僕のスキルと安心院さん   作:レインコート

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安心院さんが安心院さんじゃないかもしれない。緑谷君も緑谷君じゃない。

少し書き直し。


No.1 緑谷出久:オリジン

 

『緑谷君………スキル欲しいかい?』

 

「スキル? 何ですかそれ?」

 

 

 夢の中でよくわからない事を言い出したのは、昔っから僕の頭の中に居る、安心院なじみと言う女性だ。

 夢の中………と言う時点で結構胡散臭いと思うかもしれないが、それが案外、胡散臭いとも言い切れない。 

 明日起こる事、僕の名前、ありとあらゆる事を教えてくれるのだ。

 そんな事をされて、信じない訳にもいかない。

 

 本人としては、ここに居るのが気に入っているらしい。

 元々は違う世界に居たらしいが、ある男に上半身を吹き飛ばされた、とあり得ない事を言ってる。そもそも違う世界って言う時点でスケールが大きすぎる。

 まあ、半信半疑のまま話を聞いていると、様々な事がわかった。

 

 まず一つ、ここは誰かによって作り出された世界だと言うこと。簡単に言えば『漫画』と言った存在だ。安心院さんも作り出されたらしい。

 だからと言って、僕にはそのようには見えないけど。

 

 次に、この『漫画』の世界では、僕が主人公だと言うこと。

 だから安心院さんは興味を持ったらしい。

 何か『改造』とか『原作前』だとかよくわからない事を言っていたのをよく覚えている。

 

 そして最後に、本来は僕と安心院さんが会う事はあり得ないと言うこと。

 そもそも『作品』が違うらしい。まあ、安心院さんにはそんな事全く関係ないようだが。

 

 様々な事を教えてもらった結果、僕は安心院さんの言う事を信用する事にした。

 どうせ夢の中だと思ったからだ。

 しかし、それから毎日のように夢の中に出てくるので、安心院さんと会うのを重ねる毎に、言っていた事に信憑性が増してしまった。

 

 そんな事もあり、いつの間に仲が良くなっていた。一回だけ「僕と一緒で楽しいですか?」って聞いたら、『僕は君が欲しいんだ』そう言っていた。

 意味はよくわからなかったけど、頭を撫でてもらったり、抱きしめてもらったり、色々してもらったので、別にわからなくても良いかな? 

 

 その後、安心院さんに聞いてみたりすると、

 

『ん~、恋愛感情と一緒と言えるかな?』

『本当はあっちの世界でも良かったけど、戻るのも面倒だしね』

『そしたらいつの間にか、君の夢に入っていた。もしくは閉じ込められた………と言った所かな?』

『最初は気紛れだったけど………いつの間にか君に対する感情が変化してたんだよ』

『簡単に言うなら…………恋愛感情だと思うよ』

『初めての感情で………面白いじゃないか?』

『だから……緑谷君。幸せにしろよ? 僕の事』

『別に結婚とか付き合うとかじゃないから』

 

 

 聞かなきゃよかった、と後悔する。

 恥ずかし過ぎて爆発しそうだ。顔を見ると恥ずかしくて見られないよ。

 どっちにしても絶対会うんだけどね。

 

 

 そんな感じで色々あって、出会って数年。冒頭の台詞に戻る訳だよ。

 

 それじゃあ、ここで改めて聞こうと思う。

 

「スキルって何ですか?」

 

『………始まる間での序章が長くないかい?』

 

「短いですよ。数年間を文章に纏めたんですよ?」

 

『最後とか投げやりじゃないか……ま、良いや♪ スキルについて………だね?』

 

「はい」

 

『よし、この安心院さんが説明してあげよう! 画面の外の普通達にもね』

 

 

 安心院さん、メタいです。普通って何ですか? 普通って………。

 

 

『簡単に言うと………んー、凄い個性かな?』

 

「適当…………よくわからないですよ」

 

 

 凄い個性って言うのが、イマイチよくわからないだよな。

 僕達の世界の個性と、安心院さんの世界の個性がどう違うのかって話ですよ。

 

 

『違い? 次元的に違うよ。君達の世界の個性はアメコミみたいな感じでしょ?』

『ビームが出たり、空を飛んだり、再生したり……そうじゃないんだよ………緑谷君♪』

『君達の能力とスキルじゃ根本的に違いすぎる』

 

 

