ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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75話 伸ばした手の先に

[美羽 side]

 

 

地面に寝かせたお兄ちゃんを中心に大きな魔法陣が展開している。

その魔法陣は真の姿となったイグニスさんが構築したものだけど、ボク達が見てきたどの魔法陣よりも巨大だった。

なにせ―――――この戦場に集う人達、全てがその魔法陣の中にいるのだから。

 

そして、お兄ちゃんの側にはボクとアリスがいて、

 

『これで、二人の疑似神格はイッセーに戻せたわ』

 

イグニスさんがボクとアリスさんの中にあった疑似神格を抜き出し、お兄ちゃんに戻していた。

二人の疑似神格の力を使って、お兄ちゃんの生命の泉の崩壊を止めるらしい。

しかし、それは一時的な補強のようなもの。

数年はもつとのことだが、それ以降はどうなるか分からない。

 

リアスさんがイグニスさんに問う。

 

「あとは仙術で徐々に治していく、それで良いのね?」

 

『ええ。毎日欠かさず、仙術の治療を施していく。そうすれば、いつかは元に戻るわね』

 

つまり、この場で行えることはあくまで応急処置。

日々の治療でお兄ちゃんの生命力を回復させる必要があるということだ。

 

小猫ちゃんが言う。

 

「私が、イッセー先輩を治します。必ず、元の先輩に戻してみせます!」

 

強く宣言する小猫ちゃん。

すると、黒歌さんも前に出て、

 

「私も手伝うにゃん。赤龍帝ちんには助けられてるしね♪」

 

うん、この二人が治療に当たってくれるなら心強い。

それに二人とも家で暮らしているから、治療に関しても都合が良い。

 

ちなみに、生命の泉の補強に疑似神格を使っている間、ボクとアリスさんは神姫化出来なくなる。

もし、使ってしまえば、補強が無くなり、生命の泉は崩壊してしまうことになるからだ。

次に使えるようになるためには、お兄ちゃんが完全回復した時になる。

 

アザゼル先生が近くに立つ、オーディン様に話しかけていた。

 

「すまんな、オーディン。あんた達の生命力まで貰うことになって」

 

頭を下げるアザゼル先生。

 

今、展開されている魔法陣の上に大勢の人達が乗っている理由は、彼らから生命力を分けてもらい、お兄ちゃんに移すためだった。

今回の戦いでお兄ちゃんの生命力は枯渇寸前になっており、例え、疑似神格で補強できたとしても、このままではお兄ちゃんの生命力がもたない。

そこで、この場の全員から命を削らない程度に生命力を分けてもらうことになったんだ。

イグニスさん曰く、全力疾走した直後みたいに疲れるだけだとのこと。

 

オーディン様が髭を擦りながら言う。

 

「なーに、気にすることはないぞ、アザ坊。赤龍帝はこの世界を救った英雄。ワシ達を救ったのだ。それに対して、見殺しなどすれば、末代までの恥となるじゃろう。これくらい容易いわい」

 

北欧の主神だけでなく、他の神々も自身の生命力を分け与えることに同意してくれている。

彼らに付き従う戦士達も同様で………。

 

彼らが頷いてくれた時、たまらなく嬉しくて、涙が出た程だった。

皆がお兄ちゃんを助けるために、ここまでしてくれる。

そう思うだけで胸が一杯になる。

 

ミカエルさんが、しかしと話に入ってくる。

 

「これだけでは彼を救うにはまだ足りないのでしょう? 彼の妹君―――――美羽さんが彼の精神を連れて戻らなければ、彼を真に救えたとは言えない」

 

イグニスさんが頷いた。

 

『生命力については、皆の協力でなんとかなるでしょう。でも、「変革者」としての力を限界以上に使用し、「器」となったイッセーの中には未だに多くの意思が激流のように流れている。イッセーの意思が激流に呑まれて、完全に消えてしまう前に救い出さないと、イッセーは戻ってこない。だからこそ―――――』

 

イグニスさんはボクに視線を向けて、言った。

 

『美羽ちゃんがイッセーの中に潜って、彼の意識を見つけるの。恐らく、彼の意識は消える寸前。それを何とかして呼び覚ますには美羽ちゃん、あなたの声が必要なのよ。誰よりも硬い絆で結ばれたあなたの声が。………とても危険な場所に送り込むことになる。一歩間違えれば、美羽ちゃんの意識も巻き込まれて消えてしまう可能性もあるわ』

 

それを聞いたアリスさんが訊ねる。

 

