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make me sad.
make me mad.
make me feei alright?
◆
インターハイ個人戦が終わった翌週のこと。
「何を読んでるんだ?」
職員室。アレクサンドラはD・Dの席の後ろを通りかかった時、彼が読んでいた資料に目がいった。テストの答案でも無ければ、授業に使うであろう資料でも無い。
「英利政美の研究レポート。玲音から貰った」とD・Dは答える。
「英利政美…橘のか。もう亡くなっているが」
「それが、死んでないんだよ。このレポート通りならね」
「生きている?」
と言いながらも、彼女の表情に変化は無く、大して動じている様子は見せていない。彼女は彼の空いている隣の席に腰かけた。
D・Dはまずこのレポートがこの世界のものでは無いことから説明した。岩倉玲音から提供されたこの資料は、彼女の世界のものであり、彼女の世界の【ワイヤード】のことについて記されていた。
「【ワイヤード】…初めて聞くけど、こっちの世界の【オーバーワールド】に近いのかな?」と彼女は聞いた。
「この世界の上位階層、と英利政美に『定義された』という点なら近いだろうね。実際は違うけど」
彼はレポートの内容を引き続き説明した。
玲音の世界の英利政美の研究とは、【リアルワールド】と【ワイヤード】を繋げ、人間を次の段階へと進化させる、というものであった。そしてその実行プログラムとして【lain】を造り、彼女にその使命を果たさせようとした。だが、彼女達の意思はそれを拒絶し、英利政美の記録は彼女達に書き換えられ事態は収束した。
「それが岩倉玲音のいた世界の英利政美か。となると、こっちの世界の英利政美の研究…偶然じゃないね」
「玲音の世界の彼も既に死んでいた、とされていた。つまり彼の目的はこの世とあの世を『完全に』繋げること…」
「あの世はどんな所だった?」
「少なくとも、こっちの世界に混ぜ込んでいいものでは無いよ。この星と人類を永遠に残したいのだろうけど、永遠ほど退屈なものは無い」
「なら止めないといけないな」
「鷲巣には私から連絡を入れておく。場所はまず間違いなくあの『船』になるだろうから、【帝愛】も絡んでくるだろう」
「問題は実行プログラムだが…」
「選ばれるのは間違いなく『彼』だろうね」
「あれの意思と力を抑えない限り、世界は繋がってしまうな」
「その件なら、彼が何とかしてくれるだろうからあまり気にしていないよ」
「彼?」
D・Dは彼女を視聴覚室に連れて行き、今年行われたインハイ男子個人戦の記録ビデオを見せた。
「見せたいのは、彼のことか?」と彼女は聞く。
そこに映し出されたのは、清澄高校一年、須賀京太郎。今年度の優勝者である。
「十分欲しい人材でだけど、インハイチャンピオン…ましてや男子程度のレベルの者が『彼』を止めることは出来ないと思うよ」彼女は再度聞く。
「彼の麻雀歴は半年にも満たないそうだ」
D・Dは答える。
「言いたいことはそうでは無いよね?麻雀歴など何の意味も無い」
「その通りだ。問題はその麻雀歴の中で、彼が誰と打っていたかだね」
「清澄高校…。『あの三人』とか」
「『あの三人』と打ったことのある者の殆どは地獄に落ちている。所謂人生のどん底という意味もあれば、言葉通り死んだ者もね。そんな存在…それも『三人』全員と毎日打ち続けていればどんな現象が起きると思う?」
「ヴィヴィアンの【カウントダウン】…宮永家の【ゼロ】…」
「そう…。その『反動』が今年のインハイ個人戦で発現したんだろうね。その規模は、君が挙げた二つの例のものとは桁が違う」
「なるほど。だが、いつかは収縮に向かっていくんじゃないか?」
「どうだろうね…。まぁ、保険は用意しておく。力を抑えることは出来ても、意思を捻じ曲げることは…寧ろそっちの方が困難だからね」
「その保険もどうだかね。『彼』が神にさえ従うかどうか…」
「さて」
決勝戦の映像も終わり、D・Dはビデオを止め、立ち上がる。
「我が息子に、父親として小遣いをやらないとな」
「20億は小遣いのレベルでは無いと思うが」
「子供の成長には必要さ」
