今回からは美羽達の戦いです!
それでは―――――
[美羽 side]
リアスさん達にお兄ちゃんを任せ、先に進んでもらった後。
ここにはベルとヴィーカの相手として、ボクとアリスさんが残ったんだけど………。
ボクはため息を吐きながら言った。
「もう、なんで残っちゃったの? ここは任せてって言ったのに。ねぇ、ディルちゃん」
ボクの側に立っているのは右手に剣、左手に槍を握る紫色の髪の少女。
ディルちゃんはリアスさん達とは一緒に行かずに、ここに残ってしまったのだ。
ディルちゃんが言う。
「私もねぇねと共に戦います。言ったはずです、ねぇねは私が守ると」
うーん………これはボクの言い分を聞いてくれそうにないかな?
ディルちゃん、ちょっと頑固なところもあるし。
そんなディルちゃんの発言を聞いたアリスさんは半目で、
「カッコ良いこと言ってるけど、あんまり締まらないわね。だって、『ねぇね』だもの。幼さ全開だもの。というより、性格変わりすぎじゃない? 最初の冷たい雰囲気はどこ行ったのよ?」
確かにディルちゃんの性格は変わったけど、実はこれが本来の彼女なんだよね。
お姉さんが亡くなってからは、誰かに甘えることができなくて、そもそもそんな贅沢が出来ない環境で………彼女はずっと自分を殺してきた。
でも、やっと、心を開ける場所を得た。
こうしてボクの隣にいてくれるのは本当に嬉しい。
というか………ボクとしては甘えてくれるのは大歓迎だよ!
ここが戦場じゃなかったら、抱きついてモフモフしてるところだよ!
とにかく甘やかしたい!
撫で撫でしたい!
妹可愛い!
「妹最高! ディルちゃん万歳!」
「美羽ちゃん、それは心の中だけにしとこう。声に出して、シスコンを叫ばないで」
「お兄ちゃんに甘えたい! 撫で撫でしてもらいたいよ!」
「シスコンがダメなら、今度はブラコン!?」
「ディルちゃぁぁぁぁん! お兄ちゃぁぁぁぁぁん!」
「ゴメン! 私、そんなにツッコミできないから! お願いだから、ボケに回らないで! シスコンブラコンの世界から戻ってきて!」
「ねぇね!」
「あんた、わざとでしょ!? いい加減にしないと怒るわよ!?」
うん、どうやら、この場のツッコミはアリスさんに任せて問題ないらしい。
ボクに続き、ディルちゃんに対するツッコミも華麗に決めてくれる。
なぜ、こんなことを考えているのか。
それにはちゃんとした理由がある。
ボクはお兄ちゃんから聞かされている。
相手は強敵だと。
はじめは単純に戦闘力のことを言ってるんだと思ってた。
でも、それは間違いで………彼らはボク達
「……見せつけてくれるわね。流石は勇者君の妹。あなたの彼女への愛は本物だわ。そちらがその気なら良いでしょう。こちらも見せてあげる! これがベルへの愛よ!」
そう言うと、ヴィーカは両手を大きく広げ―――――ベルをギュッと抱き締めた!
「ウフ、ウフフフフフフフッ! やっぱり、ベルのほっぺたはプニプニで最高だわ! うゃーん!」
「あんたもぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
アリスさんの叫びが響くが、ヴィーカはお構い無し!
互いの頬を合わせての高速スリスリ!
右手でベルを抱き、左手にはスマホを持って、パシャパシャと自撮りしていく!
他にも自身の胸にベルの顔を埋めてみたり、ベルの白い髪に鼻先を入れて、彼女の香りを嗅いだり………。
お兄ちゃんの言っていた通りだ。
この人は………この人達は強敵だ!
妹を愛する姉、もしくは兄としての愛情表現はボク達と通じるところがある!
普通ならツッコミを入れる側なんだと思う。
だが、しかし!
この場において、ボクがツッコミ側に回るなんて不可能!
ボクの心がそう叫んでいる!
ヴィーカはベルを抱き締めながら不敵に笑んだ。
「どうかしら? これが私のシスコン道よ! ベルは世界一可愛いの! 最強のロリなのよ!」
「………ヴィーカ………苦しい………」
ヴィーカによって、しっかり抱き締められているベルは相変わらず眠たそうな目をしてるけど………。
しかし、こちらも負けてられない。
一人の姉として。
ボクはヴィーカに対抗するようにディルちゃんを抱き締め―――――。
「ふざけないで! ディルちゃんだって可愛いんだから! 普段はクールなのに、甘えてくる時の妹レベルはすっごく高いんだよ!」
無愛想キャラなんて崩壊するぐらいデレるし!
晩御飯が唐揚げと知った時なんて、すっごく可愛い笑顔になるんだから!
「ねぇね、苦しい………けど………もっと………」
ちょっと苦しそうにしてるけど、頬を赤くして、ボクの胸に顔を埋めてくるディルちゃん。
少し遠慮気味にしながらも、背中に手を回してくるところなんて………!
