【第二部】合宿編に入ります。
第二部では『バード 最凶雀士VS天才魔術師』とクロスした内容の回が存在します。
【#18 国広一】の回です。
バード終盤のネタバレを含みますので、注意してください。
#10 須賀京太郎
【第二部】 合宿編
―地区大会決勝戦二週間後―
とある喫茶店。
藤田プロ、そして風越の久保コーチは、後に控える『選抜』の打ち合わせをしていた。
「メンドいなーこの仕事」
「でも他の人にまかせたくはないんでしょう」
「好きだしな。それで、そっちは大体決まったのか?」
「そうですね…。鶴賀の大将は清澄と当たった時の対応が良かったです。また、出場は個人戦だけですが、千曲東の巫藍子、もう少し見てみたいですね」
「おまえのとこのアレはいいの?」
「福路はその個人戦で優勝してますし、原村和も僅差で準優勝、メンバー入りは確実でしょう」
「あとは鶴賀の東横…『消える』そうだな」
「清澄の『竜』、原村には全て見えていたそうですし、咲はカン材だけは一瞬見えたそうです。D・Dや江崎あたりには通用しないかもしれませんが相手によってはあるいは…」
「んー。なんかもうさ、団体決勝の四校集めて合宿やらせよう」
「四校合同合宿?」
「そこでうちらが混ざって打てばいい。巫さんのとこには個別に出向こう」
「それはそうとして『彼ら』は来ますかね。個人戦には出てませんでしたが」
「清澄の三人か。そういえば…ああちょうどいい」
「?」
「今長野県で力の強い組といえば、桜道会、関西共武会、稲田組の三つだろ…」
「いきなりやくざの話ですか」
「縄張り争いということで抗争が絶えない」
「それが何か関係が?」
「抗争に消費される『弾丸』はどんどん警察に捕まって、組の消耗が無視できない状況まで来た、ということでもう抗争はやめて、縄張りをしっかり決めようということになった」
「その『決め』に麻雀でも?」
「そう…。でその代打ちに、桜道会には竜、共武会には白虎、稲田組にはアカギが選ばれた」
「もう一人は?たしか傀は…」
「参加するよ。実はこの『決め』を持ち出したのは清澄の竹井でな…竹井の要求は暴力団全員長野県から出てけ、ということで、清澄もその勝負の場につく。傀は清澄の代打ちだ」
「まさか…」
「話は長くなったが、合宿は『その宿』で行おう。竹井と話を合わせておく」
「ええ!?大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫」
◆
こいつらとはもう何回も打ったが、一度もラス以外をとったことがない。だが、今日は負けられない。なぜなら、今日は風越の超美人さんと、超巨乳さんがこの対局を見ているからだ。
四校合同合宿、その初日。俺ら清澄は部長の用事もあり、宿に一番についた。部長たちの用事も終わり、合宿の集合時刻までまだ少し時間があったが、俺たちは卓を囲った。意外にもこの勝負を持ちかけたのはアカギだった(普段は俺が持ちかけてる)。
場決めが終わり、賽が振られ、配牌が終わったあたりで、他の三校が部屋に入ってきた。部屋はギャラリーで埋め尽くされた。
東一局
東(親) 傀 25000
南 須賀 25000
西 アカギ 25000
北 竜 25000
ドラ {1}
須賀 配牌
{二三七九⑨39東南北白発中}
いい女の前では負けられない。それもある。勝っていいところを見せてキャッキャウフフしたい。それもある。だが個人戦、俺が運だけで全国に駒を進めた、と同じく個人戦で全国行きを果たした二人(原村和さんと福路美穂子さん)には思われたくなかったからだ。(咲もいるけど)
こいつらには感謝している。毎回毎回ぶちのめされてるが、それでも俺は少しは強くなれている気がする。だからこそ個人戦勝ちすすめれたと思う。だからこそ、強くなっているからこそ、こいつらには勝ちたい。今度こそな。
第一ツモは{白}。傀の第一打は{白}。流すか?この配牌。いや…『流れ』を見たい。流さない。なら何に向かう?何を切る?本当にこいつらだからだよな。こんなに第一打で考えるなんて。早くきらねーと竜から「早く打ちなよ、時の刻みは」うんたらかんたら言われちまう。だが、第一打ロンもあり得なくないからな…。ということで俺の第一打は現物の{白}。
打、{白}は第一打ロン(人和は認めていないが)の警戒(普通ならバカバカしいな)もあるが、仮に後に国士に向かうとしたら、少しは迷彩になる、って理由だ。こいつらには大して意味はないが、食らいつくって点でもやはり前向きにいかなきゃな。
次巡、今日は来てるのか?ツモは{白}。
これなら、本当に東一局で国士?
