アカギ、傀、竜が清澄高校麻雀部に入部したそうです   作:叶芽

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#19 竹井久 その2

 

 

 

 

「こんいちわー。きちゃいましたー」

 

 その日の午後、高遠原中学二年の、夢乃マホ、三年の室橋裕子が参加した。彼女達は原村和の後輩。竹井久がこの合宿に招待し、見学を許可した。

 

「せっかく来てくれたんですから、彼女達にも打たせてあげませんか?」

 

 その時、丁度対局を終えた福路美穂子が久に対して言った。久もそのつもりだったらしく、あっさり許可した。

 

「そうね…じゃあ、原村さんと…あと宮永さん、あなた達、マホちゃんと打ってくれるかしら。福路さんと一緒に」

 

 久は対局待ちをしていた和と、竜との対局を丁度終えたばかりの咲を呼んだ。マホと打つ相手は三人とも、個人戦で全国出場を決めた者たちだった。この合宿は彼女達のためのものでもあったため、久はどの道打たせるつもりではいた。

 

「まこー。始まるわよー」

 

 久は染谷も呼んだ。ただ打たせるためではなく、彼女にこの対局を見せるためである。

 

 

 開始された。

 

 ※席順はタチ親の咲から和、福路、マホの順

 

「何かあるんですよね。アイツ」

「衣も何か感じたぞ」

「あらアカギ君に天江さん。まぁ、そんなところよ」

 

 アカギや衣もその対局を観戦しに来ていた。

 

 「カン」「……ツモりました!」

 

北家 マホ 手牌

 

{22678四六③④⑤} 暗カン {■八八■} ツモ {[五]}

 

 東一局、6巡目という早い段階で、マホが嶺上開花をツモりあがった。

 

(今のアガリ……竜君?……いや、私……?)

 

東家 咲 手牌

 

{六七⑤⑥⑦234西西西白白}

 

 

 続く一本場

 

「リーチ」

「あっ…ポンします!」

 

 和の先制リーチ、切った{1}に対してマホが鳴いた。牌が微かに、青白く閃光った。

 

(今のは…竜君……もしかしてこの子……)

 

 二局目にして咲は気付き始めていた。その局もマホはあがった。和からの倍満。

 

(相変わらずですね、マホちゃん)

 

 東二局にして残り6000点を切った和だが、動揺の様子も無く点棒を支払った。

 そして東三局

 

「…リーチ、します!」

 

 南家 マホ 手牌

 

{四四四②②②⑦⑦⑦88西西}

 

 ツモり四暗刻の形でのリーチ。しかし、彼女は2巡後に咲から切られた西を見逃した。

 (いりません…ここであがるのは、違います)

 

 マホはそう思った。だが

 

「ロン。12000です」

 

 結果は和への振り込みで終わった。

 

「あ…あうぅ…」

「夢乃ちゃん、さっきの{西}であがれたよね?どうしてあがらなかったのかな?」

 

 しょげるマホに対して、福路が言った。

 

「ここであがるのは、違うって思ったのです」

「間違いではありません。マホちゃん。その形なら、あがれる時にあがるべきです」

「でも……そこの白髪の人なら…見逃していたと、思います」

「アカギ君よ」

 

 久が紹介した。

 

「はい。県予選で観たアカギ先輩がすごくて、マホもあーいう風に打てたらって思って…」

「アカギ君はどう?今の見逃してた?」

「ククク……見逃すも何も、まるで状況が違う……」

「それってどういう意味?」

「一局限りじゃないんだぞ。アカギの麻雀は」

 

 衣が言った。

 

(あーやっぱりわかっちゃったか。さすがアカギ君。早いなぁ。それに、天江さん、相変わらずアカギ君にべったりだなー)

 

 そうは思いつつも、今はもう衣に対しての敵意は無い。衣のアカギに対する感情は、自分のものとは種類が違うことを、前の対局で知ったからだ。

 

「仮に見逃したとしても、その見逃しは勝負の最後までを見通した上での見逃し。その局にアガれるアガれないは関係ない。振り込んだって構わないさ」

「オカルトですね」

 

