ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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長らくお待たせしました!
ハルート最終決戦仕様を作るのに忙しくて………!(おい)
こっちはなんとか完成しました!
今はRGトールギスをトールギス3に改造中!


39話 神をも凌ぐ男

[木場 side]

 

 

一筋の閃光が走る。

技を放った者を中心に輪状の光が広がっていき、遥か彼方で消えた。

 

そして、ゼノヴィアが膝を着いた。

 

「ガッ……ハ………ッ」

 

「ゼノヴィアッ!」

 

イリナが悲鳴をあげ、倒れ付したゼノヴィアに駆け寄る。

 

あれほど目映く輝いていた蒼炎のオーラも完全に失い、彼女の全身から力が抜けていくのが感じられる。

 

ヴァルス(分身体)が口を開く。

 

「いけませんね。やはり、あなたは単純すぎる。相手の動きを潰すのは良い。ですが、明らかに格上の存在に真っ向から向かってくるなど愚の骨頂。ゼノヴィア・クァルタ、あなたには少々、自身を過信するきらいがある」

 

そう言って、刀身に流れるゼノヴィアの血を払う。

 

「先程の技―――――邪聖剣(じゃせいけん) 烈舞踏常闇(れっつだんしんぐおーるないと) 雷神如駆特別極上奇跡的(らいじんぐすぺしゃるうるとらみらくる)超配管工兄弟(すーぱーまりおぶらざーず) 弐號役立不弟逆襲(るいーじのぎゃくしゅう) 監督斬(でぃれくたーずかっと)は 敵の攻撃をいなし、カウンターを繰り出す技。あなたのような猪突猛進タイプにはピッタリの技です」

 

確かにゼノヴィアのようなパワーでごり押しするタイプにカウンター技は効果的だ。

僕もゼノヴィアと模擬戦をする時にはカウンター技をよく使ったものだ。

 

いや、でもね………。

 

「いくらなんでも技名が長すぎませんか!? あと、どこかで見た記憶があるんですが!?」

 

「なんと! パクられていましたか!」

 

「いや、パクったのはあなたでしょう!?」

 

「そんなはずは………! この技はラズルと格ゲーをしている時に何となく浮かんだ技なのですよ!?」

 

「何となくにしては気合いが入りすぎていると思います!」

 

どうしよう、ツッコミどころが満載で困る!

 

というか、そんな『何となく』で作られた技にゼノヴィアはやられたのか!

どんな反応をすれば良いのか、分からないよ!

お願いだから、夢であってくれ!

 

頬をつねって………あ、痛い。

 

「木場殿、これは夢ではありませんよ?」

 

「実に残念です!」

 

もう嫌だ!

現実逃避したい!

 

イリナがゼノヴィアの肩を担いで立ち上がった。

 

「ゼノヴィア、大丈夫!?」

 

「ああ………傷は負ったが戦えない程じゃない。ギリギリだったけどね」

 

ゼノヴィアの脇腹からはかなりの出血が見られる。

だけど、ヴァルス(分身体)の攻撃を受けた割には傷が浅い。

ゼノヴィアの言葉からして、内臓にまでは届いていないようだ。

 

ヴァルス(分身体)は感心したように頷いた。

 

「ほう、切っ先が触れる刹那の瞬間、体を反らして致命傷を避けましたか。お見事です」

 

「フフフ、『剣聖』の修行を受けたのは伊達じゃないさ」

 

傷を抑えながらもゼノヴィアは不敵にそう返した。

 

避けることは出来なかったとはいえ、あの神速の剣に体が反応できたとは驚きだ。

これがモーリスさんがゼノヴィアに与えた課題の成果の一つなのだろう。

 

だが、ゼノヴィアが深傷を負ったのは事実。

まだ戦えるようだが、これまでのような戦闘はできない。

 

僕は個有の亜空間を展開して手を突き入れると、それを掴んだ。

亜空間から引きずり出されたその剣は禍々しい力を放出し、僕の体を蝕み始める。

 

その剣を見て、ヴァルス(分身体)は目を細めた。

 

「魔剣の王グラム。それがあなたの切り札ですか」

 

