ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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曹操サイドにしようかな~と思ってたんですが、やっぱり今回もヴァ―リで!


28話 ヴァーリが望んだもの

[ヴァ―リ side]

 

血のように赤い空を白い閃光と無数の魔法が飛び交う。

戦闘に入ると同時に俺はオーラをアジ・ダハーカに放出。

対するアジ・ダハーカは強固な防御障壁でこちらの攻撃を防ぎながら、カウンターとばかりに強大、凶悪な光の魔法を撃ち込んでくる。

 

奴が撃ち出した光の魔法は魔法力に圧縮に圧縮をかけて作り出されている。

たとえ最上級悪魔………魔王であっても、直撃を受ければ相当なダメージを負ってしまうだろう。

 

俺は下手に防ごうとはせずに、空中で軌道を変えて回避しようとするが、奴が放つ魔法はどこまでも追ってくる。

術式に追尾を加えているのか………。

 

俺は光翼を広げて、光を半減させようとするが、アジ・ダハーカはこちらの動きを読んで、狙いを狂わせてくる。

ついに奴の魔法が俺に届く、その瞬間――――――。

 

『Reflect!』

 

俺の鎧に触れた光は、全く同じ軌道で跳ね返った。

 

『半減』に続く生前のアルビオンが持っていた能力『反射』。

アルビオンが赤龍帝ドライグと分かりあったことで解放された力だ。

兵藤一誠も生前の赤龍帝ドライグの能力『透過』を使用可能になっている。

 

初めてこの能力を知った時には驚くと同時に聖書の神の意志に興味が沸いた。

聖書の神は赤龍帝と白龍皇、二天龍の和解を鍵として、能力を残しておいたのだろうか。

俺と兵藤一誠、アザゼルはそんな考察を考えている。

 

次々に降り注いでくる魔法を反射の力でアジ・ダハーカへと返していくが、奴は反射させた魔法すらも操り、こちらを追ってくる。

加えて、奴は数百、数千の魔法陣をこの空中に展開し、そこから炎、水、風、雷、光、闇というあらゆる属性の魔法を一気に撃ちだしてくる!

 

この数は………撃ち落とせるものではないな。

一つ一つ落としていたら、確実に捕まってしまうだろう………!

 

『Half Dimension!』

 

光翼を大きく広げて、半減の力を解き放つ!

俺を中心に全てを、次元すら歪める半減の領域が展開していく!

 

こちらの力によって、奴の魔法は次々に半減していき、次第に小さくなっていく。

俺に届く頃には鎧に当たると同時に消滅するほど弱くなっていった。

 

だが、俺が半減できた魔法は奴が撃ち出した魔法の一部に過ぎない。

アジ・ダハーカが次々に繰り出した魔法は俺の半減領域を越えようとしてくる………!

 

すでに全方位を各種属性魔法が囲っているため、この場所から逃れようにも半減領域を解くことが叶わない。

半減領域を保ちつつ、飛び回り、オーラの砲撃で撃ち落としていくが、奴の魔法はその数を減らす気配が見えない!

それどころか、奴の魔法は時が経つにつれて増えていっている!

 

こちらが半減する速度よりも、アジ・ダハーカが魔法を撃ち出す速度が上回っているということか………!

 

フフフ………まるで、あの時のようだ。

初めて、兵藤一誠と拳を交えた時、向こうは禁手を進化させ、こちらの半減スピードを越えてきた。

そして、兵藤一誠の拳は俺の鎧を砕き、俺を倒した。

 

あの時と同じではないか。

俺はあの時から強くなった。

次こそは彼に勝つために、負けないために修行に打ち込んだ。

 

俺は絶対に負けないために、己の力を高めてきた――――――!

 

『Half Dimension Accelerate!』

 

『DDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDivide!』

 

宝玉から力強い音声が発せられる!

加速する半減!

全方位へと広げていた半減領域が拡大され、アジ・ダハーカの魔法を呑み込み、消滅させていく!

ついにはこの空中を覆っていた魔法の全てを消し去った!

