少し書き直し。
『緑谷君………スキル欲しいかい?』
「スキル? 何ですかそれ?」
夢の中でよくわからない事を言い出したのは、昔っから僕の頭の中に居る、安心院なじみと言う女性だ。
夢の中………と言う時点で結構胡散臭いと思うかもしれないが、それが案外、胡散臭いとも言い切れない。
明日起こる事、僕の名前、ありとあらゆる事を教えてくれるのだ。
そんな事をされて、信じない訳にもいかない。
本人としては、ここに居るのが気に入っているらしい。
元々は違う世界に居たらしいが、ある男に上半身を吹き飛ばされた、とあり得ない事を言ってる。そもそも違う世界って言う時点でスケールが大きすぎる。
まあ、半信半疑のまま話を聞いていると、様々な事がわかった。
まず一つ、ここは誰かによって作り出された世界だと言うこと。簡単に言えば『漫画』と言った存在だ。安心院さんも作り出されたらしい。
だからと言って、僕にはそのようには見えないけど。
次に、この『漫画』の世界では、僕が主人公だと言うこと。
だから安心院さんは興味を持ったらしい。
何か『改造』とか『原作前』だとかよくわからない事を言っていたのをよく覚えている。
そして最後に、本来は僕と安心院さんが会う事はあり得ないと言うこと。
そもそも『作品』が違うらしい。まあ、安心院さんにはそんな事全く関係ないようだが。
様々な事を教えてもらった結果、僕は安心院さんの言う事を信用する事にした。
どうせ夢の中だと思ったからだ。
しかし、それから毎日のように夢の中に出てくるので、安心院さんと会うのを重ねる毎に、言っていた事に信憑性が増してしまった。
そんな事もあり、いつの間に仲が良くなっていた。一回だけ「僕と一緒で楽しいですか?」って聞いたら、『僕は君が欲しいんだ』そう言っていた。
意味はよくわからなかったけど、頭を撫でてもらったり、抱きしめてもらったり、色々してもらったので、別にわからなくても良いかな?
その後、安心院さんに聞いてみたりすると、
『ん~、恋愛感情と一緒と言えるかな?』
『本当はあっちの世界でも良かったけど、戻るのも面倒だしね』
『そしたらいつの間にか、君の夢に入っていた。もしくは閉じ込められた………と言った所かな?』
『最初は気紛れだったけど………いつの間にか君に対する感情が変化してたんだよ』
『簡単に言うなら…………恋愛感情だと思うよ』
『初めての感情で………面白いじゃないか?』
『だから……緑谷君。幸せにしろよ? 僕の事』
『別に結婚とか付き合うとかじゃないから』
聞かなきゃよかった、と後悔する。
恥ずかし過ぎて爆発しそうだ。顔を見ると恥ずかしくて見られないよ。
どっちにしても絶対会うんだけどね。
そんな感じで色々あって、出会って数年。冒頭の台詞に戻る訳だよ。
それじゃあ、ここで改めて聞こうと思う。
「スキルって何ですか?」
『………始まる間での序章が長くないかい?』
「短いですよ。数年間を文章に纏めたんですよ?」
『最後とか投げやりじゃないか……ま、良いや♪ スキルについて………だね?』
「はい」
『よし、この安心院さんが説明してあげよう! 画面の外の普通達にもね』
安心院さん、メタいです。普通って何ですか? 普通って………。
『簡単に言うと………んー、凄い個性かな?』
「適当…………よくわからないですよ」
凄い個性って言うのが、イマイチよくわからないだよな。
僕達の世界の個性と、安心院さんの世界の個性がどう違うのかって話ですよ。
『違い? 次元的に違うよ。君達の世界の個性はアメコミみたいな感じでしょ?』
『ビームが出たり、空を飛んだり、再生したり……そうじゃないんだよ………緑谷君♪』
『君達の能力とスキルじゃ根本的に違いすぎる』
心を読むのを止めてください。
恥ずかしいじゃないですか? そして抱きつくのも止めてください。これでも思春期の男なんですよ。
興奮しちゃうじゃないですか。
『んー?………駄目♪』
ですよねー。
『次は僕達の世界のスキルの話をしよう』
『主な分類としては三つ』
『一般人には真似出来ない「異常」な能力』
『おもに実生活では役に立たない有害な能力』
『
『「言葉」を操り超常現象を引き起こす能力』
『
『あ、ちなみに
どう違うんですかね………。
『後で教えてあげるよ』
さいですか。
『さて、緑谷君。改めて聞こう―――無個性の君は………どれが欲しい?』
どれが欲しい………か。正直、わからないです。
個性と何が違うのか? 何がどう強いのか? それがわからない限りは選ぶのは難しい。
能力が全くわかっていない僕が選ぶべきなのは…………。
「安心院さんが決めてください」
『…………良いのかい?』
「はい。スキルの事がわからない僕より、安心院さんが選んだ方が良いと思って」
『………ふふふ♪ そう言うと思ってたよ』
『この安心院さんが君に一番ピッタリなのを見つけてあるよ』
何故聞いたし。
『ノリだよ、ノリ♪』
だから心を読まないでください。プライバシーの侵害ですよ。
つっても今更か。
僕の頭の中に居るんだったら、プライバシーもへったくれもないか。
『ま、良いじゃないか』
「良くない、これは良くないですね」
プライバシーは大事、これは本当に。
『とにかく発表だよ……君が使うのは…………』
無視しないでください。
『言葉使いと異常だ』
「チョイスがちょっと………チェンジで」
僕にはマイナスが一番似合う気がしてならない、というか絶対似合う。
『…………………』
「チェン―――」
『ばーん』
「ジバァッ!?」
ああ、前が見えねぇ………。
『そりゃ、顔ないからね』
えぇ………。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
言葉使いにするのは決めてたけど、どんな能力にするのかは決めてなかった安心院さん。
珍しくテンパっていた。可愛い。
『今から、君に言葉使いと異常を授けよう。使い方は君次第だけど、凄く難しいんだ………けどね、緑谷君なら使いこなせるだろうね。なんたって、僕がついてるからね』
「難しいって………僕に向いてるんですか?」
『ん~………多分かな?』
凄く不安になった。
殆ど諦めていた夢、ヒーローになる事。その言葉使いを使いこなせるのか?
わからない未来に不安を覚える。
『ま、駄目なら駄目で違うのにするからさ。頑張ってね、緑谷君♪』
「あ、はい」
『それじゃ~、渡すよ』
そう言って、僕の目と鼻の先まで近づいて―――
『緑谷君のファーストキス貰うよ♪』
「えっ? ちょっと待っ…………」
言葉は途中まで続かなかった。
安心院さんが僕にキスをしたのだ。急に来たのもあり、全く反応できなかった。離そうとしても、全く離れてくれない。
それどころかどんどん激しくなってくる。本当に渡すのに関係あるのか? とも思ったが、そんな事を考える暇もなく、今度は舌を入れてきた。
そして、少しずつ意識が薄れてきた。
『んんっ………ん………はぁ……』
「………………ん………………」
なすがまま、と言った言葉が合うだろう。あれよあれよと流されて、意識が飛びそうだ。
申し訳なさと嬉しさが交互に僕の心を埋めていく。
そして、緑谷は意識を失った。幸せそうな顔をして。
『………ちょっとだけ……………やり過ぎたかな?』
少しやり過ぎた事を反省………している。一応。
『にしても、緑谷君、使いこなせるかな?』
『 使いと人心支配の二つ』
言葉使いは、まだ使いこなせない。