「私達もイッセーの中に潜るのは無理なのよね?」

 

『私は今展開している術式を発動させながら、美羽ちゃんが呑まれないようにサポートするわ。だけど、これはとても緻密な制御が必要で、私の力をもってしても一人が限界なの』

 

「そう。………本音を言えば、私がイッセーを助けたいんだけど。やっぱり、こういう時は美羽ちゃんの出番なのよね」

 

アリスさんはお兄ちゃんとボクを交互に見た後、深く息を吐いた。

そして、儚げな表情と共に微笑んだ。

 

「悔しいけど、イグニスさんの言う通り。イッセーと美羽ちゃんの絆は誰よりも硬いんだと思う。本来ならお互いを敵として見ても不思議じゃない関係。それでも、二人は愛し合って、すごく信頼してる」

 

「でも、お兄ちゃんはアリスさんや皆だって、大切に思ってるし、信頼してる。家族だと思ってるよ?」

 

「分かってる。私もそう思ってるもの。イッセーもあなたも、私達の大切な家族だって。だから―――――」

 

アリスさんはボクの手を握ると、真っ直ぐに見つめてきた。

 

「私達も美羽ちゃんを信じてる。美羽ちゃんなら、必ずイッセーを連れて戻ってくれる。それが美羽ちゃんの役目なら、私達も私達の役目を果す。あなた達が無事に戻ってこられるように、あなた達を想い続けるわ」

 

そして、アリスさんは最後に言った。

リアスさん達もそれに続いて―――――。

 

「「「二人共、絶対に帰ってきて!」」」

 

「うん………!」

 

確かに受け取った。

皆の言葉に乗せられた想い、確かに心に刻み込んだよ。

 

準備が整ったのか、魔法陣の輝きが強くなる。

魔法陣を操作するイグニスさんが言う。

 

『始めるわ。美羽ちゃん、イッセーの隣に』

 

促されたボクはお兄ちゃんの胸に手を当て、静かに目を閉じる。

意識を集中させると、イグニスさんの魔法で体から意識が抜け出すような感覚となる。

ボクの意識はそのまま、お兄ちゃんの中へ流れていき―――――。

 

『美羽ちゃん、イッセーをお願い』

 

イグニスさんの言葉を最後に、ボクの意識はお兄ちゃんの中へと潜っていった。

 

 

 

 

「これって………!」

 

お兄ちゃんの中に潜り込んだボクを待っていたのは激流だった。

中の世界には赤、黄、緑、青とあらゆる色の光が満たしており、とてつもないスピードで走っている。

この光の数々がお兄ちゃんの中に入ったという世界中の人達の意思なのだろう。

 

実際に体験して初めて分かる。

お兄ちゃんはこんなにも多くの人の意思を受け止めていたんだ。

普通ならこの流れに呑まれて、自我が崩れてもおかしくないだろう。

それに耐えながら、お兄ちゃんはアセムを倒し、世界を救ったんだ。

 

改めてお兄ちゃんの覚悟を感じていると、中に潜ったボクも流れに体をもっていかれそうになって………。

なるほど、イグニスさんが言った通りだ。

自分という存在を強くもっていなければ、瞬く間に呑まれてしまう。

 

く、苦しい………!

意識が飛びそうになる………!

目が開けられない、息が出来ない………!

 

無数の意思に当てられ、もがくボク。

すると、ボクの体を虹の光が覆った。

その光は流れる激流からボクを守ってくれていて………。

そっか、これがイグニスさんのサポートなんだ。

ボクが呑まれないようにするための保護。

これなら―――――。

 

「早く、お兄ちゃんを探さなきゃ」

 

この無数の意思の中でお兄ちゃんを探すのは難しいだろう。

でも、どこかにいる。

それが出来るのはボクしかいない。

皆もそう信じて、ボクを送り出してくれたんだから。

 

ボクは目を閉じて、意識を集中させた。

ボクとお兄ちゃんを繋ぐ絆。

頼りはそれだけだ。

でも、この絆は何よりも強く、ボク達を結びつけているもの。

だから、感じて………ボクの持つ全てでお兄ちゃんを感じるんだ………!