 

兵藤一誠のような力の加速。

俺が強く望んだことで発現された力だ。

 

アジ・ダハーカが笑う。

 

『グッグッグッ、ここに来て己が力を引き延ばしたか』

 

『そんなら、これで!』

 

『どうよ☆』

 

次の瞬間、アジ・ダハーカは更なる魔法陣を展開する。

奴が展開した魔法は先ほどの比ではない!

百や千どころではない、五桁は越えている!

これほどの力を持っているというのか………!

 

拡大された半減領域が、加速した半減が次第に対応できなくなりつつあった。

こちらの領域のより内側に入り込んで来る。

 

そして―――――。

 

「ガッ………!」

 

背中に走る激痛。

とうとう半減しきれなくなった魔法が俺の鎧を容易に砕き、生身にダメージを負わせた。

肉が爆ぜ、鮮血が散る。

 

一度破られたもの等、後は容易に突破できると言うのか。

アジ・ダハーカが放つ、無数の魔法は俺の肉体に鋭く突き刺さる。

痛みで飛びそうになる意識を保ちながら、半減領域を維持しようとするが、こちらの意地を嘲笑うかのように魔法は降り注ぐ!

止まる気配がまるで見えない!

 

あの邪龍の魔法力は桁違いなんてものではない!

神の領域へと突入し、並の神仏では相手にならない規模と破壊力を誇っている!

以前、戦った時にはここまでの放出はしてこなかった。

あの時とはレベルがまるで違うではないか………!

 

アジ・ダハーカが嬉々として叫ぶ。

 

『んじゃ、ここからは禁術も入れていくぜぇぇぇぇぇぇ!』

 

宣言通り、展開している魔法陣の様相が変化する。

魔法陣の色が変わり―――――髑髏を形作る紫色の炎、呪詛に塗れた突風、暗黒色の雷、血の涙を流す呪われた聖女、見つめられただけで命を奪われかねない一つ目の巨人など、禁止級の属性、召喚、呪い、この世の全ての不吉を体現した魔法が発動される!

これだけの禁忌を見たのは初めてだ………!

 

アルビオンが言う。

 

『あれを受けてしまえば、おまえとて骨すら残らないぞ!』

 

「分かっている!」

 

俺は白いオーラを高めて、呪文を口にする――――――。

 

「我、目覚めるは律の絶対を闇に落とす白龍皇なりッ! 無限の破滅と黎明の夢を穿ちて覇道を往くッ! 我、無垢なる龍の皇帝と成りて―――――汝を白銀の幻想と魔導の極致へと従えようッッ!」 

 

『Juggernaut Over Drive!!!!!!!!!!!』

 

俺は瞬時に白銀の極覇龍へと姿を変える。

 

奴の力は神の領域。

ならば、神をも屠る絶対の力を以て対抗せざるを得ない!

 

俺は両腕を突き出して、向かってくる無数の禁忌に手をかざす。

 

『Compression Divider!!!!』

 

『DDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDivide!!!!!!!!!』

 

最上級死神プルートすら消滅させた技。

そこから更にこの技は進化を遂げている。

全ての具象、夢、幻でさえも圧縮しきるこの技を受けて、アジ・ダハーカの禁術も圧縮されていく。

 

俺は圧縮をしながら、飛び出し、禁術を放ち続けるアジ・ダハーカへと肉薄。

鎧を解かされながらも、奴の体に触れ―――――――

 

『Power Dispersion!!!!』

 

アジ・ダハーカの力を霧散させた。

あれほど絶大な力を振りまいていたアジ・ダハーカから力が消える。

 

『なっ、力が抜けて――――――』

 

初めて驚愕の表情となるアジ・ダハーカ。

 

「――――――この瞬間を待っていたぞ」

 

白銀のオーラを拳に宿らせ、アジ・ダハーカの顔へと叩き込む!

