ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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思ったより早く書けました!




9話 模擬戦します!!

「まさか、こんなところで君と再戦出来るなんてね」

 

俺の目の前でヴァーリが不敵に笑みを浮かべる。

本当に嬉しそうだな、こいつ。

 

俺とヴァーリは先生に頼んで作ってもらった空間にいた。

俺達が立っているのは学園のグラウンドより少し広いくらいの荒れ地。

ここはレーティングゲームのフィールドを参考にして作った特別な空間だ。

 

俺とヴァーリがここに来たのは模擬戦をするため。

お互いの今の実力を計って、ロキとの戦いに備えるのが目的。

当日は俺とヴァーリの二人でロキの相手をすることになっている。

そのためにも今の俺達がどこまでやれるのかを知っておく必要がある。

 

「再戦って・・・・・これは軽い手合わせだぞ? あまり無茶するとロキとやりあう前にダウンしちまうからな」

 

「そうは言っても手を抜くつもりは無いのだろう?」

 

「当たり前だ。そうじゃないとやる意味がない」

 

今回の模擬戦にはルールがある。

それは通常の禁手で戦うことだ。

俺の禁手の第二階層もヴァーリの覇龍も使ってはいけない。

 

ヴァーリの覇龍は魔力を消費することで少しの間なら使えるみたいだけど、消耗が大きすぎる。

俺の第二階層も同様。

ロキとの戦いが近いのにこんなところで消耗するわけにはいかない。

 

ヴァーリも全力の俺と戦えないことを残念がっていたけど、そこは了承してくれている。

 

あとは制限時間があるってことくらいか。

一応、十分を予定していて、時間が来ればブザーが鳴るらしい。

 

ちなみにだけど、このフィールドの端の方にはちょっとしたスペースが設けられていて、そこにオカ研メンバーと生徒会メンバー(匙だけはグリゴリにいる)、アザゼル先生、バラキエルさん、そしてオーディンの爺さんとロスヴァイセさんまでいた。

皆、二天龍である俺達の模擬戦に興味津々らしい。

 

本来のゲームフィールドなら観戦席みたいな部屋があって、そこで見学するんだけど即席で作ったためかこのフィールドにはそんなものは無い。

なので、皆は巻き込まれないよう特殊な結界に覆われている。

 

 

朱乃さんは先程からバラキエルさんの方をチラッと見てるけど・・・・・。

流石にまだ言い出せないみたいだ。

 

つーか、アザゼル先生とオーディンの爺さん、何か食ってるな。

あれはポップコーンか?

なんでここで食うんだ!?

 

 

「・・・・なんか、あの人達ふざけてないか?」

 

俺がそう呟くとヴァーリは苦笑する。

 

「アザゼルは昔からあんな感じだよ。気にしない方がいい」

 

うん、そうだね。

これ以上触れるのはやめよう。

 

「それじゃあ、始めるか」

 

俺のその一言でこの空間の空気が変わる。

 

俺とヴァーリがそれぞれ赤と白のオーラを纏い、それはどんどん膨らんできている。

 

俺達のオーラが接触したとき―――――

 

 

「「禁手化(バランス・ブレイク)!!!!」」

 

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』

 

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!』

 

一瞬、赤と白の光がこのフィールドを照らす。

 

光が止み、俺の前にいるのは白い全身鎧を装着したヴァーリの姿。

 

・・・・・・以前戦ったときよりも明らかに強くなってるな。

静かだけど濃密なオーラだ。

 

やっぱり、こいつも相当な修行を積んできたのかね?

 

木場もそうだけど天才が努力すると本当に伸びるよな。

 

うーん、羨ましい限りだ。

俺なんて地道に修行をこなしていくしかないからな。

 

「凄いオーラじゃないか。シャルバ達との一戦から分かっていたが、君もかなり腕を上げたようだ」

 

「まぁな。冥界合宿の時は龍王二人を相手にスパーリングしてたし」

 

今思い出しても、あれはキツかった・・・・・。

だって、ティアもタンニーンのおっさんも本気でかかってくるんだぜ?

