ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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14話 覚悟の時

朱乃さんや小猫ちゃんのおかげで僅かに回復することができた俺は皆に大出力の炎を放とうとしているロキを視界に捉えた。

 

 

「ロキィィィィィイイイイイイイ!!!!」

 

 

美羽に作戦を伝えた俺はミョルニルにオーラを全力で流し込む。

 

その大きさは俺を遥かに越えるほどの大きさ。

十倍以上はあるだろう。

 

おかげでかなり重い。

片手で持ち上げられるギリギリの重さだ。

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

天武の形態で倍増を加速させ、全身の力を一気に高めていく。

 

正直、こうして倍増させるのも限界に近い。

 

『そうだ。相棒の今の状態を考えればこの形態ももうすぐ維持できなくなる。いや、今もこうして使えていること自体驚きだがな』

 

まぁな。

 

だから、俺は賭けに出た。

これが最後の賭け。

 

ミョルニルの巨大さにロキは一瞬、目を見開くが直ぐに笑みを見せた。

 

「あれだけの傷を受けてまだ立ち上がれるのか! だが、貴殿ではミョルニルは扱いきれんぞ! 貴殿に邪な心が有る限りはな!」

 

ああ、そうだ。

俺ではミョルニルは使いこなせない。

 

俺がスケベなせいでな!

 

スケベな心を今すぐ捨てる?

うん、無理!

 

皆には悪いけどスケベ心は捨てられません!

ごめんなさい!

 

「ああ! 俺はどうせスケベだよ! だから、これでもくらいやがれぇぇぇぇえええええ!!!!」

 

俺はミョルニルを振りかぶり、そのまま――――

 

 

 

 

ロキめがけて全力で投げた。

 

 

 

 

「なっ!?」

 

俺の行動にロキは戸惑い、驚愕の声をあげる。

 

まぁ、元々投げて使うような武器じゃないし。

レプリカとはいえ神様の武器だ。

それは投げるなんて誰にも考えつかないだろうさ。

 

 

ロキは巨大化したミョルニルを避ける。

 

ミョルニルはそのまま、地面に落ちていき――――

 

 

ドゴォォォォォォォォオオオオオンッ!!!

 

 

落下した周辺が消し飛び、更地と化した。

 

スゲェ威力だな!

 

ただ、俺がスケベなせいで雷は発生していない。

これは分かっていたことだから気にしないけどね。

 

俺の手から離れ、オーラの供給元を失ったミョルニルは元のサイズに戻る。

 

俺の予想外の行動にロキは呆気に取られていたけど、笑いだす。

 

「どうした、赤龍帝よ! 気でも狂ったか! フェンリルにその身を砕かれ、頭もやられたか!」

 

言ってろよ。

 

笑うなら笑っとけ。

 

そもそも、俺の本命はここじゃない。

この先だ。

 

「ふははははは! 所詮はその程度であったか! どうやら貴殿を買いかぶりすぎたーーーーーーっ!?」

 

ロキは再び俺の方を見た瞬間に言葉を失った。

 

なぜなら、俺の手にはミョルニルよりも恐ろしいものが握られているからだ。

 

「来やがれ! イグニスッ!!!」

 

左手に赤い粒子が集まり、一振りの大剣が現れる!

刀身から灼熱の炎を解き放って、周囲一帯を灼熱地獄に変貌させる!

 

皆、少しだけでいい!

少しだけ我慢してくれよ!

 

「そのようなもので! 我がレーヴァテインで打ち砕いてくれる!」

 

ロキがレーヴァテインを振り下ろす!

 

「砕けるのはてめぇだ!」

 

左手が焼けるのを耐えながらイグニスを全力で振るう!

 

俺のイグニスとロキのレーヴァテイン。

 

炎を纏う二つの剣が交錯する―――――

 

 

バリィィィィィィン!!!

 

 

「ぐおおおおおおおおっ!?」

 

 

激しい破砕音と共にロキが絶叫をあげた。

 

あれだけ圧倒的な炎を発していたレーヴァテインは粉々に砕け散り、それを握っていたロキの腕はイグニスによって斬り落とされた。

 

ロキの右腕から血が吹き出し、ロキは傷口を抑える。

 

だけど、ロキは直ぐ様、反撃に移ってきた!

 

「貴様ァァァアアア!!!!」

 

正面に魔法陣を展開して、そこから魔術弾を放ってくる!