 

「―――――見つけた!」

 

ボクは目を開き、感じた方向へと進む。

イグニスさんのお陰で、この激流の中でも余裕で動けるんだ。

急いで、早くお兄ちゃんを―――――。

 

それから少し進んだ先でようやく、見つけることが出来た。

だけど………。

 

宙にただよう人影。

彼は何もかもが真っ白になっていた。

髪も、肌も、唇も、瞳も何もかも。

色彩が消えた瞳はただただ虚空を見つめるだけで、そこから彼の感情を感じることは出来ない。

 

「お兄………ちゃん?」

 

名前を呼んでみる。

でも、返事が返ってこなかった。

いつもなら、すぐに応えてくれるのに………。

今度はお兄ちゃんの肩に触れて、揺すってみた。

それでも、反応はなかった………。

 

見ると、お兄ちゃんの体がどんどん薄くなってきている。

手足の先から消えていっているのが分かった。

 

お兄ちゃんが………消える………。

そう思うと叫ばずにはいられなかった。

 

「嫌だ………嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 消えないで! ボクはここにいるよ? 起きて、ボクを見てよ………! ねぇ、お兄ちゃん! お兄ちゃんってば!」

 

ボクに向けてくれるあの声も、あの笑顔もない。

ただ虚しくボクの声が空間に響くだけ。

その間にも、お兄ちゃんの消滅は進んでいく。

 

ボクはお兄ちゃんの頭を胸に押し当てるようにして、抱き締めると、ポツリと呟いた。

 

「………ここに来る前に皆から言われたんだ。『二人共、絶対に帰ってきて!』って。皆、待ってるんだよ?」

 

皆が心からお兄ちゃんが帰ってくるのを信じてる、願ってる。

世界を救った勇者を救うために、今度は世界がお兄ちゃんを救おうとしてる。

 

「お父さんとお母さんとね、約束したんだ。皆であの家に帰るって。そこにお兄ちゃんがいなかったら、約束破っちゃうよ………」

 

お父さんもお母さんも本当は戦場になんて送り出したくなかったはずだ。

それでも、ボク達を信じてくれた。

今も家で待ってくれているんだ。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。ボクの将来の夢、覚えてる? お兄ちゃんのお嫁さん。結婚して、子供もいて、皆が笑って過ごせる家庭を作りたいって。それで、お父さんとお母さんに親孝行したいって。でも………お兄ちゃんがいなきゃ、叶わないよ………」

 

そう呟く度に、涙が溢れてきた。

体が震え、抱き締める手に力が入る。

溢れる涙が頬を伝い、お兄ちゃんの顔へと落ちていく。

 

 

 

―――――泣いて、いるのか?

 

 

 

「え………」

 

不意に聞こえた声。

お兄ちゃんの顔を覗いても、その瞳は未だ虚空を見ている。

でも、確かに聞こえた。

今の声は間違いなく、お兄ちゃんの声だった。

 

辺りを見渡していると、ボクとお兄ちゃんを囲むように何かが現れる。

それは―――――映像。

これまでお兄ちゃんが経験してきたこと、これまで歩んできた道程。

生まれた時からの記憶の全てが映像には写されていた。

まだ幼い時、小学生の時、中学生の時、そして―――――アスト・アーデに飛ばされた時。

 

 

 

 

世界の意思とも呼べる力によって異世界に飛ばされた少年。

そこでは多くの出会いがあり………別れがあった。

親友を失い、絶望し、それでも親友との約束を守るために力を欲した。

文字通り命をかけた修行の末、力を手に入れた少年は戦場で戦うようになり―――――やがて、勇者と呼ばれるようになった。

 

映し出される映像はそこから先の光景を流していく。

映像の中には炎に覆われた神殿、そこにいる複数の人影があった。

一人は赤い長羽織を羽織る勇者、一人は黒い戦闘服を着た魔王。

そして、そのすぐ側に魔王の娘がいた。

 

勇者と魔王は激戦を終えた後で、二人とも血塗れだった。

限界を迎えた魔王は床に膝を着くと、勇者に言った。

 

『異世界より現れし勇者よ。私は魔王としてこの戦いを終わらせる義務がある。戦いはおまえの勝ちだ。この首を持っていけ。私はこの命をもって、長きに渡って続く戦いに終止符を打つとしよう』

 

しかし、勇者はそれを認めなかった。

 

『俺はおまえを殺したいんじゃない! 俺は………もう、こんな戦争で誰も死んでほしくもない。あんたにもだ。何百年も前から始まって、その始まりすら何であったのかすら分からなくなっていて、でも憎しみだけは残っていて………止められなくなって………。こんな戦いでもう誰にも傷ついてほしくない………もう、十分だ………』

 

力なく言う勇者。

勇者の言葉に魔王は静かな口調で言う。

 