 心を読むのを止めてください。

 恥ずかしいじゃないですか? そして抱きつくのも止めてください。これでも思春期の男なんですよ。

 興奮しちゃうじゃないですか。

 

 

『んー?………駄目♪』

 

 

 ですよねー。

 

 

『次は僕達の世界のスキルの話をしよう』

 

『主な分類としては三つ』

 

『一般人には真似出来ない「異常」な能力』

異常(アブノーマル)とか』

 

『おもに実生活では役に立たない有害な能力』

過負荷(マイナス)とか』

 

『「言葉」を操り超常現象を引き起こす能力』

言葉使い(スタイル)とか』

 

『あ、ちなみに言葉使い(スタイル)は他とは違ってスキルじゃないんだ。そこをよーく考えてね』

 

 どう違うんですかね………。

 

『後で教えてあげるよ』

 

 さいですか。

 

『さて、緑谷君。改めて聞こう―――無個性の君は………どれが欲しい?』

 

 

 どれが欲しい………か。正直、わからないです。

 個性と何が違うのか? 何がどう強いのか? それがわからない限りは選ぶのは難しい。

 能力が全くわかっていない僕が選ぶべきなのは…………。

 

「安心院さんが決めてください」

 

『…………良いのかい?』

 

「はい。スキルの事がわからない僕より、安心院さんが選んだ方が良いと思って」

 

『………ふふふ♪ そう言うと思ってたよ』

『この安心院さんが君に一番ピッタリなのを見つけてあるよ』

 

 

 何故聞いたし。

 

 

『ノリだよ、ノリ♪』

 

 

 だから心を読まないでください。プライバシーの侵害ですよ。

 つっても今更か。

 僕の頭の中に居るんだったら、プライバシーもへったくれもないか。

 

 

『ま、良いじゃないか』

 

「良くない、これは良くないですね」

 

 プライバシーは大事、これは本当に。

 

 

『とにかく発表だよ……君が使うのは…………』

 

 無視しないでください。

 

 

『言葉使いと異常だ』

 

 

「チョイスがちょっと………チェンジで」

 

 僕にはマイナスが一番似合う気がしてならない、というか絶対似合う。

 

『…………………』

 

「チェン―――」

 

『ばーん』

 

「ジバァッ!?」

 

 

 ああ、前が見えねぇ………。

 

『そりゃ、顔ないからね』

 

 えぇ………。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 言葉使いにするのは決めてたけど、どんな能力にするのかは決めてなかった安心院さん。

 珍しくテンパっていた。可愛い。

 

 

『今から、君に言葉使いと異常を授けよう。使い方は君次第だけど、凄く難しいんだ………けどね、緑谷君なら使いこなせるだろうね。なんたって、僕がついてるからね』

 

「難しいって………僕に向いてるんですか?」

 

『ん~………多分かな?』

 

 

 凄く不安になった。

 殆ど諦めていた夢、ヒーローになる事。その言葉使いを使いこなせるのか? 

 わからない未来に不安を覚える。

 

 

『ま、駄目なら駄目で違うのにするからさ。頑張ってね、緑谷君♪』

 

「あ、はい」

 

『それじゃ~、渡すよ』

 

 

 そう言って、僕の目と鼻の先まで近づいて――― 

 

 

『緑谷君のファーストキス貰うよ♪』

 

「えっ? ちょっと待っ…………」

 

 

 言葉は途中まで続かなかった。

 安心院さんが僕にキスをしたのだ。急に来たのもあり、全く反応できなかった。離そうとしても、全く離れてくれない。

 それどころかどんどん激しくなってくる。本当に渡すのに関係あるのか? とも思ったが、そんな事を考える暇もなく、今度は舌を入れてきた。

 そして、少しずつ意識が薄れてきた。

 

 

『んんっ………ん………はぁ……』

 

「………………ん………………」

 

 

 なすがまま、と言った言葉が合うだろう。あれよあれよと流されて、意識が飛びそうだ。

 申し訳なさと嬉しさが交互に僕の心を埋めていく。

 

 そして、緑谷は意識を失った。幸せそうな顔をして。

 

 

『………ちょっとだけ……………やり過ぎたかな?』

 

 

 少しやり過ぎた事を反省………している。一応。

 

 

『にしても、緑谷君、使いこなせるかな?』

 

 

『   使いと人心支配の二つ』

 

 

 

 

 




言葉使いは、まだ使いこなせない。




    
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