アカギ、傀、竜が清澄高校麻雀部に入部したそうです   作:叶芽

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#3 地区大会決勝 副将戦

 

 

―副将戦―

 

清澄・竜(西家)

風越・咲(北家)

龍門渕・透華(東家・親)

鶴賀・東横(南家)

 

 

 龍門渕の副将は、静かだった。

 俯いていて、震えていて、そして暗かった。

 あの絶望的点数を考えれば、よくここまで来れた、と見ることもできるけど…。

 次鋒戦では奇跡的アガリを連発出来ていた。でも中堅戦、せっかく稼いだ点数を風越に狙い撃ちされ、奪われてしまった。

 結局その龍門渕は現在約六万。副将、大将での逆転は困難。あの清澄のことも考えれば、この回での終了もありえる。気持ちは分かる。

 対面の風越はその逆。瞳に自信が満ち溢れていた。早く打ちたい、そう聞こえてきそうだった。龍門渕もそうだったけど、風越の副将も前の試合で他校を飛ばしていた。しかも現在トップ。警戒しなないと。

 そして、清澄の男子。彼も静かだった。しかしそれは暗いというわけではなく、冷たかった。私ともどこか違う。そう、死体。肉としてそのままそこにある死体。そんな印象だった。怖かった。

 

「麻雀って…楽しいよね」

 

 対面の風越が口を開いた。いきなり何をわけの分からないことを、と思ったけど、あまりにも暗い気配を漂わせている、龍門渕と清澄を励まそうとしたのかもしれない。

 よけいなお世話を、と思った。三着かラスならまだしも、圧倒的トップに立っている風越の発言。

 腹立たしい。

 

「今日もいろんな人と打てて…ホントに楽しいよ」

 

 風越は続けた。

 

「いっしょに楽しもうよ」

 

 誰も返さなかった。当然だと思う。風越は少しおどおどしていた。

 そして、対局は開始された。

 

「ツモ、嶺上開花。70符2ハンは1200・2300です」

 

 東一局、八巡目の出来事である。嶺上開花。私もほとんど見たことのない役を、彼女は平然と上がった。

 彼女が発声した瞬間、龍門渕がビクッと動くのが見えた。まるで、死刑宣告を受け、今日が「その日」だと看守に背中を叩かれた死刑囚のようだった。

 

「ロン。110符1ハンは、3600です」

 

 東二局、11巡目。龍門渕からの直撃だった。{発}、{①}を連槓して作った役だけど、もっと高目を狙えたんじゃないのか。遊んでいるのか。ますます、腹立たしくなった。龍門渕の瞳が見えた。涙を浮かべていた。

 

「カン、ツモ。門前清一、嶺上開花。4000・8000です」

 

 東三局、13巡目、今度は倍満。三連続上がり。そのうち嶺上開花を二回。あまりにも異常だった。龍門渕の瞳は、今度は焦点を無くしていた。

 

―東三局終了時―

 

清澄  93800

風越 167100

龍門渕 49300

鶴賀  89800

 

 東三局の上がりは、決定打のように見えた。三着の私も、さすがに、風越は抜かせない。せいぜい清澄を抜かして、少しでも点を稼ぎ、先輩に託すしかないと思っていた。

 しかし、東四局から、変化が起こった。龍門渕が、豹変したのだ。私がその変化に気づけたのは、少し後になるけど。

 

 東四局、風越から、カンの声が聞こえなくなった。普通はそうそう出来るものではないと思うけど、東三局までに四回もカンしていた。

 私の常識的感覚は、たったの数分で乱されたということになる。

 十五巡になっても風越からカンの声は聞こえなかった。寧ろ、風越の表情は困惑していた。ありえない、なぜ。そんな表情だった。

 場は静かだった。だれもポン、チーなどの発声無く、手も進んだり、進まなかったり、でも普通に麻雀していれば、よくあるようなこと。

 

「ツモ。300・500」

 

 十七巡目。上がったのは龍門渕。この点差を考えても、あまりにも低いのではないか。それとも、好調の風越の親は、少しでも早く流したかったのか。

 しかし変化は、ここからだった。

 

「ツモ。1000オール」

 

 また安い手を龍門渕は上がった。

 