 

ほとんどゼロ距離だったため、俺は避けることが出来ず、まともに受けてしまう。

ロキの魔術弾は俺を貫き、腹部に風穴を開けた。

 

「ガハッ」

 

口と腹から血を吹き出す。

 

痛ぇ・・・・・・

 

クソッ・・・・・今回の戦闘でどれだけ血を流すんだよ、俺・・・・・。

 

俺が痛みに苦しむなか、ロキが俺の胸ぐらを掴む。

 

「死ぬ覚悟は出来ているだろうな? 貴様は絶対に許さん! 徹底的に潰してくれる!」

 

ロキのオーラが更に高まる。

禍々しいオーラだ。

 

流石は悪神って言ったところか?

 

だけどな――――

 

ロキの腕を掴む。

絶対に離さないように強く。

 

「覚悟するのはおまえだよ」

 

「なに?」

 

怪訝な表情で聞き返してくるロキ。

 

その時、上空から神々しい輝きを放ちながらこちらに向かってくる者がいた。

 

「ナイスタイミングだ。美羽」

 

「やあああああああああっ!!!!」

 

遥か上空から物凄いスピードで迫ってくるのは美羽。

 

しかも、その手に持っているのは―――――

 

「ミョルニルだと!? なぜ、貴様が!?」

 

ロキがこれまでにないくらいの驚きを見せていた。

 

俺の最後の賭け。

 

それは美羽がミョルニルでロキを倒すこと。

 

作戦を要約するとこうだ。

 

まずは俺がミョルニルをロキに投げつける。

当然、ロキは避けるだろう。

そして、俺がロキの注意を完全に引き付けている間に美羽がミョルニルを確保。

そして、美羽がロキにミョルニルを撃ち込む。

 

問題は美羽がミョルニルを扱えるかどうかということとロキがその隙を見せるかどうかということだった。

まぁ、上手くいったようだけどな。

 

今のミョルニルは俺の時のようにただ大きいだけじゃない。

神々しい輝きを放ちながら雷を纏わせている。

つまり、ミョルニル本来の性能を引き出せているということ。

 

「凄ぇだろ? 誉めてくれたっていいんだぜ?」

 

まぁ、俺の妹だからな!

邪念なんてもんは一切無いのさ!

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

俺は手元に巨大なオーラの球を作り出す!

そして、それを美羽に放った!

 

『Transfer!!!!』

 

力を譲渡された美羽のオーラが数倍に膨れ上がり、ミョルニルの神々しさも更に増した!

 

「美羽!」

 

「いっけぇぇえええええええええっ!!!!」

 

俺がロキから離れた瞬間、最大限まで高めた渾身一撃がロキの全身へ完璧に打ち込まれた!

 

そして、ミョルニルからとんでもない量の雷が発生した!

 

 

ドガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!

 

 

特大の一撃が、ロキを完全に呑み込んだ。

 

雷がやんだ頃にはロキの体は大きく煙をあげていて、見る影がないほどにボロボロになっていた。

 

「がっ・・・・はっ・・・・・」

 

ロキは上空から墜落して、地面に落ちた。

ピクリとも動かない。

 

今度こそやったか・・・・・・

 

「よくもお父様を!」

 

背後から強烈な殺気が襲ってきた!

 

振り替えれば、ヘルが俺の背後を取っていて、すでに攻撃体勢に入っていた!

 

ここまで来て・・・・・!

 

避けきれないと感じ、覚悟を決めた。

 

すると――――

 

 

ドゴンッ!

 

 

横合いから何かがヘルを吹き飛ばした。

 

「最後の最後で大きな隙を見せたなヘル。まぁ、フェンリルを失い、ロキすらも敗北した今、おまえ一人で我らに勝てる可能性などほとんど無いがな」

 

人間形態のティアが拳にふぅと息をかけながら、ようやく終わった戦いに、大きく息をはいた。

 

 

 

 

ティアとバラキエルさんにヘルの拘束をお願いした後、俺はアーシアの治療を受けた。

 

いやー、アーシアがいてくれてマジで助かったぜ。

 

フェニックスの涙ももう尽きていたし、アーシアがいなかったらヤバかったな。

 

さてさて、俺は向こうの方で倒れているロキを拘束するとしようか。

 

「美羽」

 

「分かった」

 

美羽に一声かけ、二人でロキの元まで歩いていく。

 

一応、周囲を警戒しながら進んで行くけど特に何かが起こるようすはない。

近づく気配も感じないし、問題はないようだ。

 