 和が言った。

「マホちゃんはいつもそうでしたね。私や優希の打ち方を真似ても、うまくいくのは一日に一局、あるかないか…」

「あうぅ…」

「人のまねの前に自分自身の実力の底上げをした方が…」

「原村さん、ちょっと言い過ぎでは?」

 

 福路が言った。

 

「そうですね。言い過ぎました。……マホちゃん。あれから四ヵ月、どれだけ成長したか。これからですね」

「はい!」

 

 しかし、そこから半荘計3回行ったが、マホは結局4位に終わった。それは、彼女自身がビギナーだったのもあるが、咲達の合宿での成長も関係していた。

 マホは竜やアカギ、傀の模倣もしていた。合宿前の咲や和だったら、自分の麻雀を乱していたかもしれない。だが、この半荘3回、彼女達の麻雀に乱れは無かった。異能、自分を超える力に対しての免疫力。それがこの合宿で付いたと言える。そして

 

(これでマコのレパートリーの幅も広がったわ)

 

 染谷は紡錘状顔領域で、人の顔を覚えるように卓上全体をイメージとして記憶する。彼女に必要なのは全国レベルの牌符だけでは、不十分だということを、先の県大会で証明された。故に初心者、それも特殊な初心者も、彼女に見せる必要があった。

 これで染谷まこも、この合宿で成長したことのなる。

 

 

 

―――じゃあ私は?

 

 そして、残るは自分自身のみ。

 

(私は……どう成長したかな?……もう合宿もあとわずか。私は……後、『誰と打てばいい?』……自分が強くなるために)

 

 そう考えた彼女は行動に移した。

 

「宮永さん、天江さん。これからいいかしら?」

 

 久は、まず咲と衣を選んだ。彼女が欲していたのは、異能の類。全国には、当たり前のように居るであろう超人。現実離れした力を持つ者。彼女の頭に真っ先に浮かんだのは、この二人だった。風越に一人。龍門渕に一人。そして…

 

(鶴賀には……?ゆみ?……いや……)

「桃ちゃん……居るかな?」

 

 彼女は鶴賀の部屋に足を運び、桃子の名を呼んだ。彼女の姿は視えない。

 

「居るっすよ」

 

 彼女が姿を現した。

 

「これから、私と一回打たないかしら」

「いいっすよ」

 

 久が桃子を選んだ理由は、彼女の麻雀だけ『わからなかった』からだ。

 久は合宿中、他校の生徒、その全てと打ち、その牌符と打ち筋をノートに記録していた『にも拘らず』、桃子のページだけ何も記載されていなかった。白紙。確かに『打った』記憶はあるにも関わらず、彼女の牌符、打ち筋がまったく記憶にないのだ。

 これは、久が覚えていなかったからだろうか。忘れてしまったからだろうか。否。彼女はそう考えなかった。東横桃子は明らかな異能の類。咲や衣と並ぶ『わけのわからない何か』を持つ者。そう推測した。

 

 

 

 

 

 席順はタチ親の久から衣  咲の順となり、対局は開始された。

 

 

東一局 親 久

 

久  25000

衣  25000

  

     

咲  25000

 

 

 

 その日の夜は、満月で、衣にとっては最高のコンディションだった。

 

(力は充盈している……だが……なんだ?……これは)

 

 はずだった。

 今の衣の調子なら、間違いなく全ての手牌、山は視えているはずである。だが

 

(全員の手牌は視える…間違いなく視えている………だが山に……『黒牌』があるのは何故だ?)

 

 山の四分の一の牌が黒牌。しかも一定に規則的にの並んでいるのだ。これまでの衣には『こんなことなど』なかった。衣にとって視えない黒牌があるとすれば、同じ牌、例えば四枚ある白のうち、2から3枚が黒牌、というケースである。故に山の黒牌の位置は必然的に不規則になる。

 ある意味『場の異常さ』に最も早く気付けたのは衣であった。しかし、その『答え』にはどうしてもたどり着けなかった。何かが『衣の思考』を邪魔をしている。

 

(風越か?それとも清澄……この『二人のうちのどっちか』が、衣の力を…。だが前、清澄のこいつと打ったときはこんなことなかった。ということは、この風越の……)