「カハッ………! 可愛い………可愛いよ、ディルちゃん!」
ボクは吐血した。
しかし、この直後、ディルちゃんの発した言葉がボクの体を突き抜けることになる。
ディルちゃんは赤面しながら、ボクの顔を見上げて―――――。
「ねぇね………好き」
「…………」
どうしよう、涙出てきた。
ディルちゃんが可愛すぎて辛い………。
「ぐぬぬぬ………! 私だって負けないわ! ベル! 言って! 『ヴィーカ、好き』って! 言って! そしたら、五年は生きていける!」
「………ヴィーカ………すーき………?」
「なぜに疑問系!? だけど………カハッ!」
感涙するヴィーカ。
分かるよ、その気持ち。
ボクとヴィーカは互いに頷くと一言。
「「この気持ち、まさしく愛だ!」」
「ただのシスコンでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アリスさん、ツッコミお疲れさまです。
▽
「うっ、うぅぅ……もうヤダ、帰りたい。なんで、この世界って敵も味方もシスコンが多いのよ………。もういっそのこと天下一シスコン道大会でもすれば良いのよ」
「あら、それ良いじゃない。王女様のアイデア採用♪」
「採用しなくていいわよ!」
ボクとヴィーカのシスコン対決が終わった後もアリスさんのツッコミは続いていた。
天下一シスコン道大会………参加してみたいかも。
ただ、その場合、ボクは妹として参加するのか、姉として参加するのか悩む。
アリスさんは深く息を吐くとヴィーカに聞いた。
「ったく、あんたは私との決着をつけにきたんでしょ? なんで、シスコン対決になってるのよ?」
「私も純粋にあなたと戦いたかったのよ? でもね、目の前で妹LOVEをされると血が騒いじゃうの。まぁ、シスコン対決はここまでにして、ここからは本当に刃を交えましょう」
妖艶な笑みを浮かべ、槍をくるくる回すヴィーカ。
ボクとアリスさんは既に神姫化して、自身に宿っている疑似神格の力を解放している。
前回、アグレアスで戦った時には、神姫化したボク達はアセムの配下である彼女達を圧倒できる程の力を発揮した。
恐らく、戦ってもあの時と同じ結果になるだろう。
ただし、今のままならだ。
ボク達に力が眠っていたように、ヴィーカもベルもまだ奥の手というものを持っている。
ヴィーカが言う。
「私も今回は本気でいかせてもらうわ」
刹那―――――ドンッと空気が激しく揺れた!
何事かと思えば、ヴィーカの周囲が彼女の発するオーラに押し潰されて、地面にはクレーターが広がっていた!
広がる彼女のオーラはまるで押し寄せる津波のようにボク達を呑み込もうとしていて………!
「あんた何をするつもりよ………!?」
ヴィーカと何度もぶつかってきたアリスさんも、この力の波動には衝撃を受けたようで、冷や汗を流している。
ボク達が未知の力を前にして動けない間にも闇色のオーラはこの一帯に広がっていく。
邪龍と戦う味方も、味方を凪ぎ払う魔獣。
敵味方関係なしに全てを呑み込み、かなりの広範囲に達した。
「その姿になった王女様を相手にするには、今のままの私じゃ勝ち目はないもの。だから、私の全てをここで披露するわ。あなた達を私の領域に招待するわ!」
パチンッとヴィーカが指を鳴らした―――――次の瞬間。
彼女のオーラが広がっていた範囲の景色が歪み始めた。
荒れた大地も血のように赤い空も、絵の具を混ぜたようになって………。
世界の変動が終わり、ボク達が立っていたのは一面が白い砂に覆われた砂漠の世界。
真っ白な砂、満月が浮かぶ藍色の空。
そして―――――砂漠に突き刺さる無数の武器。
剣、槍、ダガーといった刀剣から拳銃、大砲といった火器まで。
ありとあらゆる武器がこの白い砂漠世界に無数に散りばめられている。
「もしかしなくても、この世界って………」
アリスさんが辺りを見渡しながら苦い表情で呟く。
ヴィーカがアセムより与えられたのは『
なるほど、なんて分かりやすいんだろう。
ヴィーカが微笑みながら言う。
「解説する前に理解してくれたようでなによりだわ。そう、ここは私の世界。私の所有する異空間であり、私の武器庫よ」
「あんた専用の特殊な結界を展開したって感じみたいね。あんたを倒さない限り、この結界からは出られないってことで良いのね?」
「そうね、そんなところよ」
ボクは改めて周囲を見渡してみた。
ここにはボク達以外の人………味方である連合軍の人達もこの結界に巻き込まれてしまっている。
ヴィーカを倒さない限り、この結界を突破することが出来ないということは、この場にいる連合軍全員が足止めを食らうと言うことだ。
ボク達だけならともかく、他の味方も足止めを食らうのは流石にマズい。
アリスさんは続けてヴィーカに疑問を投げた。
「やってくれるわね………と、言うのはまだ早いのかしら? どーせ、他にも色々あるんでしょ?」
