ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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10話 伝えます!!

「メイド喫茶がいいです!」

 

その日の部活動は、学園祭で催す持ち物について話し合っていた。

ロキとの決戦も近いけど、学園生活も大切だ。

こういうのは早めに決めておかないとな。

 

そういうわけで、今日は学園に通えることになっている。

 

それでだ。

俺の希望はメイド喫茶! 学園でも美女美少女と名高い皆がメイド服を着れば絶対に受けると思うんだ!

 

「メイド喫茶・・・・悪くないのだけれど、もう少し何かほしいわね・・・・」

 

と、部長はそう言いつつホワイトボードに書き込んでいく。

 

「俺としてはおっぱいメイド喫茶が良かったんですけど、それじゃあ他の奴らに皆のおっぱいを見られることになるんですよね・・・・」

 

「・・・そんなことを考えていたんですか、ドスケベ先輩。クッキーいりますか?」

 

「うん、ありがとう小猫ちゃん」

 

小猫ちゃんは俺に毒舌を吐きながらもクッキーを分けてくれる。

いやー、こういうところに癒されるよな!

 

ちなみにだが、小猫ちゃんは今、俺の膝の上にお座りしている。

小猫ちゃんのお尻の感触がたまらんね!

 

「ははは、イッセー君らしい意見だね。・・・・でも確かにメイド喫茶だけでは他の部活と同じになってしまいますね」

 

木場が紅茶を飲みながら言う。

 

木場の言う通り、他の部活でもメイド喫茶をしようというところは多い。

うちがやれば普通のメイド喫茶でも勝てるだろうけど・・・・

確かにそれでは面白くない。

 

そうなると、喫茶以外のものにするか?

 

例えば去年と同じとか?

 

いや、部長的には同じことを連続でするのは嫌らしいし・・・・。

 

うーん、難しいよなぁ。

 

部長が部員一人一人に案を訊いていくが・・・・これといって斬新なものが出るわけでもない。

 

「どうせならオカルト研究部っぽいものがいいよね」

 

という意見を美羽が出すものの、オカルト的な内容はあまり話題にならないだろう。

 

話題になるとすれば、やっぱりうちのメンバーだろうし・・・・・

エロ学生の俺以外は全員人気者だしな。

 

あ、それだったら・・・・

 

「オカ研メンバーで人気者投票とか? あ、俺と木場は抜きで。どうせ木場には勝てませんし・・・・」

 

俺が何気なくそういうと女子部員が互いの顔を見合わせた。

 

ギャスパーが手を挙げる。

 

「なんで僕は含まれてるんですかぁ?」

 

「おまえは男子としてカウントしても良いのか分からんからな」

 

性別は男だけど見た目は美少女だからな。

こいつは男子からも人気があるんだ。

 

「でも、二大お姉さまのどっちが人気あるのか気になるね」

 

そう美羽が言うと―――――――――

 

「「私が一番に決まってるわ」」

 

部長と朱乃さんの声が重なり、にらみ合いを始めた!

二人とも笑顔だけど目が笑ってないよ!

マジだ!

 

「あら、部長。何かおっしゃいました?」

 

「朱乃こそ。聞き捨てならないことを口にしなかったかしら?」

 

バチッバチバチッ

 

うおっ!?

 

二人の間に火花が散ってる!?

 

「み、美羽・・・・・」

 

「う、うん。ゴメン・・・・」

 

美羽も自分の失言に気付いたのか、冷や汗を流しながら謝罪してくる。

 

「・・・・時すでに遅し」

 

小猫ちゃんが呟く。

うん、その通りだね・・・・。

 

まぁ、朱乃さんの調子が戻ってきているのが分かっただけでも良しとするかな。

 

こうして、お姉さま方の口喧嘩が勃発し、会議はご破算。

学園祭の催し物については後日に持ち越すことになった・・・・・。

 

 

修学旅行前に決めることが出来るのだろうか・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

学園から帰宅した後、俺達は最後の作戦会議を行っていた。

会談は今夜。

つまり、ロキとの戦いも今夜ということになる。

今はロキを迎え撃つための最終チェックをしているところだ。

 