仰け反るアジ・ダハーカ。

口から血を吐き出し、完全に体制を崩した。

 

この機を逃せば、次はない。

この邪龍は同じ手を何度も受けてくれるほど甘くはない。

 

白銀の拳が、蹴りがアジ・ダハーカの肉体を捉える。

 

「ハアァァァァァァァァァッッ!」

 

全力の拳がアジ・ダハーカを地に叩きつけた―――――――。

 

 

 

 

全身から力が抜けていく。

アジ・ダハーカの力が一瞬とはいえ霧散したことで、展開していた魔法陣の全てが消え去っている。

あれだけ圧倒されていたことを考えると、奇跡的な逆転だろう。

良く抜け出せたものだと自分でも思う。

 

今の攻撃に全てをつぎ込んだせいで、白銀の姿は解かれ、魔力と体力をかなり消耗した。

静かに下に降り、地に足をつけた瞬間に体がぐらついた。

 

意識が持っていかれそうになる………。

だが――――――。

 

『やってくれんじゃねぇか』

 

巻き起こる土埃を払いのけて姿を見せるアジ・ダハーカ。

力を霧散させた状態で攻撃したため、向こうにもそれなりのダメージを与えることが出来ているようだが………どちらが優勢かは明らかだ。

 

――――強い。

リゼヴィムなどよりも遥かに。

 

『アジ・ダハーカは天龍クラスになっている』

 

アルビオンがそう漏らした。

 

なるほど、最強と謳われた二天龍と同格。

それは強いわけだ。

クロウ・クルワッハは修業の果てに天龍クラスとなっているようだが、アジ・ダハーカも聖杯の力で復活した後に己を鍛え上げたのだろう。

そうなると、この邪龍と同格であり、この戦いを招いた一人であるアポプスの力も同様と考えた良いだろうな。

 

まさか、ここまで追い込まれるとはな………。

 

アジ・ダハーカは楽しそうに言ってくる。

 

『今のままでも楽しいが、なんだったら、アルビオンの真の力を使ってもいいんだぜ? 毒龍皇と揶揄されたおまえの力を見てみてぇものだな、アルビオン。いや、グウィバー?』

 

その名を出されるとは………いや、奴も古き時代に存在したドラゴン。

白龍皇のことも詳しいのだろう。

 

白龍皇アルビオンは、グウィバーという名も持っていた。

アルビオンもライバルのドライグも語らないが、白い龍は毒を使うドラゴンだった。

白き美しい姿を持ちながらも、神すら退ける醜い毒を有していた。

そんな我が身をアルビオンは嫌い、呪った。

 

アルビオンが奴に聞こえる声で言う。

 

『その名と力は封じたものだ』

 

『だがよ、その力があったからこそ、各勢力の神にすら忌避された時期があったのは事実だろう? 白く美しい体を持ちながらも、その身には神すらも怖れる猛毒を宿す。俺は好きだぜ? そういう皮肉の利いた力ってのはよ』

 

アジ・ダハーカはアルビオンから俺に意識を変える。

そして、首を傾げながら言ってきた。

 

『なぁ、ヴァ―リ・ルシファー。おまえは赤龍帝と違うようで似ている部分もあると思うぜ? 何かを守ろうとする奴の目だ。それはてめぇのプライドだとかそんなものじゃない。誰か大切な者を守ろうとする奴の目だ。――――女か?』

 

「………女といえば、そうだな。だが、恋人とかそういうのではない。ただ………昔に世話になった人だ。俺は兵藤一誠のように大勢の者を守るという大それたことはしない。いや、できない」

 

俺は兵藤一誠ではない。

彼のように誰かを守る戦いというのはしてこなかった。

 

だが、この戦場に経ってから、ずっとあの女性が、あの家族の顔が浮かんでくる。

幸せそうな母と妹、弟――――――。

 

このままではトライヘキサの、アジ・ダハーカの脅威がそこに届いてしまう。

 

させない。

させるわけにはいかない。

俺は――――――守りたい。

 

「俺にも守りたいものはあるさ。軽蔑するか? 弱々しく感じるか? 自分ではこういうのも悪くないと思っている」

 