何度死にそうになったか・・・・・。

あれで強くなれなかったら、マジで泣いてるところだぞ。

 

「フッ、やはり君は面白い。それでは、その成果を俺にも味あわせてもらうとしよう!」

 

「いいぜ。そのための模擬戦だからな!」

 

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

 

俺は一気に倍増させて背中のブースターからオーラを噴出させる。

 

とりあえず、いつものスタイルでいってみるか!

 

「うおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

気を纏わせた左ストレートを放つ!

 

「まずは格闘戦か! 面白い!」

 

嬉嬉とした声で言いながら、拳を避けるヴァーリ。

本当に楽しそうだな・・・・

 

そんなことを考えながら俺達はいきなりの格闘戦に突入する。

こっちは右腕が使えない分不利だけど、その分、錬環勁気功で気を体中に循環させて手数を増やす!

気を纏ってる分、威力も増してるからまともにくらえばヴァーリでもダメージは避けられない!

 

俺達の拳と蹴りが衝突するたびにこのフィールドを揺らしていく。

 

以前よりも攻撃の一発一発が重い!

しかも鋭くなってやがる!

 

だけど、俺も負けてねぇ!

 

俺が拳を放つと、ヴァーリはそれを受け流し俺の右側に蹴りを放ってきた。

こういうところで右腕が動かないことの辛さが出てくる。

右側をガードすることができないからだ。

当然、避けなければならないんだけど、その分俺の手数が減ることになる。

 

「攻撃も重く鋭い。だが、片腕が動かない状態で突っ込んでくるのはどうかと思うぞ?」

 

ヴァーリも蹴りを放ちながらそんなことを言ってくる。

 

まぁ、こいつの言う通りだ。

 

明らかに不利な状態で真正面から殴り合う。

正直言って、良い行動とは言えない。

 

 

だけど――――

 

 

俺はあえて蹴りを受ける。

受けた衝撃を利用して体を反対方向に回転させ、オーバーヘッドの要領でヴァーリの顔面目掛けて蹴りを振り下ろした。

 

「なっ!?」

 

ヴァーリは俺の奇襲に驚きながらも、顔の前で腕をクロスさせて俺の蹴りを防いでいた。

俺に蹴り飛ばされた衝撃でヴァーリは大きく後退する。

籠手の部分が破壊され、僅かながら腕が赤くなってるのが見えた。

 

だけど、大したダメージは与えられてないな・・・・・

 

「今のを防ぐとか、どんな反射神経してんだよ・・・・」

 

俺はヴァーリの身体能力に驚きながらも少し呆れる。

 

今のは攻撃をあえて受けることで相手の油断を誘うカウンターに近い技だ。

更に言うなら、こちらは受けた瞬間に反対方向に体をずらして威力を低減させるので見た目ほどダメージは受けていない。

 

ヴァーリも俺が受けた瞬間は僅かに気の緩みがあったんだけど・・・・

流石にそう甘くはないか。

 

弾けるような音と共に兜に亀裂が入った。

額に熱いものが流れるのが分かった。

 

受け流したはずなのにこれか。

直撃したらヤバいな。

 

「なるほど、格闘技術では君に分があるようだ。では砲撃戦ならどうだろうか?」

 

籠手を修復してから、両手に魔力を溜めるヴァーリ。

同時にヴァーリの周囲に魔法陣が展開されていく。

 

ロキやロスヴァイセさんが使うものと似てるような・・・・

 

「ロキ対策で覚えた北欧の魔術だ。覚えたてだが威力は十分だろう」

 

やっぱり北欧魔術かよ!

 

そういえば、最近ヴァーリが何か読んでたけど・・・・・

あの本って北欧の魔術が載ってるやつだったのか!

 

そんな数日で覚えられるもんなの!?

 

クソッ!

やっぱり天才だぜ、こいつ!!

 

うおっ!?

 

ヴァーリが一斉に放ってきやがった!

魔力と魔法の混合かよ!

 

ヴァーリの砲撃が俺を追いかけるように次々放たれてくる!

一発一発が以前よりも強力になってるから、当たったらシャレにならん!