「ツモ」「ツモ」「ツモ」

 

 龍門渕の連荘が四本場に差し掛かる頃、さすがに私も異常性を感じた。場は基本的静かではあるけど、上がるのは彼女しかいなかった。

 倍満、三倍満といった異常な上がりは無かった。しかし確実に龍門渕は点数を上げていた。

 その場は、まるで静かな湖。それを支配する彼女は、どこか大人びいて見えた。

 

「全然カンできないよ〜」

 

 風越がつぶやいた。やはり腹立たしかった。

 その連荘は六本場まで続き、風越からも直撃を2回奪い、いつの間にか、龍門渕はトップに立っていた。

 

 

―南一局六本場終了時―

 

清澄   76500

風越  117500

龍門渕 133500

鶴賀   72500

 

 

「あンた・・・自分の麻雀打ちなよ」

 

 七本場が始まる頃、清澄の男子が言った。龍門渕に対して言ったのだろう。

 龍門渕はその声に耳を貸さず、静かに{3}を切った。

 

 

 その時…

 

 

「ポン…」

 

 

 清澄が、鳴いた。

 

 

 鳴いた牌が、青白く光った。

 

 静かに、その場の時が止まった様な、そんな感覚がした。

 

 

西家 竜 手牌

 

 

??????????  ポン {3横33}

 

 

 次巡、龍門渕は{2}を切った。

 

「ポン」

 

 清澄が、また鳴いた。また、また牌が光った。

 その鳴きに、魂が持っていかれるようだった。美しかった。

 

西家 竜 手牌

 

 

??????? ポン{3横33} ポン{2横22}

 

 

 その鳴き以降、龍門渕の捨て牌はチュンチャン牌が続いた。ど真ん中の{[⑤]}も、{[五]}も切っていた。

 私は、国士かと思った。

 一方清澄の捨て牌からは、索子の染め手を意識させるものだった。

 

「カン」

 

 清澄が今度は{3}を加カンした。そして、嶺上牌をツモ入れ

 

「カン」

 

 また鳴いた。今度は{2}。また、嶺上牌をツモ入れると

 清澄は、{1}を捨てた。

 

「ロ…」

 

 龍門渕が発声しようとしたその時、遮るように清澄が言った。

 

「あンた…自分の『手』見なよ……」

 

 清澄の声に、龍門渕は手を止めた。

 大人のような顔立ちだった彼女はそこには無く、何か我に返ったような、そんな印象を受けた。

 彼女は自分の手牌を、ありえないものを見るような目で、見た。

 

 おそらく、やはり国士。

 そう、上がれない。なぜなら同巡。私が{1}を切っているから。

 私はその時、『すでに消えていた』。

 私はトントンと自分の捨て牌の{1}を叩き、牌の姿を見せた。

 チョンボも悪くないけど、この局は私にも手は入っていた。止めてくれるならその方がいい。

 

「・・・は?・・・え、私・・・何・・・この・・・」

 

 まるで、今までの自分は、自分ではなかったかのように。実際に

 

「こんなの、こんな捨て牌…私ではありませんわ!」

 

 と叫んでいた。直ぐに、監視役に制され、彼女はしぶしぶ座った。

 

 局は続行され、龍門渕の番がまわってきた。

 半ば混乱状態の龍門渕は、ツモってきた{8}を切った。

 

「その牌…」

 

「その牌?…ハッ……何を私……こんな牌を・・・」

 

「その牌は…あンたの親父が最期に…最期に哭かせてくれた牌」

 

「え……お父様?貴方、お父様を知って……」

 

 

 清澄は{8}を鳴いた。カンした。

 そして空にかかげた嶺上牌を、そっと卓に離した。

 

「ツモ…緑一色……」

 

 

{666発}  加槓 {33横33} 加槓 {22横22} 大明槓 {88横88} ツモ {発}

 

 

 それをアガリを観た者はすべて、そのアガリに魅せられた。

 

 大会の規定により、大明槓からの嶺上開花によるアガリは、鳴かせた者の一人払い。責任払いを適用している。よって、龍門渕は32000と7本場分(2100)を失った。

 

 

―南一局7本場終了時―

 