 

 だが、その局は『衣の支配』の局。手牌、山を見れば明確。衣以外の者はその局、聴牌にはたどり着けない。

 

「ツモ!20004000!」

 

 海底1巡前リーチからの一発ツモ。東一局は衣の満貫ツモからスタートした。

 

(衣…衣さん……県大会決勝でもそうだったけど……すごいなぁ…)

 

 合宿中、咲は殆ど竜と打っており、衣はアカギと打っていた。この対局は、彼女達にとって初対局である。

 

(でも……)

 

「ポン」「ポン」「ポン」

 

 東2局、咲は下家の久から中張牌牌を三副露した。

 

???? ポン {22横2} ポン {三三横三} ポン {⑧⑧横⑧}

 

 

 

(な……なんだ、これは?何が起きている?)

 咲が鳴くたびに、衣は自分の眼を疑った。ここが現実の世界に思えないほど、理解しがたい状況が現出していた。

 衣が驚愕したのは、咲が鳴くたびに、山の『黒牌』が増えていったことである。三副露した頃には、王牌以外の全ての牌が黒に染まった。

 まるで、自分の異能が何者かに侵略されるような感覚。しかし彼女が真に恐怖したのは、その原因である『何か』が近付いてくる気配すらなかった事である。

 

(これが風越の……あの者の力だというのか?)

 

 そして咲の手牌も、次巡、さらに次巡と黒に覆われていった。

 

「カン」

 

 半ば混乱状態の中で切られた衣の{8}を、咲は明カンした。そして嶺上牌の{三}を加カン。

 

「ツモ、嶺上開花。8000です」

 

 東2局は咲の満貫。衣の責任払いとなった。

 

 

―――

――――

―――――

 

 『続く』東3局『2本場』、またも衣の海底ツモ。3000・6000の二本場。衣はトップに躍り出た。

 

久  17800

衣  21300

  

     

咲  15800

 

(嶺上の花が咲き、海底の月が輝く、か…。花天月地ね……)

 

 面白い、楽しい、合宿最後の対局がこの子達とでよかった。脳内を駆け巡るプラスの感情。久は笑みをこぼさずにはいられなかった。

 

「ツモ!2000、4000!」

 

 彼女も負けじと異質の和了。悪待ちのツモあがり。負けていない。自分の力は異能に負けていない。悪待ちなら『勝ってしまう』。それが竹井久。この力は、全国でも通用する。彼女はそう思った。

 そして南一局。

 

(何か……おかしい……)

 

 カンが出来ない。それだけなら、今の彼女は気にもしなかっただろう。だが、

 

(一枚も見えないなんて……あるの?)

 

 カン材の在りかが、東2局以降、そしてこの局、まったく見えない。疲れているのか。否。これは『天江衣』の力の一環だろうか。それとも清澄の『竹井久』。これが…全国区の力なのか。

 だがこの局は、衣の支配、その潮が引いている局だったため、咲は聴牌し、久から5200を奪うことが出来た。しかし、不本意なあがりであった。

 

(何かが引っかかる……でも、全国ではこんな思いの中で戦うんだろうな。その中で、勝つんだ)

 

 咲はそう思うことにした。

 

―――

――――

―――――

 

 『南3局』

 

(ん?なんだ?何で衣の前に点棒がある?)

 

 衣の前には、満貫分の点棒が置いてあった。

 衣は既に牌を倒していて、役はまたもリーチ一発ツモ海底の『ようだ』。

 

(いつも間にか、あがっていたのか?何だ、これは……)

 

「風越の…これはお前か?それとも清澄か?」

 

 衣は訊かざるを得なかった。

 

「え?これって、今あがったのは衣ちゃ…衣さん、ですよね?」

「そんなことではないぞ……衣は……あがった気がしないんだ」

「え?」

 

 声が、震え始めていた。これはまるで県大会でアカギと打っていた時のような、何かが、『もう手遅れな何かが』近づいてくるような。

 だが、この半荘もオーラス。現在トップは天江衣。その次に竹井久。そして宮永咲。

 