魔帝剣グラム。

この最強の魔剣は強力な分、デュランダル以上に暴れ馬だ。

僕の言うことなんて聞く耳を持ってくれないためか、思っているより斬れ過ぎてしまう。

 

だが―――――

 

「グラム。目の前の敵に勝つには君の力が必要だ。君を抑えようとは思わない。好きに暴れて良い。だから、持っている力の全てを解放してくれッ!」

 

抑制しようとすれば、グラムは反発して完全には応えてくれない。

ならば、好きなだけ、思うがままに暴れさせてやれば良い。

その分、僕がグラムの力に翻弄されないようにすれば良いんだ。

 

グラムから放出される力が膨れ始める。

僕の言葉に、眼前の強敵にテンションを上げているのか、これまでに無いくらい辺りに魔のオーラを撒き散らしている。

同時に僕を蝕もうとする力も大きくなって、体への負荷も増大している。

 

これがグラムの本領か………。

騎士王の姿でなければ、ギリギリのところだっただろうね。

 

ヴァルス(分身体)が自身の握る剣を見つめながら言う。

 

「この剣はちょっとした神剣。そこらの剣よりはよっぽど強いのですが………さてさて、その魔剣と真っ向から撃ち合えるかどうか」

 

ちょっとした神剣なんてないと思うのだけど………。

 

そんな感想を言葉にしないまま、僕はグラムを構えた。

 

「ゼノヴィア、イリナ。僕が前衛に徹する。君達はサポートを頼む」

 

僕がそう言ったのはゼノヴィアに無理をさせられないというのも理由だけど、もう一つの理由としてグラムの存在がある。

ここまで魔のオーラを振り撒いている状態では彼女達に影響を与えかねない。

 

ゼノヴィアが頷く。

 

「分かった………が、イリナ、おまえが木場を援護してやってくれ」

 

「それは良いけど………ゼノヴィアもその傷だとあまり動かせないし。でも、ゼノヴィアはどうするのよ?」

 

「少し考えがある。これはモーリスに提案されたことで、私がまだ達していない課題だ。まぁ、修行が終わる直前に言われたというのもあるんだが………それをここでやる」

 

「だから時間が欲しいってことね?」

 

「そうだ。木場とイリナでなんとか時間を稼いでくれ」

 

考えがある………ゼノヴィアには何か策があるのだろうか?

どういうものかは分からないけど、すごく彼女らしいものになりそうな気がする。

 

しかし、この状況。

恐らく、ゼノヴィアが負傷していなくても、戦闘が続けば地力の差でこちらが敗北するだろう。

三人がかりで情けないが、相手にはそれだけの力がある。

 

イリナが言う。

 

「まぁ、ゼノヴィアの策なんて、心を読む能力で読まれているかもしれないけどね」

 

「なに、心を読まれても回避できない必殺の一撃を撃てば良いのさ」

 

「結局、脳筋思考の策なんじゃない!」

 

やっぱりか………うん、わかってたよ。

でも、この状況を覆すにはゼノヴィアの策に、残っているモーリスさんからの課題とやらに掛ける他なさそうだ。

 

どんな状況でも変わらないゼノヴィアのパワー思考に諦めたのか、イリナは苦笑する。

 

「もう、分かったわよ。その代わり期待させてもらうからね? ゼノヴィアのパワー、信じてるから」

 

そう言うとイリナは浄化の力を纏い、黄金に輝く四対八枚の翼を広げた。

 

僕とイリナは目を合わせると互いに頷き、

 

「いくよ、木場君!」

 

「ああ!」

 

イリナの合図で僕達は地面を蹴った。

僕は右、イリナは左に飛び出し、その場から動かないヴァルス(分身体)を挟み込む。

 

先に動いた僕達に対してヴァルス(分身体)はゆったりとした動作で腕をあげ、肩と剣が水平になるように構えた。

その動作からはモーリスさんを相手にしている時と同じように思えた―――――その瞬間。

 

ゾクリ、と背筋に戦慄が走った。

 

「構えただけで………!」

 

今のは単純な威圧だ。

覇気を僕達にぶつけ、こちらの勢いを削ぎにきた。

 

だが、これくらいの威圧は何度も経験している!

