ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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遅くなってすいませんでした(-_-;)
最近、色々と忙しくて………。

前のようなハイペースは難しいと思いますが、チマチマ書いていきます~。


31話 死ねない理由

[曹操 side]

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」

 

血のように赤い空に響くヘラクレスの雄叫び。

分厚い銀色のガントレットに覆われた腕が振るわれ、数多くの量産型邪龍が沈められていく。

ゲオルクの魔法による支援もあり、肉体を大きく強化されているとはいえ、その一撃は以前のヘラクレスとは大きく異なる。

加えて、戦闘スタイルまでもが変化していた。

軽いフットワークで邪龍の攻撃を掻い潜り、凶悪な一撃を叩き込む。

己の力を過信せず、確実に敵を葬っている。

 

一体の邪龍がこの先へ―――――あの異世界の神が展開している『(ゲート)』の方へと飛び立とうとした。

それは冥界へと通じる門。

 

それを見た瞬間、ヘラクレスが吼えた。

 

「行かせねぇぇぇぇぇッッ!!」

 

大地を強く蹴り、瞬時に空へと上がるヘラクレス。

邪龍の先へと回り込み、頭上から極太の拳を振り下ろし、邪龍の頭を叩き割った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………。この先に行きたいんなら、俺を殺ってからにしやがれッ!」

 

この領域に漂う邪龍を睨み付けるヘラクレスだが、肩を上下させてしまっている。

 

当然だ。

スタミナを考えない戦い方。

無茶苦茶な力の使い方をしているせいで、早くも肉体が悲鳴をあげている。

加えて、あの新しい姿の禁手で戦うのは今回が初めて。

ヘラクレスはまだペースを掴めていない。

 

聖剣で形成されたドラゴンに乗り、邪龍を斬り捨てながらジャンヌが言う。

 

「大見得切っといて、早々にへばってるじゃない。英雄ヘラクレスの名が泣くわよ?」

 

それに続き、邪龍を石化させたペルセウスが笑う。

 

「へっ、だらしねぇな、ヘラクレスッ! ガキの相手ばかりしてたから、辛いのかよ!」

 

「うっせぇよ! 下らねぇことばかり言ってないで、もっと働きやがれ、ぺの字!」

 

「ぺの字言うな!」

 

そんなやり取りをしながら、ヘラクレスは邪龍の群れへと突貫していく。

 

姑息さもなく、傲りもなく、ただ目の前の敵を全力で凪ぎ払う。

お世辞にも華麗な戦いとは言えない。

泥臭い戦いだ。

 

それでも、何故だろうな。

今のヘラクレスの姿は彼と―――――俺に英雄を語った兵藤一誠と重なるものがある。

ふいに彼の言葉が脳裏を過った。

 

 

『俺の中で英雄ってのはさ、自分から名乗るものじゃないんだ。いや、もっと言えば英雄は自らが望んでなるものじゃない。・・・・・・俺も英雄だなんだと言われてきたけど、自分が英雄だなんて思ったことは一度もない』

 

『超常の存在に挑むのが英雄? それは結果だろ。その英雄達は誰かを守り、強大な敵に打ち勝った。決して自分のために力を振るったりはしなかったと思うぜ? ―――――英雄は自ら望んだ時点で英雄にはなれない。例えそれが英雄の子孫だったとしてもな』

 

 

なるほど………。

ヘラクレス、おまえは真の意味で英雄になったんだな。

あの幼稚園の子供達を守るという強い想いがおまえの肉体を、精神を突き動かしている。

 

ヘラクレス、おまえは本当に変わったよ。

今のおまえならば、サイラオーグ・バアルとも真正面から撃ち合えるんじゃないか?