 

とにかく俺は必死で避ける!

機会を伺いつつ、反撃の準備を始める。

 

「避けてばかりか? この程度じゃないだろう?」

 

「うるせぇよ! バカスカ撃ちやがって!」

 

「ハハッ。では、逃げられないようにしてやろう」

 

ヴァーリが光翼を大きく広げる。

 

『Half Dimension!!!』

 

その音声が流れると共に周囲の空間が歪みだした。

そして、辺りの物が小さくなり俺の周囲の空間が徐々に狭まってきた。

 

なんだ!?

白龍皇の能力か!?

 

『相棒、あれは簡単に言えば周囲のものを半分にしていく技だ』

 

おいおいおい!

マジかよ!

 

そんなことすれば、美羽や皆のおっぱいまで半分になっちまうんじゃないのか!?

 

『・・・・・心配するのはそこか!?』

 

当たり前だ!

俺にとっては死活問題だ!

 

『・・・・だが、見学に来てるものは巻き込まれないように結界に覆われているのだろう? 心配はないと思うが・・・・・』

 

いーや、あのヴァーリが使う技だぞ。

何が起こるか分かったもんじゃない!

 

俺とドライグがそんなやり取りをしていると、ヴァーリが言ってきた。

 

「これで逃げ場はほぼ失われたわけだが・・・・さぁ、どうする?」

 

確かに、部屋が狭くなった以上、あの砲撃を避け続けるのは難しいな。

あれだけ広範囲に砲撃されたんじゃ、いつかは捉えられる。

アグニで相殺するのも一つの考えだけど、それだとあの数は相殺しきれない。

 

 

・・・・準備も整ったことだし、そろそろ使うか。

 

 

俺が反撃に出ようとした時だった。

ヴァーリの光翼が点滅する。

あれはアルビオンか?

 

『いいぞ、ヴァーリ! あんな天龍の恥さらしは殲滅してしまえ!!』

 

うおぉぉぉぉぉい!

いきなりの過激発言だな!

 

なんで、アルビオンのやつキレてんだよ!?

 

『なんだと!? どういう意味だ!』

 

ドライグも今の発言は聞き捨てならなかったようだ。

ドライグがアルビオンに問いただすが――――――――

 

『黙れ! 私の宿敵は断じて乳龍帝などではない!』

 

そ、そこかぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!

 

『ま、待て! それは誤解だ! 乳龍帝と呼ばれているのは宿主の兵藤一誠だ!』

 

おーい!

罪を全部俺になすりつけるつもりか!?

俺だって呼ばれたくてなったわけじゃないやい!

あの名前考えたのアザゼル先生達だからね!

そのあたり忘れないで!

 

・・・・まぁ、俺に全く罪がないかと言われるとそこは否定できない。

おっぱい突いて禁手に至ったのは事実だし・・・・

 

『宿敵を模した『おっぱいドラゴン』などというヒーロー番組を見た時の私の気持ちがおまえに分かるか!? どれだけの衝撃を受けたことか! あれを見た日から涙が止まらんのだ!』

 

『俺だって泣いたんだ! 気付けばため息が多くなってる! その名を聞くたびに心が張り裂けそうになるのだ! 実際に乳龍帝と呼ばれる俺の気持ちを考えてみろ!』 

 

『そんな気持ちなど知りたくない!! ・・・・我らは誇り高き二天龍だったはずだ・・・・! それがどうしてこんなことに・・・・! うぅ・・・・ドライグ、私はどうすればいいんだぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!』

 

『俺だってどうすればいいのか分からんのだ!!! うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!』

 

 

・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

えーと・・・・何、この状況?

二天龍が号泣してるんだけど・・・・・・

 

俺達、模擬戦中だよね・・・・・・?

なんなの、この状況・・・・・・

 

ヴァーリは魔力弾を俺に向けて放ちながら訊いてくる。

マスクで表情は分からないけど、その声音は本当に困っているようだった。

 

「・・・・こんな状況で訊くのはどうかと思ったんだが・・・・。兵藤一誠、俺はどうすればいいだろうか?」

 

「知るかァァァァァ!!!! とりあえず、俺が謝る! ドライグ、アルビオン、そしてヴァーリ! マジでゴメン!!!」

 

俺はヴァーリの魔力弾を避けながらそう叫んだ。

 

もういいよ!