いや………彼の、『剣聖』の放つ威圧はこんなものじゃない!

 

一度は足を止めかけた僕とイリナだが、蹴り足に力を込めてヴァルス(分身体)向かって駆け出す。

 

「良い反応です。ですが、そろそろこのやり取りにも飽きてきた」

 

閃光が穿たれる。

魔法力を纏った鋭い突きが僕の顔を貫こうとした。

咄嗟に首を傾げた僕は突撃の勢いに身を任せると、右足を軸に回転。

回転のエネルギーを乗せた一撃をヴァルス(分身体)に叩き込んだ。

 

この一撃を読んでいたようにヴァルス(分身体)は魔法で氷の剣を創り、これを阻止。

 

二刀流のヴァルス(分身体)と僕達は高速移動で戦場を駆け回りながら、幾度となく剣をぶつけ合う。

たまに量産型の邪龍が近寄ってきたりもするが、それらは僕達三人の剣に巻き込まれ細切れにされていった。

 

振り下ろされた氷の剣を弾くと僕は短剣型の聖魔剣を創造して投擲。

 

「同じ手は受けませんよ」

 

ヴァルス(分身体)は短剣型の聖魔剣を弾き飛ばす。

僕がゼノヴィアを転移させた時のことを言っているのだろうが――――――それは間違いだ。

 

弾いた聖魔剣の後ろにはもう一振りの聖魔剣が全く同じ軌道でヴァルス(分身体)に迫っていた。

この技は京都でイッセー君が曹操に使ったテクニック。

後ろの剣は前の剣に隠れて相手からは見えず、不意打ちに近い形で相手を襲撃する。

曹操ですら避けることが出来なかった技術だが、ヴァルス(分身体)はニヤリと笑んで、 

 

「忘れていませんか? 私の力は一瞬先の未来を見るのですよ?」

 

体を捻り、飛来した聖魔剣を避けると、僕の振るった横凪ぎの一撃を容易く受け止める!

やはりダメか………!

今の僕とイリナだけはそう長くは保たない!

 

僕が後ろに目をやると、そこにはエクスカリバーとデュランダルを前に瞑目しているゼノヴィア。

急いでくれ、ゼノヴィア………!

 

グラムの破壊力の乗った一撃で地面を割ろうとも、オートクレールの浄化の力で広範囲攻撃を仕掛けようともヴァルス(分身体)は凌いでいく!

何をしようともこちらの剣が届かない………!

 

ヴァルス(分身体)はグラムを弾くと、反対方向から飛んできた幾つもの光の槍を斬り刻んだ。

 

彼は切っ先をイリナに向けると、そこに魔方陣を展開。

魔法陣が鈍い光を放つと、そこから光の矢が飛び出してきた!

 

イリナが驚愕の声をあげる。

 

「これって私の力と同じ………!?」

 

「ええ。といっても、魔法で模倣してみただけなので、デッドコピーみたいなものですが」

 

イリナの浄化の力を魔法で再現したというのか!

 

デッドコピーとはいえ、浄化の力が籠められているとすれば、あの矢に当たるのはまずい!

 

イリナは再び光の矢を展開して、ヴァルス(分身体)が放った矢にぶつけた。

全ての矢が衝突し、完全に相殺できたと思った時だった。

 

ヴァルス(分身体)はイリナの間合い、その内側に立っていた!

 

「馬鹿な………僕と剣を交えていたはず………。いつの間に………!?」

 

そう、彼は僕と今の今まで剣を合わせ、鍔競り合っていた。

それなのに僕は彼の行動に気づかなかった………!?