まぁ、またロキの分身でした、とかだったら辛すぎるけどな。

 

ロキも禁術で作ったとか言ってたし、量産は出来ないものだと思いたいところだ。

 

ロキの近くまで寄るとうめき声が聞こえた。

 

「うっ・・・・」

 

覗き込むとロキと視線が合った。

どうやら、まだ意識はあるらしい。

 

「タフだな、あんた。あれを受けて意識があるとか・・・・・」

 

「ふ・・・・。見事、としか言いようがない。これだけの戦力を揃えて負けたのだ。もう抵抗はせんよ・・・・・。と言っても我に抵抗できるほどの力は残っていないが・・・・・」

 

ロキの言葉に少し驚く。

 

「へぇ。意識があるものだから、何か仕掛けてくると思ってたんだけどな」

 

「言ったであろう。我に抵抗できるほどの力はすでにない」

 

ロキは震える体でヨロヨロと立ち上がる。

 

確かにロキからは殺気もなければ敵意も感じない。

本当に抵抗する力は無いんだろうな。

 

だけど・・・・・・

何だろう、この感覚は・・・・・・

 

何かモヤモヤした不安感が俺の中で渦巻いている。

 

ロキが笑みを浮かべながら口を開く。

 

「・・・・・まさか、我が敗北するとはな。・・・・・・流石は異世界の魔王を倒すだけはある(・・・・・・・・・・・・・・)、と言ったところか」

 

俺はその言葉に目を見開いた。

 

「な、に・・・・!?」

 

絞り出すような声が漏れる。

 

こいつ、今、なんて言った・・・・・・?

 

異世界の、魔王・・・・・?

 

驚愕する俺と美羽を見て、ロキはニヤッと笑みを浮かべる。

その笑みは悪意に満ち溢れていた。

 

すでに片方しかない腕を広げてロキは叫ぶ。

 

「我を倒したところでもう遅い! かの者は貴殿らがいた世界を滅ぼし、やがてこの世界をも滅ぼすだろう! 黄昏は止められぬ! それまでは一時の平和を過ごすがいい! 異世界の魔王の娘! そして、異世界より帰還せし赤龍帝よ!」

 

突如、ロキを中心に氷のようなものが現れた!

 

それを見て美羽が叫ぶ。

 

「これは封印!?」

 

「ふははははは!!」

 

狂ったように笑うロキ。

 

こいつ、自分で自分を封印しようってのかよ!?

 

「待ちやがれ! 今のはどういうことだ!」

 

「はーはっはははは!!!!」

 

「答えろ、ロキ!!!」

 

錬環勁気功を発動させて氷を殴り付ける。

でも、氷はヒビすら入らず、ビクともしない!

 

それでも、俺は殴り続けた!

 

「答えろって言ってんだろ! ロキ! ロキィィィィィイイイイイイイ!!!!!」

 

氷は完全にロキを包み込み、その動きを止めた。

俺の叫びは虚しく響くだけ。

 

 

そこで、俺は完全に意識を失った。

 

 

 

 

[アザゼル side]

 

 

ここはオーディンの爺さんと日本の神々の会談が行われたホテルの最上階の部屋。

 

「とりあえずは何とかなったな」

 

バラキエルから作戦の結果を聞いた俺はサーゼクスと今回のことを話し合っていた。

 

「うむ。会談も無事に終わり、同盟をより強固にすることが出来た。オーディン殿も喜ばれておられた。何より、犠牲が出なかったことは私も安堵している」

 

今回の作戦。

 

イッセーとヴァーリという歴代でも最強の二天龍と龍王が二人。

非常に強力なメンバーが参加してくれてはいたが、やはり敵も敵だけに犠牲は出るだろうと覚悟はしていた。

 

だが、蓋を開ければ犠牲はゼロ。

 

ロキとヘルは下され、フェンリルはヴァーリと共にどこかへ転移していったという。

 

まぁ、ヴァーリのことだから上手くやってるとは思うがな。

 

「やはり、今回の決め手はまたイッセー君となるか」

 

「いや、正確には兵藤兄妹、だな。最終的には美羽がミョルニルを使ったらしい」

 

よく美羽にミョルニルが扱えたもんだ。

確かにあいつは相当な実力を持っているが・・・・・

 

「兵藤兄妹、か・・・・・。今回の件でより謎が深まったな。それにロキの言葉も気になる」

 

バラキエルによればロキは『異世界の魔王の娘』、『異世界より帰還せし赤龍帝』と言っていたと言う。

 

