ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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ストックが無くなってしまった…………!

現在の最終章ですが、過去最多の話数になりそうです(-_-;)


23話 絶望の中の希望

[木場 side]

 

戦場は混乱状態に陥っていた。

 

複製した赤龍帝の力を使って自身の能力を高めたベル。

高められた彼女の力はこの一帯にいる神以外の戦士達全てを読み取り、複製してしまった。

修行によって新しい領域に至った僕達はもちろん、モーリスさんやリーシャさんでさえ複製されている。

 

「くっ………! このっ!」

 

蒼炎を纏うゼノヴィアとゼノヴィアの複製体。

今の彼女のパワーは絶大だけど、それさえも丸ごとコピーされている。

二人のゼノヴィアがぶつかる度に地面に大きな亀裂が入り、周囲を破壊し尽くしていく。

 

ゼノヴィアは激しく火花を散らせながら、皮肉気に言う。

 

「これが私のパワーか! 流石は私と言いたいところだが、敵に回ると厄介極まりないな!」

 

「全くだわ! あちこち、破壊しすぎよ!」

 

「そういうイリナも厄介だろうに! 早くそれを倒してしまえ! イリナの力は私達悪魔には大ダメージなんだ!」

 

そう、ゼノヴィアの言う通り、イリナの浄化の力は僕達悪魔にとって厄介極まりない。

パワーアップしたイリナの複製体は浄化の力を乗せた光の矢を展開し、周囲に撒き散らす。

それによって、こちらの陣営はかなりの被害を受けている。

 

いや、こちらの陣営に被害を出しているのは何もゼノヴィアやイリナの複製だけではない。

僕やリアス部長といったメンバーも、特に僕達『D×D 』のリーダーであるデュリオさんの複製体の攻撃力は凄まじく、この一帯の天気を変えて、こちらを攻撃してくるんだ。

 

「まさか、自分と戦うことになるなんて思ってもなかったよ! 悪い冗談だ!」

 

雨雲を作り、大雨を降らせ、極大の雷を落としてくる。

広範囲への攻撃に長けたデュリオさんの力をそのままこちらに向けてくるのだから、恐ろしい。

 

それでもこちらの陣営が壊滅していないのはデュリオさんが自身の複製体を相手取ってくれているからだ。

 

自分の複製体なら、手の内だって分かる。

そのため、僕達は出来る限り、自分の複製体と戦うようにしている。

 

「自分を乗り越えろってことなのかな? 本当に厄介な力だ!」

 

騎士王の姿になった僕は同じく騎士王の姿の僕に斬りかかる。

スピード、剣技、使える能力の幅まで全く同じ。

僕は出せる最高のスピードで駆け回り、翻弄するが、向こうも同じように動き、剣を繰り出してくる。

 

この複製体は見た目も同じなので、他の人が見るとどちらが本物か見分けにくいだろう。

イッセー君や小猫ちゃんのように気を見分けることが出来るのなら、話は別だと思うけど。

 

でも、この複製体を見分ける方法はある。

目元だ。

この複製体が唯一、本物と違うのは目元に黒い隈取りがあること。

高速戦闘の時には見分けにくいだろうけど、今のところ、これが本物と偽物を見分ける唯一のポイントだ。

 

複製されていないのは神々と例外として神姫化した美羽さんとアリスさんだけ。

あの二人が複製されていないのは直前に疑似神格を発動させたからだろう。

ベルの複製能力は神格までは再現できないようだからね。

 

神々にもこちらを加勢してほしいところだが、神クラスはトライヘキサの対応に追われている。

こちらのトライヘキサにはアポプスも随伴しているので、神クラスでも抑え込むことができていない。

 

例外の一人である美羽さんはベルと壮絶な魔法合戦を繰り広げている。

無尽蔵の魔力を持つベルと、その彼女と対等に渡り合っている神姫化した美羽さんの戦いは他者を寄せ付けない。

下手に近寄れば、巻き込まれて焼かれてしまうだろう。

 

もう一人の例外であるアリスさんは神々しい光を振り撒き、連合軍全体の援護に回っている。

味方を正確に見分け、複製体だけを無数の光の槍で貫いていっている。

貫かれた複製体は圧倒的な光力で塵と化していた。

 

だが、敵の数が減る気配がない。

アポプスが闇を広げながら、聖杯を用いて邪龍達を生産しているからだ。

 

このままではマズい………!

持久戦に持ち込まれたら、こちらが保たなくなる!

 

焦る僕。

だけど、目の前の自分を倒さなければ…………!

 

その時、僕の複製体が横合いから飛んできた何かによって吹き飛ばされた!