清澄  110600

風越  117500

龍門渕  99400

鶴賀   72500

 

 

 南二局、龍門渕は先ほどの責任払いにより、三位まで落ちることになったが、その瞳には色が戻った。十二巡目、龍門渕は叫んだ。

 

「リーチですわっ!!」

 

 先ほどまで静かで大人な雰囲気を漂わせていた龍門渕は、そこにはなかった。

 

「いらっしゃいまし!ツモ!」

 

 一発ツモ。

 

{[五]五六六七七③④⑤⑥⑦88}  ツモ{⑧} ドラ {⑨} 裏ドラ {③}

 

「4000・8000いただきますわ!」

 

 ヤミで7700ある手をわざわざリーチ。確か龍門渕の副将はデジタル(南1の連荘はあきらかにそうではないが)。違和感はあったけど、やる気に満ち溢れている彼女を見ると、それが『彼女の麻雀』なんだと思う。

 

 

 南三局。ドラは{南}。局は6巡まで進み、清澄がまた動いた。

 風越から{発}をポンし、{白}を切った。彼が鳴く牌は、鳴くたびに光った。

 風越のツモがまたやってきて、風越は{中}をツモ切った。それを彼はポンし、また{白}を切った。

 大三元に向かわないのか。そう思ったとき、またツモ番の来た風越が『また』つぶやいた。

 

「全然カンできない…」

 

 この人は馬鹿なのか。それとも『この人にとって』この状況はおかしいのか。なんにせよ、こちらはいい気にはならない。最初の『麻雀楽しみましょう』発言による相乗効果もあり、ますます腹立たしかった。

 

「あンた…口を閉じなよ…。『言葉』が…白けるぜ」

 

 彼は、風越がツモ切った{西}をカンした。

 

 そして、嶺上開花。

 

「それは…その嶺上牌はわたしの……」

 

「『見えていても』『わかっていても』負けることがある。それが・・・麻雀だ・・・」

 

 清澄は牌を叩きつけ、言った。ツモったのは{[五]}。

 

 

{五南南南}  ポン{発発横発} ポン{中中横中} 大明カン{西西西横西}  ツモ{[五]}  ドラ{南} 新ドラ{西}

 

 

 ホンイツ、トイトイ、{南}、{発}、{中}、ドラ7、赤1、嶺上開花

 親の数え役満

 風越の責任払いにより、清澄は首位になった。それも圧倒的な点差をつけて。

 

 

―南三局終了時―

 

清澄  154600

風越   65500

龍門渕 115400

鶴賀   64500

 

 

 南三局一本場は、まるで嵐が過ぎ去ったかのように、場は、平らになり流局。南四局流れ二本場。

 その結果は

 

「ロン」

「は?」

「メンタン。2600は3200っす」

 の通り

 

 龍門渕は驚いていた。それもそのはず、私のリーチが見えていなかったから。

 

「前半戦、終了っすね」

 

 

―副将戦前半戦終了―

 

清澄  154600

風越   65500

龍門渕 112200

鶴賀   67700

 

 

 

―そういえば、カメラを通してなら、私もいろんな人に見てもらえるんだっけ。この試合も、すごく多くの人が見てるんだろうな。

 

―でも、私を見てくれるのは一人でいい。

 

―しっかり見ててくださいよ、先輩。

 

 

 私は子供の頃から、影の薄い子だった。だから私は、これまでコミュニケーションを放棄してきた。辛くもなんとも無かった。それ故に、存在感の無さに拍車がかかるばかりだった。

 だけどある日私を、そんな私を、誰からも見つからないそこにいないはずの私を、大勢の人の前で叫んで求めてくれた人がいた。

 それが、先輩。目的はネット麻雀で知った私を部に勧誘することだったけど、それでも、うれしかった…。

 

 …だから、がんばるっす

 コミュニケーションのための時間も悪くない。

 それを教えてくれた、先輩のために。

 

 

 私は存在感ゼロどころではない。いわば「マイナスの気配」。そのマイナスは、捨て牌まで巻き込む。

 

 

 

 ここからは『ステルスモモ』の独壇場っすよ!