「彼は『ハーフ』だよね?しかもレベルは6未満。あの船にやって大丈夫なのか?」
「異能者程の影響は受けないにしても、『兎』は封じられるかもね。まあしかし、やはり成長にはうってつけの場だ。ZOOに居る故にずっと『裏』いて、『表』に揉まれなかった彼にとってはね」
◆
英利政美は『代理の神様』だったわけだけど、こっちの世界の英利政美は、いったい誰の代理なんだろうね。
◆
◆
船には主要各国からの研究員も数名参加している。
【橘総研】代表の積倉手数もその一人であり、彼もこの大会に参加している。
例年と違うのは、目的は調査では無く、大会で優勝し、リターンを持ち帰ること。【橘総研】に入社してまだ1年にも満たない彼がこの大会に出場できたのはそういった理由である。
異能現象を研究し、それに近い現象…【満潮】を起こすことの出来る彼ではあるが、異能者ではないため、彼自身に異変は起きていない。
「予想はしていましたが、やはり来ましたね」
二回戦。対局室に入った積倉の前には二人の男女がいた。一人はソフィア・アンティポリス出身の研究員であると同時に世界ランカー…【風神】雀明華。そしてもう一人は、
「爆岡さん」
1年前の個人戦決勝を境に日本から姿を消した【爆牌】の使い手、爆岡弾十郎。彼もこの船に来ていた。
そして、4人目の対局者が部屋に入ってきた。
「打て……ますね……?」
4人目は京太郎。
場決めも終わり、開始時間と共に彼らは二回戦を始めた。
◆
人間の麻雀の限界。
異能者として生まれず、しかしそれでも麻雀を続けている多くの者にとってのテーマの一つである。
男性と女性の平均雀力の差は年々広がる一方であり、異能者数も女性が圧倒している。それでも麻雀人口においては男性の方が多いのは、異能者が少ない故に男性同士での差は生まれにくいためである。プロ麻雀は基本的に男と女に分けられ、女性に勝てないからと言ってプロとして生活していけないわけでは無い。
爆岡にはそれが許せたであろうか。男であるとか女であるとか異能者であるとか無いとか、生まれで一生を決められることが許せたであろうか。同じ麻雀をやっているのに、本当の一番になれない。そんなことが許せたであろうか。
【爆牌】…対局者全ての牌を完全に読み、余剰牌を打ち取るという光景はまるで異能者の如き。爆岡がその感覚をものにするまでに3年を費やした。彼はその【爆牌】を駆使しインターミドル三連覇を成し、そしてインターハイにおいて優勝した。
しかし一年前のインハイ、彼の前に立ちふさがったのは、中学時代からインターミドルでも何度も打った相手、鉄壁保。【支配色】と【爆守備】の『技術』を駆使し、そしてその観察力と成長は爆岡をチャンピオンの座から引きずり下ろした。
これまで積み上げてきた。
トッププロへの道も見え、これから、何もかもがこれからだった矢先、それが崩れ落ちた。彼はその後、日本を離れた。
後に鉄壁は彼の事をやはり天才だったと評した。彼は天才であるが故に完璧でありたいと願い、全ては順調であった。だが、その期間が続けば続く程それが崩れる時の恐怖は倍増していたであろう。これまで積み上げてきたものが何もかも無意味だった。そう何者かから告げられているかのようで。
しかし、彼は麻雀を諦めなかった。
船については裏では世界的に有名であり、半年ほど前、彼がイタリアにいたころに耳に入った話だった。代打ちをやっていたわけでは無いが、彼の実力を見たギャング、パッショーネのボスは、彼に船への参加費を渡した。
ただ奇妙なことに、他の組の者なら言うであろう「勝て」という言葉を彼にはやらなかった。ただ船で体験したことを報告してもらえればそれでいい、と。
だが、勿論彼は勝つためにここにおり、優勝するためにここに来た。
「リーチ」
彼のリーチはその性質が特殊なものであると同時に、その大きなフォームから繰り出される強打はその独特さを際立たせている。その迫力は、まるでその打牌がそのまま爆発そのものであるかのようで、視界は煙で覆われ、火薬の臭いにむせる程の錯覚が現れる。
座順 積倉→京太郎→爆岡→ミョンファ
(まずはランダムから…ですかね…)
東1局、9巡目に放たれたドラ切りリーチを見て、積倉は思考する。
