ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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2話 英雄派の影

町にある廃工場。

 

そこに俺達グレモリー眷属、イリナ、レイナは集まっていた。

 

すでに日は落ちていて、空は暗くなりつつある。

 

薄暗い工場内に多数の気配。

更に言うなら、殺意と敵意が俺達に向けて発せられている。

 

「――――グレモリー眷属か。嗅ぎ付けるのが早い」

 

暗がりから現れたのは黒いコートを着た男性。

男の周囲からは人型の黒い異形の存在が複数。

十や二十じゃない。

この狭い工場内に黒い人型モンスターが百近くいる。

 

部長が一歩前に出る。

 

「『禍の団(カオス・ブリゲード)』―――英雄派ね? ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。三大勢力よりこの地を任されている上級悪魔よ」

 

部長の挨拶を聞いて、男が薄く笑みを浮かべる。

 

「ああ、存じ上げておりますとも。魔王の妹君。我々の目的は貴様たち悪魔を浄化し、町を救うことだからな」

 

敵意剥き出しの発言だな。

 

そう、目の前にいる奴らは英雄派とかいう『禍の団』の構成員。

ここのところ、この英雄派が俺達に襲撃してくる。

アザゼル先生や部長が言うには各勢力の重要拠点も英雄派の襲撃を頻繁に受けているとのことだ。

 

英雄派は英雄や勇者の末裔、神器所有者で構成されているためか、俺達の相手は人間が多い。

 

ちなみにだが、俺達グレモリーとイリナ、レイナがオフェンスに回り、シトリーと美羽が町の防衛に当たっている。

 

 

男の横から人影が二つ。

二人とも人間だ。

サングラスをした男性と中国の民族衣装らしきものを着た男性。

それからもう一人、離れたところから狙っているやつがいるな。

 

あの三人の周囲にいる黒いやつは神器か何かで産み出されたものだろう。

英雄派ではあれを兵隊として使っているようだ。

ちなみに強さは一般的な下級悪魔レベルでは相手にならない。

まぁ、俺達の実力は中級から上級悪魔レベルだから全然いけるけどね。

 

『(何を言う。相棒が本気を出せば上級どころか魔王クラスではないか。そもそも、このレベルの相手なら相棒だけで瞬殺だろう?)』

 

いやー、俺も最初は一人で十分って言ったんだけどね。

皆、心配性でさ。

俺の腕のことを気にしてくれているんだ。

 

まぁ、皆からは無茶をするなって言われてるし、しばらくはサポートに徹するさ。

 

というわけで、今のフォーメーションはこうだ。

 

前衛は木場とゼノヴィア、そして小猫ちゃん。

今みたいに狭い空間ではデュランダルは威力が大きすぎるから、ゼノヴィアはアスカロンを使って戦う。

 

今思えば、あのアスカロン、俺がもらったのにほとんどゼノヴィアが使ってるな・・・・・・

まぁ、良いけど。

 

中衛は俺、イリナ、ギャスパーの三人だ。

俺達は前衛の三人が討ち漏らした敵を打倒するのが役割だ。

ギャスパーは邪眼を使って前衛の三人のサポートするのが役目。

 

後衛は部長、朱乃さん、アーシア、レイナ。

部長は司令塔をしつつの支援攻撃をする。

朱乃さんも魔力で後方から支援。

アーシアはダメージを受けた味方に回復のオーラを飛ばすのが役割だ。

そして、レイナの役割だけど彼女は後衛、特に回復要員であるアーシアの護衛と援護攻撃だ。

レイナの武器は手に持った二丁銃で、それを使って戦闘を行うらしい。

ちなみにその二丁銃はアザゼル先生お手製とのこと。

 

これが俺達、オカルト研究部のフォーメーションだ。

まぁ、万全の状態だったら俺も前衛に回るんだけどね。

 

敵が俺達のフォーメーションを確認すると、黒いコートを着た男性が手から白い炎を発現させた。

 

「また、神器所有者か・・・・・」

 

木場が呟く。

 

「困ったものね。ここのところ、神器所有者とばかりと戦っているわ」

 

部長も嘆息する。

 

 

炎を揺らす男がこちらへ攻撃を仕掛けようとした瞬間――――

 

ヒュッ!