いい予感もするし、嫌な予感もする。国士に行くなら{二}、{三}、{七}、{3}の何れかに手をかけるが、俺はなるべくならこの{3索}は切りたくない。その理由は竜にちょっとしたトラウマがあるからだ。
竜が{3}を鳴く…。そしたら竜は必ず緑一色をあがっちまう。竜が{3}鳴いたら、もうアカギも傀も止めれない。というかなぜか俺が振り込んじまう状況ができちまう。それだけは避けたい。俺は打{七}を選択した。
捨て牌は、2巡連続傀と同じ。
3巡目 須賀手牌
{二三九⑨39東南北白白発中} ツモ {発} 打 {三}
4巡目
{二九⑨39東南北白白発発中} ツモ {北} 打 {⑨}
4巡目、対子の重なりから、俺は国士を捨てた。しかしなんだ…これは。
東家 傀 捨て牌
{白七三⑨}
西家 アカギ 捨て牌
{南西⑧⑨}
北家 竜 捨て牌
{八八四[五]}
4巡目にして嫌な気配…。筒子か索子の染めに向かっている竜はともかく、4巡連続傀と同じ牌を、俺が捨てていることだ。(マネ満は認めていない)これは弱気からくるものなのか?
負ける?
まさか一局で…。
おいおい、らしくないぞ須賀京太郎、緊張しているのか?うしろに美少女がいるだけで。振り込んだらかっこ悪いって…。いや、そんなことはない。手なりで進めたら、偶然傀の現物を切っていた…それだけ……なわけないよな。
つまり、一局目で仕掛けてきやがった、ってことか…。
5巡目 南家 須賀 手牌
{二九39東南北北白白発発中} ツモ {9} 打 {中}
6巡目
{二九399東南北北白白発発} ツモ {南} 打 {二}
無駄ヅモ無し。ホンローチートイが見えてきた。
だが、相変わらず俺の捨て牌は傀と同じ。俺の心の弱さを、付け込まれている?だが、手がそうなっちまっている…。鳴くに鳴けない手牌…流れを変えようにも変えれない。
この局は降りるか?いやダメだ。これだけの『もの』をもらっておきながら行かないなんて、それこそかっこわりい。まだ…。
「ポン…」
同巡、傀が鳴いた。アカギが切ったドラの{1}を鳴いた。打{九}。
仕掛けてきた?何を?わからない。
ツモ番が回ってきた。ツモは…{西}。アカギが二巡目に切っている{西}。
今切り飛ばせる牌は、{九}、{3}、{東}、{西}…。自然と{九}に手をかけてしまう自分がこえぇ…。いや傀が、か?
なら流れを変えるためにそれ以外を切るか?{3}は?ダメだ。
北家 竜 捨て牌 {八八四[五]④}
索子の染めが…臭う…。(普段はそんなこと思わないんだろうな)
{3}をポンなんて十分ありえる。{東}は?生牌だ。切りたくない。
なら、アカギの現物の{西}なら…。俺は{西}に手をかけた…。
(『御無礼』
東家 傀
{一一一①①①東東西西} ポン {1横11} )
…!!?