見れば、それはモーリスさんの複製体で…………。

 

「やれやれ………まさか、自分を殺る羽目にあうとは思わなかったぜ。無事か、祐斗?」

 

首をコキコキと鳴らしながら息を吐くモーリスさん。

所々、衣服が破け、血を流しているが、大きな傷は受けていない。

せいぜい掠り傷といったところだろう。

 

対して、モーリスさんの複製体は見るも無惨なほど、ズタボロにされている。

 

彼は…………自分のコピーを圧倒したというのか?

 

そんな疑問を持つ僕に平然とモーリスさんは言ってくる。

 

「イッセーの件でもそうだが、所詮は不良品。魂の乗らない剣なんざ、どれだけ速かろうが相手じゃねぇ。それに自分の複製ってなら、戦い方も同じだ。こっちは相手の攻撃パターンを把握しているに等しい。だったら、そいつを崩すことなんぞ楽勝だろ」

 

すると、上からモーリスさんの言葉に付け足すような言葉が聞こえてきた。

 

それはモーリスさんと同じく、自分の複製体を倒したリーシャさんの声で、

 

「この複製体は過去の自分の力。ならば、こちらはそれを超えていけば良い。それだけのことです」

 

つまり、この人達は短時間で過去の自分を乗り越えたと言うことか………。

 

モーリスさんが言う。

 

「どうやら、他の連中も倒し方が分かってきたみたいだな。ほら、リアスが勝ったぞ。流石はおまえ達の主だ」

 

そう言われて、リアス前部長を見れば、無傷と言う訳ではなかったが、自身の複製を完全消滅させていた。

朱乃さんも、小猫ちゃんも、ゼノヴィアも、イリナも、デュリオさんも匙君も自分の複製体を相手に推し始めていた。

全員が目の前の己を超えていっている!

皆、この戦いの間に進化したんだ!

 

リーシャさんが僕の肩に手を置く。

 

「私達は他の方の援護に向かいます。ここは任せても良いですね?」

 

リーシャさんの視線の先には僕の複製体。

僕の複製体は全身から静かに黒と白のオーラを滲ませて、こちらに殺気を向けていた。

 

僕は一歩前に出る。

 

「ええ。過去の自分の力くらい超えてみせますよ。グレモリー眷属の男子としては当然のことですから」

 

僕の答えに満足したように笑みを浮かべる二人。

二人はそのまま散り、新たな敵へと攻め込んでいった。

 

あの修行空間でモーリスさんに言われた言葉を思い出す。

今日の自分は昨日の自分よりも強く、明日の自分は今日の自分よりも強く。

今の自分は一分前、一秒前の自分よりも強くあれ。

 

今がその時だ。

相手は過去の自分。

今の僕はあれよりも―――――強い。

 

僕は聖魔剣の柄を両手で握り、正眼に構える。

 

僕達は一拍置くと、同時に地を蹴って駆け出す!

高速の剣戟の中で火花が散る!

 

―――――速く。

もっとだ。

まだいける。

僕はまだまだ加速できる!

 

刹那―――――僕の視界から色が消える。

あらゆるものの動きが遅く、まるでスロー再生されたような感じだ。

これが極限の集中状態『領域(ゾーン)』。

 

モーリスさんとの修行で僕は『領域』に入れるようになっていた。

その段階では完全に扱える訳ではなく、まだまだ不完全だった。

あのイッセー君ですら会得してから、慣れるまでに時間を要したのだから仕方がないことだと思う。

 

でも、今、この時。

僕は『領域』を完全に掌握できた。

過去の僕と剣を交える度に、僕の剣は速く強く進化していく!

 

感じる、自分の中で駆け巡る力の流れが。

分かる、僕は更に限界を超えようとしている!

 

「僕は僕を超えることで、この刃を研ぎ澄ます! 僕はリアス・グレモリーの騎士だぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

ぶつかり合う聖魔剣!

僕の剣が相手の剣を真っ二つに叩き折る!

 

「ハァァァァァァァァァッ!」

 

唐竹、袈裟斬り、右薙、 右斬上、 逆風、 左斬上、 左薙、 逆袈裟、刺突 。

剣術において基本となる九つの斬撃を神速で同時に繰り出す!

繰り出した九つの斬撃の全てが過去の己を貫き―――――複製体は塵となり宙へ消えていった。

 

 

 

 

「はぁ………はぁ…………くっ………」

 

自分の複製体を倒した僕は息を荒くしながら、膝を着いていた。

『領域』を使った反動で頭痛がする………。

今ので体力をかなり使ってしまった。

 

修行で限界の壁を超えて来たから、ここに来てのこれはかなりキツいものがあった。

限界の壁は越えていくほど、乗り越えることが難しくなっていく。

 

だけど、分かったこともある。

それは僕達にはまだまだ伸びしろがあるということだ。

それが分かったことが、今の戦いの収穫かな?

