ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今回で380話!
400話は………厳しいかな(-_-;)


41話 進化する剣

[木場 side]

 

 

黒と白、そして………紅い、あの人と同じ色が僕を包んでいく―――――。

 

 

僕には二つの神器が宿っている。

一つは生まれ持った魔剣を創る力。

もう一つは同士達が与えてくれた聖剣を創る力。

 

魔剣創造と聖剣創造、相反する力を持った二つの神器がこの身に共存している。

本来なら交わることのない聖と魔。

聖書の神と四大魔王の不在が原因と考えられている。

 

僕は二つの神器を禁じ手に至らせることができた。

それだけでも相当なイレギュラーだとアザぜル先生は言っていた。

そもそも神器を二つ持っている時点でイレギュラーなのかもしれないけど。

そして、僕は剣聖の修行により、魔剣創造と聖剣創造を更なる次元に高めるに至った。

 

僕は強くなった。

リアス前部長に拾われ、イッセー君と出会ってから多くのことを経験し、ここまで歩んできた。

 

でも、まだだ。

僕はまだ駆け上がれる。

 

僕は紅のオーラに身を包まれながら、歩み始めた。

 

「僕はずっと考えてきた。この身に宿る二つの力を同時に扱えないか。何度も試して、何度も失敗した」

 

聖剣創造を禁手に至らせたは良いが、聖魔剣を発現できない。

逆に聖魔剣を出現させている時は龍騎士団を具現化することができない。

 

それはなぜか。

理由は簡単だ。

僕がその域に踏み込んでいなかったからだ。

相反する力が衝突し、生まれる力は絶大。

だけど、その力に僕の肉体は耐えられなかった。

この身に宿る二つの神器はそれを理解していたらしい。

 

だけど―――――

 

「今この時、僕は至った。至ることが出来た」

 

黒と白のオーラが僕の体を包み、騎士王の姿となる。

騎士王の衣服を紅の光が覆うと、黒いコートが紅に染まった。

膝下と前腕が強く輝くと―――――紅の脚甲と籠手が装着される。

その脚甲と籠手は紅の龍騎士が装着しているものと同じだ。

 

「これが二つの神器を同時に発動させた姿――――神器融合『紅蓮纏いし双覇の騎士王』」

 

新しい僕の姿を見たヴァルス(分身体)は言う。

 

「紅色の騎士王、ですか。これまでの力とは桁が違う。………なるほど、あなたの内側で相反する力が競い合うようにぶつかり、互いを高めながら共存している。ゼノヴィア殿も無茶をすると思えば、木場祐斗殿、あなたもですか」

 

「グレモリー男子として、ここで立ち上がらない訳にはいきませんから。僕はここであなたを倒します。今度こそ」

 

紅の騎士王となった僕は更に一歩を踏み出す。

 

………無意識に紅のオーラが滲み出ている。

内側で渦巻く力が大きすぎて、制御が行き届かない。

これは深蒼の姿になったゼノヴィアと同じく、長くは保たないだろう。

 

僕が足に力を籠めて、飛び出そうとした時、後ろにいたモーリスさんから声をかけられた。

 

「終わらせてこい、祐斗。ここで決めてこそ、男ってもんだろ?」

 

ニヤリと笑むモーリスさんの目は僕達の勝利を信じてくれていて―――――。

 

僕は振り向かず、ただ一言だけこう返した。

 

「―――――勝ってきます」

 

僕は呼び動作もなしに、いきなり全速力で飛び出した!

 

力を入れた瞬間に脚甲のふくらはぎの部分が展開し、噴射口が現れ、紅のオーラを放出。

僕は過去にないほどのスピードでヴァルス(分身体)へと迫っていた。

変則的な軌道を描いて彼の懐に飛び込んだ僕は下段の構えから斜め上へと斬撃を繰り出す!

 

ヴァルス(分身体)は紙一重で避けると、カウンターの一撃を僕に浴びせるが―――――彼の剣は虚しく空を斬っただけに終わった。

 

「なんと………っ!?」

 

その一瞬の隙を突いて、僕は上段、中段、下段へ連続で放つ突きを放った。

僕のスピードに驚きながらも、この突きを全てを受けきったのは流石だ。

 

僕とヴァルス(分身体)の斬撃の応酬。

先程までなら、パワーも、スピードも、剣の技量でも上を行かれ、一対一では相手にならなかった。

 

だが、今はどうだろうか。

撃ちあえば、撃ち合う程、僕の剣は彼の剣に追い付いてきている。

駆ければ、駆けるほど、僕の脚は彼の脚に近づいている。

 

ヴァルス(分身体)もそのことに気づき、汗を流し始めていた。

 

振り下ろした剣と剣が衝突する瞬間―――――籠手が展開して、オーラを噴出、その勢いを増していく!