南4局 親 咲 ドラ {⑨}

 

久  16600

衣  23300

 

      

咲  13000

 

(天江さんの言っていることがよくわからなかったけど、その天江さんとの点差は6700。3900の直撃でいいけど、ロン出来る気がしない。ツモなら、1600・3200…)

 

 衣の『完全なる支配』は連続しない。合宿中彼女と何度か打っていた久はそのことを知っている。故にこの局、聴牌出来ないことは無いし、必ず衣が海底であがるというわけでもない。

 そのことは衣自身も理解している。だからこそもう一つの力を使い、支配の無い局でも、山、手牌から以後の展開を予測ながら打っている。だが現在、山や手牌が完全に見えず、鳴きが入るたびに黒牌が増える。中途半端な予測は逆に自分に不利になることをアカギとの戦いで思い知らされた衣は、事実上かつての力だけで戦うしかなかった。

 

 その局、最速の手を欲していたのは咲だった。この面子の中、じっくりと高い手を簡単に作れるとは思っていない。故に鳴いた。衣から{①}、久から{⑧}。そして瞬く間に増える黒牌。

 

「リーチよ」

 

 そんな中、久から入ったリーチ。

 

南家 久 手牌

 

{222⑦⑦⑦四四四六六六六}

 

 四暗刻を捨てての嵌{五}の穴待ち。しかも{五}は河に二枚捨てられており、残り二枚。

 

(でも、こっちの方が『勝つ』わ…。それが私……)

 

 久は思った。

 そして、次巡一発で和了牌の{[五]}。赤の方を引いてくる。

 

(ほら……これで勝ち……………)

 

 

 

(勝ち……よね?)

 

 

 

 

(リーチ、一発ツモ、タンヤオ、三暗刻、赤1の倍満確定。裏次第では3倍満にもなるわ。これで……)

 

 

 

 

―――勝ち?

 

 

 

 

(本当に、それで通用するの?)

(現に、アカギ君たちには負けているじゃない)

(駄目……。何か違う………。変えなきゃ)

 

 

 久の手が走った。気がついた時には、{[五]}萬を捨てていた。不合理、意味不明の行動。彼女はそれでも、この『何か』に身を委ねた。

 

(私は信じているの?それとも捨てているの?)

 

(あがりではないのか?)

 

 衣はその牌が和了牌であると感じていた。しかしその和了牌を彼女が捨てた理由を探るために、その全てが分かるわけでは無いが、衣は久の手牌を見ようとした。

 

(イヤ……視るな……相手の手牌を視てしまうと、またアカギの時のようになるぞ…)

 

 しかし衣は感覚を優先し、思考を排除。彼女の手から目を逸らした。しかし、それ故に『咲の手牌をまったく視ていなかった』

 

 衣から切られた{西}。

 

「カン」

「しまっ……」

 

 衣は言葉を漏らした。

 

 

―――――

――――――

――――――――

 

 

 

 

「もういっこ…カン……」

 

 咲は既に鳴いている{①}、{⑧}のうち{①}を加カンした。だが…。

 

(ツモれ……ない……?)

 

東家 咲 手牌

 

{七七七八}  加カン {①横①(横①)①} ポン {⑧⑧横⑧} 大明カン {西西横西西}  ツモ {九}

 

 正確にはツモりあがっている。しかし、咲の望んだ牌ではなかった。これでは、役は嶺上開花のみ。ツモを宣言し、新ドラが開かれ、もし乗れば逆転。乗らずとも連荘は確定し、決着次局以降に持ち込める。

 咲は一つの分岐点に居た。

 彼女自身、確実にわかっていることは、『感覚を乱されている』ということだった。ここで{七}をツモり、カン、そして{九}をツモり、単騎待ちを変える。トイトイ、三槓子の親萬。これであがれば、トップの衣を抜かし、トップで終了。その感覚が乱された。それは間違いないのだ。

 

(違う……)

 

 咲は{八}を切った。

 

(勝つなら……私は、私を信じた上で勝ちたい。竜君なら…こんなあがりはしない)

 

 彼女は新ドラの可能性を捨てた。信じることのできない自分に、自分を委ねることが出来なかった。

 新ドラは{4}と{8}。咲に新ドラが乗ることは無かった。

 

(残りの『{七}』は……いったいどこ?)

