ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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69話 極限を超えて

[木場 side]

 

 

光の中から現れたイッセー君。

彼はこちらへと火炎を向けていたトライヘキサの分裂体を吹き飛ばし、手を振るうだけで眷獣を消し去った。

そこだけを見れば、仲間の危機に駆けつけた頼もしい味方、ヒーローだ。

ヒーローは遅れて現れるなんて言葉もある。

パワーアップに時間が掛かってしまったとは言え、今のイッセー君は頼もし過ぎる程の存在だ。

でもね――――――。

 

 

「おっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッッッ!!!!!!!」

 

 

高らかに叫ぶイッセー君。

そう、光の中から現れた彼が最初に発した言葉は仲間の名前でもなく、安否を尋ねるものでもなく、『おっぱい』だった。

イッセー君はそれはもう力一杯『おっぱい』と叫んでいる。

ここまで籠った声で『おっぱい』という単語を聞くのは初めてかもしれない。

 

うん、分かってたさ。

ここで僕がとるべき行動はきっと、イグニスさんがあんな提案をした時から決まってたんだ。

そう思った僕はまっすぐイッセー君を見ると、口を開く。

 

大声で叫ぶなんて僕のキャラじゃないかもしれない。

でもね、僕の気持ちも分かってほしい。

この土壇場でシリアスが崩壊する音を聞くしかない僕はこうするしかないんだ。

たとえ、キャラじゃなくても、似合わないと言われても構わない。

僕は―――――大声でツッコミを入れよう。

 

「なんで! 開口一番に! 『おっぱい』なんだぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

僕は叫ぶ!

心の底から!

恐らく、この場の誰もが思っているであろうことを!

 

「おっぱいドラゴンだからって、それはないだろう!? もっとかっこ良く決めてほしかったよ!」

 

しかし、僕のツッコミにイッセー君は何も返さない。

 

手を握ったり、閉じたりして力を確認するかのような動作を取っている。

まさか、僕のツッコミが届かない程のパワーアップを果たしたということだろうか?

 

すると、近くで戦っていたアザゼル先生が降りてきた。

アザゼル先生は深く息を吐くとイッセー君に向かって一言。

 

「イッセー、おまえ…………乳の感触を思い出してるな?」

 

「えっ!?」

 

アザゼル先生の言葉に僕は思わず声を出してしまった。

 

僕はイッセー君の顔を覗き込む。

すると彼は――――――とってもスケベな顔をしていた!

 

あの手の動作は自身の力を確かめるものじゃなかったのか!

揉んだであろう女性陣の胸の感触を思い出していたのか!

 

酷い、酷すぎる!

僕達は女性の胸の感触を思い出しながら戦う人に救われたと!?

なんということだ、威厳も何もないじゃないか!

 

威厳など微塵も感じられない主にワルキュリアさんは、

 

「イッセー様は本当に…………ド変態おっぱい野郎ですね」

 

と、蔑むような目をイッセー君に向けていた!

眷属が主に向ける目じゃないよ!

ゴミを見る目だよ!

 

だが、そんな蔑みすら今のイッセー君には届かない。

 

「………良かったなぁ………可愛かったなぁ………皆のおっぱい………」

 

指をワシャワシャ動かしながら、うわ言のように呟いている。

 

アザゼル先生は額に手を当てて言う。

 

「これ、使い物になるのか? 乳の余韻、長過ぎやしないか?」

 

使い物に………ならないかもしれません。

『乳の宴』とやらでイッセー君は骨抜きにされたのでは?

そんな風に思ってしまうよ。

 

アザゼル先生はイッセー君に問いかける。

 

「おい、イッセー! 乳の余韻に浸るのは良いが、パワーアップは出来たんだな? 俺達、おまえがリアス達の乳を吸う時間稼ぎでかなり消耗してしまったんだが………というか、長すぎるだろ。おまえ、中で何してた?」

 

ようやくこちらの声が届いたのか、イッセー君はその問いに返してくる。

 

「え? そんなに時間経ってました? イグニスは結界の中は外と時間の流れが違うって………」

 

「なに? こっちではもう一時間過ぎてるんだが………おまえ、本当に何してた? ハッスルしすぎだろ。まさかと思うが、子作りまでしてたんじゃないだろうな?」

 

「………」

 

「おい、なぜそこで黙る。おまえ、マジで子作り………」

 

「し、してませんよ! 俺だって、ここが戦場じゃなかったら子作りしたかったですよ! た、ただ………皆が可愛くて色々してただけです!」

 

色々したんだね!

