にミルたんさんが魔獣の方へと突貫してしまった!

物凄いスピードで戦場に躍り出たよ!

 

「ミルキィィィィ・ブラスト・インパクトォォォォォォォォ!!」

 

振るわれた豪腕が複製体を粉砕する!

魔王クラスを一撃!?

 

「ミルキィィィィ・ラブリィィィィ・ブレスゥゥゥゥゥゥ!!」

 

吐き出された息が暴風となって、無数の邪龍を吹き飛ばしていく!

息だけで台風みたいになってる!?

 

「あの技、私が教えた魔法も使ってますね」

 

「リーシャさんが教えたんですか!? というより、なんでそんなに冷静!?」

 

そんな会話をしている間にもミルたんさんの無双は止まらない!

 

振るわれる拳が、放たれる蹴りが、強大な敵を粉砕し凪ぎ払っていく!

 

「ミルキィィィィ・ライトニング・スラァァァァァシュ!」

 

放たれた手刀が邪龍の首を切り落とし、複製体を両断し、更には海を真っ二つに割る!

海の底が見えた!?

 

「あ、俺が教えた技だ」

 

「モーリスさん!? なんてものを教えてるんですか!?」

 

木場君のツッコミが炸裂する!

ようやく、思考を取り戻せたみたいだ!

 

すると、ミルたんさんの体を覆うオーラに変化が訪れた。

ピンク色に輝くラブリーなオーラが何かを形作っていく。

 

ピンク色のオーラが蠢くと―――――背中に天使の翼を形成した!?

 

広げられた翼から舞い散るハート型の羽が邪龍に触れる。

羽に触れた邪龍が口から泡を吹いて、海へと落ちていって………何したの!?

 

ミルたんさんが超巨大魔獣の一体に掌を向ける。

そこに尋常じゃないオーラが集まっていき―――――。

 

「ミルキィィィィィィ・ビッグバン・アタァァァァァァクッッッッ!!」

 

 

ズゥオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッッッ!!

 

 

放たれた砲撃は超巨大魔獣を包み込み、丸ごとラブリーなオーラの向こうへと消し去った!

 

こ、これがミルたんさんの真の力―――――。

 

「これが物理戦士(まほうしょうじょ)の力なのね!」

 

「イリナさん、それ字が違う」

 

物理戦士こと、ミルたんさんの戦いぶりは凄まじく、それからも果敢に拳を振るっていた。

 

その光景にこの戦場で戦っている人達も戦慄していて、

 

「お、おい、なんだ、あいつは!?」

 

「あの化け物を一撃だと!? 何者だ…………というか、なんだ、あの格好は!?」

 

「俺に聞くなよ! だ、だが、いける! あいつがいれば、ここは持ちこたえられる!」

 

「き、救世主だ! 救世主が現れたぞォォォォォォォォォォッ!! 勝てる! 勝てるぞ、俺達はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」」」

 

勢いを取り戻していく戦士達!

雄叫びをあげて、複製体や邪龍に立ち向かっていく!

 

敵から放たれた砲撃で多くの味方を失ったときは、半ば絶望している人もいた。

そんな人も、今となっては勇ましい顔つきで戦っていた。

 

こ、これがミルたん効果…………。

 

リアスさんも勇ましい顔つきで、

 

「行きましょう。―――――彼女に続くのよ!」

 

そ、それはちょっと………。

頷きにくいんですけど…………。

 

アリスさんなんて、涙目で首振ってるし………。

 

と、とにかく、戦況は持ち直せた。

多くの敵が撃ち落とされ、『門』の近辺も開けてきた。

 

ボク達は頷きあうと『門』を目指して飛翔。

『門』を潜り、アセムがいる世界へ―――――。

 

[美羽 side out]

 




うん、シリアスなんてなるわけないよね!

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