ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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5話 山籠りします!!

高校二年の夏。

 

本来なら今年こそ彼女を作って青春を謳歌するはずだった。

 

松田や元浜と紳士の交流会もするはずだった。

 

 

そりゃあ、もちろん修行もするさ。

 

・・・・でもな、それにも限度がある。

 

 

 

 

ドゴオオオオオオオオン!!

 

 

空で激しい衝突音が鳴り響く。

 

「うおりゃあああ! なんで、俺の修行はいつもこうなんだよ! クソッタレ!」

 

俺の拳とタンニーンのおっさんの巨大な拳が衝突し、その度に衝撃波が生まれる。

 

「神器を使わずにここまでやるか!」

 

 

今、俺は生身で巨大なドラゴンとやりあってます。

 

 

 

え?

 

いつもと同じ?

 

 

 

そんなことはない。

 

なぜなら――――

 

「タンニーンばかりに気を取られ過ぎているぞ、イッセー!」

 

人型のティアが魔法による砲撃を放ってくる。

 

 

はい。

 

俺は生身で二体の魔王クラスを相手にしてます。

 

 

山にこもって数日。

 

着てきたジャージはボロボロ。

 

上半身は完全に裸だし、下も長ズボンだったやつはもう半ズボンと化している。

 

 

「ちぃ! プロモーション『騎士』ッ!」

 

迫る魔力砲撃を避けきれないと判断した俺はすかさず騎士にプロモーションして砲撃を回避する。

 

 

俺の修行の目標は二つ。

 

一つはアザゼル先生から与えられた目標で兵士の駒の特性であるプロモーションに慣れること。

 

 

そして、もう一つは俺が自身に課せた目標。

 

それは『天武(ゼノン)』を今以上に扱えるようになること。

 

天武は現段階での最強形態だけど、いかんせん持続時間が短い。

 

アザゼル先生が言っていた通り、今後、俺よりも強い敵が現れる可能性は十分にある。

 

だから、もっとあの力を扱えるようにならなければいけない。

 

それには俺自身の身体能力をより上げる必要がある。

 

まぁ、そのあたりは普段のティアとの修行と同じだ。

 

 

今回はそれの超ハード版ってところかな。

 

 

 

「これでも、くらえぇぇぇぇええ!!!」

 

両手に巨大な気弾を作り出し、タンニーンのおっさんとティア目掛けて放つ。

 

 

「ふん! 甘いわ!」

 

おっさんはそれを軽々と弾く。

 

これは想定内。

 

俺の狙いはこの次だ。

 

 

「甘いのは、おっさんの方だぜ!」

 

おっさんの意識が気弾に向いた瞬間に俺は背後に回り込む。

 

そして、おっさんの背中に飛び蹴り!

 

「ぐおっ!?」

 

俺の蹴りが効いたのか苦悶の声を上げるおっさん。

 

よっしゃあ!

 

燃やされたジャージの借りは返したぜ!

 

 

すると―――

 

「イッセー、今は一対一ではないぞ?」

 

背後からティアの声が聞こえる。

 

振り返った瞬間

 

 

ドゴオオオオオオオオン!!

 

 

俺は地面に叩きつけられた。

 

 

 

痛ってぇ!

 

ギリギリ硬気功で防げたから良かったものの、まともにくらえばマジでヤバかった。

 

ったく、相変わらずティアは容赦ねぇな!

 

『そもそも、生身で二体の龍王を相手取ることが無茶だ』

 

まぁ、それはそうなんだけど・・・・

 

とりあえずは生身の俺を鍛え直すとするさ。

 

駒の特性も勉強しやすいしな。

 

『それで? 感覚は掴めてきたのか?』

 

まぁ、大体な。

 

一応、昇格した時の力の流れは分かってきたよ。

 

 

この数日、色々試してみて俺に合っている駒は『戦車』と『騎士』だった。

 

この二つの駒の特性は錬環勁気功の身体強化と相性が良いらしく、両方使った場合の効果はかなり大きい。

 

 

『僧侶』の特性は気弾による砲撃をするなら、良いんだけど、俺の戦闘スタイルに合わないんだよなぁ。

 

 

 

「どうした、赤龍帝の小僧? もうギブアップか?」

 

タンニーンのおっさんとティアが宙に浮きながら俺を見下ろしてくる。

 

俺は「よっこらせ」とその場に立ち上がる。

 

「いいや、まだまだ!」

 

さて、休憩は終わりだ。

 

再開といきますか!