 

 

 そして……

 

 

―――ここっ!

 

 

 決着をつけたのは竹井久。最後の{五}をツモり、牌を倒した。

 

 裏ドラ三枚のうち、最初の一枚は{②}、つまりドラは{③}で乗らなかったが、後の二枚は両方とも{1}。ドラは{2}。ドラを対子で乗せた。

 

「リーチ、ツモ、タンヤオ、三暗刻…ドラ6で……6000と12000。終了ね」

「!?やっぱり、さっきの{五}であがっていたじゃないか!逆転も出来た。なぜ切った?」

 衣が言った。

「その……なんだろう……私でも……よくわからないのよ。ふざけているわけじゃないの。だけど、手がそう走ったのよ……」

「わかります」

 咲が言った。

「私もさっきツモってたんです。連荘も出来ました。でも、何か違うなって思って」

「二人の言っていることが衣にはわからないぞ」

 

 

「いや……いい勘してるっすよ」

 

 

 そこから声がした。

 

 

「え?」

 

 三人はそこを見た。そこには東横桃子が居た。

 

「はい、清澄の部長さん。私この局リーチしてたんで、リー棒も…。これで逆転っすね」

 

 

 

久  41600

衣  17300

桃子 40100

咲  1000

 

 

「何……?……え?」

 

 

「『だから』……私がみえなかったって事っすよ。でも、それでも勝った。すごいっす」

 

 彼女の表情に落胆の色は無かった。寧ろ、何かに納得していたような表情だった。

 

「私、なぜ傀さんに負けたのかどうしても理解できなかったんすよ」

「え?……ああ、あの時の?」

「はい。あの時の私は、負ける気がしなかったっす。今回もっすけど。でも負けた。傀さんも、清澄の部長さんも、私ではなく『勝ち』そのものをみていたんっすね」

「何を言っているかわからないぞ」

 衣が言った。

「点……みてください。卓も……もうみえるはずっすから」

「あ……」

 

 咲は気付いた。桃子の場を見ると、彼女は既に、暗カンをしており、リーチもしていた。

 

「だから、私は{七}をツモれなかったんだ」

「{七}っすか?私が嶺上でツモった牌っすね」

 

北家 桃子 手牌

 

{七八②③④678東東} 暗カン {■99■}

 

「わ……解ってきたぞ……黒牌が増えて行ったのも…、あがった記憶が曖昧だったのも……」

 

 衣の震えは明確だった。

 

「怖い……っすよね……」

「違うぞ!奇幻な手合いがまた増えて、衣はうれしい。もっと、もっと遊ぼう!」

 

 衣の震えは、歓喜の震えだった。何故、今までこの者を知らなかったのか。

 桃子にとって、意外な反応だった。だが、悪くはなかった。

 自分は、一人じゃない。

 

 

 

「よかった……間違ってなかった……間違って……なかった……」

 

 久も嬉しさを表情に出していた。

 最後に打ったのが彼女たちでよかった。

 全国で戦うために『変わって』、良かった。

 

 

「そうね……もう一局打ちましょ」

 

 久が言った。

 

「私も、負けたまま終わりたくないです」

 

 咲は靴下を脱いだ。

 

「夜はこれからだ。ここからが、衣の本調子だぞ」

 

 衣は己が高揚とともにスタートボタンを押した。

 

「怖いっすね。じゃあ私はまた『消える』っすね」

 

 桃子は、今度は胸を張って『消えた』。

 

 

 

 

 

 

 その晩、彼女達は時間の限り打ち続けた。

 もうこの時間が、二度と来なくてもいいと思える程。

 

 

 

 

 

 

 

―――

―――――

―――――――

 

 

 

 合宿は終わり、そして……

 

 

 

 8月

 

 

 

 全国の猛者たちが一つ所に集う

 

 

 

 インターハイが始まろうとしていた

 

 

 

 

 

【第二部】合宿編  

 

 

 

 

  おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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