 

 

 

 

「お父様が今どこにいるのか教えてくださいまし!どうか今!」

 

 副将戦前半が終了し、五分間の休憩の間、龍門渕の透華は、竜に問い続けた。2ヶ月前に行方不明になった、父の行方を。

 

「勝負が終わったら、教えてやる。席に着きな」

「そんなこと言わずに・・・」

「龍門渕選手!席に着きなさい」

 

 五分間の休憩が終わり、透華は仕方なく席に着いた。

 

「いいですか!終わったら絶対教えるのですよ!絶対ですわよ!」

 

 竜は返さなかった。ただずっと、卓の真ん中を眺めていた。

 

 

 

―副将戦後半戦開始―

 

東一局

 

東家(タチ親)・咲 [風越]  (65500)

南家・竜 [清澄]      (154600)

西家・桃子[鶴賀]      (67700)

北家・透華[龍門渕]     (112200)

 

 

 東一局、親は風越。ドラは{九}。九巡目、透華に三面張の聴牌が入った。

 

北家 透華 手牌

 

{八八九③④⑤⑦⑧⑨234[5]} ツモ {6}

 

 この手から打、{九}。リーチを発声した。

 

「いいんすかそれ…ドラっすよ?ロン」

「え…?」

「リーチ一発ドラ1―――5200(ごんにー)っす」

 

西家 桃子 手牌

 

{七八③④⑤⑦⑦⑦789南南}  ロン {九}  ドラ {九}  裏ドラ {中}

 

「あなた!ちゃんとリーチ宣言はいたしまして!?」

「したっすよ?」

 

 桃子のステルスは、前半戦に続き、後半戦でも発揮した。

 

 東二局 親は清澄、竜。ドラは{一}。

 八巡目、竜は北家、咲が切った{①}をカンした。そしてツモってきた{④}をツモ切りした。

 新ドラは{8}。

 

竜 手牌  {②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑨⑨}  大明カン {横①①①①}

 

 竜はアガっていた。それも九蓮を。しかも、嶺上牌の{④}でも上がっており、その異常性に気づけたのは、モニターで観ていた者たちだけだった。竜の狙い、思惑は、誰にも分からなかった。

 

 ステルス状態の桃子は、すでにリーチをかけていた。暗刻の{8}がそのままドラになり、竜の鳴きに感謝した。

 そして次巡、桃子はツモ上がった。

 

南家 桃子 手牌

 

{4567888⑥⑦⑧中中中}  ツモ {3} ドラ {一} 新ドラ {8} 裏ドラ {西} カン裏 {8}

 

 裏ドラまで乗り、倍満の手になった。

 

 東三局、桃子の親番がまわって来た。

 この回も竜は鳴き、桃子はツモる。またも新ドラは桃子の味方をし、8000オール。またも倍満。

 桃子はこの時、鳴くたびに閃光を放つ竜の鳴きは、自分の味方なのではないかと思った。たった二回の出来事ではあったが、その男の放つ『魔性さ』も相まって、桃子は竜が勝利の女神に近い者ではないかとさえ錯覚した。

 不思議なことに「不用意な鳴きが、ただ相手を有利にしただけ」という考えが、起きなかったのだ。

 

 しかし、それは違ったのだ。

 東三局一本場、六巡目に竜が鳴いて以降、風越、清澄、龍門渕はすべてツモ切り、一向聴地獄になった。

 一方、桃子の牌は縦に重なっていき、最終的に聴牌。 

 形は四暗刻

 しかし、上がれずに流局。

 

「て…聴牌……」

 

 桃子は嫌な気配を感じた。聴牌したのは桃子だけであり、倒した牌を全員が、注目した。

 ノーテンと言えばよかったのか、しかし、トップまではまだ点差があり、大事な親を流したくなかった。

 

東三局一本場終了時

 

風越  52500

清澄 137600

鶴賀 115900

龍門渕 94000

 

 

 

 東三局二本場、龍門渕からリーチが入る。同巡、同じく聴牌していた桃子は龍門渕に対しての危険牌を掴んだ。

 

(もしこれが当たり牌でも、あなたは見逃すっす)

 

 桃子は切った。己がステルスを信じて。

 しかしそれはロン。8000の二本場だった。

 

「私の捨て牌が見える?みえないんじゃ…」

 