今のイメージ。
あたりか?{東}、{西}…。
嫌、考えすぎだ…と前の俺なら思ってた。だが、この『予感』は、個人戦で相当助けられた。今は、この『予感』を信じる。だが、結局切ることになるのか、この{九}…。
同巡アカギは打{二}………。そして…。
「リーチ」
相変わらずだ。こっちが傀や竜にばっかり気を取られてたら、いきなりきやがる。まったく気配がない。距離が離れてると思ったら、いきなり背後に居て、ポンと肩をたたいてくる。そういう寒気のする麻雀、相変わらずだ。
しかし、まだ東一局なのに、なんだ?全員エンジン全開か?やくざの代打ち勝負、不完全燃焼だったのか?
さらに同巡竜打{⑧}。やはり索子。というかこいつはど真ん中というか、生牌でもなんでも躊躇いもなく切って行く。だが、殆ど振り込まない。部長曰く、振り込む時は何らかの意図があって、つまりわざと、らしい、見えているのか?
そして…。
「カン」
鳴いた。傀がツモ切った{⑦}を鳴いた。索子じゃ、ない…。というか傀が鳴かせるなんて、傀は張っているのか?やはり。
「カン」
今度は暗槓。{②}。
「カン」
連槓…。{⑤}。そして打{③}。
テンパイ…だよな。まだ10巡にもなってないのに、なぜそんなに牌が固まっている。相変わらずだ。相変わらずの、強運。
北家 竜 手牌
???? 大明槓 {⑦⑦⑦横⑦} 暗槓 {■②②■} 暗槓 {■[⑤][⑤]■}
捨て牌
{八八四[五]④⑧}
{③}
新ドラ {3} {7} {9}
クソ…。索子は王牌にでも固まってん…のか?
傀の番。傀はツモった時、一瞬手を止めた。
何かを言おうとしたように見えたが、それをやめ、ツモ切った。
切った牌は{一}。まさかアガリ放棄?それとも暗槓?(俺の『予感』通りなら暗槓か?)
南家 須賀 手牌
{399東南南西北北白白発発} ツモ {西}
打{3}か{東}でテンパイ…。
須賀 捨て牌
{白七三⑨中二}
{九}
西家 アカギ 捨て牌
{南西⑧⑨中1}(東家ポン)
{横二}
北家 竜 捨て牌
{八八四[五]④⑧}
{③}
東家 傀 捨て牌
{白七三⑨中二}
{九⑦}(北家カン){一}
思い返してみるに、傀の打{⑦}、打{一}以外、全員全部手出し。
やはり、エンジン全開、だったのだろうな。
そして、全員テンパイ、か。
思い返してみるに、やっぱり俺はビクついていたんだな。美少女が後ろにいるってだけで。まだ東一局だが、エンジン全開の三人に対し、俺は戦ってるって感じがしなかった。悪いな。アカギ、傀、竜。
さあ、どっちを切る?
{3}か{東}。両方生牌だ。降りはしない。この一打くらいは勝負しないとな。
かつての俺なら、竜は混一だから、待ちは字牌。{3}は通る、って思うんだろうな。
竜の待ちは{3}だ。
ヒントは俺の心。竜は相手の心の終着点を読む。
なら{東}か?{東}は『予感』では傀のアタリ牌だった。だが、今その線は消えた。({東}{西}のシャボの形は現在存在しない)なら、状況は予感を超えている、ということか。
だとしたら、{東}切り…。
・・・・・・・・・・
俺は{3}を選択した。『予感』はあくまでも今の俺の力。
上に進むなら、変わらなきゃならない。
だからこそ、あえて俺は『予感』、つまり一秒前の俺を信じない。予感前提の推理を信用しない。あいつらに並び、いつか追い越すために。
・・・・・・・・・・
三つの声がそろった。
東家 傀 手牌
{一一一九九①①①12} ポン {1横11} ロン {3}
西家 アカギ 手牌
{三四五六六六3777789} ロン {3}
北家 竜 手牌
{③③③3} 大明槓 {⑦⑦⑦横⑦} 暗槓 {■②②■} 暗槓 {■[⑤][⑤]■} ロン {3}
・・・・・・・
「三家和は流局だったよな。さあ東一局一本場、行こうぜ!」