今のおまえならば、サイラオーグ・バアルも獅子の鎧を纏う相手として認識してくれるだろう。

 

「フッ………」

 

俺は無意識のうちに笑みを漏らしていた。

 

そんな俺にアポプスが訊いてくる。

 

《どうした、聖槍よ。なにか面白いことでもあったのか?》

 

「なに、大したことではないさ。少し悔しくなってね。まさか、ヘラクレスに先を越されるとは思わなかった」

 

そう、ただそれだけ。

ただそれだけのことなのに、なぜか可笑しく感じてしまっている。

 

兵藤一誠、ヴァーリ、サイラオーグ・バアル、そしてその他の猛者達。

俺の好奇心、戦闘意欲を掻き立てる者達は肉体だけでなく、その魂までもが強く気高い。

まさか、ヘラクレスにその彼らに対するものと似た感情を抱いてしまうとは………。

 

この世の中、何が起こるか分からない。

ありとあらゆる可能性が存在する、か。

 

俺はアポプスから放たれる闇の攻撃を捌きながら呟いた。

 

「ヘラクレス。おまえの覚悟しかと見た。ならば、俺もそれに応えよう」

 

聖槍を回し穂先に聖なるオーラを収束していく。

 

この戦いを終わらせるために成さねばならないことはいくつかある。

一つ、この世界を構築した異世界の神の討伐。

一つ、神々ですら手を焼くトライヘキサの討伐。

一つ、トライヘキサを使い、この戦いを始めた邪龍筆頭格であるアポプスとアジ・ダハーカの討伐。

そして、量産型の邪龍を生産している聖杯を停止させ、奪還する。

 

異世界の神は兵藤一誠が相手をしているから、置いておくとして、トライヘキサを倒しきることは難しいだろう。

各勢力の上層部にどんな作戦があるかは知らないが………。

 

アジ・ダハーカとアポプスの打倒だが、こちらはかなり難易度が高いものの不可能ではない。

これまでの戦いを見るにこの邪龍二体は神々をも上回る力を得ている。

それは聖杯によって強化されたのか、クロウ・クルワッハのように自らを鍛え上げたのか。

両方とも考えられるな。

 

そうなると、この戦いを終わらせるための行動で最も難易度が低いのは―――――聖杯の奪還だ。

幸い、聖杯を止める手段を持つ者達は付近にいる。

 

ならば、俺がまず成さねばならないことは―――――。

 

「槍よ、神をも射抜く真なる槍よ! 我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの間を抉れ! 汝よ、遺志を語りて、輝きと化せッ!」

 

俺が力のある言葉を発すると、輪後光が一層輝きを増していき、聖槍を包む聖なるオーラも極大にまで高まっていく。

付近にいた悪魔達は聖槍が放つ聖なる力に肌を焼かれ、その場から慌てて離脱していた。

 

それを確認しながら俺はそれを唱える!

 

「―――――覇輝(トゥルース・イデア)ッ!」

 

槍が祝福を受けたかのように目映く、聖なるオーラを波立たせる。

聖槍の放つ波動は俺を起点として、この空中全域に広がっていった。

刹那、ゲオルク達が相手取っていた邪龍は聖なるオーラに呑まれて消失し、少し離れた場所にいた邪龍はこの力に恐れ、その場から遠退いていく。

 

この輝きの力はアポプスにも及び、奴は聖杯から手を放して苦しみ始めた。

 

《こ、これは………! 聖書の神の…………威光か! このままでは………意識を奪われかねない………っ!》

 

アポプスが頭を押さえながら退いていき、トライヘキサからも離れてしまう。

これで奴は完全に孤立した。

 

アポプスが手を放したことで、そのまま空中に漂う聖杯。

俺はそれを手に取ると、フッと笑んだ。

 

「どうやら、今度は応えてくれたようだな」

 

この槍に宿る聖書の神の遺志よ。

前回、あなたは俺を否定し、兵藤一誠を勝者とした。

今回応えてくれたのは、少しは俺を認めてくれたと考えて良いのだろうか?

 

「さて、これに関しては君達に任せるとしよう――――グレモリー眷属」

 

手にした聖杯を突き出した方向にいる者―――――リアス・グレモリーはこちらを確認する自身の『戦車』であるロスヴァイセと『僧侶』のギャスパー・ヴラディと視線を合わせて頷き合う。

 

聖杯をそちらに投げると闇の獣と化したギャスパー・ヴラディは赤い瞳をこちらに向けた。

 

《あなたのことを完全には信用できないけれど、ヴァレリーの聖杯を取り戻してくれたことにはお礼を言います》

 

「礼なんていらないさ。俺は俺のために行動したまで。このまま世界が終わってしまうのは嫌なんでね。聖杯を止める手段があるのならば、早々に使うことだ」

 