 

 

「ガッ・・・・・・・な、何・・・・・」

 

男は鮮血を撒き散らして、その場に倒れる。

 

「悪いね。速攻で決めさせてもらうよ」

 

木場が聖魔剣を振るうと、刀身についていた血が飛び散った。

 

そう、開幕と同時に木場が男を速攻で斬り伏せたんだ。

さっきの木場は今までで一番速かった。

 

木場は開始直前まで、脚に魔力を溜めているようだった。

そして、開始と同時に溜めていた魔力を一気に解放した。

 

なるほど・・・・・。

俺や小猫ちゃんが気や魔力を拳に纏わせて威力を上げるように、木場は脚に魔力を溜めることで速力を一気に上げた、ということか。

 

やるじゃねぇか、木場のやつ。

 

 

「「・・・・・・・・っ!!」」

 

いきなり仲間がやられたことで相手もかなり動揺してるな。

だけど、すぐに冷静になったのか、すぐに後ろに下がり、その代わりに異形の戦闘員が前に出てきた。

 

構成員の一人が叫ぶ。

 

「赤龍帝を狙え! やつは片腕が使えない状態だ! やつが回復したら後々の脅威になるぞ!」

 

その言葉に異形の戦闘員が俺めがけて走ってくる。

あまりに数が多いため木場達前衛組も突破を許してしまう。

 

つーか、ターゲットは俺ですか。

どうやら、俺が万全じゃないことは相手も知っているらしい。

 

『まぁ、ある意味良い判断だな。相棒が全快したら相手にとっては非常にやっかいだろうからな。だが、甘い』

 

そうだな。

 

いくら片腕が使えなくても、この程度のやつらに負ける俺じゃない!

 

「おらぁ!!」

 

俺は突っ込んできた戦闘員の顔面目掛けて回し蹴りを放つ!

 

 

ドガアァァァァァン!!

 

 

蹴りが直撃した戦闘員は勢いよく飛ばされ、工場の壁に激突した!

 

あー! 壁に大穴が空いた!

 

やり過ぎたか!?

 

「イッセー、もう少し加減出来ないかしら?」

 

部長が半目で言ってきた!

 

すいません、部長!

 

『というより、サポートに徹するんじゃなかったのか?』

 

仕方がないだろ!

 

向こうから狙ってくるんだからよ!

 

おっと、またきたぞ。

 

「もう! イッセー君は無理しないの!」

 

「僕達もいるですぅ!」

 

俺へと向かってきた戦闘員はギャスパーによって停止させられ、その隙にイリナが光の槍で倒していく。

 

うん、最近の戦闘で二人のコンビネーションが良くなってきてるな!

 

ギャスパーも出会った頃と比べるとかなり神器を使えるようになってきてる!

よくやったぞ、ギャスパー!

 

 

イリナが光の槍を投擲する!

それは真っ直ぐに突き進み、サングラスをかけた男を捉えた――――かのように見えた。

 

 

ズヌンッ

 

 

光の槍が消えた!?

相手に当たる瞬間に工場内の影が伸びてイリナの攻撃を飲み込んだ。

あれは影を操る能力?

あの男の神器か。

 

神速で斬り込む木場。

聖魔剣が男性に降りかかるが、影が素早く動き木場の剣を飲み込んだ!

 

 

ビュッ

 

 

木場自身の影から聖魔剣の刀身が勢いよく飛び出す!

木場は瞬時に地面を蹴って、回避することに成功した。

 

「影で飲み込んだものを任意の影へ転移できる能力・・・・・。厄介な部類の神器だ」

 

木場が目を細めながら呟く。

 

そうなると、さっきのイリナの槍は!

 

 

ブオンッ

 

 

空気が震える音と共に建物の影からイリナの槍が飛び出した!

 

狙いはアーシアか!

 

「私に任せて!」

 

レイナがアーシアを庇うように立つと手に持った銃を槍に向けて引き金を引いた。

 

 

ガンッ!

 

 

銃口から光の弾丸が飛び出し、イリナの槍を破壊した!

 

「アーシアはやらせないわ!」

 

すげぇなあの銃。

イリナの槍をあっさりと破壊したぞ。

 

レイナ曰く、あの銃はレイナの光力を圧縮して放つことが出来るらしく、近距離戦よりも中距離~遠距離戦が得意なレイナの戦闘スタイルに合わせた武器となっているらしい。

 

うーん、流石はアザゼル先生のお手製だな!

