ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今更ながらの誤字修正報告です。

プロローグ1話で

>皆のところに戻りなんとか魔族から国を取り戻した。それがつい一ヶ月前の話だ。

一ヶ月ではなく数ヶ月の間違いです。

久しぶりに読み返してみたら見つけたので、修正しておきました。





第八章 異世界召喚のプリンセス
1話 最後の眷属です!!


[木場 side]

 

 

ある日、オカルト研究部部室。

 

 

「えぇっ!? 保険がこんなに!? しかも掛け捨てじゃない!」

 

 

ロキとの戦いから数日が経ち、僕達の元には平和な日々が戻ってきた。

いつものように学園に通い、部活に顔を出す。

 

いつもと変わらない光景・・・・・・のように思えるんだけど、僕達にはいくつかの変化があった。

 

まず、一つ目。

ロスヴァイセさんがこの駒王町に残ることになったこと。

 

・・・・・ゴメン、少し訂正するよ。

ロスヴァイセさんはこの町に置いていかれた(・・・・・・・)と言った方が正しいのかな?

 

どうやら、会談が終わった後、オーディン様はそそくさと北欧に帰ってしまったらしい。

ロスヴァイセを忘れて・・・・・・。

 

ロスヴァイセさんとしては直ぐに北欧に戻ろうとしたんだけど、戦いの事後処理に追われて帰ることが出来なかったんだ。

 

 

泊まるところもなかったので、一先ずはイッセー君の家に厄介になったんだけど・・・・・

仕えていた主神に置いていかれたことが相当なショックだったようで、しばらく泣き止まなかったそうだ。

 

それを見かねた部長がロスヴァイセさんに声をかけた。

 

―――――私の眷属にならないか、と

 

 

そして今。

 

 

「そうなの。グレモリーの眷属になれば好きな領地ももらえるし、今ならこういう特典がついてくるのよ」

 

と、部長が何やらパンフレットを指差しながら説明をしている。

 

ロスヴァイセさんも食い入るようにパンフレットを見て、二つのパンフレットを両手に、内容を交互に確認していく。

 

「すごい! 北欧よりも全然充実してるじゃない! しかも、お給料も遥かに上! 最高の職場だわ!」

 

ロスヴァイセさん、目がキラキラ光ってますよ。

 

よほど、部長が提示した内容が良かったのか、中々パンフレットを離そうとしない。

 

「・・・・すごい迫力」

 

僕の隣で小猫ちゃんが呟く。

 

うん、僕もそう思う。

戦ってるときよりも迫力を感じるよ。

 

 

「前の職場でよっぽどストレスがたまってたのかしら?」

 

「イリナさん・・・私、ロスヴァイセさんの気持ちが分かるかも!」

 

「えっ?」

 

「だってだって、ロスヴァイセさんってあのオーディン様の身の回りのお世話をしてたんでしょ? 私だったら絶対爆発してるわ! いや、今でも爆発しそう!」

 

 

レイナさん、それってもしかして――――

 

 

ガチャ

 

 

「おーう、やってるな、おまえら」

 

 

部室に入ってきたのは白衣を着たアザゼル先生。

手に化学の教科書を持っているから、さっきまで授業をしていたんだろう。

 

先生をじとっとした目で見るレイナさん。

それから、大きなため息を吐いた。

 

「はぁ・・・・」

 

「・・・・おいおい、なんだよ・・・・・人の顔見るなり盛大にため息なんか吐きやがって・・・・」

 

先生は目元をひくつかせながら、部室の扉を閉める。

 

・・・・・レイナさんも先生には苦労させられているみたいだね。

 

上司で苦労する点ではレイナさんとロスヴァイセさんは同類なのかもね。

 

そんなやり取りを無視して部長とロスヴァイセさんの会話は続いていく。

 

「グレモリーといえば、魔王輩出の名門で、グレモリー領の特産品は好評で売り上げもとても良いと聞いています」

 