『グッグッグッ、そういうことを心の拠り所にしている奴とは何度か手合わせしたことがある。どいつもこいつも例外なく強敵だったぜ。どんなになろうが、その命が燃え尽きるまで向かってくる。俺達、邪龍はしぶといとよく言われるが、そういう奴が一番しぶとく、油断が出来ねぇ。だからよ、俺は一切見くびったりはしねぇ! おまえを一層の強者として認識させてもらうぜ!』

 

アジ・ダハーカは一つの魔法陣を展開させる。

刹那、周囲の景色が歪み、意識が保てなくなった。

 

俺は――――――アジ・ダハーカの生んだ幻術の世界に落ちていった。

 

 

 

 

「お兄ちゃんが起きた!」

 

目を覚ますと、俺はベッドの上に寝転がっていた。

そして、俺の上には男の子が乗っかていた。

 

男の子は俺が目を覚ましたことで、笑顔ではしゃいでいる。

男の子の声を聞いたからなのか、部屋の扉が開き、女の子が入って来た。

 

女の子は男の子を叱る。

 

「もう! お兄ちゃんを無理矢理起こしちゃダメよ!」

 

似ている。

どことなくだが、この二人は俺と似ている。

この瞬間、俺は理解した。

 

「お兄ちゃん! ご飯だよ! 起きて起きて!」

 

「あ、ああ………」

 

男の子が俺の手を引っ張り、部屋の外へと連れ出そうとする。

俺は男の子に誘導されるまま、部屋を出ていく。

 

水が流れる音が聞こえてくる。

それと同時に良い匂いが漂ってきた。

 

男の子に連れられてきたのはリビングだった。

そこから見えるキッチンの向こうには一人の女性がいて―――――。

 

「あら、おはよう、ヴァ―リ。昨日は夜遅くまでテストに向けて頑張っていたようね。大学生は大変よね」

 

「――――!」

 

言葉が出なかった。

女性の顔を見ると、心が激しく揺れる。

何かが壊れそうになる。

 

ああ、分かっている。

これはアジ・ダハーカが作り出した幻術だ。

 

だが、弟と妹、そして――――――母さんがいる。

あの田舎町で見た笑顔を自分に向けてくれている。

それだけで、俺は――――――。

 

「ちょっと待っててね? もうすぐご飯が出来るから」

 

母さんはそう言いながら、昼食を作っていく。

俺は弟に手を引かれるまま席に着き、その俺の両サイドに弟と妹が座った。

 

すこし待つと、母さんがキッチンから出てくる。

テーブルに並べられるのは昔、よく作ってくれていたパスタだった。

あの時のような簡単な味付けのものではなく、アサリやマッシュルームといった様々な具の入った、匂いを嗅ぐだけで食欲をそそられる。

 

「「「いただきます!」」」

 

母さんと弟、妹がそう言いながら昼食を取り始める。

 

俺は戸惑っているせいで、フォークを持つことすら出来ないでいた。

そんな俺に弟が訊いてくる。

 

「お兄ちゃん、食べないの?」

 

「あら、食欲がないの?」

 

弟に続き、母さんも首を傾げながら訊いてきた。

 

「い、いや、いただくよ………いただきます」

 

いただきます、なんて言葉を言ったのはいつ以来だっただろう。

そうだ、あの時の俺もこんな風に母さんと―――――。

 

俺はフォークを手に取り、パスタを啜る。

美味しかった。

温かく、とても美味しかった。

 

「どう? 美味しい?」

 

「ああ………美味しい。すごく、美味しいよ、母さん」

 

俺がそう答えると、母さんは優しい笑顔で頷いてくれた。

 

『そこは俺が作った仮初の世界。おまえが心の底より望んでいる世界を作り出すようになっている魔法の世界。そこに広がっている世界はおまえが真に欲しがっている世界だ』

 

アジ・ダハーカの声が頭の中に響いてくる。

 

『歴代最強と称される白龍皇が欲したのが、ごく普通の一般家庭だったとはな』

 

