アカギ、傀、竜が清澄高校麻雀部に入部したそうです   作:叶芽

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#7 地区大会決勝 大将戦 その4

 

 現実世界にも言えることかもしれないが、麻雀は非情だ。残酷だ。

 はなから勝つ者と負ける者が決められているようだ、ということを時たま思う。

 運命なんて信じてる乙女ではないほうだが、時たま信じる。

 けど、今みたいに負けがこんでいる時は必ずと言っていいほど、思うし、信じる。

 

 今日だけで、役満を何度見ただろう。先鋒戦から数えると十回位だろうか二十回位だろうか。

 常識的感覚はとっくに麻痺している。夢のようだ。悪い夢のようだ。覚めるなら、早く覚めてほしい。

 東3局4本場に引き続き、東ラスに『また』役満を見た。

 酷い現実だ。

 酷いというのは天江のツモアガった清老頭『程度』のことじゃない。

 15巡、天江が『清澄の現物しか捨てていない』ことだ。

 さらに言うなら、その捨て牌から、四暗、緑一もあがることが可能だったことも、酷い現実だ。

 あたしの点数を下回るほどではなかったが、追い込まれていた天江は、いつのまにかトップに立っていた。

 あたしとの点差は十万程か。

 周りはどう見てるんだろう。この状況を。

 名門風越団体戦敗退決定、とかアナウンサーとかは言っているんだろうか。

 それとも、もはや話題は天江や清澄のことで持ち切りになっていて、あたしのことはどうでもよくなっているんだろうか。

 

 ごめん…みんな。

 ごめん…咲。

 ごめんなさい…キャプテン。

 

 あたしは少しぼうっとして、場を眺めた。

 そこは、戦場だった。

 鶴賀は流れを変えようとしてたのかな。端の牌鳴いて、チャンタだったのかな、染め手だっのかな。

 清澄はその鶴賀に対しての危険牌をばしばし切ってるな。ブラフだったのかな。

 あたしの河を見た。手を見た。

 あたしのやってたことと言えば、とりあえず高い手に向かって、やばかったら降りて、高い手張ったら『理由をこじつけて』攻めて、振り込む。そんなところかな。

 これが、名門風越の大将か。なんか中途半端っていうか、情けないっていうか…。

 

 あれ…

 

 なんであたし戦ってないんだ。

 ここは決勝だぞ。トップ率だとか、ラスはひかないようにだとか、そんな場所じゃないんだぞ。

 80人の部員の青春背負ってんだぞ。

 

 おい。

 

 あたしは何をしている。

 何を呆けている。

 怖いのか、戦うのが。

 違うだろ。

 戦わずにおめおめ帰って、誰に顔向けできる。コーチにも咲にもキャプテンにも誰ひとり合わせる顔がない。

 そっからの毎日が『もっとも怖いんじゃないか』。

 去年身にしみてるだろ。知っているだろ。中途半端なあたしが、風越の泥を塗って、いろんな人から後ろ指刺されて、あたしは堕落していった。

 本当に怖いのはそれだろ。

 バカかあたしは!

 

 そう思っていたら、既にあたしは叫んでいた。

 存在感だけでも、嵐の中に身を置きたかった。

 

南一局 ドラ {⑨}

親 池田 配牌

 

{六七七九③③⑥⑧888南西中}

 

―なめるな

 

七巡目

 

{六七七八九③③⑥⑦⑧888} ツモ {八} 

 

―池田華菜を

 

打{8}

 

八巡目

 

{六七七八八九③③⑥⑦⑧88} ツモ {九} 

 

―天江…

 

打 {六}

 

九巡目

 

{七七八八九九③③⑥⑦⑧88} ツモ {⑨}

 

―清澄以外は眼中になしか…

 

打 ⑥

 

十巡目

 

{七七八八九九③③⑦⑧⑨88} ツモ {7}

 

―点差に胡坐をかいている君に

 

打 8

 

十一巡目

 

{七七八八九九③③⑦⑧⑨78} ツモ {1}

 

―目に物をみせてあげよう

 

打 {③}

 

十二巡目

 

{七七八八九九③⑦⑧⑨178} ツモ {1}

 

「リーチせずにはいられないな…」

 

打 {③}

 

 バカなリーチだと思う。

 バカな戦い方だと思う。

 親なのだから、連荘を優先してさっさとあがってしまえばいいのだ。

 それに、運命があるというのなら、それは天江に味方しているだろう。

 天江はまた役満を張っているかもしれない。

 せっかくあがれるのなら、あがってしまえばいい。

 だが、それではだめなんだ。

 それでは風越の大将として失格なんだ。

 さらに付け加えるなら、この場にあたしを見せたかった。

 あたしはずーずーしいんだ。ウザいんだ。その人間が、目立たなくてどうする。

 リーチは、その気迫の、あたしのための証明だ。

 

 次巡ツモッて来たのは字牌

 {北}

 生牌の{北}

 『ツモ切るしかない』

 

 だが、今度は堂々と切ってやる。

 

 あたしには『わかってるんだ』!