俺の言葉にギャスパー・ヴラディは赤い瞳を一瞬だけ輝かせると、こちらに背を向けて一時後退する。

彼の向かう先にはアーシア・アルジェントの側で戦線を見守る元吸血鬼の王女ヴァレリー・ツェペシュ。

 

情報通りなら彼らが聖杯を停止させてくれるはずだが………とりあえず、聖杯の奪還には成功したので、邪龍がこれ以上生産されることはないだろう。

少なくともこの戦線では。

 

リアス・グレモリーの方に視線を移すと、彼女はロスヴァイセと共にトライヘキサへと近づいていた。

当然、彼女達の周囲では木場祐斗をはじめとしたグレモリー眷属が邪龍を近づけさせまいと剣を振るっている。

 

ロスヴァイセが一際大きい魔法陣を一帯に展開すると叫んだ。

 

「トライヘキサを止めます!」

 

彼女が魔法陣に手を触れて、発動を促すと、この領域全体にエネルギーのフィールドが広がっていく。

トライヘキサの周囲にも結界用の魔法陣が多数展開し、トライヘキサを包み込む。

途端にトライヘキサが苦しみだすが、結界は次から次へと張られていき、奴を幾層にも囲んでいった。

 

そして―――――トライヘキサは動きを止めた。

人間界へと繋がる『門』を目前にして奴は完全に動きを止めたのだ。

 

その瞬間―――――。

 

『やったぞぉおおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

この戦線で戦う戦士達が沸いた。

神々ですら赤子同然に扱っていた黙示録の獣を完全に止めたのだ。

絶望的な状況に希望の光が射し込んだとも言える。

 

まぁ、喜ぶにはまだ早い気がするが。

トライヘキサを止め、聖杯を止めたとしても、この一帯に存在する邪龍と赤龍帝の複製体の数は空を埋め尽くすほど。

 

戦いはまだ終わっていない。

 

「おまえを倒さずして、ここを乗り切ったとは言えないだろう? だが、確実に追い込んではいる。チェックだ、アポプス」

 

そう、まだ何も終わっていない。

聖杯を止め、トライヘキサを止めても最強格の邪龍がここにいる。

神をも凌ぐ絶対的な力を持つ強者がここにいるのだから。

 

覇輝の影響が消え、苦しみから解放されたアポプスは肩をすくめながら言った。

 

《フフフ、流石にあの輝きを受けてしまっては私とて、退くしかない。………聖杯を取られ、トライヘキサをも取られたか。―――――面白い》

 

刹那―――――奴から尋常ではないプレッシャーが放たれる。

アポプスの体から滲み出た闇は一気に広がり、周囲の領域を呑み込んでいく。

 

「マズい………ッ! 曹操ッ!」

 

アポプスが広げた闇の領域に焦りの声を漏らすペルセウス。

 

本当に僅かな時間だった。

俺は闇の結界に閉じ込められた―――――。

 

 

 

 

暗い、完全な闇。

俺を囲む闇は不気味な波動を漂わせながら、蠢いていた。

 

正面の闇が隆起する。

そこは先程、アポプスが立っていた場所だ。

 

アポプスの体を覆う闇は形を変えて、巨大なものを作り出した。

上空に皆既日食時の太陽のような細い光輪状の光が浮かび、それをバックに形を変えた邪龍が泳ぐ。

 

闇の領域に現れたのは全長百メートルを越えるであろう長細い蛇タイプのドラゴン。

暗黒一色、所々に銀色に発光する宝玉が見える。

頭部に浮かぶ目は三つあり、全てが銀色に光った。

 

「それがおまえの真の姿か」

 

《そうだ。これまでのやり取りで貴公は私の全力を出すべき相手だと判断した》

 

「それは光栄だ」

 

神をも超える最強格の邪龍に本気を出す相手と認められるとはね。

今の俺には喜ぶべき言葉だ。

 

俺は正直な気持ちを吐いた。

 

「危機的な状況なのだろうが、かつてない強敵を前にして昂っているよ」

 

《私もだ。聖槍よ、貴公との戦いは私にとって特別なものになるだろう。聖槍に選ばれた者と邪龍。しかも、貴公は英雄の血をひいている。これは運命的な戦いだとは思わないか?》

 

聖槍を持つ英雄の血をひく者と邪龍、か。

確かにそう聞けば運命的なものを感じてしまうが………。

 