「そうよ。あなたが望むならその事業を任せてもいいわ。グレモリーはより良い人材を募集しているのよ」

 

勧誘を続ける部長がポケットから紅い駒を取り出す。

 

「そんなわけで、冥界で一仕事するためにも私の眷属にならない? あなたのその魔術なら『戦車』として動ける魔術砲台要員になれると思うの。ただ、不安なのは駒一つで足りるかどうか・・・・・。戦乙女を悪魔にした例なんて聞いたことがないし、こればかりはやってみないと分からないわね」

 

先生を除いた全員が部長の申し出に驚いていた。

 

今手にしているのは部長の最後の駒だ。

それをロスヴァイセさんに使おうと言うのだから仕方がないだろう。

 

でも、確かに部長の言う通りで、ロスヴァイセさんが眷属になってくれれば心強い。

先日の戦いでも見せてくれた魔術のフルバーストはレーティングゲームでも活躍してくれるだろう。

 

それに僕達眷属の中にはウィザードタイプは部長と朱乃さんしかいない。

万能そうに見えるイッセー君でも、魔力や魔術に関してはほぼ使えない。

・・・・・僕が知ってるのは洋服崩壊(ドレス・ブレイク)くらいかな?

 

 

ロスヴァイセさんは駒を受けとる。

 

「なんとなくですけど、冥界で出会った時からこうなるのが決まっていたのかも知れませんね」

 

紅い閃光が室内を覆い――――ロスヴァイセさんの背中に悪魔の翼が生えていた。

 

 

上手く眷属に出来たみたいだね。

戦乙女は半神だから、駒が足りるか僕も不安だったんだけど、問題なかったみたいだ。

 

 

そういえば、アジュカ・ベルゼブブ様がつい最近発表したことなんだけど、

 

『悪魔の駒は主の成長に合わせて変質する』

 

というものがあったんだ。

 

 

部長はこれまでの修行でその実力を向上させてきた。

もしかしたら、それも今回の眷属化に関係があるのかも。

 

 

パンッ

 

 

部長が掌を叩く。

 

「そういうわけで、私、リアス・グレモリーの最後の眷属は『戦車』のロスヴァイセになったわ。皆、仲良くしてあげてね」

 

部長の紹介に合わせてロスヴァイセさんがペコリとお辞儀をする。

 

「この度、リアスさんの眷属となりましたロスヴァイセです。グレモリーさんの財政面や、保険、その他の福利厚生もろもろを考慮して思いきって悪魔に転生しました。皆さん、よろしくお願いします」

 

 

パチパチパチ

 

 

ロスヴァイセさんの挨拶に皆は拍手を送るけど・・・・・

皆、苦笑している。

 

本当に思いきったと思うよ。

 

というより、部長が洗脳したようなところもあるような気がするよ。

だって、完全に保険屋の人に見えたからね。

 

「まぁ、いいんじゃないか? 私もやぶれかぶれで悪魔になったことだしな」

 

ゼノヴィア、君はもう少し考えて行動した方が・・・・

 

「ん? どうかしたのか、木場?」

 

「ははは・・・何でもないよ」

 

まぁ、無事にロスヴァイセさんが眷属になってくれて僕も嬉しいよ。

これでグレモリー眷属もかなり強化されたんじゃないかな?

 

「うふふふふふふ! オーディンさま、次にお会いしたときは覚悟してくださいね?」

 

不気味に笑みを浮かべているロスヴァイセさん。

しかも、迫力のあるオーラを纏っている!