 

 

アーシアは戦闘において重要な回復要員だ。

やられるわけにはいかない。

 

レイナが守ってくれているお陰で俺達は目の前の戦闘に集中できるからとても助かっている。

 

 

ビュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 

 

俺の視界に青く光輝くものが映り込む。

 

民族衣装の男が光で出来ている弓と矢で俺達を狙っていた!

 

光は悪魔にとって猛毒。

俺達のうち、イリナとレイナ以外のメンバーがくらえば大ダメージは免れない。 

 

ここは、俺が―――

 

と、思っていると聖なる斬撃が男に向かって放たれた!

 

「ぐあぁ!!」

 

聖なる斬撃は男に直撃し、男は矢を放つことなく、壁に叩きつけられ気絶した。

 

「ふぅ、なんとか威力は抑えられたな」

 

息を吐く、ゼノヴィア。

 

そう、今の攻撃はゼノヴィアがアスカロンを使って放ったものだ。

工場を破壊しないように威力を抑えたみたいだけど、相手を倒すには十分すぎる威力があったようだ。

 

後は―――

 

「レイナ、あそこを狙い打て! 俺達を狙っているやつがいるぞ!」

 

俺は工場の外を指差して、レイナに伝える。

 

レイナもそれに瞬時に反応して銃を構えた。

 

「分かったわ! 逃がさないわよ!」

 

レイナの銃が光の弾丸を撃ち出す!

 

すると―――

 

「ぎゃっ!」

 

向こうの方から敵の声が聞こえた。

かなりの距離があるみたいだけど命中したらしい。

それに、気の位置が動く様子がないところを見ると、良いところに命中したようだ。

 

よし、これで残るはサングラスの男と戦闘員だけだ!

 

ただ、あいつの影を操る能力は厄介だな。

さて、どうしたものか・・・・・・

 

俺が考えていると部長が指示を送ってくれた。

 

「前衛組、指示を出すわ。祐斗は影使いを狙って! 小猫とゼノヴィアは雑魚の方を蹴散らして祐斗の活路を開いて! 中衛、後衛は全力でサポート! 一気に片をつけるわよ!」

 

『了解!』

 

全員が応じ、一気に動き出す!

 

ゼノヴィアと小猫ちゃんが先行して、戦闘員を蹴散らしていく!

ゼノヴィアはアスカロンで凪ぎ払い、小猫ちゃんは気を纏った拳を的確にぶつけていく!

 

中衛組の俺やイリナだけでなく部長や朱乃さん、レイナも後方からの支援攻撃で敵を殲滅していく!

 

いくら数が多くても、このメンバーなら大概の敵は倒せそうだ!

 

戦闘員が霧散し、その隙に木場が影使いに迫る!

そして、木場は影使いへと斬りかかる!

 

 

ドウンッ!

 

 

再び吸い込まれる聖魔剣の刀身!

この後、どこかの影から聖魔剣が飛び出してくるはずだ!

 

 

ビュッ!

 

 

飛び出してきたのは戦闘員に対して蹴りを放っていた俺の影からだ!

 

「イッセー! それをかわして、影へ気弾を撃ち出して!」

 

了解!

 

俺は最小限の動きで、聖魔剣の刀身を避ける!

そして、影へ向かって気弾を放った!

 

 

ドンッ! ドウンッ!

 

 

やっぱり、俺の気弾は吸い込まれていく!

 

・・・・・なるほど。

そういうことですか、部長!

 

「祐斗! 影で繋がってるから、イッセーの気弾がそちらに来るわ! 影から出てくる前に影の中で気弾を両断してちょうだい!」

 

「了解です!」

 

部長の指示に従い、木場が影の中で聖魔剣を振るった!

 

 

ドオオオオオオオオンッ!

 

 

「ぐわっ!」

 

 

爆発音と悲鳴が工場内に響く!

見れば影使いがボロボロになって吹っ飛ばされていた!