闇の領域には俺とアポプスのみ。

つまり完全な一対一に持ち込まれたわけだ。

本気のアポプスにどこまで食らいつけるか………。

 

奴の対処方法を思慮していると、アポプスは俺に訊いてきた。

 

《聖槍よ。貴公は異世界に興味はないのか?》

 

「それは兵藤一誠がいたという世界のことか?」

 

《それも含めてだ。この世には複数の異なる世界が存在する。私も、神々ですら知らない未知の世界。惹かれないのか?》

 

異世界………この世界のどの神話体系にも当てはまらない未知の世界。

未知の世界というものには俺も興味がある。

どんな世界なのか、どんな物があるのか、そして、どんな者達がいるのか。

 

「見てみたくないと言えば嘘になるな。だが、言ったはずだ。俺の目標は彼を――――兵藤一誠を超えることだとな。一人の人間としても、戦士としても超える。生半可な覚悟では成せないのでね。現状、この世界を壊してまで興味を注ぐものではないな」

 

アポプスは俺の答えに小さく笑った。

 

《それも貴公の野望だ。否定する気はない。私達が異世界に進むことが出来るか、貴公らがそれを阻止できるか。此度の戦いで全てが決まる》

 

「ああ、そうだな。そして――――俺達が勝つ」

 

《そうか、では始めよう》

 

互いの殺気と闘志が衝突―――――本来のドラゴンの姿となったアポプスとの熾烈な戦いが始まった。

 

聖槍を横凪ぎに振るい聖なる波動を放つ。

最強の神滅具だけあり、聖槍が持つ聖なる力は絶大だ。

禁手となっている今では最上級悪魔はおろか、魔王クラスですら、かなりのダメージを与えることが出来ると自負している。

 

黄金の輝きを纏う聖槍を回して繰り出すのは遠距離からの聖なる波動の三連撃。

空中で刃と化した聖なる波動は闇を切り裂き、アポプスへと迫るが、アポプスの体表を覆う闇が全てを飲み込んでしまう。

 

象宝に乗り、闇の空を突き進んだ俺は力を高めた聖槍による突きを繰り出すが、アポプスの覆う闇に穂先を遮られてしまう。

 

並の固さではないな………だが、聖槍で闇に触れることは可能か。

 

不意に周囲から異様な気配を感じた。

真下に視線をやると、地面だったはずの場所が闇が波打つ暗黒の海へと変わっている。

 

このままでは、下に降り立つことも出来ないか。

こちらの足場を無くす、それが奴の狙いでもあるだろうが、それだけではないだろう。

 

案の定、足下の黒い水に変化が訪れる。

水面がうねりをあげ、飛び出してきた。

黒い水は意思を持ったように、下から伸びてきて俺を狙う。

それは一つではなく、二つ、三つと数を増やし、一斉に襲いかかってきた。

 

俺は体捌きと転移の力を用いて、空中で回避を続けていくが、その間にもアポプスの口から暗黒のオーラが吐き出される。

袖を少しだけ掠めるが、その部分は易々と解かされてしまう。

 

「ちっ………!」

 

居士宝で分身を作り出し、それを蹴って後方に飛ぶ。

俺の代わりに闇に呑まれた分身は一瞬で跡形もなく消え去った。

 

分身を盾にしたお陰でやり過ごせたように見えたが、黒い水とアポプスが吐き出した暗黒のオーラはこちらをしつこく追尾してくる。

 

やむを得ないか…………!

 

ドリルのようにうねる黒い水。

それが眼前にまで迫った瞬間―――――俺の視界から色彩が消えた。

それと同時に奴の攻撃が今までよりも遅く見えるようになる。

 

七宝の能力を使うことなく、僅かな動きだけで奴の攻撃を回避。

高速でアポプスの迫ると、腰を捻り、渾身の突きを放った!

 

《っ! これは………!》

 

槍が頭部に突き立てられる直前、アポプスは咄嗟に闇の盾で防いだが、その声音には僅かに驚きがある。

 

―――――『領域(ゾーン)』。

極限の集中状態。

過酷な修行の果てに会得した境地だ。

この状態になると、己の中の時間軸が上位の次元に至り、反応速度、瞬発力など身体能力が向上する。

 

大抵の相手であれば、こちらの動きが急激に動きが変化するため、隙を見せるものだがアポプスは全くその気配がない。

むしろ、こちらの動きに合わせるかのように、攻撃の手を激しく………!