そこは否定しないんだね!

 

ワルキュリアさんがイッセー君に問う。

 

「アリス様や他の方々は?」

 

「皆はもう少ししたら出てくると思う。イグニスが………事後処理してる」

 

「事後処理?」

 

「………うん、事後処理」

 

酷く青ざめた顔で頷くイッセー君だが………それは大丈夫なのだろうか。

いや、大丈夫じゃないから青ざめているのだろう。

アリスさん達がイグニスさんに何をされているのか、考えない方が良いかもしれない。

 

コホン、とイッセー君が大きく咳払いする。

 

「そ、それはともかく、そろそろ行ってきます。今、あいつを真っ向から相手にできるのは俺だけだと思うんで」

 

イッセー君の言葉にアザゼル先生が頷いた。

 

「頼む。俺達は可能な限り、他の化物共を抑えてみる。だが、あまり長引いては………」

 

「分かっていますよ」

 

イッセー君は僕達に背を向けて歩いていく。

視線を向ける先には今もなお神々を翻弄し、圧倒するアセムの姿。

 

「―――――あいつは、必ず止めます」

 

そう言葉を残した瞬間、イッセー君は僕達の前から姿を消し―――――遠くで凄まじい衝撃が生じた。

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 

土砂が遥か上空まで舞い上がる。

その数秒後には巨大な土の塊が空から落ちてきた。

まるで、岩の雨が降っているようだ。

 

神々と激戦中のアセムを殴り付けて、地面に叩きつけたんだが、直撃とまではいかなかったか………。

アセムの奴、こちらの拳が当たる前に防御魔法陣で塞ぎやがったからな。

まぁ、それでも衝撃までは殺しきなかったようだが。

 

アセムは服をパンパンと払うと、自身の前に立ちはだかる俺を見て、嬉しそうに笑んだ。

 

「また立ち上がってきたね、君は。しかも、少し前よりずっとパワーアップして。さっき、向こうで見えた光はやっぱり君かな?」

 

「まぁな。皆の―――――おっぱいでパワーアップしたのさ!」

 

「ブフッ!」

 

思わず吹き出してしまうアセム。

 

うん、シリアルに持ち込めば簡単に倒せるような気がしてくるよ、こいつ。

だって、爆笑して腹を痛めている時が一番ダメージ喰らってるんだもの。

 

アセムは口許を押さえながら言う。

 

「流石はおっぱいドラゴン………この最終場面でおっぱい。それでこそだと、僕は思うよ! うん、テレビでの放送が待ち遠しいね!」

 

それは困る。

というか、放送できない。

中でやってたこと、ギリギリR-18だもの。

絶対、苦情来るもの。

 

というか、こんな話をしていると『乳の宴』の時の皆の表情や感触が思い出されて………ゲフンゲフン、そろそろ思い出すのは止めよう。

あの光景、今は俺の心の中の引き出しにしまっておこう。

そして、後で存分に思い出そう………!

 

「せ、赤龍帝………」

 

後ろから声をかけられた。

その人は先程までアセムによってズタボロにされた北欧の戦士の一人だ。

俺とアセムの周りには連合――――――オーディンの爺さんを初めとする神々と、それに付き従う戦士達が、俺に視線を集中させている。

 

俺は彼らに向けて言う。

 

「あんた達はアザゼル先生達の方を頼むよ。こいつは俺が相手をするからさ」

 

「なっ………!? 無茶だ! その化物を一人で相手取るなど―――――」

 

剣を握った男性が俺を制止しようとする。

だが、俺はそれを無視して構えを取り、アセムに向かって叫んだ。

 

「来いッ!」

 

ドン、と地を蹴って飛び上がる。

それを追って、アセムが疾風のように姿を消した。

 