兵藤家のミーティングルームには今回の作戦に参加するオカ研メンバー、生徒会メンバー、ヴァーリチーム、アザゼル先生、バラキエルさん、ティア、タンニーンのおっさん。

そして、オーディンの爺さんとロスヴァイセさんが集合していた。

 

ちなみにだけど、タンニーンのおっさんはチビドラゴンと化して宙に浮いている状態だ。

 

 

ぐるっと部屋を見渡してみるが・・・・・・

一人足りないような・・・・・

 

「先生・・・・匙は・・・・?」

 

そう、今回の作戦に参加するはずの匙の姿がない。

というより、ここ数日連絡すら取ってないからあいつの状況が分からないでいた。

 

生きてんのかな・・・・・・?

 

先生が答える。

 

「匙はまだグリゴリにいる。まだ、調整が上手くいってなくてな・・・・・。今はうちの副総督のシェムハザに任せている。なんとか、間に合えば良いんだが・・・・・」

 

先生はむぅと何やら考えながらホワイトボードに作戦の内容を書いていく。

 

とりあえず、匙は生きてるみたいだ。

調整という言葉がすごく気になるが、そこは気にしないでおこう。

あいつなら無事に俺達の元へ帰ってきてくれるはずだ(多分!)

 

「魔法の鎖グレイプニルは後で直接戦場に送られる。バラキエルを中心にしてフェンリルを捕縛してくれ。出来るだけ早くな。フェンリルを封じるだけでも戦況が大きく変わってくるからな」

 

「了解した」

 

 

それからも作戦会議は続いていき、一通りの確認が済んだ。

 

先生は作戦のまとめを述べた後、真剣な面持ちで言う。

 

神々の黄昏(ラグナロク)にはまだ早い。なんとしてでも食い止めるぞ」

 

『はい!』

 

先生の言葉に俺達は気合いを入れて、返事をした。

 

「よし、それじゃ、時間になったら改めて召集をかける。それまでは各自で好きなようにやってくれ」

 

という先生の言葉で、この場は解散となった。

 

さてと、時間まで俺は何をしようか・・・・。

今は夕方の五時。

 

作戦開始は深夜なので、それなりに時間がある。

 

皆はというと、部長は会長と話してるし、木場達も後で体は軽く動かすものの、今はゆっくりするとのことだ。

 

うーむ・・・・・・。

 

今のうちに出来ること・・・・・・。

 

宿題・・・・・か?

 

いやいやいや、数時間後に死線に赴こうと言うのに宿題をするってのは何か違うだろ。

 

 

うん、考えるのは止めにしよう。

とりあえずベッドにダイブする、そして今日買ったエロ本の新刊を読む。

これに決めた。

 

俺がそんなことを考えていると、部屋を出るバラキエルさんとそれを追うように部屋を出ていこうとする朱乃さんの姿を視界に捉えた。

その表情はどこか覚悟を決めているように感じた。

 

 

・・・・・・そうか。

 

朱乃さん、ついに決心がついたんですね。

 

「朱乃さん」

 

俺に呼び止められ、こちらを振り向く朱乃さん。

俺は朱乃さんに笑みを浮かべながら、親指を立てた。

 

「頑張ってください。朱乃さんなら出来ますよ」

 

俺が朱乃さんに出来ることはエールを送ることぐらいだ。

 

「ありがとう、イッセー君。行ってきますわ」

 

そう言って朱乃さんは部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

[朱乃 side]

 

 

私はイッセー君と言葉を交わした後、先に部屋を出てしまっていたあの人を、父を追いかけた。

 

階段を駆け降りると、玄関の扉に手をかけている父を見つけた。

 

「待って!」

 

私は普段は出さないような必死の声で呼び止める。

 

今しかない。

私の本音を伝えるのは今しか出来ない。

根拠なんてものはないけれど、そう思えた。

 

この機会を逃したら私はまた決心が鈍ってしまうかもしれない。

だからこそ・・・・・!