 

 

俺は悪魔の翼を広げて、突貫した。

 

 

 

 

 

 

 

それから二時間後、お昼時。

 

 

「おー、やってるな」

 

 

そう言って木々の間からひょっこり顔を見せたのは和服姿のアザゼル先生だった。

 

 

「アザゼル先生じゃないっすか。どうしたんですか?」

 

「ちょっと様子見と差し入れを持ってきたんだよ。ここいらで少し休憩したらどうだ?」

 

先生は周囲を見渡して苦笑いしながら言う。

 

俺も周囲に目を向けてみると、あちこちで大きなクレーターが出来ていたり、山の木が焦げていたり、さながら戦場の様だった。

 

ち、地形が色々変わってる・・・・

 

この間まであそこにあったはずの山が無い。

 

これ・・・・後でグレモリーの人に怒られないかな・・・・?

 

 

俺がそんなことを考えているとティアが言った。

 

「そうだな、もう時間もいい頃だ。そろそろ休憩を入れるとしよう。これ以上はオーバーワークになりかねん」

 

タンニーンのおっさんもそれに頷く。

 

「うむ。赤龍帝の小僧も腹が減っているのではないか? 腹が減っては力は出せんぞ」

 

まぁ、確かに腹は減っている。

 

朝からぶっ通しだったからなぁ。

 

それじゃあ、お言葉に甘えて休むとするか。

 

 

 

 

 

 

 

「うまい! くうぅ~、最近まともな飯食ってなかったからなぁ~」

 

俺はアザゼル先生の差し入れを食べていた。

 

「おまえが食ってるやつがリアス、これが美羽、これがアーシア、そしてこれが朱乃のだ。しっかり食ってやれよ。特にリアスと朱乃は火花散らしながら作ってたからな」

 

「もちろんすよ!」

 

皆が作ってくれたんだ!

 

食うに決まってる!

 

ああ、皆の愛情が伝わってくるぜ!

 

「それにしても、龍王を二人も相手にして未だに五体満足なのは流石だな」

 

先生は俺の肩を叩いて言う。

 

「ふざけんな! 俺が何度、死にかけたことか! タンニーンのおっさんの炎なんかとんでもねぇよ!」

 

「ハハハ! そりゃあ、そうだろう。タンニーンの吐く炎は隕石の衝突に匹敵するからな!」

 

何その情報!?

 

そんなとんでもドラゴンを相手にさせられてたの!?

 

もう、イヤ!

 

帰りたい!

 

 

「いや、我等を相手にして生きている時点でおまえも相当のものだぞ?」

 

おっさんが言う。

 

 

それはあんた達が加減してくれてるからだろ。

 

俺も籠手無しの状態で本気の龍王二人と渡り合う自信はないって。

 

 

「で? プロモーションには慣れたか?」

 

「まぁ、なんとか。どの駒が俺に合っているのかは分かりましたよ。もうしばらくは駒の特性を見ながら修行に打ち込む予定です」

 

「了解だ。そもそもおまえに与えた修行は難しいものじゃない。プロモーションに慣れたら後はおまえの好きなように修行してくれ」

 

 

なんか丸投げされたような気がする・・・・

 

アザゼル先生は俺がつけているトレーニング日誌を見ながら言う。

 

「えらくハードだな。正直、俺もここまでハードなメニューを与えるつもりはなかったんだが・・・・・。龍王を二人もつけたのは禁手込みの修行を考えていたからな。まさか、神器無しでやってるとは思ってなかったぞ」

 

「まぁ、それくらいしないと強くなれませんからね。ヴァーリも次はもっと強くなってそうだし」

 

 

今代の白龍皇、ヴァーリ・ルシファー。

 

この間は『天武』でなんとか勝てた。

 

でも、次はどうなるか分からない。

 

 

と、ここで俺はあることを思い出した。

 

「そういえば、ヴァーリのやつは『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を使えるんですか? 俺との戦いで使おうとしてましたけど・・・・・」

 

覇龍は神器に封じられている二天龍の力を強制的に解放する。

 

一時的に神に匹敵する力を得られる代わりに寿命を大きく削るうえに理性を無くす危険な力だ。

 

 

「ああ、あいつは自身が持つ膨大な魔力を消費することで覇龍を使える。使用時間はその時の具合によっても変わるが、大体十分程度か。・・・・・おまえは使ったことがあるのか?」

 

「いえ、俺は神器の中にある映像記録をドライグに見せてもらっただけで、使ったことはないです。・・・・あの力は絶対に使いたくないですね」

 

 

ドライグに一度見せてもらった覇龍を使った時の記録。

 

それは凄惨なものだった。

 

使用者は敵を倒しても止まらず、見境なく周囲を破壊し尽くす。

 

中には自分が守りたかったものすら自らの手で壊す者もいた。

 

俺は絶対にそんなことはしたくない・・・・。

 

だから覇とは違う、別の力を求めた。

 

 

先生はさらに尋ねてきた。

 

「おまえがヴァーリとの戦いで使ったあの力。あれはなんだ? 俺は長年、神器の研究を行ってきた。歴代の赤龍帝と白龍皇も何人か見てきた。だがな、誰一人としてあんな力を解放したやつはいなかったぞ。ヴァーリでさえな」

 

 