そして、『かの者』。

 

この世界を滅ぼすほどの存在。

ロキがそこまで言うなら相当ヤバい奴には違いない。

 

「イッセー君はまだ眠っているのかい?」

 

「ああ。あいつは今回の作戦で一番の重傷者だ。レーヴァテインで斬られるわ、フェンリルに噛まれるわでボロボロだよ。おまけに大量の失血で意識を失ってやがる。しばらくは絶対安静だ。詳しく話を聞きたいところだが、まずは休ませなければならん」

 

「そうか・・・・・。異世界、か。厄介なものが出てきたな」

 

全くだ。

 

異世界。

これは各勢力の学者のあいだで議論になっているものだ。

どこの神話体系にも属さない未知の世界。

グリゴリでも議論はしているが、結論は出ていない。

 

まさか、こんなところでその話になるとはな。

 

だが、これはイッセー達の謎を解き明かすことになる。

俺はそう思っている。

 

「異世界より帰還せし赤龍帝、か」

 

 

俺はそう呟きながら、窓から町の灯りを眺めた。

 

 

[アザゼル side out]

 

 

 

 

[三人称 side]

 

 

真っ白な世界。

 

そこはまるで神器の深奥、歴代の赤龍帝達がいるあの空間のように何もない真っ白な世界が広がっていた。

 

そこにいるのは二人の男女。

 

男性は長い黒髪を持ち、歴戦の戦士を思わせるような威厳のある顔つきで、黒い服を身にまとっていた。

 

女性の方は、燃え盛る炎のような赤いドレスを着込んでおり、太ももまである長い髪もドレスと同じ色をしている。

 

男性も女性も顔立ちがよく、一見すれば俳優や女優と思えるほどだった。

 

女性が微笑みながら言う。

 

「あなたも随分と無茶をしますね。いきなり出ていくんですもの。驚いたわ」

 

「すまない。無断であなたの力を使ってしまった。あれは私一人では・・・・・肉体を失った私の力では止められなかった。どうか許してほしい」

 

「気にしないで。あなたのそう言うところは嫌いかじゃない。ううん、むしろ好感が持てるわ」

 

「そう言ってもらえると私も助かる」

 

男性は瞑目する。

 

女性はそんな男性を見て口を抑えながら笑う。

 

「それにしてもあの子も相当、無茶をするわね。あんな体になってもまだ守るために戦うんですもの」

 

「ああ。流石は私が認めた男だ」

 

「ええ。あなたがあの子を気に入る理由が分かったわ」

 

「そう言うわりにはあなたは彼を認めていないようだが?」

 

男性がそう言うと女性は肩をすくめる。

 

「認めていないわけではないわ。でも、私の声が届かない以上はまだその時じゃない。あの子にはまだ早いってことよ。下手をすればあの子を殺してしまうことになる。そんなことは避けたいのよ」

 

「・・・・・そうか。あなたがそう言うのであれば仕方がない」

 

 

男性はため息を吐く。

だが、その表情は少し安堵しているようにも見える。

 

「あのロキと名乗る神が言っていたな。『かの者』、と。あれは、もしやあなたが言っていた?」

 

男性が尋ねると女性は静かに頷く。

 

「『彼』が封印から解かれた。そう考えるのが妥当でしょう」

 

「では、やはり――――」

 

「ええ。―――――《アスト・アーデ》。私達は戻らねばいけません」

 

 

 

[三人称 side out]

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・・・ここは・・・・・・」

 

気づくと俺はベッドの上にいた。

 

また、気を失ってたのか。

最近、こういうことが多くないか?

 

イタタタタ・・・

 

体を起こそうとすると、鈍い痛みが走る。

 

辺りを見渡すと真っ白な部屋だった。

ここってもしかして・・・・・・

 

部屋のドアが開く。

 

入ってきたのは朱乃さんだった。

 

「あら、イッセー君。目が覚めたのですね」

 

「はい。朱乃さん、ここって・・・・・」

 

「グレモリーお抱えの病院ですわ。イッセー君が突然倒れたので、ここまで転移してきたのです。お医者様からはしばらくは絶対安静とのことですわ」

 

あー、やっぱりね。

そんな予感はしてたよ。

 

今回は相当な無茶をしたからなぁ。

かなりの血を失ってたし。

 

「そういえば、皆は?」

 

「皆、かなりの消耗をしていたので今はグレモリー邸で体を休めていますわ」

 