 

「あ、朱乃!? どうしたのだ、そんなに慌てて・・・・」

 

父は息を切らして、肩を上下させている私を見て驚いているようだった。

 

それもそうなのかもしれない。

 

ついこの間まで、私は父から声をかけられても拒絶してきたのだから。

それが今はこうして追いかけてきている。

 

父からすれば何事かと疑問に思っても仕方がないと思う。

 

「と、とりあえず落ち着くのだ。こうして私に声をかけてきたということは何か話があるのだろう? 全て聞くからまずは深呼吸するのだ」

 

父にそう言われ、私は荒くした呼吸を落ち着かせるため、深呼吸する。

 

おかげで呼吸は落ち着いてきた。

でも、その代わりに心臓は激しく脈打っているのが分かった。

 

・・・・・自分でも緊張しているのが分かる。

 

こうして父と向かい合っているだけで、緊張がどんどん増していくのが感じられた。

 

 

父は私を許してくれるだろうか・・・・・。

再び娘として受け入れてくれるだろうか・・・・・。

 

色々な思いが私の胸の中で渦巻いていた。

 

父に拒まれたら・・・・・なんてことまで考えてしまっている。

 

 

『俺は朱乃さんに後悔してほしくないんです・・・・・・』

 

 

ふいにイッセー君の言葉を思い出す。

 

後悔・・・・・。

ここで逃げてしまえば私は一生後悔する。

 

 

伝えよう。

私の言葉で。

私の本当の気持ちを―――――。

 

「父さま・・・・・」

 

「っ!」

 

父さま・・・・・

 

父に対してこう呼ぶのはいつ以来だろう。

 

「父さま・・・・・今までごめんなさい・・・・・!」

 

私は父に頭を下げた。

まずはこれまで父を傷つけてきたことを謝らなければならない。

 

「私・・・・ずっと分かってた。母さまが死んだのは父さまのせいじゃないってことくらい・・・・。本当は私のせいなのに・・・・。だけど、私はそれを受け入れることが出来なくて・・・・私が弱いせいで・・・・・父さまに酷いことを・・・・・」

 

父さまはいつも私には優しくて、私を愛してくれていた。

それなのに私は自分が弱いせいで、母さまが死んだことを父のせいにしてきた・・・・・。

 

 

ポタッ 

 

 

床に水滴が落ちた。

気付けば私は涙を流していた。

 

「父さま・・・・・、ごめんなさい・・・・!」

 

私は涙を流し、ただひたすらに謝り続けた。

 

たとえ、どれだけ謝ろうとも私がしてきたことは許されるものではないのかもしれない。

それでも、私は父に謝りたかった。

 

「朱乃、もういい・・・・。もういいんだ」

 

父は私の両肩に手を置き、私の顔を上げさせる。

 

「朱乃、おまえは悪くない。それに謝らなければならないのは私の方だ。全てはおまえと朱璃を守れなかった私が悪いのだ・・・・・!」

 

父は肩を震わせながら絞り出すかのような声で続ける。

 

「弱いのは私とておなじだ。おまえを傷つけるのが怖くて、おまえと真正面から向き合うことが出来なかった。私がもっとおまえを見ることが出来ていれば再びおまえを泣かせることもなかっただろうに・・・・・! 本当にすまなかった・・・・・!」

 

「・・・・違う。父さまは私と向き合おうとしてくれていた。なのに拒んでしまったのは私・・・・・。父さまは悪くないよ・・・・・」

 

私がそう言うと父は首を横に振る。

 

「いや、例えおまえに拒まれても父親であればもっとぶつかるべきだった・・・・・。私は父親失格と言われても否定できない・・・・」

 

そんなことない!

あなたは父親失格なんかじゃない!