ドラ {5}
東家 積倉 手牌
{二三四五六七八⑤⑥⑥688}
西家 爆岡 捨て牌
{⑨西九一七1}
{発中横5}
爆牌とは、ピントを合わせる打牌である。
相手の手牌を全て読み、余剰牌を狙い撃つ。しかしそのためには局が進み、読みの基盤が出来てからでないと放たれることは無い。
だがこの東1局の、まだ読みが進んでいないはずの段階で打たれたものは何か。
ランダム爆牌。
これは非合理的手順により放たれる爆牌であり、相手の余剰牌を狙い撃つものでは無い。
彼はピントを合わせるため、一旦フォーカスをずらし、それから絞り込む。そのためにランダム爆牌が使用される。そして完全に絞り込むために2局使い、本爆牌が放たれる仕組みとなっている。
余剰牌を狙い撃つ打ち回し自体非合理的なものであり、このことから通常の爆牌との区別をつけることが出来たのは、インターミドル時代、彼の麻雀を見た者の中では僅かであった。
(実際に読み切っている局とそうで無い局が存在することで、爆牌のメカニズムを解析することは困難を極めました。単なる余剰牌の打ち取り以上に、ランダム爆牌の存在は脅威でした)
10巡目 積倉 手牌
{二三四[五]六七八[⑤]⑥⑥688} ツモ {7}
(ランダムである以上、余剰牌を意識して打つより、こちらの都合で打つのがベター…ですかね。満潮寄りのこの形なら、一通を見据えての打{8}…)
だが彼は手を止め、その手を左に流した。
(しかし去年までと同じなら、彼はここには居ないでしょう。ここは干潮に進んだとしても、ここはこの一打)
打{二}。三色や一通は消えるが、シャンテン数は進む。彼はこの爆牌が本爆牌であることを想定して打った。
4巡後。
「ロン」
ミョンファからの{9}で爆岡は和了った。
西家 爆岡 手牌
{4445677899南南南} ロン {9}
積倉 25000
京太郎 25000
爆岡 33000(+8000)
ミョンファ 17000(-8000)
(ドラを切って{5}、{8}、{3}、{6}待ちを拒否してまで『僕の』{6}、{8}を狙い撃っていますね…。これは偶然狙い撃ちの形になったランダム爆牌でしょうか…)
いや
(僕はそうは見ません…。そして…)
続いてその視線を上家のミョンファの河に向けた。爆岡の和了牌であった{9}の前に彼女の自風である{北}が3つ並んでいる。
(爆守備…いえ【風神】の力ですか…しかし…)
ミョンファ自身、この船において風が集まっているのには疑問を感じていた。
(1回戦もそうでしたが…去年の船と違いますね…)
異能者殺しで有る筈の船であるにも関わらず彼女に風が集まっている。それは1回戦の時も同様で、全局とはいかないまでも、半荘の半分以上の局は彼女に自風は集まり、南場には場風も来ていた。
(レベル6未満は統一化されるはずですし、例年通りなら風は集まって来ないはず…。はっきりと世界が分断されているわけでは無く、混ざり合いつつある…ということでしょうか…)
彼女の目的は積倉とは違い、リターンを持ち帰ることは指示されていない。今年も例年通り目的は調査、ということでここにいる。
(いつも思いますが…たったこれだけのために大金をつぎ込めるものなのですね…。ネリーに分けてあげたいです……)
と、彼女自身研究所に対する疑問を持ちながらも、しかしやれるだけのことはやろうとも思っている。
(1回戦の時はしませんでしたが…)
ミョンファは牌を卓に戻す前に「失礼」と言った直後、大きく息を吸った。
「うわっ」
京太郎は彼女の歌を聴くのは初めてであり、あまりの唐突さに声を出した。
積倉と爆岡に関しては、特に驚く様子も無くその歌を聴いていた。
これは世界的には珍しいものでもない。多くの公式大会では対局中歌うことは禁止されているが、欧州選手権では認められている。
なお日本はプロでは禁止されているが、インターハイやこの船などにおいては対戦相手の思考の妨げにならない対局の区切りなどのタイミングでなら歌ってもいいことになっている。
「すみません。驚きましたか?」
短い時間ではあったが、歌い終えたミョンファは京太郎に言った。
「え…あ、まぁ…。しかし、良い歌でしたよ。いつか、ゆっくり聴きたいです」と彼は返した。