「場所を変えるつもりかい? 彼らを巻き込まないために」

 

「さてな。だが、あそこは俺達がやり合うには狭すぎる」

 

「へぇ………」

 

アセムは俺を追いかけながらこちらに手を向けると、凄まじい勢いでエネルギー弾を連発してくる。

一発がトライヘキサの火炎と同等レベル。

少しでも触れれば、殆どのものがこの世に一切の欠片すら残さずに消えてしまうだろう。

それを俺は余裕でかわしながら、空高く、誰もいない開けた場所まで飛ぶ。

そこで停止すると、振り返り、腰に両拳をあて、構えを取った。

 

ドライグ、やれるな?

 

『パワーアップの過程は酷すぎるが、問題ない。やるぞ、イッセー!』

 

刹那、俺の体を虹色に輝く気が押し包む。

俺は錬環勁気功を発動すると、周囲に漂う気を限界まで体内に取り込み、内側で高速循環と圧縮を繰り返す。

高められた力は外へと漏れだし、巨大な炎のように広がっていく。

そして、力のある呪文を唱え始める!

 

「我に宿りし赤き天龍よ、理を越えよ」 

 

『我と歩みし真の勇よ、遥かな高みに至れ』

 

赤い―――――真紅の鎧が展開される。

 

「紅く輝く紅蓮の魂よ」

 

『全てを守りし、高潔なる魂よ』

 

虹の輝きがとてつもない規模で膨れ上がり、一帯に広がっていく。

背中には四対八枚のドラゴンの翼が現れ、大きく羽ばたいた。

 

「『―――――絶望を打ち砕く希望となれ』」

 

全ての宝玉が眩い輝きを放ち、時が経つほどに輝きは更に強くなっていく!

 

「『我ら、極限へと至りし者なりッッ!』」

 

『EEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEXA!!!!!!!!!!』

 

『Dragon Extreme Drive!!!!!!!』

 

強い光と音声が止み、現れるのは真紅の龍。

背に八翼の龍の翼を生やし、虹色の粒子を振り撒く極限の姿。

極限進化『真なる勇へ至りし(ウェルシュドラゴン・フォーム)真紅の赫龍帝(・ヴァリアント・サーフェイス)』。

俺とドライグが到達した最高の領域。

そして、今は皆の力で大幅のパワーアップに成功している。

 

『いっちょいくぜッ!』

 

俺は猛スピードで突っ込んでくるアセムに向かって飛びかかっていく。

互いが間合いに入った瞬間に振り下ろされる拳が二人の顔面を捉え、お互いを後ろへと吹き飛ばしてしまう!

だが、吹っ飛ぶ途中で俺達は強引に姿勢を立て直し、反転して再度、衝突する!

 

『だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!」

 

そのまま、至近距離での壮絶な格闘が始まる。

どちらも、大地を砕き、神を屠るほどの破壊力を秘めた相手の一撃に耐え、すかさず反撃を繰り出していく。

拳と蹴りの応酬の中、アセムの拳が俺の頬にめり込み兜を砕く!

だが、俺も負けじとオーラの乗った拳でアセムの顎を打ち上げた。

 

「………ッ!?」

 

強烈な一撃に意識が一瞬飛びかけたのか、アセムは頭を振って持ち直そうとする。

アセムの腕が一回り大きくなり、巨大化した拳を振り上げた。

 

それは悪手だ。

この高速戦闘の中で僅かにでも動きが遅くなれば、それは大きな隙となる!

 

俺は左手を胸の前で回して、気の渦を作ると、振り下ろされたアセムの拳を気の渦に巻き込み、体の外側へと反らす。

そして、アセムの懐に入った俺は奴の鳩尾に肘撃ちをめり込ませた!

 

「ガッ………!」

 

突き抜ける衝撃に苦悶の表情を浮かべるアセム。

俺はそんなアセムの顔へと回転蹴りをお見舞いする!

 

回転の勢いを上乗せした蹴りによって大地に叩きつけられたアセムを見下ろす俺は、頭上に両手を向け、左右の掌の間に気の塊を作り出す。

バスケットボール大の気の塊は内部で濃密な力が渦巻き、乱回転していく。

俺はそれをアセムめがけて放った!