 桃子はつぶやいた。

 

「何を言っていますの?見えるとか見えないとか、そんなオカルトありえませんわ?」

 

 運さえ味方をしていると思い込んだ桃子にとっては、信じがたい事実だった。

 次局桃子は、龍門渕に親満を振り込んだ。

 一度は十一万まで増え、トップも狙えた点棒が、九万程に戻ってしまった。

 

「あンた…『過去』は捨てな…」

 

 清澄は自分のために鳴いていたのではない、曝すために、鳴いていたのだ。桃子は、そう確信した。

 

(あ~。じゃあこの人たち全員とガチ麻雀っすか)

 

 だが、桃子は落ち込みもしなかったし、やけになることもなかった。

 

(でも…それはそれで……いつもより楽しめそうっすね!)

 

「ツモ!メンピン一発ツモ。1300・2600は1400・2700っす!」

 

 東四局一本場。桃子はリーチの声も、ツモの声も、動きも、吹っ切れたように明るいものとなった。

 桃子は『麻雀』を楽しんでいた。

 

 一方、風越の咲は暗かった。副将戦開始時、自信に満ち溢れていた彼女は見る影も無かった。

 

「あンた…麻雀は楽しいものじゃなかったのか?」

 その彼女に対して、竜が言った。

 

 (麻雀は…楽しい……もの……)

 

 咲は何かを思い出したかのようにハッとした。そう、自分でも思っていたことだし、言っていたことだった。

 なぜ、自分は今そうでないのだろう。彼女は考えた。ツモれないから?負けているから?思うようにいかないから?

 分からない。明確な答えを、彼女は出すことは出来なかった。

 次に自分は楽しんでる時、自分は『どう』だったのか、それに思いを巡らした。

 家族麻雀の時、風越の合宿の時、自分はどうだったのか。

 

 合宿の時、風越女子の殆どは浴衣を着崩さず、足袋ソックスもしっかり履き、練習に打ち込んでいた。

 自分は、それは苦手だった。帯を緩くし、靴下は・・・

 

(あ……)

 

 そして、思い出した。

 

「あの…脱いでもいいですか?」

 

 咲は靴と靴下のことを指した。監視役に許可をとり、それらを脱いだ。まるで、飛ぶような感覚。自分の麻雀には、それが『まず』あった。勝ち負けは、その後だ。

 

(うんっ!おんなじかんじだよ!)

 

―東四局一本場終了時―

 

 

風越   51100

清澄  136200

鶴賀  100800

龍門渕 111900

 

 

 南一局、親は咲。

 

「ツモ。700オールです」

 

 役はツモのみ。龍門渕と鶴賀は思った。血迷ったのか、と。連荘を考えるにしても、安すぎる。

 

「ツモ。嶺上開花500オールの一本場です」

 

 南一局一本場。ポンした牌を加カンしての嶺上開花。符点も上がらない安アガリ。

 

南一局二本場 ドラは{一}

 

五巡目 咲 手牌  {233334⑥⑥⑧⑧⑧⑧三}

 

 次巡、竜が捨てた{⑥}をポンし、打{三}。龍門渕と鶴賀は、食いタンの早アガリ。親の連荘を狙っていると思った。しかし、実際は聴牌に取らないわけの分からない打ち回し。

 そして鶴賀、ドラの{一}をツモ。打{四}で聴牌。高め純チャンリャンペーコー清一ピンフ、数え役満の形。

 清澄から直撃を奪いたかったためリーチはしなかった。

 

西家 桃子 手牌

 

{一一二二三三七七八八九九九}

 

龍門渕は{①}をツモった。

 

透華 手配 {二三四五六七八九西西西南南} ツモ {①}

 

 咲の鳴きがなければ、透華は上がっていた。

 さらに次巡、{⑥}をツモった咲はそれを

 

「カン」

 

 {2}をツモ。

 

「カン」

  

 {⑧}を暗カン。{2}をツモ。

 

「もいっこ、カン」

 

 {3}を暗槓、そして

 

「ツモ。嶺上開花、タンヤオ、トイトイ、三暗刻、三槓子。8000オールの二本場です」

 