 

「ロ…ロン…」

 

{西西西発発発白白白中中中北}

 

 わかってるんだ『そんなことは』!

 

 あたしは込み上げてくる涙を殺した。

 泣いてたまるものか、まだ、まだ負けてない。

 終わってないんだ。

 

―南一局終了時―

 

衣    182600

アカギ  124700

加治木   90100

池田     2600

 

 

 清々しくもあった。

 ここまでやられると、もう、あたしのなかの何かが『切れた』。

 目標は単純になった。

 天江衣を倒す。シンプルな目標だけに。

 その考えが、逆にあたしを冷静にした。

 天江の河を見ると、やはり天江は清澄の現物を主に捨てている。

 清澄を恐れ、逃げている。

 方向が分かるなら、そこを撃てないかな。

 

南二局 親 衣 ドラ {⑧}

 

十巡目

 

{一一一⑦⑦33377白白北}

 

 もうひとつ見つけたことは、かつての天江の支配とは違い、こちらもあっさり聴牌できるということ。

 誰もが高い手を張れる、そういう嵐にあるのかもしれない。

 あたしはキャプテンのように一点読みなんて出来ないけど、うまくいくかな。

 次巡、{白}をツモり、聴牌。

 さらに次巡、{7}をツモり、あがれば、四暗刻。

 あたしは当たり前のように{⑦}を切った。

 もうあたしの親はないんだ、ツモ上がりに、たとえ役満でも、衣が親でも、もう効果はさしてない。

 あたしは直撃しか考えていなかった。

 

十三巡目

 

{一一一⑦333777白白白} ツモ {南}

 

 {南}が場に二枚切れている。

 清澄の河と、天江の河だ。

 今回は比較的字牌が河にあるから、天江の手に字一色はない。

 さらに言うなら、天江は捨て牌で字一色を作る勢いだ。

 理由は、清澄の捨て牌に字牌の種類が多いから。

 なら、{南}の『残り一枚』は天江から切られるんじゃあないか。

 そうあたしは推測した。

 

「リーチ」

 

 打{⑦}

 

 あたしは無意味なリーチをした。

 

 こっちを向けよ。天江衣。

 そういう理屈だ。

 

「ロン!32000!」

 

{一一一333777白白白南} ロン {南}

 

 あーあ。ダブル扱いなら一気に差が縮まるのになぁ。

 あ、けどそれならあたしはとっくに飛んでるか。

 

 ハハ……ハハハ……アハハハハ……

 

 

南三局 親 アカギ

 

 

 その局、ドラは見るまでも無かった。

 また天江だ。

 その手牌も見るまでも無かった。

 

 

「つ……ツモ……地和……」

 

 

 

 

 ホント……麻雀って非情だな…。

 

 ため息を一つ吐いた。諦めではない。

 清澄と鶴賀を見た。眼を見た。死んでない。

 なら、あたしだって戦ってやる。

 あたしは風越の大将なんだ。

 

南四局 親 加治木 ドラ {六}

 

「ロン…11600…。一本場」

 

東家 加治木 手牌

 

{東東東六34[5]} チー {横①②③} チー {横⑦⑧⑨} ロン {六} 

 

 恐らく『やり方』はあたしのと同じやり方だろう。

 天江が清澄の現物しか捨てないという性質を利用した…

 そしてきれいな一点読み。

 キャプテンを彷彿させるアガリだった。やはり、死んでない。

 

―南四局終了時―

 

衣    171000

アカギ  108700

加治木   93700

池田    26600

 

 

 

 あたしの出来ること…

 ひたすらのテンパイ。

 さらに鶴賀のテンパイや衣からの直撃を祈る。

 それをひたすら繰り返し、最後に天江から役満を直撃さえすれば、逆転だ。

 まだだ。まだ終わらない!

 

 華菜ちゃんをなめるな!

 

 

 

 

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