勢いを増した僕の剣はヴァルスの剣を押し込んでいく!

 

僕はヴァルス(分身体)の剣が怯んだと同時に、あの九連撃を撃ち込んだ!

彼が握る魔法で創られた剣を打ち砕くと、肩、腕、脚、胸を貫いた!

 

「………っ!」

 

僕の攻撃をまともに受けたヴァルス(分身体)は大きく後ろに飛ぶと、頬につけられた斬り傷を指でなぞった。

指に付着した自らの血を見つめると、彼は苦笑を浮かべた。

 

「これはまた恐ろしい。あなたのその力、駆ければ駆けるほど速く、振るえば振るうほど強くなる………でしょう?」

 

そうだ、彼の言う通り、それがこの力の能力。

僕が駆ければ駆けれるほど、この脚は速くなる。

僕が剣を振るえば振るうほど、この剣の力は強くなる。

つまり、僕が止まらない限り、永遠に力が高まっていく。

 

これだけを聞くと、とんでもない力に思えるだろう。

だけど、何事にもデメリットはある。

 

ヴァルス(分身体)はそのデメリットを口にした。

 

「永遠に上がり続ける力。素晴らしい能力です。ですが、その力は諸刃の剣。増大し続ける力はあなた自身を蝕み、破壊してしまう」

 

「悔しいですが、その通りです。この力はそう長く使えるものじゃない」

 

今こうして話をしている間も、僕の肉体は悲鳴をあげている。

これまでに消耗した体力、負った傷も合わさって、とっくに限界を越えているんだ。

 

それでも………、

 

「これくらいの痛み、耐え抜いてみせますとも。我が主のため、大切な仲間のため、あなたを倒すためなら、これくらい安いものだ!」

 

すると、僕の両隣に立つ者達が現れる。

ゼノヴィアとイリナだ。

二人とも良く言ってもボロボロ。

血塗れで、傷も決して浅くはない。

それでも、彼女達は僕と共に戦ってくれているんだ。

 

ゼノヴィアが言う。

 

『ヴァルス、言ったはずだ。私達はおまえを倒し、この先に進む』

 

「あなたに勝って、ダーリンのところに行くわ。私達はどんな時だって力を合わせて乗り越えてきた。これからもそれは変わらないわ」

 

二人とも体の限界を感じさせない、力強い言葉だった。

 

僕達の言葉にヴァルス(分身体)は「そうですか………」と一言だけ呟くと額に手を当てて、可笑しそうに笑った。

どこか嬉しそうに。

 

ヴァルス(分身体)は魔法陣を展開すると、そこから新たに魔法の剣を抜き出す。

 

「これ以上、何かを言うのは無粋でしょう。あなた達は限界を超え、その領域に至った。ここから先は剣士として本気も本気、真の勝負といきましょうか」

 

ヴァルス(分身体)の鋭い視線がこちらを捉えた瞬間、彼からのプレッシャーが膨れ上がる………!

重たく、冷たい、凍りつくような波動。

触れただけで斬られる、そんな風にも感じてしまう。

 

正直に言えば、僕達は今の彼に恐れを抱いている。

それは否定できない事実だ。

だけど………たとえ恐れても、立ち止まるわけにはいかない。

僕は、僕達は彼を倒して、イッセー君の元に行くんだ………!

 

ぶつかり合う互いの波動。

その境目が軋み、地面に亀裂が入っていく。

近くにあった土砂の塊が僕達の波動を受けて、弾けた瞬間――――――。

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」」」

 

僕達は雄叫びをあげる!

全身からオーラを放出させて、辺り一面に振り撒きながら、走り出した!

 

痛みはある。

体も限界を超え、今にも崩れてしまいそうだ。

だけど、そんなことに気を回す余裕があるのなら、一歩でも足を踏み出せ!

一振りでも多く剣を振るえ!

 

ここで勝たねば、大切なものを失ってしまう!

彼は何度も限界を超えて、守りたいものを守ってきた!

もう二度と失わないように!

 

もう何度目の連携だろうか。

僕とゼノヴィアとイリナの三人による連続攻撃。

相手に反撃すらさせない、絶え間なく続くコンビネーションアタック。

何度もやって、何度も撃ち破られた。

だけど、今度は確実に届きつつある!