「もちろん。ここは私の世界よ? この世界の中でこそ、私の真の実力が発揮できる。まぁ、それは試してみる方が早いかもね♪」
ヴィーカは槍を構えて腰を沈める。
「端からそのつもりよ」
アリスさんもヴィーカに合わせて槍を構え、目付きも鋭いものになった。
二人の空間に強烈な殺気が満ちた瞬間―――――彼女達はその場から姿を消した。
上空からけたたましい音が消えてくる。
見上げると、白雷を纏うアリスさんとヴィーカが激戦を繰り広げていた。
アリスさんの神姫化―――――
光を司る偽りの神。
今のアリスさんはパワーはもちろん、スピードが大幅に強化されている。
並の神クラスではあのスピードに翻弄されて終わってしまうだろう。
アグレアスの時もそうだ。
ヴィーカはあのスピードに追い付けず、一方的な展開となっていたはずだ。
それが今はどうだろう。
ヴィーカは神姫化したアリスさんと全く互角の戦いを繰り広げている。
どうやら、この結界の中ではヴィーカの身体能力も爆発的に向上されるらしい。
穂先が見えなくなる程のスピードで槍を振るいながらヴィーカは言う。
「ウフフフ! 今の私と互角にやりあえるなんて、やるじゃない!」
アリスさんも神速の動きで対応しながら叫ぶ。
「それはこっちの台詞よ! あんたはここまでの力をずっと隠してた! この力を使えなかったら、一瞬でやられていたわよ!」
「だって、一瞬でケリがついたら面白くないでしょ? 強くなれる要素が残ってるなら、先を見たくなるのが普通じゃないかしら!」
鋭い横凪ぎの一撃がアリスさんの槍を弾く。
攻撃の流れを崩されたアリスさんはヴィーカの追撃をかわして後退すると、セラフのように光輝く翼を大きく広げた。
彼女の周囲に白金色の槍が何本も現れ、狙いをヴィーカに定めると、その全てが鋭く射出される。
しかし、放たれた槍は相殺されることになる。
突如として飛来してきた無数の剣によって。
アリスさんが舌打ちする。
「あんたの武器、外の世界よりもかなり強力になってる………! なんとなく分かってたけど、これって―――――」
その言葉にヴィーカはウィンクしながら答えた。
「そうよ♪ この世界の中で展開される武器は数も質も桁が違うわ。ここに展開されている武器は全てが神具クラス。今まで扱ってきた聖剣や魔剣とは別格よ?」
ヴィーカが飛んできた剣を掴み、軽く振るった。
次の瞬間―――――。
ドォォォォォォォォォォォンッッ!
一帯が激しく揺れた!
ヴィーカが剣を振るった先には破壊し尽くされた大地。
平らだった大地が巨大な渓谷へと変わり果てていた。
しかも、今の一撃で結界に取り込まれた味方がごっそり減らされていて………!
今の一振りでこの威力………!
神具クラスというのは事実のようだけど………こんな馬鹿げた威力を持った武器が無数に存在すると言うの………!?
「ついでに見せるとこんなこともできちゃう」
ヴィーカが指を鳴らす。
すると、地面に刺さっていた剣や槍、巨大なハンマーが浮かび上がり、その切っ先を連合軍の方へと向けた。
そして―――――全ての武具が連合軍の方へと飛翔していった!
連合軍へと襲いかかる武具の数は百や二百じゃない!
全てが神具クラスの力を持っているためか、剣が一本落ちるだけで、味方に甚大な被害をもたらしていく!
「千単位で神具を降らせたら、どんなに数がいようと、神がいようとも全滅は免れないでしょうね。防御結界を張ったとしても無駄。圧倒的な力の前では紙同然だもの」
ヴィーカの言葉を証明するかのように、降り注ぐ神具の数々は防御の上から味方を潰していく。
あの中にはかなりの実力者もいたはずなのに、ヴィーカの攻撃に全く抗えていない。
この結界から脱出しようとヴィーカを狙う者もいたけど、瞬く間に神剣の雨に降られ、一欠片の肉片も残さずに消滅していった。
これがヴィーカの真の実力………!
「あ、ちなみにこの世界の武器は私しか使えないの。奪ってどうこう出来ないから注意してね♪」
自身の持つ広大な結界の中に血の雨を降らせながら、ヴィーカは妖艶に笑みを浮かべていた。
[美羽 side out]
~あとがきミニストーリー~
美羽「お兄ちゃんお兄ちゃん」
イッセー「どうしたんだ、我が愛しの妹達よ。何かあったのか?」
美羽「まぁね。ちょっとそこで見ててね? いくよ、ディルちゃん」
ディルムッド「うん。………にぃに」
美羽「お兄ちゃん」
美羽&ディルムッド「「大好き!」」
イッセー「フォオッハァアアアアアアアッ!!!!!!」
イッセーにオーバーキル。
イッセーは全身の穴から血を噴出、悶死した。
美羽とディルムッドがイモウトポイントを獲得。
妹レベルが上限突破した。
ドライグ『相棒!? しっかりしろ、相棒ォォォォォォッ!』
イグニス『あらあら………気を失っているのに、ものすごくニヤニヤしているわ』
~あとがきミニストーリー 終~