ミョンファは少しだけ顔を赤らめ
「でしたら、今晩、あなたの部屋に伺ってもよろしいでしょうか。そこでお聴かせします」
「え?良いんですか?その…すみません。ありがとうございます…」と彼も照れ気味に返答した。
「対局中だぞ…お前ら…」
爆岡が不機嫌そうに割って入った。眉間に力が入っている。
「…すみません……」
京太郎とミョンファの声は揃い、その様を見て彼は大きくため息を零しながら牌を卓に戻した。
一方積倉は笑いを堪えており
(別にこの船は対局中の私語は禁止されていないのに…爆岡さんまだ子供っぽい所あるんですね…)と思っていた。
局は再開された。
東2局も同様、彼女は配牌の段階で自風の{西}が暗刻で集まっていた。
また風牌以外の形も悪くなく、歌の効果はあるように見える。理論上では東1局の段階で東2局の牌山の形は出来ているものだが、歌の前には意味を成さない。
ドラ {1}
西家 ミョンファ 配牌
{一四六③⑧⑧⑨35東西西西}
この形に最初のツモが{[五]}。
(少しは牌もノってますかね…。やはりここはまだ『こっちの世界』寄りなのかもですね)
その彼女を後押しするように、早々に積倉から{⑧}が切られ、そして嵌{4}をツモり、彼女は聴牌した。
西家 ミョンファ 手牌
{四[五]六345東西西西} ポン {⑧⑧横⑧}
だが聴牌した次巡、爆岡の牌が曲げられた。
南家 爆岡 捨て牌
{8北6白中[⑤]}
{横2}
そのリーチ直後の彼女の手にあったのは{七}。
(危なげ…。せっかく攻めたのにまた降りるのはあまりいい気はしませんが、序盤に二連続の振り込みはしたくありませんし…。なるべく長い間打って状況を見ていきたいです)
彼女には風を防御に使う手段がある。前局は風を使い切った後に振り込んでしまったが、基本的には、いつでも3巡の防御が出来ることは彼女にとってのアドバンテージである。
しかし
「ロン」
南家 爆岡 手牌
{七七八八九九⑨⑨1133西} ロン {西}
積倉 25000
京太郎 25000
爆岡 45000(+12000)
ミョンファ 5000(-12000)
(純チャンリャンペーコーを捨てて?先程の和了の形もそうですが、奇妙な方です。ですが眼鏡はしていませんし、『こちら側』な印象もありません)
彼女は眼鏡を少しだけずらし、彼女にとって本来見える景色を少しだけ見た。
(この景色を見て平静でいられるとも思いませんし、世界にはまだまだ変わったお方がいるのですね…)
そして積倉も彼の和了に感心していた。
(異能者を想定した【爆牌】…。彼は本当に『技術』でこの世界の一番を目指しているのですね…)
と、彼は『同類』がいることを実感し、それだけでもここに来る意味はあったと確信した。
続く東3局も爆岡は曲げる。
(また?)
三連続のリーチ自体は大して珍しくも無いが、一般の人間が、不合理な打ち回しをしてのリーチとなると話は別であり、そのことにミョンファは、彼が本当に『こちら側』では無いことに疑問を持ち始めた。
ドラ {2}
東家 爆岡 捨て牌
{中⑧九①横2}
(そう…。彼の異常さは『狙い撃ち』だけではありません。寧ろ脅威なのは、怖ろしい程の聴牌率と、爆牌が決まった後の『流れ』です)
麻雀に流れなど無い。原村和同様、彼もインタビューではこう答える。しかし彼の【爆牌】が決まった直後に訪れる一方的な展開はオカルト的現象そのものにしか見えない。
(まるで僕の【満潮】や【人鬼】のシステムのように……ですが……)
西家 積倉 手牌
{六八⑥⑦⑦⑧⑧⑨[5]5679} ツモ {七}
(この【爆牌】はどうも違いますね。やはり【ランダム爆牌】の存在は、フォーカスをずらす以外にもあったのかもしれません)
満潮寄りの己の手牌を見て、流れが移っていないことから彼はそう推理すると同時に
(白糸台にもそれに似たタイプはいましたしね)
腕時計に視線を降ろし、『時刻』が近付いていることを感じた。
(戦い方は心得ていますよ)
彼は余剰牌の{9}に手を付けず、{5}に、そしてさらに次巡に{8}をツモると{[5]}に手をかけた。
「ツモ」
{六七八⑥⑦⑦⑧⑧⑨6789} ツモ {9}