その言葉に何も返せない。

ただ、なぜだか分からないが笑みだけが零れた。

 

自分でも驚くよ。

心の奥底、深層心理ではここまで家庭を求めていたとは………。

 

いや、認めざるを得ないな。

ここに広がっている世界こそ、俺が求めていたものだと。

 

「お兄ちゃん、サッカーしようよ!」

 

「ダメよ! 今日は私に勉強を教えてくれるんだから!」

 

「僕だ!」

 

「私よ!」

 

「もう、二人とも。そんなに引っ張ったら、お兄ちゃんの腕がとれちゃうでしょ?」

 

自分を取り合う弟と妹。

俺達を見守ってくれる母さん。

この時、俺は自分でも知らず知らずのうちに笑っていた。

 

それからは妹の勉強をみた後、弟と夕方までサッカーをした。

三人で母さんの家事を手伝い、食事の後はゆっくりとした時間を過ごす。

知らなかったよ、自分がこんなに笑えるなんて思ってもなかった。

 

『おまえがその世界を望めば、その世界で生き続けることもできる。強烈なまでに望んだ世界を前にした奴らはその多くが堕ちていった』

 

アジ・ダハーカの言葉には納得できるものがあった。

どんな強者にも大切なものがある、あるいはあった。

それをここまで克明に再現されては、心が折れてしまうのも分かる。

 

やさしい世界、安らぐ世界。

ただただ家族と過ごす幸せな時間が流れていく。

 

永遠に続けばいいと思った。

このまま堕ちてしまっても良いと思った。

それと同時にこんな幸せなことがあったのかと気づかされる。

これが普通の家庭で得られる普通の幸せなのか――――――。

 

だけど、分かっているんだ、これが幻術だということは。

偽りであるとハッキリ認識できる。

それが辛かった。

 

なぜ、俺はこの世界で生き続けることが出来ないんだ…………。

 

気づけば俺は涙を流していた。

家族と過ごすこの幸せに、これが偽りであると理解してしまう苦しみに。

 

「お兄ちゃん、どうしたの?」

 

「お兄ちゃん? 苦しいの?」

 

先程まで遊んでいた弟と妹が俺の顔を覗き込んでくる。

そんな二人を俺は抱きしめた。

 

「………俺は」

 

おまえ達の名前を知らないんだ。

名前を呼んであげることが出来ないんだ。

 

すまない………。

だが、改めて決意できた。

 

「俺は行かなければいけない。おまえ達と………これ以上遊んでやることが出来ないんだ。―――――ゴメンな」

 

これが夢だろうと、幻だろうと、おまえ達と母さんと会えて、話せてよかった。

これだけで俺はこの先も戦っていける、生きていける。

 

「行ってしまうの?」

 

ふいに声を掛けられた。

振り返ればエプロン姿の母さんが立っていた。

母さんの表情はどこか悲し気だった。

 

俺は立ち上がると頷いた。

 

「母さん、もう会えないだろうけど………話せないだろうけど、それでも俺はあなたを、あなた達を見守っているよ。―――――ありがとう、そして、さようなら。俺は行くよ」

 

俺はあなた達を守るために戦うよ。

あなた達の笑顔を消させるわけにはいかない。

必ず、俺がこの先も――――――。

 

玄関を潜ると待っていたのは男性だった。

そういえば、この家族には不足していたものがある。

父親だ。

 

おそらく、目の前の男性が俺の中にある父親像なのだろう。

そう思うとこそばゆく感じてしまうのだが。

それでも悪いとは思わない。

 

「行くのか?」

 

「ああ、行くよ、アザゼル。友達とラーメンを食べに行く約束もしているからね」

 

その言葉に幻のアザゼルは笑みを浮かべる。

俺も笑みを浮かべ、幻のアザゼルに向けて言った。

 

「俺は現実のあんたと会えて最高に良かった。俺は―――――ヴァ―リ・ルシファーだ」

 

 

[ヴァ―リ side out]

 


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