 

「簡単なことです。私の力は今のあなた方の理解の外にある。ただ、それだけのこと」

 

ヴァルス(分身体)はイリナの腕を掴むと宙に放り投げ―――――一閃。

イリナの体を横凪ぎに斬り裂いた。

 

「クソッ!」

 

僕は神器を変えて、紅の龍騎士を複数体作り出した。

高速で動く龍騎士は僕のコピーそのもの。

更にはこれまでに得たヴァルス(分身体)の戦闘データも入っている。

 

紅の龍騎士と共にヴァルス(分身体)へと斬りかかるが、龍騎士達はただの一撃で斬り捨てられていく―――――。

 

ヴァルス(分身体)が剣を振るいながら言う。

 

「この紅の龍騎士は砕かれても、何度でも立ち上がる。ならば――――――」

 

最後の一体を両断した時、彼は僕の目の前に立っていて、

 

「騎士達が復活する前に彼らを創るあなたを先に斬れば良い」

 

その言葉と同時に悪神の眷属の剣は容易く僕を斬り裂いた。

肩から脇腹にかけて刻まれた深い斬り傷。

傷口からはおびただしい量の血が吹き出し、返り血が僕を斬った本人にかかった。

 

全身の力が抜けて、前に崩れ落ちそうになる。

だけど、僕は倒れなかった。

グラムを地面に突き刺して、ギリギリのところで体を持ち上げたからだ。

 

ヴァルス(分身体)が僕を見下ろしながら口を開く。

 

「倒れませんか」

 

「倒れる、わけにはいかない………! 僕はここであなたを倒す………!」

 

騎士王の姿に戻った僕は聖魔剣をこの手に握る。

そして―――――ベルによって複製された自分に放った技を繰り出した!

神速、僕が放てる技では最速の九連撃!

この至近距離なら!

 

だが―――――ヴァルス(分身体)は僕と全く同じ軌道で、僕と同じ九連撃を繰り出してきた!

それによって、僕の剣は完全に押され、弾かれ、果てには彼の剣が僕の体を斬り刻んでいく!

 

先に技を繰り出したのは僕なのに………それすらも真っ向から砕くなんて………。

 

痛みと、技を封殺されたことで呆然とする僕の肩にヴァルス(分身体)の手が乗せられて、

 

「これが………限界でしょうか?」

 

僕の腹を深々と剣が貫いた。

 

 

 

 

顔に伝わる地面の感触。

そこに生臭い鉄の臭いが広がっていた。

 

僕の血か………。

 

「あとは後方のゼノヴィア殿のみ。………ほう、彼女は中々に無茶をする気ですね」

 

ヴァルス(分身体)はゼノヴィアが何をしようとしているか分かったのか………?

ここからでは彼女に変化があるようには見えないけど、彼には僕には捉えられない何かが見えているのだろうか?

 

「おっと、肝心な人を忘れていました。ここには彼も―――――」

 

ヴァルス(分身体)がそこまで言いかけた、その時。

 

 

 

ドゴォォオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!

 

 

 

僕達の近くで大地が大きく爆ぜた!

地面が激しく揺れ、衝撃で舞い上がった土砂が雨のように降ってくる!

 

揺れが収まり、目の前にあったのは深く抉れた地面と―――――。

 

「ゴホッ………ぐぅぅ………!」

 

血塗れのヴァルスだった。

腕にも足にも、顔にも斬り傷があり、今の僕とそう変わらない状態だ。

 

「なっ………!?」

 

その光景に唖然とするヴァルス(分身体)。

 

そこへ―――――。

 

「うん? なんだ、やられちまったのか、祐斗? つーか、イリナもダウンしてるじゃねぇか。ゼノヴィアは………ほう、ここで試すつもりか? だが、ちいとばかし時間がかかりそうだ」

 

ザッ、ザッと確かな歩みと共に聞こえてくる声。

 

辛うじて顔を上げることが出来た僕の目の前に一つの人影。

 

「さーて、そこの分身体とやらよ。おまえさんの本体はあんな具合だ。俺もこっちに混ざってもいいか?」

 

モーリスさんは不敵にそう告げた―――――。

 

 




いつまにかボコボコにされてるヴァルス(本体)
やはりモーリスはチートか………。




~あとがきミニエピソード~


ディルムッド「ねぇね、あのね」

美羽「どうしたの、ディルちゃん?」

ディルムッド「ねぇねのこと………大好き………!」

美羽「カハッ………!」


クリティカルヒット、美羽に五万のシスコンポイント。
美羽は吐血した。

ディルムッドは百万イモウトポイントを獲得。
妹レベルが上がった。


~あとがきミニエピソード 終~

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