アカギ、傀、竜が清澄高校麻雀部に入部したそうです   作:叶芽

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#12 竹井久 その1

 

 やくざの縄張り争いに一段落したことに私は安心した。

 打った半荘は三回。結果は、関西共部会の代打ち、白虎の一人負けで、他の三人は同点となった。

 その闘牌を見た組長さんたちが感動して、関西共部会を除いて、二組で領土を二分する形で落ち着いた。もちろん、私たち清澄高校付近には入ることを禁止した形。

 正直言って長野県から出ていってほしかったけど、うまくいかないものね。

 でも、緊張から解き放たれた私は、心置きなく四校合同合宿を楽しめることになった。三人には感謝している。

 

 四校合同合宿の目的。それは、私たち清澄の強化が第一だけど、県大会決勝、共に戦った者同士の親交を深める意味もある。

 リベンジに燃える人も多いからか、勝った側の私たちが招待する形になったけど、快く承諾してくれて嬉しかった。

 また藤田プロや、風越のコーチも混じり、ある調査をする目的もある。

 合宿初日、長旅の疲れなどを理由に、全員を自由時間にして解散させたけど、正直な理由は私自身疲れていたのもあった。

 部屋に戻った私は倒れこむように寝た。

 まだ昼の三時だったけど、そのまま翌日の朝の六時、つまり現在に至った。

 誰かが毛布をかけてくれていた。まこだろうか。アカギ君なら嬉しいけど、それは無い…かな。

 合宿のメニューは九時からで、それまで少し時間があって、とりあえず湯に浸かりたかったものだったから私は温泉に向かった。

 まだ早いにも関わらず、先客がいた。アカギ君だった。

 ちなみにここは混浴で、殆どの時間は女子の誰かがいるものだから、アカギ君は人のいない時間を狙ってきたのだと思う。

 つまり、私はついていた。

 アカギ君は奥の方の湯に浸かっていて、朝の山の景色を眺めていた。私はその隣まで行った。もちろん、タオルで隠すところは隠している。

 

「やっほー、アカギ君」

「あ…おはようございます。部長」

 

 びっくりした様子ではなくて少し残念だったけど、心の中ではどうなのか、やっぱり気になった。

 

「にしても早いね」

「部長こそ」

 

 会話はそこで止まった。

 その後は、私もアカギ君もぼーっと景色を眺めていた。

 とてつもなく静かで、とてつもなく幸せな思いに包まれた私は、自然を頬が緩んだ。

 しばらく時間が止まってくれたら…。そんなお姫様のような馬鹿げた妄想が自分にも訪れる日が来たことに、私は感謝した。

 しかしそんな幻想も数分で解体された。

 

「アカギー!」

 

 耳に障るサルのような声が背後からしたと思ったら、その音源はアカギ君の後ろから抱きついた。タオルで隠すべきところも隠さずに。もっとも、隠すほどの胸も無かった子供だったけど。

 

「あ?なんだ?天江か…」

「アカギ!遊ぼう!」

 

 ちょっと…馴れ馴れしいんじゃない?

 

「天江さん…どうしたのこんな時間に」

 

 なるべく笑顔を保つつもりで話しかけたが、たぶん、笑っていなかったかもしれない。

 

「衣はアカギを探しに来た。部屋にいなかったからな」

「合宿のメニューは九時からよ?その時間になれば、嫌というほど打てるわよ」

 

 帰れ。

 

「衣は早くアカギと打ちたい!」

 

「ふー。やれやれ…。とりあえず離れろ…。打ってやるから…。今からな。部長、動かせる自動卓あります?」

「え…えぇ一応…でもアカギ君ちょっと待って面子はどうするの?」

 

「二人でも麻雀はできますよ。あの『二人麻雀』…東西戦メンバ-選出の、テストでやった」

 

「あ…そっか…。でも待って……。私も混ぜて」

 

 かつて…私はその『二人麻雀』をアカギ君とやったことがある。

 あれを、なぜか他の女の子とやってほしくなかった。

 

「別にいいですけど。部長どうかしました?」

「なんでもないわよ!」

 

 今……もーれつに私は…

 

 

 天江衣を潰したかった…

 

 

 

 

 面子はなぜか四人になった。

 見かけた風越の部長さんが、私も入れさせてくださいって。

 その人は個人戦優勝者で全国に駒を進めた人で、アカギ君や天江衣のような相手と打ちたいのはわかるけど、どうもそうには見えない。

 さっきから私の方をチラチラ見ているような…。

 でも、この子とももう一度打ってみたかったのもあったから、まあいいか。ということにした。

 どこかで見覚えがあるような。でも思い出せない。

 計八つの自動卓のある広間にたったの四人。場は当然の如く静かで、わずかな音も広間に響いた。やけに緊張感のある空気で、まるで県大会の再現だった。

 誰か、2、3人でもいいからギャラリーが来てくれないだろうか。この重い空気…好きだけど、今は気分じゃない。

 

「アカギ、前の衣と思うなよ」

 

 賽のボタンを押した天江が切り出した。

 

「ふーん……どう違うんだ?」

「衣の支配は、もっと広がったぞ」

「……広がった…か。あれから……。……楽しみだな」

 

 広がった?たしか彼女の支配は『海底撈月』。

 他者のテンパイ率を下げ、自分は海底であがる…。そういう力。でもそれは、満月の夜ほど高くなるもので、朝の現在ではその支配は格段に落ちるはず。

 それが、広がる?

 

「あの県大会決勝の後半みたいな感じかな?」

 

 一応、質問してみた。

 後半の天江の支配は『海底撈月』とは明らかに違う、『豪運』による圧倒的支配だった。その支配を『ものにした』としたら…。

 

「いや『アレ』はもう衣には無い。アカギに『打ちこんだ』からな…。それに『アレ』は衣のではない。だが『コレ』は衣のものだ」

 

 『打ち込んだ』…。オーラスのあれか。唯一支配の届かなかった裏ドラ。その直撃を受けて、天江の中で何かが変わったのだろうか。

 

「アレとかコレとかわかんないなぁ」

 

「打てばわかる」

 

 いちいちカンに障る。まあいいわ。

 

 『ソレ』もろ共叩き潰してやるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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