どーせ、俺が悪いんだ!

 

この模擬戦が終わったら改めて謝るよ!!

 

俺は左手を上に向けて突き出す!

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

『Transfer!!!!』

 

力を譲渡する音声が籠手から発せられた瞬間、この俺の身長の20倍はあろうかという巨大な気弾が作られる。

 

「これは・・・! 先程から反撃してこなかったのはこのためか!」

 

「ああ、そうだよ! さっきまでのお返しだ!!」

 

左手を前方に振り下ろす!

それに合わせて巨大な気弾もヴァーリ目掛けて突き進む!

 

これだけ巨大な気弾だ。

普通に攻撃するぐらいじゃ、相殺しきれないはずだ!

 

ヴァーリもそれを感じ取ったのか、空間の半減と俺への魔力砲撃を止め、気弾に向けて手をつき出す。

 

「相殺できないなら半減して威力を削るまでだ!」

 

『DividDividDividDividDividDividDividDividDivid!!!!』

 

『Half Dimension!!!』

 

ヴァーリが気弾の表面に触れて再びあの能力を使う。

しかも半減の合わせ技かよ。

 

気弾がどんどん半減されていき、最終的にはソフトボールくらいのサイズになり、ヴァーリに握りつぶされてしまった。

 

結構な力を籠めたんだけど・・・・・・

こうもあっさり対処されるとは。

 

まぁ、今のも計算内だ。

ヴァーリも今ので相当の力を使ったのか肩で息をしている。

今が絶好の機会だ!

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

一気に倍増してヴァーリに突進する!

動きが止まってる今を狙う!

 

 

「かかったな」

 

 

『Power Dispersion!!!!』

 

 

―――――っ!!

 

今の音声と共に俺の力が完全に消失した。

 

なんだ、今のは!?

半減なんてレベルじゃない!

完全に力が消えた!?

 

「奥の手というものは最後まで隠しておくものだぞ、兵藤一誠」

 

ヴァーリがそのまま手刀を繰り出してくる!

 

くっ・・・・・考えるのは後だ!

今はこの局面を何とかすることに集中しろ!

 

ヴァーリの技の効果が切れたのか力が戻ってきた。

それでも、ヴァーリの方が速い!

このままじゃやられる!

危険を感じた俺は咄嗟に錬環勁気功を発動して気を急激に循環させた!

 

急激な気の流れに体が一瞬悲鳴をあげるけど、問題ない!

 

勢いを取り戻した俺の拳とヴァーリの手刀が交差し互いの体を捉えた―――――――――――

 

 

ピリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!!!!!!

 

 

その瞬間、甲高い電子音がフィールド内に響く。

模擬戦の終了を知らせるためのブザーだ。

 

その音が流れたと同時に俺達はピタリと止まった。

 

「ハハハッ・・・・・」

 

「フッ・・・・・」

 

俺達は互いに苦笑しながらその拳を引いた。

 

 

 

 

模擬戦の終了時間が来たので、俺達は鎧を解除して地面に降り立つ。

 

 

「どうやらここで終わりのようだ。・・・・・結果は引き分けかな?」

 

と、ヴァーリは言うが・・・・・

俺はその言葉に首を横に振った。

 

「・・・・・いや、もし今のが当たっていたら俺の方がダメージを受けてたはずだ。今回はおまえの勝ちだよ、ヴァーリ」

 

そう、ブザーが鳴らなかったら、ヴァーリの手刀は俺の鎧を切り裂いていたはずだ。

 

俺の拳もヴァーリを捉えていただろうけど、そこまでのダメージを与えることは出来なかったはず・・・・・。

 

はぁ・・・・・

最後の最後でミスったな・・・・・・

 

それはそうと・・・・・

 

「さっきの技、あれはとんでもないな。相手の力を完全に無にする技だろ?」

 

俺がそう尋ねるとヴァーリはフッと笑む。

 

「君には隠しても無駄みたいだ。そう、あの技はほんの一瞬、触れた相手の力を完全に霧散させる。相手が強ければ強いほど、霧散できる時間は当然短くなるがな」

 

相手の力を完全に霧散させる技。

一瞬とはいえ恐ろしい技だな・・・・・・。

 

あれ?