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

 

放った直後に気の塊は拡散しながら、流星のように降り注いでいく!

雨のように叩きつける気弾は立ち上がろうとしたアセムを打ちのめし、地面に磔にする。

だが、それも僅かな時間だった。

アセムの瞳が怪しく輝いたと思うと、奴を中心にオーラが広がり始めた。

それはドーム状に広がり、バリアーのように俺の気弾を弾いてみせたのだ。

 

『こいつを防ぐというのか!』

 

アセムはバリアーを解くと腰から生える三つの尾を動かす。

尾の先端にある獣の顔、その口が開き―――――凶悪な熱量を持った火炎弾を吐き出した!

今の俺でもギリギリでしか捕らえられないスピードで吐き出された火炎弾。

アセムはそれを連続で、こちらが避ける場所を失うほどの数を射出してくる!

 

やってくれる………!

こんな凶悪すぎる力を空を埋め尽くす数を出してくるなんてよ!

いくらパワーアップしたとはいえ、そう簡単には勝てそうにないな………!

 

アセムの攻撃を相殺しながら舌打ちする俺にドライグが言う。

 

『そもそもトライヘキサを取り込んだ時点で、奴の規格外っぷりが増したのは分かっていたことだ。大体、そんな奴と一対一で真っ向からやりあえる今の俺達が異常なんだ』

 

『それはそうかもしれないな!』

 

俺はそう言いながら、爆炎の中から突貫してくるアセムを迎え撃つ。

俺とアセムは瞬間移動にも等しい高速移動を何度も繰り返し、互いの距離を詰める。

構え、相手の動きの一つ一つを警戒する中、互いの視線が交錯する。

 

すると、アセムが問いかけてきた。

 

「どういうつもりだい?」

 

『なにがだ?』

 

「惚けても無駄だよ。君の拳には殺気が籠っていない。殺意のない攻撃で僕を殺せるとでも思っているのかな?」

 

その問いに俺は―――――。

 

『勘違いすんな。俺は今、おまえを殺すために戦ってるんじゃない。おまえを止めるために、おまえを救うためにここにいる』

 

「僕を………救う?」

 

そこから更に互角の戦いが続く。

壮絶な打ち合いだ。

アセムの蹴りで俺が吹き飛ぶ。

俺の拳でアセムが大きく仰け反った。

そんな殴り合いがほんの数秒の間に何百、何千、何万と行われていく。

 

「はぁッ!」

 

アセムの拳が決まり、俺は吹っ飛ばされる。

それを利用して距離を取った俺は翼を大きく広げた。

 

『Boost Eclipse!!!!』

 

その音声が籠手の宝玉から鳴ると背中に折り畳まれていた二つのキャノン砲が両脇を潜るようにして展開される。

 

『EEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEXA!!!!』

 

高められた力が砲門へと集まり、迫るアセムへと狙いを定めた。

こいつを直撃させれば―――――。

 

しかし、アセムもまた正面に魔法陣を展開していた。

奴の後ろに輪後光が生まれ、魔法陣に描かれている文字が高速で動き始めていた。

 

読まれてたってことか………だが!

 

『Eclipse Blaster!!!!!!!!!!』

 

その音声と共に放たれる砲撃。

それと合わせるように放たれたアセムの魔法砲撃。

異次元の威力を持った二つのエネルギーが二人の間で激突する!

 

完全に拮抗している俺達の砲撃。

本来なら、このまま押し合いになり、相手を消し飛ばすまで続くだろう。

しかし、異変が生じた。

 

ピシッと音を立てて空間に亀裂が入る。

そこから、亀裂は更に広がっていき―――――俺達の周囲の空間が丸ごと砕け散った。

 

 




~あとがきミニストーリー~

イッセー「そういや、おまえが観測した他の異世界にはどんなのがあるんだ?」

アセム「んー、そうだね~。獣耳娘ばかりの世界とかかな」

イッセー「なんだ、ただの楽園じゃないか」

アセム「あとはミルたんばかりいる世界かな」

イッセー「どんな世界だぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

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