そりゃあ、激戦だったからな。

皆も限界だったんだろうな。

 

「あれ? 朱乃さんはもう大丈夫なんですか?」

 

「ええ。私はもう大丈夫ですわ。グレモリーの女王として皆を支える役目もありますし」

 

朱乃さんはベッドの隣にある椅子に座ると、側にある冷蔵庫からリンゴを一つ取り出す。

 

小型の包丁を使って器用にリンゴを剥いていく。

 

「ここに来たのはあなたにお礼が言いたかったの」

 

「お礼?」

 

聞き返すと朱乃さんは頷いた。

 

「イッセー君のお陰で私は前に進むことができました」

 

「それは朱乃さんが頑張ったからですよ。俺は特に何もしてないです」

 

「いいえ。あなたが背中を押してくれなければ恐らく、私達の関係は元に戻ることがなかったでしょう。本当にありがとうございました」

 

朱乃さんはそう言って頭を下げてきた。

 

うーん、そんなに大層なことはしてないんだけどなぁ。

 

朱乃さんはリンゴの皮が剥き終わると、お皿に並べてベッドに備え付けられているテーブルにそれを置く。

そして、爪楊枝をリンゴにさすと、俺の口許まで運ぶ。

 

「はい。あーん」

 

「あ、あーん」

 

パクっ

 

うん、美味い!

 

「美味しい?」

 

「はい! 朱乃さんが剥いてくれたリンゴは最高です!」

 

「あらあら。そこまで言ってくれると私も照れてしまいますわ」

 

いつものニコニコスマイルを見せてくれる朱乃さん。

いや、いつものとは少し違うか?

 

つーか、頬を染めてる朱乃さん、可愛い!

 

「あら? イッセー君、ちょっと良いかしら?」

 

「はい?」

 

なんだなんだ?

 

俺は疑問に思いながらも朱乃さんに言われて顔を近づける。

 

すると、朱乃さんの顔が近づいてきて――――

 

俺と朱乃さんの唇が重なった。

 

・・・・・・・。

 

ん?

 

んんんんんんんんん?

 

「うふふ。私のファーストキスですわ。受け取ってもらえるかしら?」

 

頬を染めながら、笑う朱乃さん!

 

マジっすか!?

ファーストキス貰っちゃったよ!

 

いや、嬉しいけどさ!

 

突然のことに混乱する俺に朱乃さんは抱きついてくる。

 

「大好きですわ。イッセー君。これからもずっとあなたの側にいます」

 

おおおおおおおおっ!?

 

えーと、どうしよう!?

 

とりあえず、俺は!

 

「はい! 俺も朱乃とずっと一緒にいます!」

 

 

 

 

朱乃さんがグレモリー邸に戻った後。

 

『相棒、調子はどうだ?』

 

んー、まぁ、ぼちぼちってところかな。

 

傷は完全に治ってるから痛みはないんだけど・・・・・・。

いかんせん、血を流しすぎた。

血が足りてないせいで少し体が重いかな。

 

『そうか。その分なら飯食って十分な睡眠を取れば直ぐに良くなるさ。しばらくは安静にしろよ?』

 

分かってるよ。

 

流石に錬環勁気功でもどうしようもないし・・・・・。

アーシアや小猫ちゃんの治療も効かないしな。

 

しばらくは体を休めるのするさ。

 

『それならいい。・・・・・話は変わるがロキの最後の言葉。覚えているか?』

 

・・・・・ああ。

 

あいつは俺と美羽のことを知っていた。

それが何故だかは分からない。

 

だけど、気になるのはもうひとつある。

 

ロキの言葉からして、向こうの世界で何かが起こってるのは確かだな。

アリスや向こうの仲間達の身に危険が迫っているのかもしれない。

 

『それから、グレモリー達に知られてしまったぞ。どうするつもりだ?』

 

そうだな。

 

父さんも言っていたようにいつかはバレると思っていたし・・・・・

 

潮時だろう。

 

『それでは――――』

 

ああ。

 

皆に打ち明けるときが来たようだ。

 

 




というわけで、今章はこれで終わりです。

本当はもう少しコンパクトにしたかったところもあるのですが、何とか書ききれて良かったです。

次章からは異世界編『異世界召喚のプリンセス』に入ります!
完全なオリジナルでいこうと考えているので、はぐれ原作と全くの別物になります。(しっかりしたものが書けるかかなり不安ですが・・・・・)

あと、はぐれ原作の設定も少し変えようかなー、と考えてます。



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