『そうだな。私もこのような争いで、これ以上の血を流すことなど望んでいない。だがな、勇者よ。「魔王」とは人族にとって恐怖の象徴だ。魔王である私が生き続ける限り、この争いは止まるまい』

 

『おまえが死んだとしても、残った魔族はどうなる? 魔王は魔族にとって希望だろうに』

 

『確かに。だが、おまえがいる。おまえが勇者になってから、この争いは変わり始めた。これまでは人族も魔族も互いに戦えぬ者にまで力を振るう始末だった。だが、おまえはそれを良しとせず、戦う力を持たない魔族を守ってくれた。今の魔族の中にはおまえを信頼する者も多い。おまえは魔族にとっても希望なのだ、赤き勇者よ』

 

魔王は続ける。

 

『おまえやおまえの仲間がいれば、人族と魔族が手を取り合う未来も作れる。私はそう信じている。しかし、だ。魔王という存在はその未来の妨げになる。だからこそ、私は消える必要があるのだ。………もし、おまえに私を想ってくれる気持ちがあるのなら、最後に頼みたいことがある』

 

『頼み………?』

 

勇者の問いかけに魔王は頷く。

そして、近くで二人のやり取りを見ていた娘に視線を移した。

 

『私の娘をおまえに託したい。魔王の血を継ぐ者が存在すれば、それは新たな火種になる。だが、私の娘には罪はない。私の娘を、どうか守ってやってほしい』

 

広がった炎が更に大きくなり、魔王を包み込む。

神殿の柱が崩れ、二人の間に倒れ込んだ。

 

『クソッ! 待ってろ、今すぐこいつを―――――』

 

『必要ない』

 

『なんでだよ! 今ならまだ間に合う!』

 

『これで良いのだ。これが私の望む結果なのだからな』

 

魔王はフッと笑んで、

 

『赤き勇者よ、娘を頼む』

 

それだけ言い残して、魔王は炎の中へと姿を消した。

 

父の覚悟を想い、ただ泣いて、見守るしか出来なかった魔王の娘。

本当なら目の前で死に行く父を追って、自分も死んでしまいたかった。

いや、この時、後を追おうとしたのだ。

 

そんな魔王の娘の前に勇者が現れる。

勇者は彼女に手を差しのべると、一言だけ口を開いた。

 

『俺と………来るか?』

 

無理矢理連れていく訳でもなく、来いと命令する訳でもなく、ただ訊ねる勇者。

魔王の娘が見上げると、そこにあったのは―――――辛い表情で涙を流す勇者の顔だった。

娘である自分よりも父を想い、辛い顔をする彼に、魔王の娘は無意識に手を伸ばしてしまった。

 

勇者は魔王の娘の手を優しく握って―――――。

 

『俺を恨んでくれて構わない。俺を許せないと思うなら、いつかは………。でも、今は………今だけでも良い。俺を信じてくれ。俺が君を必ず守る。この命をかけて』

 

 

 

 

ボクはあの時、救われたんだ。

ただ泣くことしか出来なかったボクに手を差しのべてくれた。

そして、どんな時もボクを守ってくれた。

 

「ねぇ、イッセー。あの日は今も辛い記憶として残ってる。けどね、君と出会えた運命の日だとも思ってるんだ。………って、これ前にも言ったかな?」

 

もう半分以上消えてしまったイッセーの体。

時間もあまりないだろう。

 

「お願い、戻ってきて。君がいない世界をボクは望まない。ボクはあの日の生まれ変わった。魔王シリウスの娘ミュウから兵藤一誠の妹、兵藤美羽として。君がいるからこそ、ボクはボクでいられるんだ」

 

ボクはイッセーの頬に手を添える。

 

「世界の法則ねじまけても守ってやる。君が言った言葉だ。それなら、妹であるボクも―――――世界の法則ねじまけてでも、君を必ず救い出す。君は想いを力に変える変革者。だから、ボクの想いの全てを君に捧げるよ」

 

そして、ボクはイッセーに口づけを交わす。

ボクの全てを注ぎ込むように。

 

しばらく唇を重ねた後、ボクはゆっくりと離れていく。

真っ白のままのイッセーは動く気配がない。

しかし―――――。

 

フワッと一陣の風がイッセーの回りに吹いた。

風がイッセーの髪をかすかに揺らす。

すると―――――。

 

「美………羽………」

 

かすかに、本当に小さな声。

それでも、確かにイッセーの口から発せられたボクの名前。

 

色が戻っていく。

真っ白になっていたイッセーの体に色彩が戻っていく!