 

オーディン様にそれだけ不満があったのだろうか・・・・

 

「とりあえず、これでおまえの眷属は揃ったわけだ」

 

「アザゼル、そこは私の席よ。でも、そう言うことになるわね」

 

「にしても、おまえの巡り合わせはとんでもないな。ヴァルキリーが悪魔になったなんて聞いたことがねぇぜ。この面子じゃ、プロのレーティングゲームに参加してもすぐに上位に入るだろうよ。・・・・まぁ、それはイッセーがいる時点で確定しているところもあるがな」

 

先生がイッセー君の名を口にした瞬間、部屋の空気が変わる。

 

 

これが僕達の中で起きた変化の二つ目。

 

「先生、イッセー君の様子はどうですか?」

 

今、ここにイッセー君はいない。

ロキの策略やフェンリルの牙を受けたせいで、瀕死の重症を負い、冥界のグレモリー領内にある病院で入院している。

 

先生は手元に資料を出し、それをパラパラと捲る。

 

「あー、今のところ問題なしだ。先日の戦いで死んでもおかしくない傷を負っていたがアーシアの治療でそれも治ってる。あとはしっかり体を休めていれば直ぐに良くなるさ」

 

その言葉に全員が安堵した。

本当に良かった。

 

朱乃さんも一度、イッセー君のお見舞いに行ったそうだが、やはり顔色がすぐれないようだったと聞いていたから、心配だったんだ。

 

僕達もイッセー君の顔を見に行こうとしたんだけど、他にやることがあって行けなかったんだ。

 

とにかく、彼が無事なら安心できる。

 

「今回の入院はちょうど良くてな。近々、イッセーに右腕を治すための治療薬を投薬するつもりだったんだ」

 

「完成したの?」

 

 

治療薬というのは冥界、悪魔側の医療機関とグリゴリでイッセー君の右腕を治すために共同開発したもの。

アーシアさんの治療でも、完治することができなかったので新薬を作り、以前のように動かせるようにしようと言うものだ。

その開発にはアザゼル先生とアジュカ・ベルゼブブ様まで関わっていると言う。

一介の悪魔にそれだけのことをするなんてね。

イッセー君の存在が冥界にとってどれだけ重要なものになっているのかが分かるよ。

 

部長の問いに先生はうなずく。

 

「ああ。試験データも良い結果が出てる。投薬してから数日はかかるだろうが、完治は見込める」

 

なるほど。

アザゼル先生が太鼓判を押してくれるならそうなのだろう。

 

これは朗報だ。

 

先生はそこで息をはく。

 

「ま、ケガのことは良いんだが・・・・・。おまえらも分かってるだろ? あいつと美羽。兵藤兄妹のこと」

 

「・・・・・・・・」

 

部屋の空気が再び張り詰める。

 

僕はロキが最後に言い放った言葉を思い出す。

 

 

 

『我を倒したところでもう遅い! かの者は貴殿らがいた世界を滅ぼし、やがてこの世界をも滅ぼすだろう! 黄昏は止められぬ! それまでは一時の平和を過ごすがいい! 異世界の魔王の娘! そして、異世界より帰還せし赤龍帝よ!』

 

 

 

あの時、僕たちはロキの言葉の意味が分からなかった。

その言葉の意味よりも僕達が驚愕したのはイッセー君の反応だった。

 

まるで、絶対に知られてはいけないものを明かされたように焦るイッセー君。

ロキが自身を封印するために作った特殊な結界を何度も殴り付けていた。

 

結果的には途中でイッセー君が倒れてしまったので、破壊することは出来なかったが・・・・。

 

あそこまで焦るイッセー君を見たのは初めてだった。

 

「オーディンの爺さんにロキの封印を解くように依頼してはいるが、向こうも手間取っているみたいでな。かなり特殊なものらしい。解除するにはかなりの時間を要するとのことだ」

 

「・・・・・では、イッセー先輩か美羽先輩に直接聞くしかないと言うことですか?」

 

「そうなるな。俺やサーゼクスとしては今すぐにでも話を聞きたいところなんだ。今まで誰にも認知されていない異世界が関わっている。しかも、そこにはロキがこちらの世界を滅ぼすと言うほどの存在がいる。それが本当だとしたら早めに対策をしておく必要があるだろう。そのためにも情報が必要なんだ」