 

もしかして、こいつ――――

 

「それって元々、俺対策だろ?」

 

「フフッ、それはどうかな?」

 

あ、はぐらかされた。

つーか、図星だよね?

絶対に第二階層の対策で編み出した技だろ。

 

「ただ、この技は見かけ以上に消耗が激しい。今の俺でも数回使えたら良い方だろう」

 

ヴァーリは肩で息をしながら、そう言うが・・・・・・

何発も使われたら厄介すぎるわ!

 

俺も新しい技考えるかな・・・・・・。

 

俺とヴァーリはその場に座り込む。

 

「あー、疲れた・・・・・・。十分ってこんなに疲れるもんだったか?」

 

「良いじゃないか。俺はかなり楽しめたぞ」

 

「まぁ、俺も結構楽しかったけどさ」

 

俺は地面に大の字になって空を見上げる。

フィールドの空は紫色。

冥界の空を再現してるのかね?

 

まぁ、何にしても取り敢えずはゆっくりしたいところだ。

 

俺はヴァーリに訊く。

 

「今の技、ロキに通じそうか?」

 

その問いにヴァーリは考え込む。

 

「ロキほどのレベルに使うとすれば、ここぞと言う時ににしか使えないだろう。それでも、奴の力を霧散できる時間は一秒も無い」

 

一秒、か・・・・・・

本当に一瞬だ。

 

だけど、その一秒が勝敗を分けることになる。

 

見学していた皆が俺達の方に歩いてきた。

 

その中からアーシアが飛び出して、俺の方へと駆け寄ってくる。

 

「イッセーさん! おケガはありませんか?」

 

「ああ、大丈夫だよ、アーシア。俺もヴァーリも痣はあちこちに出来てるけど、そこまで大きなケガはしてないよ」

 

俺がそう答えるとアーシアはほっと胸を撫で下ろした。

 

「とにかく、治療しますから、そのままでいてください。ヴァーリさんもイッセーさんが終わればすぐに治します」

 

「すまない」

 

淡い緑色の光が傷を負った部位を包み、傷を癒していく。

いつ見てもアーシアの治療はすごいよなぁ。

本当に一瞬で治るもんな。

 

「おうおう、俺が作った特製フィールドをこんなにも無茶苦茶にしやがって。おまえら、これは軽い手合わせじゃなかったのかよ?」

 

と、アザゼル先生が周囲を見渡しながら苦笑していた。

 

フィールドのあちこちに巨大なクレーターが出来ていて、足場がほぼ無いような状態だった。

 

うん、家のトレーニングルームでしなくてよかった。

もしやってたら、家が崩壊していただろう。

 

「今代の赤と白はどちらも元気が有り余っとるのぅ。流石はサーゼクスとアザ坊が認めるだけはあるわい」

 

「だろ? だけどよ、これより更に上の領域があるって言うんだから嫌になる。しかもまだ成長途中と来たもんだ。おまえら、頼むから勝手に戦わんでくれよ? 歴代の赤と白の戦いでいくつ島がなくなったか。おまえらが暴れたらそれどころの話じゃなくなる」

 

まぁ、だからこそこうして専用のフィールドをつくってもらった訳ですし、その辺りは心配いらないっすよ。

 

こいつと全力でやり合うときはもっと強固なフィールドを注文するかもしれないけど・・・・・。

 

「それで? 互いの実力は分かったのかよ?」

 

先生の問いに俺とヴァーリは互いの顔を見合わせ、頷いた。

 

「それなら良い。このフィールドは暫く置いておくから今後も適当に使ってくれ。ただ、あまりやり過ぎるなよ? 体を休めつつ修行に励め。いいな?」

 

分かってますよ、先生。

 