 

「やはりね。攻撃そのものは受け流すことは出来ても、弾けた威力までは受け流すことは出来ない。予想が当たってくれて良かったわ」

 

部長が不敵な笑みを浮かべる。

 

流石は部長、良い着眼点だ。

 

さてさて、戦闘員は全て倒したし、残っていた影使いも倒した。

 

「部長、工場の外から狙っていた奴も連れてきましょうか?」

 

「そうね。それはゼノヴィアと小猫に任せるとするわ。二人ともお願いできるかしら」

 

部長のお願いにゼノヴィアと小猫ちゃんが頷く。

 

「了解だ。小猫、行くぞ」

 

「・・・・・はい、ゼノヴィア先輩」

 

ゼノヴィアが猫耳モードの小猫ちゃんを連れて工場から出ていく。

 

敵の気配もないし、とりあえずは戦闘終了だ。

あー、終わったー。

俺は腰を伸ばして軽いストレッチをする。

 

すると――――

 

「・・・・・・ぬおおおおおおおおっ!!!」

 

先程倒した影使いがふらふらの状態で立ち上がり、絶叫した。

 

・・・・・・おいおい、さっきのでかなりのダメージを受けたはずなのによく立てたな。

 

俺がそんなことを考えていると、男の体に黒いモヤモヤが包んでいく。

更に影が広がり、工場内を包み込もうとしていた。

 

なんだ・・・・・これは・・・・・・?

 

さっきまでとは違う。

明らかに力が上がっている。

何が起きたんだ・・・・・・・?

 

 

カッ!

 

 

影使いの足元に光が走り、何かの魔法陣が展開される。

見たことがない魔法陣だ。

グレモリー家で習ったもののどれとも一致しない紋様だった。

アザゼル先生やレイナが使っている堕天使のものでもない。

 

魔法陣の光に影使いは包まれていき、一瞬の閃光のあと、影使いはこの場から消えた。

 

 

 

 

 

 

「皆、お疲れさま。誰もケガしなくて良かったよ」

 

影使いが消えた後、俺達はその場に残された神器所有者を捕縛して冥界に送った。

 

そんでもって、今はオカ研の部室でくつろいでいるところだ。

 

木場が言う。

 

「そうだね。イッセー君の方は大丈夫なのかい?」

 

「おう。俺もいたって無傷だよ。まぁ、あの程度なら腕を使わなくても倒せるさ」

 

「ハハハ、流石だね」

 

「そう言う木場の方こそ。開幕早々に倒したじゃねぇか。あれには驚いたぞ」

 

「あぁ、アレね。イッセー君や小猫ちゃんの戦い方を参考にさせてもらったよ。僕は普段は魔力をあまり使わないからね。結構練習してたんだけど、今日はその成果を出せたよ」

 

へぇ。

 

木場のやつ、いつの間にそんなことしてたんだよ。

 

もし、木場がそれを完璧にマスターしたら、かなりのスピード強化になるな。

 

木場はグレモリー眷属の中でも成長が早い。

このままいけば、数年後くらいには俺も抜かれてるかも・・・・・・

 

うーん、俺ももっと修行しないと・・・・・・

イケメンには負けたくない。

 

『(負けたくない理由がそこか)』

 

そうだよ。

言っておくがな、これはかなり重要なことだぞ、ドライグ。

イケメンのうえに強いなんて、反則過ぎるだろ。

顔ではこいつには勝てそうにないから、せめて強さだけは勝っておきたい!

 

『(はぁ・・・・・・。相棒らしいというかなんというか・・・・・)』

 

おーい、そんなに気落ちするなよ。

俺の性格なんてずっと前から分かってるだろ?

 

まぁ、なんにしても強くなっておいて損はないだろ。

 

「それにしても、厄介なことになってきたね」

 

嘆息しながら木場が言う。

 

「どういうことだ、木場」

 

「刺客の神器所有者に特殊技を有する者が出てきたってことさ。今までは向こうも力押しで来ていたけど、テクニックタイプに秀でる者が現れてきた」

 

あー、木場が言いたいことが分かった。

 

「つまり、向こうは俺達について分析してきているってことか?」

 

「そう。僕達は基本的にパワータイプが多い。まぁ、僕やイッセー君のようにテクニックを有するメンバーもいるけど、メンバーのほとんどが強力な力を有している」

 

確かに、俺は赤龍帝だし、木場は聖魔剣を持ってる。

他にも部長の滅びの魔力や朱乃さんの雷光、ゼノヴィアのデュランダルなんかも攻撃力が非常に高い。

 

木場は続ける。

 

「もしかしたら、相手は気づいたんだろうね。直接防御出来ないなら、別の形でいなせば良いと」

 