積倉 30000(+4000+1000)
京太郎 24000(-1000)
爆岡 42000(-1000)
ミョンファ 4000(-1000)
東家 爆岡 手牌
{五六七⑤⑥⑦2245678}
躱された爆岡であったが、特に動じる様子も無く、その手を卓に戻した。
そして次局の東4局、またも積倉に躱され、8000を振り込んだ時も同様、表情に変化は無く、苛立ちの素振りは見られなかった。
積倉 39000(+8000+1000)
京太郎 24000
爆岡 33000(-8000-1000)
ミョンファ 4000
(となれば、一概に強くなったとは言えないはずです)
爆岡はその爆牌の制度を上げ、ランダムを使用せずとも正確に相手の手を読んでくる。しかし、毎局正確に読んでくると想定出来れば、そして、リーチで手を塞いでくれるなら尚更対応は、以前と比べれば容易にはなる。加えて、積倉の推察通りであるなら、ランダムが無い故の爆発後の一方的な流れも発生しない。
(それは、爆岡さんも分かってはいるはずです…)
積倉はこう思った。
爆岡は、流れなど求めていない。
ランダムなど爆牌の制度を高めるための手段に過ぎず、必要と無くなったら、たとえそれが流れを掴むための必要材料だったとしても、それを認めない。それが彼の哲学である、と。
(爆岡さん…あなたがそう思うのは自由です。ですが…それでは僕には勝てませんし、その上にもいけないでしょう)
南1局。
親番の、それも最高の状態で回ってきたと確信した彼は、視線を腕時計に降ろし、『宣告』しようとした。
その時
「違いますよ。積倉さん」
想定外の人物からの声。彼はその視線を下家の方向に向けた。
発信源は、須賀京太郎。
「【満潮】の時刻ではありません」と彼はそう続けた。
「興味深いですね。……何故…そう思うのですか?」
鉄壁保を退けての個人戦優勝者。勿論積倉も彼の試合を観ており、その力を知っている。その性質は、スタイルの存在しない多様に変化する麻雀に運が乗っている、というもの。積倉や爆岡らの麻雀とは違う世界のもの。そちら側の存在が、哲学の麻雀に口を挟む。彼にとって、これほど興味深いものは無い。
「積倉さん。あなたが大きな読み違いをしているからです」
「読み違い。どのような」
「流れについてと、俺の下家の、爆岡さん……でしたよね。爆岡さん側の事情についてです」
「おい。そこまでにしておけ」
爆岡が止めに入った。
「言葉は不要だろ。麻雀は」
「確かに、そうですね。続けましょう」
聞きたいことではあったが、爆岡の言うことにも一理ある。積倉も京太郎もそれ以上は言葉を交えなかった。
ドラ {東}
東家 積倉 配牌
{一一一②②②④[⑤]⑦289東東}
積倉が{2}を切りスタート。
(須賀さんの麻雀は、言ってしまえば『反動』の麻雀でしょう。清澄高校のあの三人と打ち続けて、圧倒的『擬似不運』を経験した反動。それがインハイで爆発した。ですが)
そのインハイからこの船までにどれだけの時間が経っているか。清澄の『三人』が大会後に表舞台から姿を消し、清澄からも去っていることを積倉も知っている。つまりこれまで、京太郎はあの『三人』とは打っていない可能性が高く故に『反動』も存在しない。
(仮に『反動』が存在していれば、これまでの局でそれが直ぐに分かるはずです。超高速聴牌、超高速和了、止めようの無い流れ、それらは開幕から発生しているはず…)
なのに
(なのに…この静かさに意味が無いとも思えない。楽しみです。彼がどんな存在なのか…)
次巡に{⑥}をツモり前進するも、次は{1}、次は{西}、さらに次はまた{1}と無駄ヅモを繰り返し、確かに京太郎の言っていたことは事実であったことを確認した。
巡は進み
南家 京太郎 捨て牌
{白白白五二②}
{7七}
河に三つ並べられた{白}は三枚ともツモ切り、その河を見て積倉は
(確かに、僕は勘違いしていたのかもしれません)
ランダムが無くとも爆岡は相手の手牌の全てを読めている。この仮説に誤りがある可能性があることに気付き始めた。
(爆岡さんは、須賀さんの手牌をまだ読めていない…。【爆牌】は『全てがピタリとハマった時に打ち出される牌』…。つまり真の【爆牌】…爆発的流れを生み出す【爆牌】はまだ打たれていない……)