 

 

異世界・・・・・。

このことは少し前に先生から聞かされた。

 

どこの神話体系にも属さない未知の世界。

世界中で議論されており、グリゴリでも時折、議題に挙がるそうだが、結論は出ていないらしい。

 

その異世界にイッセー君と美羽さんは関わっている。

いったい、なぜ二人がそんなところに関係しているのかは分からない。

 

「――――だが、話を聞くにしてもまずはあいつらが落ち着くのを待つ、と言うのが俺とサーゼクスの出した結論だ。ロキのせいであいつらも相当混乱していたみたいだしな。心の整理をさせてやる必要があるだろう」

 

・・・・確かに、先生の言う通りなのかもしれない。

 

傷ついた体を休ませるのもあるかもしれないけど、二人も考えを纏める時間が必要なはず。

 

皆もそれには納得しているようで頷いていた。

 

「ま、近いうちに自分達から話してくれるだろうさ。イッセーのことだ。知られてしまった以上、俺達に話さなければいけないことくらいは理解してるはずだ。俺はあいつらを信じるぜ。なんせ、俺は『先生』だからな。生徒を信じるのも教師の勤めだ」

 

先生はそう言うとニヤリと笑った。

 

「そうね。私もアザゼルに賛成するわ。私もイッセー達が話してくれるのを待つ。それが私達に出きることだと思うの」

 

「ですわね。私もイッセー君を信じます」

 

部長と朱乃さんも微笑む。

 

アーシアさんや小猫ちゃん、他の皆も気持ちは同じのようだ。

 

当然、僕もだけどね。

 

先生は僕達の顔を見て満足そうな笑みを浮かべる。

 

「とりあえず、今日の部活はイッセーの見舞いに行くとしようぜ。おまえらもあいつと触れ合えなくてストレス溜まってんだろ?」

 

イッセー君との関わりが薄いロスヴァイセさん以外の女性陣はそうだろうね。

 

この数日、部長をはじめとした女性陣はどこか調子が狂っているようだったからね。

授業中にボーッとしたりすることが多い。

クラスの人達からも心配されているらしい。

 

部長や朱乃さんまでもがそうなっているので、先生からは保健室や早退を進勧められたこともあるとのことだ。

 

・・・・・かなり重症だ。

 

「あ、そうそう。美羽は先に病院に行ってるぞ。なんでも、イッセーの看護をするとかで授業が終わったとたんに俺のところに来て、転移していったからな」

 

「「「「それを先に言ってよ!!!!」」」」

 

女性陣の声が重なった。

 

「こうはしていられないわ! 朱乃、すぐに行くわよ!」

 

「ええ! ただでさえ、美羽ちゃんには遅れをとっているのに、こんなところでゆっくりなんて出来ませんわ!」

 

「はぅぅ! 先を越されてしまいましたぁ!」

 

「くっ! 授業終了早々に教室を出ていったのはそう言うことだったのか!」

 

「総督! なんで最初に言わないんですか!?」

 

「・・・・・完全に油断してました」

 

「え、えーと、私も天使としてイッセー君の看護をするわ!」

 

イリナさん、そこは天使である必要ないと思うんだけど・・・・

 

「先生・・・・・、完全に爆弾を投下しましたね」

 

「これで、いつものこいつらに戻っただろ。しけた面してんのはこいつらには合わねぇからな」

 

どうやら、こうなるように計算していたみたいだ。

 

流石は先生、と言ったところかな?

 

 

それにしても、イッセー君は驚くだろうね。

自分がいない間に眷属が増えているんだし。

 

 

この後、僕達はイッセー君のお見舞いに行くべく、冥界に転移していった。

 

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 




というわけで、新章1話はロスヴァイセの眷属化でした。

1話丸々、木場視点で書いたのは初めてかも。

異世界に行くのは2~3話後を予定しています。

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