消えかけていた体も元に戻り、ついには指が動き始めた!

そうして伸ばした手の先に―――――

 

 

 

 

むにゅん

 

 

 

 

「ひゃぁ!」

 

イッセーがボクのおっぱいを揉んだ。

それはもうガッツリと。

その瞬間、イッセーの目がカッと光り、輝きを取り戻した!

そして―――――。

 

「美羽っぱい!」

 

「どんな意識の取り戻し方!? 『美羽っぱい』ってなに!?」

 

久しぶりにツッコミしたよ!

あと、いつまでボクのおっぱいを揉んでるの!?

なに、両手で揉み揉みしちゃってるの!?

この手のことは寛容だと思ってるけど、このタイミングはないんじゃないかな!

 

「もう! お兄ちゃんのバカァ!」

 

「おおぅ!? 俺、いきなり妹に怒られてる!?」

 

「目覚めて一言目が酷いんだもん! もしかして、おっぱい揉ませたら意識取り戻したりした!?」

 

「それは………分からん。だけど、可能性はある………かも?」

 

「お兄ちゃん、お説教! ここに正座!」

 

「は、はいっ!」

 

慌てて正座するお兄ちゃんにお説教開始。

取り敢えず、今の状況を交えつつ、お兄ちゃんの行ったシリアス破壊行為について長々とお説教をすることに。

 

「大体、お兄ちゃんは―――――で―――――だから―――――」

 

「はい。………うん、すいませんです………」

 

こんな光景、絶対に外の人には見せられないよね。

ボクも口が裂けても言えないよ。

外ではドシリアスな状況だもの。

あのイグニスさんでさえシリアスだもの!

 

一通り、お説教を終えたところで、ボクは息を吐いた。

 

「とにかく、お兄ちゃんがこうして戻ってきてくれて良かったよ」

 

「ありがとな、美羽。助かったよ」

 

「お兄ちゃんがボク達を信じてくれたんだもん。それにしても、本当なら逆だよね」

 

「逆?」

 

お兄ちゃんが聞き返してくると、ボクは唇に触れながら答えた。

 

「目覚めのキス。本当なら眠ってるお姫様に王子様がするんだよ?」

 

「まぁ、確かに。今回は美羽が王子様………いや、そうなると俺がお姫様か。それは勘弁願いたい」

 

「取り敢えず、戻ったらお姉ちゃんになってもらうからね?」

 

「なんでだよ!?」

 

「もしくは五歳くらいのチビッ子に!」

 

「女体化か幼児化、どっちか片方にしてくれませんかね!? どっちも嫌だけどさ!」

 

うん、いつものお兄ちゃんのツッコミだ。

どうやら、完璧に戻ってきたようだ。

 

ふと気づくと、周囲で流れていたあの無数の光が消えていた。

お兄ちゃんの意識が戻ったから、消えたのか、それともイグニスさんがどうにかしてくれたのか。

 

ボクはお兄ちゃんに言う。

 

「そろそろ戻らなきゃ。皆にお兄ちゃんの無事を伝えないと」

 

「皆にも心配かけちまったからな。目が覚めたら、謝らないとだ」

 

「そうだね。でも、目が覚めるのは少し遅くなるかも。お兄ちゃん、極限まで生命力を失ってるから、何日かは気を失ったままになると思う」

 

「そっか。………また会えるのは何日か後になるってことだな?」

 

「そうなるかも。それじゃあ、ボクは戻って………ひゃっ」

 

ボクの言葉を遮るように、突然、お兄ちゃんはボクの腕を掴み、強引に抱き寄せてきた。

何事かと驚いていると、お兄ちゃんは、

 

「美羽成分の吸収だ。今のうちにある程度の補充しようと思って」

 

「………じゃあ、ボクもお兄ちゃん成分を補充する」

 

顔を熱くしながら、お兄ちゃんの背に手を回してギュッと抱き締める。

 

温かい………いつもの感覚。

こうしていると本当に落ち着く。

いつものお兄ちゃんだ。

 

「美羽、大好きだ」

 

「ボクも大好きだよ、お兄ちゃん」

 

そうして、ボク達は本日二度目のキスをするのだった。

 

 

[美羽 side out]

 

 




Q.伸ばした手の先にあったものは?
A.美羽のおっぱい


~あとがきミニストーリー~

イッセー「あのちっぱいのように? 小猫ちゃんのことか………! 小猫ちゃんのことかぁぁぁぁぁぁ!」

小猫「えい」

イッセー「ぶべっ!?」

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