 

「朱乃、こんな私を許してくれるか・・・・? もう一度、おまえの父親をさせてもらえないだろうか?」

 

「許すも何も、父さまは悪くないよ・・・・・。それにお願いするべきなのは私です。父さま、私を娘として受け入れてくれますか?」

 

「ああ・・・・もちろんだとも!」

 

父は――――父さまは大きく頷くとボロボロと大粒の涙を流していた。

だけど、その表情は晴れやかなものだった。

 

良かった・・・・・。

受け入れてもらえることができた・・・・・。

 

そう思って安堵すると、体から力が抜けてガクンッと崩れ落ちそうになった。

 

「あ、朱乃!?」

 

父さまは慌てて私を抱き止める。

見るからに必死という感じだった。

 

私は父さまを安心させるように言う。

 

「大丈夫です。少し、気が緩んだだけだから」

 

「そ、そうか! なら良かった! おまえにまでいなくなられたら私は・・・・・・!」

 

もう、大袈裟すぎよ。

 

私は父さまに支えられながらゆっくりと立ち上がる。

 

「うふふ。ありがとう、父さま」

 

私が少し微笑みながらお礼を言うと――――

 

 

ブワッ

 

 

父さまの両目から滝のような涙が流れてだした。

 

「と、父さま!?」

 

「あ、朱乃が笑ってくれた・・・・・! 私に微笑みを・・・・! うおおおおおおおおおおお! 生きてて良かった!」

 

「ちょ、父さま!? 大袈裟すぎです!」

 

 

この時の父さまの大きな声は町中に広がったそうです。

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、ここは四階にある私の部屋。

部屋には父さまもいて、部屋を見渡していた。

 

「うむ、綺麗に片付けられている。アザゼルからは料理も出来ると聞いている。朱乃は朱璃に似てしっかり者に育ってくれたようだ。安心した」

 

「とりあえず、適当に座ってください。お茶を入れましたので、どうぞ」

 

「ああ、すまない」

 

そう言って私達はイスに座り、向かい合う。

 

すると、父さまはフッと笑みを浮かべた。

 

「もう一度、朱乃とこういう風に話せる日が来るとは・・・・・。彼には感謝しなければならないな」

 

「彼?」

 

聞き返すと父さまは一度頷いて、その名前を言った。

 

「今代の赤龍帝、兵藤一誠君だ」

 

「!」

 

父さまの言葉に私は目を見開いた。

 

まさか、イッセー君は父さまとも話をしていたというのだろうか?

 

「つい先日のことだ。彼からこう言われたのだ。『朱乃さんがあなたに声をかけてきた時は彼女の話を聞いてあげて下さい。そして、その気持ちを受け止めてあげて下さい』とな」

 

イッセー君がそんなことを・・・・。

 

うふふ、本当にどこまでも優しい人なんだから。

 

「朱乃は・・・・・その、なんだ、彼のことが好きなのか?」

 

「はい。私には彼以外には考えられませんわ」

 

「そ、そうか(むぅ、朱乃はそれほどまでに彼を・・・・・。私は父としてどうすべきなのだ!?)」

 

父さまは少しぎこちない動きでカップに口をつける。

 

どうしたのかしら?

 

「ま、まぁ、おまえが幸せであるならそれでいい。・・・・・兵藤一誠、か」

 

「イッセー君がどうかされました?」

 

「うむ。彼と話した時に気付いたのだが・・・・。彼の目が印象的だったのだ」

 

「目、ですか?」

 

私の問いに父さまは頷く。

 

「そうだ。・・・・・彼はおまえとそう歳も変わらないようだが・・・・・まるで、多くの試練を乗り越えてきたかのようだった。他人を詮索するような真似はしたくないが、彼はどのような経験をしてきたのか少し気になっていたのだ」

 

イッセー君・・・・。

イッセー君は私の後輩で、勇ましい姿だけじゃなくて、どこか可愛いところがある。

そこが良いのだけれど・・・・。

 

けれど、確かにイッセー君は本当に年下かと疑問に思うような時がある。

私にきっかけをくれた時もそう。

 

・・・・彼の過去に興味がないと言えば嘘になってしまう。

 

 

まぁ、イッセー君が何者であれ、私の気持ちは変わりませんわ。

 

「うふふ」

 

「?」

 

私の笑みに父さまは頭に疑問符を浮かべながら首を傾げていた。

 

 

 

 

 

[朱乃 side out]

 

 

 




次回はロキとの決戦に入ります!

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