 

眼下に広がる闇の海から竜巻のようなものが複数立ち上る。

七宝の力で転移を繰り返しても、その場所が分かっているかのように俺を取り囲んでくる!

 

「くっ………! ここまでとは………!」

 

グレンデルやラードゥンとは明らかに違う。

力もそうだが、奴は己を過信しない。

絶対的な力で相手を潰しにきている。

 

闇の攻撃をギリギリのところで捌いていく中、背後から殺気に似た気配がした。

視線をそちらにやると、鋭い刃と化した闇の水が背後から迫っていて―――――。

 

捌ききれない…………!

 

「ガッ………ハッ………!」

 

闇の刃が俺の脇腹を容易く貫いていった。

 

闇の水は俺を貫いた後、霧散し消えてなくなるが、代わりに脇腹からは夥しい量の血が流れ始めた。

そして、ふいに襲う脱力感。

手足に力が入らなくなった。

 

追い討ちをかけるように二の腕と足を闇の水が貫き、俺の動きを完全に封じてきた。

 

アポプスが言う。

 

《異形の存在であろうとも、私の闇には耐えられないだろう。人間である貴公では尚更だ。―――――終わりだ、英雄の血を引きし者よ》

 

その言葉を耳にしながら、俺の体は重力に引かれるまま後ろへと傾いた。

その俺にトドメをさそうとアポプスが口から闇のオーラを吐き出す。

あの闇に呑まれた時が俺の最期なのだろう。

いや、このまま闇の海に落ちてしまえば、そこで終わりか………。

 

フフフ………あの時と逆だな。

俺は兵藤一誠の隙を着いて、彼を追い込んだ。

深傷を負い、落ちていく彼を貫こうとした。

本当なら、あの時で決着をつけるつもりだったんだ。

 

だが、彼は奇跡を起こした。

誰にも思い付かない方法で、失敗すれば命を落としかねないやり方で、彼は俺に勝った。

 

彼には死ねない理由があった。

守りたいものがあり、自分を待っている者達のもとへと何がなんでも帰るという強い想いがあった。

 

俺には何がある?

守りたいものなどない。

俺を待っている者などどこにもいない。

 

ならば、俺はこのまま死ぬのか?

確かに英雄の成り損ないにはちょうど良い最期なのかしもれないな………。

 

 

―――――死ぬなよ?

 

 

彼が言い残していった言葉が過った。

 

そうだ………あるじゃないか、死ねない理由。

決して破るわけにはいかない漢の誓いが………!

 

何を弱気になっているんだ。

力を籠めろ、彼のように吼えてみろ。

限界を超え、奇跡を起こしてみろ――――――。

 

「―――――――」

 

[曹操 side out]

 

 

 

 

[三人称 side]

 

 

―――――終わった。

 

アポプスはそう確信していた。

 

確かに曹操は強い。

過去に戦ってきた人間の中では一二を争うレベルだ。

 

腹を貫き、四肢も貫いた。

もはや動ける状態ではない。

いくら英雄の血を引こうと、いくら最強の神滅具である聖槍に選ばれていようと、脆い人間であることには代わりがない。

 

重力に引かれるまま落ちていく曹操。

自身が吐き出した闇に呑まれた時、たとえ曹操が回避できたとしても、あの状態では闇の海に沈む。

どちらにせよ、死は免れない。

 

《さらばだ、聖槍―――――》

 

闇のオーラが曹操を呑み込み、決着がつく―――――はずだった。

 

突然、聖槍が強い黄金の輝きを放ったのだ。

その輝きはかつてない程強く、アポプスの闇を瞬く間に消し去った。

 

《バカな………》

 

予想外の事態にアポプスは目を見開き、輝きの起点へと視線を向けた。

 

神々しい光を放つ輪後光、黄金の輝きを纏う聖なる槍を握る曹操。

 

曹操が無言のまま聖槍を天に掲げ、振り下ろした。

次の瞬間―――――。

 

《な、に………ッ!?》

 

闇が斬り裂かれ、アポプスの腕が斬り落とされた。

 

 

[三人称 side out]

 




曹操、覚醒!
詳しくは次回!
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