彼は、去年のインハイ…そしてさらに前のインターミドルの、爆岡と打っていたあるプレイヤーの存在を頭に浮かべた。
(当…大介さん……)
爆岡の爆牌は基本的には、全員がセオリック(異能性や打ち手の性格も想定して)…に打つことで成立する。しかし、異能性も哲学性も存在せず、不規則な手順で進められる形に対しては、爆岡の予測も外れることは多い。特に、素人同然の打ち手であった当大介に対しては、大きな手を振り込むことも少なくは無かった。
今、京太郎もそれに近い打ち方をしていると積倉は推理した。京太郎は素人では無い。だが、スタイルが存在しない以上、素人打法をあえてすることも出来る、と。
(相手に合わせてスタイルを変えれるのは…脅威ですが…問題はそこに
そして
「リーチ…」
京太郎は牌を曲げた。
南家 京太郎
{白白白五二②}
{7七横九}
最後の{九}はツモ切り。
番はミョンファに回ってきた。
北家 ミョンファ 手牌
{2345678南南南北北北} ツモ {西}
(4枚目…)
自分の河に1枚。そして彼女は下家の積倉の河に目をやり、その最後の牌が3枚目の{西}であることを確認した。
(ツモられても飛んでしまいますし、どの道ここは進むしかありませんね)
と彼女はその{西}を河に置いた。
まるでそのことが予測されていたかの如く、京太郎の倒牌には間が殆ど無かった。
「ロン。ミョンファさんの飛びで終了です」
南家 京太郎 手牌
{一九九①⑨19東南北発中白} ロン {西}
積倉 39000
京太郎 56000(+32000)
爆岡 33000
ミョンファ -28000(-32000)
二回戦終了。
ミョンファは振り込んだその瞬間はドキりとしたものの、その和了が十分に理解できるものであったのもあり、直ぐに平静を取り戻し席を立った。
彼女は一礼と共に「ありがとうございました。では、今晩」とだけ残し、1番目に退室した。
(あの白の位置…最初の{白}三枚は四枚の中から…というものでは無く、その後から引いてきたもの…確かにこれは読めないですね)
と考えていた積倉に対し
「あなたの{西}で和了らなかった理由、言った方が良いですか?」と京太郎が声をかけてきた。
「いえ、大丈夫です。これも麻雀。立派に麻雀としての出来事です」と彼は返し、京太郎は「わかりました。では、また」と彼もミョンファの後を追って部屋を出た。
(天才は初太刀で殺す…。僕も天才と思ってくれてるんですね…。僕にしても爆岡さんにしても、そしてミョンファさんにしても、長期戦になればなるほど、こちらが有利になる。【満潮】が来る前に、爆岡さんが完全に手を読む前にの決着…ですか。そして…)
積倉は京太郎の麻雀について一つの確信を得た。
(あの役満。確かにこちらに流れがあったわけではありませんでしたが、彼に流れが移るのはあまりにも唐突です。となれば考えられるのは一つ…)
―――須賀京太郎は運気をコントロール出来る。
積倉はそれとほぼ同じことが出来る打ち手と打っていたこともあり、そのことに気付くことが出来た。
(それに加えて、最後の西の在りかに気付ける嗅覚、変幻自在のスタイル、躊躇いも無く勝ちに向かえるスタンス……伊達にあの『三人』と打ち続けていたわけではありませんね……)
納得と共に彼も席を立ち、部屋に残ったのは爆岡のみとなった。
彼は俯き、一人呟く。
「俺様は……天才なんかじゃ………」
何年も前の話になる。
街中のインタビューに対し、珍しくも麻雀に対して否定的な意見を言っている者がいた。
女性であった。
付近を通っていた、当時まだ少年だった彼には、その言葉に我慢がならなかった。
彼は助走をつけて、その女性の顔面にめがけて拳を振るった。
カメラの前であろうが、関係なかった。
彼はカメラに向かってこう言った。
「麻雀の悪口をいうやつは、この俺様が許さねぇ」
誰よりも麻雀が好き。
これは今も変わらない。
変わらないからこそ、立ち上がれなくなるほどの挫折を味わっても、彼が麻雀を諦めるはずがない。
だから今も彼は、ここにいる。
「俺様は……天才だ……」
そう言い直した彼に見えていた景色は、