あー、やっぱり聞いてきたか。

 

先生ならいつかは聞いてくると思っていたけど・・・・

 

どう答えようか。

 

俺が悩んでいると左手の甲に宝玉が現れる。

 

『あの力は相棒が辿り着いた禁手の先にある力だ』

 

ドライグの言葉を聞いた先生は首を捻る。

 

「だが、禁手は神器の究極のはずだ。まぁ、後天的に亜種の禁手に至る者もいるが、そういう感じではなかった」

 

『だろうな。相棒の禁手は通常のもので間違いない。―――禁手の第二階層。これは相棒が更なる進化を求め、神器がそれに答えた結果に生まれたものだ。当然、生半可な想いではこの領域に立つことはできん』

 

「・・・・なるほど。神器、神滅具にはまだ俺の知らない不思議があるというわけか・・・・・いや、だが・・・・・」

 

何やらぶつぶつと呟く先生。

 

それだけ、俺の現象が珍しいと言うことだろうか?

 

まぁ、ドライグも最初は驚いていたしな。

 

 

「今代の赤と白はどちらも規格外だな。白は覇龍を扱い、赤は禁手の更に上の領域に立つか・・・・」

 

タンニーンのおっさんまで何やら呟き始めたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「話は変わるんだが・・・・おまえ、朱乃のことはどう思う?」

 

「良い先輩だと思います」

 

「そうじゃない。女としてだ」

 

「魅力的です! 彼女にしたい一人です!」

 

Sモードの時が少し怖いけど、普段の朱乃さんはやさしいし、時折見せる年頃の女の子なところも良いね!

 

俺の答えに先生は「うんうん」とどこか安堵しているようだった。

 

「良い答えだ。俺はなダチの代わりにあいつを見守らなければならないんだ」

 

「バラキエルさんのことですか?」

 

「そうだ。バラキエルのやつはシェムハザと同じ大昔からの仲間でな。若い頃は一緒にバカをやったもんだ。・・・・気づけば、俺の周りは妻子持ちになってたけどな。シェムハザは悪魔の嫁がいるし、バラキエルは朱乃がいる。はぁ・・・・」

 

深くため息をつく先生。

 

もしかして、独身なのを気にしてる?

 

「先生は結婚しないんですか?」

 

「・・・・俺は趣味に生きるからいいんだよ。それに女なんていくらでもいる」

 

遠くを見て答える先生。

 

婚期についてはタブーらしい。

 

「そういうわけで、俺は朱乃のことが気になるのさ。あの親子にとっては余計なお世話だろうがな」

 

「先生って世話焼きですね」

 

「暇なだけだ。おかげで白龍皇も育てちまったがな」

 

 

そんなことはないな。

 

なんだかんだで、お節介焼きなんだろう。

 

俺達のこともヴァーリのことも、全部世話を焼いてしまうんだろうな。

 

「とにかく、朱乃のこと、おまえにも任せる」

 

「任せるって・・・・」

 

 

どう任せるんだよ?

 

戦闘の時に身を守れってことか?

 

まぁ、その時は体張って守るけどさ。

 

「おまえはバカだが、悪い男じゃない。分け隔てなく接してくれそうだ」

 

「・・・・先生、話が見えてこないんですけど」

 

「ハハハハ、それでいいのさ。おまえならなんとかできる、俺はそう思ってる」

 

「? よく分からないけど、まぁ、朱乃さんのことは俺が守りますよ。というより、仲間は体張って俺が守ります」

 

「よし、おまえがそう言ってくれるなら、俺も少しは安心できるものさ。・・・・・それよりも今は小猫のことか」

 

「小猫ちゃん? 小猫ちゃんがどうかしたんですか?」

 

俺の問いに先生はため息をつく。

 

どうしたんだ?

 

「どうにも、焦っているみたいでな・・・・。俺が与えたメニューを過剰に取り組んでな。今朝、倒れた。完全なオーバーワークだ」

 

「倒れた!?」

 

後輩の悪い知らせに俺は驚いた。

 

しかも、オーバーワークって・・・・

 

「ケガはアーシアの治療でどうにかなるが、体力だけはそうはいかん。今はベッドに寝かせてある。しばらくは絶対安静だ」

 

そこまで酷いのか・・・・

 

いや、待てよ・・・・

 

俺は思い付いたことを先生に言う。

 

「俺が小猫ちゃんの治療をします」

 

「おまえがか?」

 

「ええ。俺が小猫ちゃんの気を整えて治癒能力を上げてやれば、かなりマシになるはずです」

 

「なるほど・・・・。そういえば、おまえは仙術に似た技を使うんだったな。・・・・・おまえを一度連れ戻すように言われてるから調度良いか」

 

「連れ戻す? 誰に言われたんですか? 部長?」

 

「―――の母上殿だ」

 

 

まさかのヴェネラナさんからの呼び出しだった。

 

 


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