{2224}  加カン{⑥⑥横⑥(横⑥)} 暗カン{■⑧⑧■} 暗カン{■33■}  ツモ{4}

 

 2000点の手が倍満に化けた。

 自分には一生にあるかないかの数え役満を流された鶴賀は、さすがに悔しさをあらわにし、小さく卓を叩いた。

 

 三本場、十巡目。このままではまずいと判断した透華は、聴牌気配のある鶴賀に差込を試みた。差込は成就し、3900の三本場を鶴賀に差出し、風越の連荘を止めた。

 しかし、咲の勢いはまだ止まらなかった。

 南二局、親は清澄。

 六巡目に対面の鶴賀から{①}をポンした咲は、13巡目

 

「カン」

「もいっこ、カン」

「カン」

 

 またも三連続、連槓。上がった役は、清一三槓子含みの数え役満だった。

 

北家 咲 手牌

 

{④④④⑤} 加槓 {①横①(横①)①} 暗槓 {■②②■} 暗槓 {■③③■} ツモ {[⑤]}

 

 このアガリで、咲はトップに立った。

 

―南二局終了時―

 

 

風越  111600

清澄  110700

鶴賀   88100

龍門渕  89600

 

 止まらない、止まらない流れ

 

 

 南三局 親、鶴賀。ドラは{1}。

 後半戦、これまで、アガリも振り込みもしなかった竜が、動いた。

 風越、咲の捨てた一萬をチー。打{4}。光を放つ鳴きは、健在だった。

 

竜 手牌  ?????????? チー {横一二三}

 

「それでも、もう私は止まらないよ」

 

咲 手牌 {三⑧⑧⑧⑨⑨⑨223北北北} 

 

 咲は笑った。

 鶴賀の番、桃子の切った{2}を咲はポンし、{3}を切った。竜はその{3}をポンし、打{④}。また光った。

 

??????? チー {横一二三} ポン {横333}

 

 そして咲は、また笑った。

 

「それでも、これでおしまいだよ。カン!」

 

 咲は手持ちの{⑧}を暗槓。

 

{三⑨⑨⑨北北北} ポン {2横22} 暗カン {■⑧⑧■} リンシャンツモ {⑨} 

 

「もいっこ、カン」

 

 さらに{⑨}を暗槓。

 

{三北北北} ポン {2横22} 暗カン {■⑧⑧■} 暗カン {■⑨⑨■} リンシャンツモ {2}

 

 咲はその{2}をさらにカンした。

 

「これで…」

 

 咲は嶺上開花でアガリ牌の{三}をツモれる確信があった。

 

「甘いナ」

 

 だが

 

「え?」

 

 先に倒したのは、竜。

 

「ロンだ」

 

{1113①②③}  チー {横一二三} ポン {横333} ロン {2} ドラ {1}

 

チャン槓三色ドラ3、満貫。トップの順位はまた入れ替わった。

 

「そ、そんな…」

 

「あンたにひとつだけ教えてやる。『そこ』は誰のモノでもない」

 

 そしてオーラス。親は龍門渕。ドラは{③}。

 竜は哭いた。鶴賀から{7}を。そしてドラの{③}を落とした。聴牌したのだろうか。新ドラは{③}。

 竜は哭いた。龍門渕から{8}を。また、{③}を落とした。ドラのトイツ落とし。新ドラはまた、{③}。

 竜は哭いた。風越から{9}を。そして、{③}を河へ。竜の狙いは何だ?新ドラは・・・{③}・・・。

 桃子は堪えれなくなり、ドラをチーし、清一へ向かった。

 

(少しでも多く…少しでも多く、先輩へ…!)

 

 桃子は心の中で叫んだ。咲も、透華も叫んだ。

 清澄、哭くな……、と。

 

 竜が哭く…。

 

 

「ひとつ哭けば、またひとつ…」

 

 

――――己がなおも 哭きたがる

 

 

{①}  暗槓 {■白白■}  大明槓 {777横7}  大明槓 {88横88}  カン 大明槓 {横9999}  

 

ツモ {①}

 

 

 

「終わったな…」

 

 

 

 

―副将戦終了―

 

 

風越   95600

清澄  150700

鶴賀   80100

龍門渕  73600

 

 

 

 

 

 

 

 

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