僕達の剣は確実に進化している!

 

「ぬぅぅぅぅん!」

 

ヴァルス(分身体)の剣が真上から振り下ろされる。

受け止めた瞬間に、とてつもない重量が僕を襲った!

これが彼の全力か!

まるで巨大な岩でも降ってきたような感覚だ!

 

剣を握るヴァルス(分身体)の腕の筋肉が膨れ上がり、血管が浮かび上がると、剣の重みが更に増していく!

このままでは潰される………!

 

『させるかァァァァァァァァッ!』

 

横合いから彗星のごとく突っ込んできたゼノヴィア。

深蒼を纏うエクカリバーがヴァルス(分身体)の左腕を斬り落とした!

 

だが、ヴァルス(分身体)もただやられる訳ではない。

空中を舞っている剣の柄を口で咥えると、そのままゼノヴィアの腹を突き刺したのだ!

体を回転させて繰り出された後ろ回し蹴りがゼノヴィアの頭部を捉え、地面に叩きつける!

 

続けて、流れるような動きで僕の体を剣で刻み、強烈な蹴りを叩き込んできた!

僕は何度も地面をバウンドして転がっていく。

 

胸に刻まれた傷から血が止まらない………!

あの一瞬でここまでの攻撃をしてくるとは………!

 

「ぐぅ………!」

 

深いダメージを負ったゼノヴィアからあの深蒼のオーラが消え失せていく。

もう彼女に力は残されていない………!

このままでは………!

 

ヴァルス(分身体)は残った右腕を振り上げ、切っ先をゼノヴィアに向けると、そのまま―――――。

しかし、切っ先がゼノヴィアの体に触れる直前、その動きを止めた。

 

「相棒は私が守るってね!」

 

見れば、イリナがオートクレールのオーラ鞭状に変えて、ヴァルス(分身体)の右腕に巻き付けていた。

 

血を吐き出しながら、ゼノヴィアが叫ぶ。

 

「木場ァァァァァァァァ! いけぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「木場君! お願い! これ以上はこっちがもたないッ!」

 

必死でヴァルス(分身体)の右腕を封じているイリナだが、徐々に引きずられている。

 

僕は紅の聖魔剣を両手で強く握る。

僕にももう力はほとんど残っていないんだ。

決めるならここだ。

今しかチャンスはない………!

 

僕は今出せる全ての力で飛び出した。

磨いてきた剣技もゼノヴィアにあれほど言っていたテクニックもない。

残された僅かな力による突貫。

不格好だけど、これしかないんだ。

 

届け、届いてくれ………!

 

「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」

 

 

 

 

それから、どれだけ時間が過ぎたのだろう。

恐らく一分も経っていない。

それでも、この時間は十分にも、一時間にも感じられた。

 

ヴァルス(分身体)の胸に深々と突き刺さった紅の聖魔剣。

刀身には彼の血が伝い、紅い剣を更に赤く染めていく。

 

やがて、紅の騎士王の衣服が光の粒子と化して中に消えてる。

残ったのは敵を貫いている紅の聖魔剣だけ。

 

自身を貫く聖魔剣をヴァルス(分身体)はそっと撫でた。

 

「良い………突貫でした。磨きあげた技よりも、何十何百と繰り返される駆け引きよりも………清々しい程に真っ直ぐな………」

 

「あなたは………最後、避けることが出来たのでは?」

 

最後の突貫。

確かに全力の突撃だった。

 

でも、この人の能力は相手の心の内を読み、一瞬先の未来を見ることだ。

ならば、僕の突貫は避けることが出来たように思える。

 

しかし、ヴァルス(分身体)は首を横に振った。

 

「いえいえ………どうあがいても結果は同じでした。私もあなた方と同じく、限界だったのですよ。所詮、この体は術によって創られた仮初めの肉体。あなた方のように限界を超えるなんて真似はできません」

 

ヴァルス(分身体)の指先が崩れていく。

砂のように崩れる彼の肉体は吹く風に流され、消えていく。

 

そんな中、彼は天を見上げ、呟いた。

 

「聖書の神よ、あなたが何を思い彼らに神器を託したのか。それは私には分かりません。ですが、これだけは言える。あなたは素晴らしいものを残された。あなたが創り、与えた力は彼らの可能性を大きく広げた。見なさい、彼は己の限界を超え、私に剣を届かせてみせたのです」

 

彼は満足そうに微笑むと、

 

「さぁ、先に進みなさい。あなた方の力が、その可能性が未来を切り開くのですから………」

 