さてさて、これで今のヴァーリの実力も知れたことだし、後でロキ対策でも考えるか。

 

とりあえず、汗を流してゆっくりしよう。

そんなことを考えながら俺達はそのフィールドを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

兵藤家のリビングにて。

汗を流した俺とヴァーリはのんびりしていた。

 

「ヴァーリ、お茶いるか?」

 

「いただくよ」

 

と、俺はヴァーリのコップにお茶を注ぐ。

冷蔵庫で冷やしておいたキンキンの麦茶だ。

風呂上がりに飲むと美味いんだよな。

 

俺は自分のコップにも注ぎ、トレーにのせてソファでくつろいでいるヴァーリの元まで運ぶ。

 

「ほれ」

 

「ありがとう」

 

コップに口をつけ、麦茶を飲む。

 

ぷはー、美味い!

 

「自分の家みたいにくつろいでしまっているが・・・・良いのかい?」

 

「良いんじゃね? 皆は少しおまえのこと警戒してるところがあるけど、おまえが悪人じゃないことは分かってるみたいだし」

 

「一応、テロリストの一員なんだが・・・・・」

 

ヴァーリは苦笑しながら、コップに口をつける。

 

まぁ、俺達は何度か助けられてるし、こいつがこうして家でゆっくりするくらいなら別に構わないんじゃないかと思う。

 

「そういえば、黒歌達は?」

 

今日、俺は黒歌や美猴、アーサーを見ていない。

 

「黒歌と美猴はこの家の空き部屋でテレビゲームをしているはずだが・・・・・。アーサーは妹のところに行っている」

 

マジか。

アーサーって妹がいるんだ。

 

つーか、黒歌と美猴のやつ、好き放題にやってくれてるな!

ゲームくらい別に良いけどよ!

あいつらは遠慮を知らねぇな!

 

「ま、いつでも遊びに来いよ。修行もできるしな。あ、テロ行為はお断りだぜ?」

 

「ふふふ、それは約束できないな」

 

なんて冗談を言っていると、俺達のところに二つの影が現れる。

 

「お主ら仲がよいのぉ」

 

「そうですね。赤龍帝と白龍皇と言えば出会ったら即対決、というイメージが合ったのですが・・・・・。この二人を見ているとそうは思えなくなりますね」

 

現れたのはオーディンの爺さんとロスヴァイセさんだった。

 

仲が良いって・・・・

 

まぁ、歴代の赤龍帝と白龍皇はすぐにドンパチやってたみたいだし・・・・・・

そう考えたら、こうしてまったりしてる俺達は仲が良い天龍と言えるのかな?

 

「ところで白龍皇。お主はどこが好きなのじゃ?」

 

爺さんがいやらしい目付きでヴァーリに訊く。

 

おいおい、爺さん・・・・・

まさか、ヴァーリ相手にエロトークか?

 

「? なんのことだ?」

 

首をかしげるヴァーリ。

ヴァーリは爺さんの意図は分からないらしい。

 

まぁ、こいつはそういうのとは無縁だろうしなぁ。

 

ヴァーリに聞き返されて、爺さんはロスヴァイセさんのおっぱい、尻、太ももを指差していく。

 

「女の体の好きな部位じゃよ。赤龍帝は乳じゃろ? お主も何かそういうのがあるんじゃないかと思うてな」

 

「心外だ。俺はおっぱいドラゴンなどではない」

 

心底心外そうに言うヴァーリ。

 

ゴメンね!

俺のせいだよね!

 

「まぁまぁ、お主も男じゃ。何処かあるじゃろう?」

 

「・・・・・あまり、そういうのに感心がないのだが。しいて言うならヒップか。腰からヒップにかけてのラインは女性を表す象徴的なところだと思うが」

 

ヴァーリが何気にそう答えた―――――

 

 

 

「なるほどのぉ。ケツ龍皇というわけじゃな」

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

後日、ヴァーリから話を聞いたところ、その日アルビオンは一日中泣いていたという・・・・・・・

 

 

 

 

 




ロキとの決戦は次か次の次くらいで書きたいと思います。

気づけば80話を越えていて自分でも驚いてます。

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