 

戦況は未だにこちら側が推されている状況。

僕は何とか自分の複製体を倒せたけど、他の戦士達は苦戦しているようだ。

 

敵は次々と手駒を生産して、こちらにぶつけてくる。

 

ちょうど僕のところにも邪龍が群れで襲いに来ていた。

僕は消耗した体に鞭を打って、邪龍の攻撃を掻い潜るが、これまでのような軽快な動きは出来ていない。

 

近くにいたゼノヴィアも自分を相手取るのにかなりの消耗をしてしまったようで、纏っていた蒼炎は消え、髪も元の長さに戻ってしまっていた。

 

体力を回復させたいところだけど、相手はそんな時間を与えてくれない。

僕とゼノヴィアは背中合わせで剣を構えた。

 

「はぁ、はぁ………どうだ、木場。まだ戦えるか?」

 

「弱音は吐けないからね。まだまだ戦うさ」

 

僕がそう言うとイリナが隣に降りてきて、

 

「違うわ、木場君! 勝つまで戦うのよ!」

 

イリナに続いて、僕達の元に降りてきたのはリアス前部長を始めとした他のオカ研メンバーとソーナ前会長達、シトリーメンバー。

皆、服のあちこちが破れていて、肩を上下させていた。

 

「イリナの言う通りよ、祐斗! どんなになっても生きて帰る! これは絶体よ!」

 

「そうです! 私が皆さんを治します! 守ってみせます! 諦めません!」

 

アーシアさんも瞳を強く輝かせて黄金のオーラを広げる。

黄金のオーラはファーブニルを模していて、このオーラに包まれた者は一瞬で傷が塞がり、体力や魔力も僅ではあるが回復していく。

それだけじゃない。

激戦で極限まで消耗した精神までもが癒されていった。

 

アーシアさんの禁手『聖龍姫が抱く慈愛の園(トワイライト・セイント・ アフェクション)』。

 

あらゆる傷を癒す絶体の癒し。

そして、オーラの内側にいる者を外からの攻撃から守る守護の力。

彼女の癒しが皆の精神を支えていると言っても良いだろう。

 

アーシアさんの癒しで皆の覇気が戻ってくる。

それぞれが力強く構えた―――――。

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

一帯を揺らすほどの咆哮が響き渡った!

電撃でも受けたかのように体が痺れ、鼓膜がおかしくなったと錯覚してしまうほどだ!

 

そして、僕達の頭上を灼熱の炎が通りすぎていく!

空一面が地獄の業火で埋め尽くされていった!

 

この光景に見覚えがある。

これはトライヘキサによる一撃!

 

見れば、トライヘキサの侵攻スピードが上がっている。

トライヘキサの周囲にはベルが生み出した魔神が複数体が随伴しており、ここに来るまでに倒してきた以上の邪龍が漂っていた。

 

トライヘキサが口を大きく開ける。

それに続くかのように魔神が、邪龍も口を開く。

トライヘキサの真上には赤龍帝の複製体が五十体ほど翼を広げていて、その全てが天撃(エクリプス)

砲門を全て展開していた。

 

「一斉攻撃ってわけね………っ!」

 

強大な力を持つイッセー君の複製体をやり過ごせていたのは、相手が個々で戦っていたからという点が大きい。

 

だけど、これは…………!

魔王クラスの攻撃を一斉にだなんて………!

 

こちらが立ち上がれば、その分だけ相手はこちらを絶望に叩き落とそうとする。

 

どうする………?

どうすれば、この状況を乗り切れる?

神クラスでさえ、防ぐことが困難なあの攻撃を………!

 

トライヘキサとその軍団が全てを灰塵に帰す、絶望の光の放とうとした。

 

 

その時――――――。

 

 

僕達の後方から極大の赤い光の奔流が流れてきた!

その光はトライヘキサに直撃し、後方へと下がらせ、奴らの一斉砲撃を崩してしまった!

トライヘキサの周囲にいた邪龍、赤龍帝の複製体は消え去り、ベルの魔神の肉体を吹き飛ばされている!

 

この攻撃、このオーラ、この色は――――――。

 

「来たのですか!」

 

「遅ぇんだよ!」

 

「待ちかねたわよ、主様!」

 

上空で二十八基にも及ぶビットを操り、邪龍を撃ち抜いていく『赤瞳の狙撃手』が、黒く染まった双剣で敵を斬り伏せる『剣聖』が、神の力を纏い、美しく戦場を駆ける『白雷姫』が、アスト・アーデにおける勇者のパーティーメンバーが歓喜に満ちた声をあげる!

 

そうだ、間違いない。

今度こそ来たんだ。

 

後ろの方で赤い輝きが煌めいた。

それは猛スピードでこちらに向かってきている。

 

僕は、僕達は自然と笑みをこぼした。

さっきまでの絶望が嘘みたいに消えていく。

理由は分かる。

だって、皆の希望が来たんだから。

 

待っていたよ、イッセー君。

 

―――――ここからが僕達の本当の戦いだ!

 

[木場 side out]

 




GN合唱団、用意!(やってみたかっただけです)

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