それだけを言い残して、彼の肉体は完全に消え去った。

 

そして、僕達三人はその場で気を失ったのだった。

 

[木場 side out]

 

 

 

 

[モーリス side]

 

 

祐斗達と分身体とやらの戦いが終わった。

 

ここまで修行をつけたりしていたが………まぁ、なんというかあれだな………。

 

「末恐ろしいもんだ」

 

俺はそう呟くと祐斗、ゼノヴィア、イリナの応急処置を始めた。

三人共、かなりの重傷だ。

アーシアに治してもらいところだが、俺が三人を担いで行くよりも、向こうに来てもらった方が早いだろう。

俺はアーシアに通信を入れると、三人に止血剤を注射しておいた。

一応、持ってきて正解だったな………。

 

こいつら剣士トリオにはかなり厳し目に修行をつけた。

この戦いで生き残らせるためにだ。

だが、ハッキリと言わせてもらうと、こいつらの成長速度は俺から見ても異常だ。

それはリアス達も同様。

少なくとも、俺がこれくらいの時にはここまでじゃなかったさ。

 

応急処置を終えた俺は立ち上がると、近くでボロボロになっているヴァルスの方へと歩み寄った。

 

「よぉ、生きてるか?」

 

「………ええ、なんとか生きてますよ。全く………あなたは規格外過ぎます。剣聖殿、あなた、少し手を抜きましたね?」

 

「手を抜いたとは失礼な。急所を避けただけだ」

 

「………呆れた人です。本当に人間ですか?」

 

「いんや。だから、今の俺は悪魔だってーの」

 

「それでも、異常ですよ」

 

異常とはまた失礼な。

こんなか弱いおっさんに向かって。

 

「あなたがか弱いなら、世界はとうの昔に滅んでますよ」

 

「さりげに心の内を読むんじゃねーよ、ジミー」

 

「酷い! ジミーって言わないでくれます!?」

 

なんだよ、死にそうな顔してるのに騒ぐ元気は残ってるのかよ。

まぁ、そんな冗談はどうでも良いとしてだ。

 

俺はヴァルスの横にどっかり腰を下ろすと、水筒の水を飲みながら訊いた。

 

「さーて、おまえさんには聞きたいことがある。急所を避けた理由の一つだ。俺の質問は………分かっているな?」

 

俺がそう問うとヴァルスは息を吐く。

 

「この先の展開………隔離結界について、でしょうか?」

 

「そうだ。おまえさん達は予め、そいつを知っていた。ってことはだ、トライヘキサの動きが封じられることとかも知っていたことになるよな? ………おまえのところの大将は何を企んでいやがる? 仕入れた情報をただ聞き流すような奴でもあるまい?」

 

こいつから隔離結界を聞かされた時、アザゼルに対しての文句以外に浮かんだことがある。

 

―――――なぜ、トライヘキサの動きが封じられることを知っていて、何の対策もしていない?

 

隔離結界とやらの情報が得られたのなら、トライヘキサの対策くらいは分かっていたはずなんだよ、こいつらは。

トライヘキサはこいつらにとって、最大の戦力。

それを易々と潰されるような真似、こいつらがするだろうか。

 

イッセーやアリス曰く、こいつらには世界征服だの何だのは考えちゃいない。

だが、どんな思惑があるにしろ、こんな全面戦争を仕掛けてくるような過激な奴らだ。

ここで何かしらの企みがあると考えるのが普通じゃないだろうか?

 

ヴァルスは一度、瞑目すると、赤い空を見つめながら口を開いた。

 

「実はですね………。そちらの元ヴァルキリー………ロスヴァイセ殿の論文がトライヘキサを封印するものだと判明した時から、最悪の事態が起きた場合、あなた方がどう対処するかは予想できていました」

 

「………!」

 

つまり、こいつらはこちらの動きを予測して、準備する期間があったということだ。

嫌な予感しかしねぇ………!

 

ヴァルスはそのまま続けた。

 

「ええ、あなたの考えていることは正しいですよ、剣聖殿。父上はそちらの策すら利用します。父上はトライヘキサを―――――」

 

語られたこの後の展開。

その内容に俺は嫌な汗を流した。

 

気を付けろよ、イッセー………!

おまえが相手にしている奴はとんでもねぇこと考えてやがる………!

 

 

[モーリス side out]

 




~あとがきミニストーリー~


鬼畜イッセー「いいかぁ! ボケとツッコミの融合だァ!」

イッセー「なんでだよっ!?」

美羽「あ、融合した」


~あとがきミニストーリー 終~

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