相手を研究するタイプの敵か・・・・・。

英雄派ってのは随分と厄介なやつらの集まりらしいな。

 

「それにしても変よね」

 

イリナの言葉に全員の視線が集まる。

 

「どういうことだ?」

 

ゼノヴィアがイリナに尋ねる。

 

「私達と英雄派が戦ったのって一度や二度ではないでしょう? それこそ、本気で私たちを倒したいのなら、最初の二、三回ぐらいで戦術プランを立ててくると思うの。向こうにだって戦術家はいるだろうし。それで四度目辺りで決戦をしかけてくるでしょう。でも、四度目、五度目でもそれは変わらなかった。ずいぶん注意深いなーと感じたけれど……。なんていうかな、彼らのボス的な存在が何かの実験をしているんじゃないかしら?」

 

「実験?私たちの?」

 

朱乃さんの問いにイリナは首を捻った。

 

「どちらかというと、彼ら―――神器所有者の実験をしているような気がするの。・・・・・・まぁ、ただの勘だから、間違っているかもしれないけど・・・・・・・。この町以外にも他の勢力のところへ神器所有者を送り込んでいるのだから、強力な能力を持つ者が多いところにわざとしかけているんじゃないかしら」

 

イリナの言葉に皆黙り混んでしまった。

 

なるほど・・・・・・そう言う考えもあるか。

新鮮な意見だな。

 

俺は単純に各勢力の攻略としてどんどん刺客を送って、俺達の勢力の情勢を不安定にするのが目的だと思ってた。

自分の勢力が不安定になれば、こんな状況下でも我が身かわいさに足並みを揃えてこない奴も出てくるだろうし・・・・・・。

 

・・・・・神器所有者を俺達にぶつけるのは、裏に何かの思惑があるってことか。

 

ん?

 

待てよ、神器といえば――――

 

「・・・・・・劇的な変化」

 

小猫ちゃんがぼそりと呟き、全員の顔が強ばった。

 

「英雄派は俺達に神器所有者をぶつけて禁手に至らせるつもりだってことか・・・・・」

 

「そうだね。・・・・・あの影使いに起きた変化。似ているような気がするよ」

 

俺は木場の意見に頷く。

 

あの影使いが見せた変化。

あれは禁手化だってことか・・・・・・・。

 

「それが本当ならえげつないこと考えやがるな。英雄派ってのは」

 

俺の意見にイリナも続く。

 

「全くよ。何十人、何百人死んでも、一人が禁手に至ればいいって感じよね・・・・・・。最低な発想だわ」

 

部長が肩をすくめる。

 

「わからないことだらけね。後日アザゼルに問いましょう。私達だけでもこれだけの意見が出るのだから、あちらも何かしらの思惑は感じ取っていると思うし。・・・・・そろそろ帰りましょうか」

 

そうだな。

 

アザゼル先生なら俺達よりももっと深いところまで考えてそうだし。

 

そういうわけで、今日は解散となった。

 

俺は朱乃さんがいれてくれたお茶を飲んでから帰り支度を始めた。

皆も同様に帰り支度をしていくなか、朱乃さんが鼻歌を歌っていた。

すごく嬉しそうだけど、何か良いことでもあったのかな?

 

「あら、朱乃。随分とご機嫌ね。S的な楽しみでもできたの?」

 

部長の問いに朱乃さんは満面の笑みで答える。

 

「いえ、そうではないの。うふふ。明日ですもの。自然と笑みがこぼれてしまいますわ。明日はイッセー君とデート。やっとその日がやって来ましたわ」

 

あー、それか。

 

ディオドラの眷属との戦闘の時に小猫ちゃんのアドバイスで俺が言ったやつだ。

 

うん、俺もしっかり覚えてるぜ!

俺だって明日が楽しみさ!

初め、朱乃さんは俺の腕のことを気にしていたようだけど、俺は即OKした。

 

だって朱乃さんとのデートだぜ?

腕が無くなっても行くって!

 

朱乃さんは俺の腕に抱きつくとニッコリと笑う。

 

「イッセー君、明日はよろしくお願いしますわ♪」

 

その瞬間、女子部員から恐い視線が!

 

そんな目で見ないで!

 

「ええ、俺の方こそよろしくお願いします!」

 

皆の視線を振り払い、俺は笑みを浮かべてそう答えたのだった。

 

 

 


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