あ、ちなみにヒロインは二人。
模擬市街地に到着した………広い。
改めて雄英の凄さを知った。何で学校の中に市街地なんかあるんだよ、みたいな事は思わなかったり、思ったり。
「…………んー、どうなるかな?」
やっぱり少しだけ緊張する。別にガタガタ震えたりはしないけど。
ちなみに僕の格好は、どっかの学生服らしい。夢の中で、安心院さんがくれた物だ。餞別だってさ。
「っし………!」
「フフ……」
他の人達は自信あり気に佇んでいるけど、なんであんなに自信満々なんだよ………って言いたくなる。
僕は結構緊張してるのになぁ。
あ、よく見ると”個性“に合わせた装備してる。
つっても僕のスキルに合わせた装備ってないよね。何だろう…………うん、何もないや。
「………………」
「さっきのメガネの人だ………」
すると、視界にメガネの人が見えた。あ……同じ会場だったんだ。
何か注意されたりして………離れるか。離れておけば大丈夫でしょ。
『ハイ、スタートー!』
唐突にプレゼント・マイクの声が聴こえた。僕を含めた受験生の中で動揺が起こる。
『どうしたあ!?
実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!!』
それはごもっとも、でも実戦じゃなくて模擬試験ですけど。
『賽は投げられてんぜ!!?』
その言葉と同時に、僕以外の人達が一斉に走り出した。
「…えー………」
取り残された感が凄い…………出遅れたじゃんか。そうな事言ってる場合じゃない。
僕も行こっと。
少し遅れ、前にいる皆の後を追いかける。
その時、僕は安心院さんの言っていた事を思い出していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『緑谷君………はいコレ』
そう言って手渡されたのは、学生服だった。って何で?
意味がわからないです。
『ふふっ………意味がわからない……って顔してるね』
お見通しだったようだ。
だって本当に意味がわからないんですよ、サイズとかは合ってると思いますけど。
『餞別だよ。僕からの』
学生服をですか?
いつ着れば良いですか、これ。
使い道がわからないです。学校に着ていく訳にもいかないですし………。
『もし、戦闘があったりした場合、それを着ると良いよ………緑谷君』
戦闘って……何か機能でも付いてるんですか? この制服。
明らかに普通の制服ですよ?
『うん。普通の制服だよ?』
いやそんな普通でしょ? みたいな事言われても。
だったら着る意味ないと思います。
無難にヒーロースーツとかで良いんじゃないですか?
『わかってないな~、緑谷君。君のスキルに合うヒーロースーツなんかある訳ないでしょ? とにかく………機会が有ったら着てね?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本当に着る機会があるなんて…………てか安心院さん知ってたんじゃ………絶対知ってたよ、あの人。
安心院さんの事を考えていると、目の前の壁が破壊された。どうやら仮想敵のようだ。
大きさからして、1Pだと思われる。
小型とは言え、自分よりも大きい存在………まあだからと言って何なんだ、と言う話なんだが。
『標的捕捉、ブッ殺す!!』
そうして僕に近づいてくる。
スピードは少し速いが、決して止められないレベルではない。
と言うか安心院さんに比べると雲泥の差の差だ。あれと比べる事自体が間違っているんだが。
残り4m程まで来たので、色々やってみるか……まずはスキルによって得られた身体能力からだ。
「おらっ!」
仮想敵に対して、蹴りを喰らわせる。パァン! と言う音と共に敵が弾けとんだ。真ん中から全身に掛けて砕けているみたいだ。
予想以上の威力に、僕は開いた口が閉じない………と同じ位驚いてしまった。どうやら僕の想像以上に身体能力は向上していたようだ。
しかし、慣れるのには少し時間が掛かりそうだと思う。
こんな威力の攻撃、人に向けられないよ。
『ブチ殺だー!』『ブチ殺、ブチ殺!!』
『やっちまえー!!』『もじゃ殺!!』
何故だ…………何故か僕が狙われてる気がする。気のせいとは思えないんだが。
最後の奴、もじゃとか言ってるじゃないか。もしかして砕いたから怒ってんのかな? 確かに他の人と比べると壊れ具合が異常だが。
だが、あっちから向かってくるなら好都合だ。
一つ一つ的確に破壊して、スクラップにしてやる。
「ふっ!」
一体目、下に潜り込み蹴りを一発。
「このままッ!」
二体目、うつ伏せ状態から飛び上がり回し蹴り。
「いって!」
三体目、回し蹴りの回転を利用し裏拳。
「ラストォォ大切断ッッ!」
最後の四体目は、間接に手を捩じ込み引き裂く。
この攻撃に掛かった時間、およそ3秒半。
向かってきた4体の敵を、目にも留まらぬ速さで叩き潰した。少しだが力加減に慣れてきた。
この調子で叩き潰していこうと思ったら、ビルを遥かに上回ると言わんばかりの敵が表れた。これがプレゼント・マイクが言っていたギミックとやらだろう。 けど、いくらなんでもこれはちょっと………。
「デカすぎない?」
こう言うのを圧倒的脅威って言うのかな? てか僕の攻撃って効くかな………『言葉の重み』が通用するかどうかわからないな。
あー、でも機械だったら効くと思うし。
そんな事を考えてる内に、いつの間にか周りの受験生は逃げていた。
そりゃそうだよね………あれに喧嘩売る人なんて居ないよ、普通。僕も売らないけどね。ワザワザ死地に出向くなんて言う自殺行為、するだけ無駄だ。
そう思い逃げようと思ったが―――
「…………………ん?」
誰かいる。逃げ遅れたのかな?
少し分かりにくいけど、ギミックの下に人が倒れている。それがわかった時には、既に体は動いていた。 どうやら僕は、結構なお人好しらしい。
「痛ッ…………………あー、最悪…………」
黒髪で、耳からはイヤホンのような物が延びている。見たところ女子だろうか。
とにかく急ごう。
走って女子に近づき、声を掛ける。
「大丈夫?」
「…………大丈夫に見える? て言うか………誰?」
そう言われても仕方ないか。
急に声を掛けたんだからなぁ………まあ大丈夫には見えないけどね。
「誰って…………んー、助けにきたお人好し」
「…………あんたって馬鹿?」
酷いな、助けに来たのに。まあ馬鹿と言われても仕方のない事をしてるけどね。
ワザワザ死にに来てるような物だし。
「………ウチの事………ほっといて逃げれば?」
「駄目だよ。見捨てるなんて出来ないし、どっちにしてももう逃げられないよ」
そう、もう踏み潰されても可笑しくない所に居る。
どちらにしてもほっといて逃げる、と言う選択肢は僕には存在しない。
「掴まって」
「えっ? ちょっと……待っ」
そのまま女の子の体を持ち上げる。俗に言う、お姫様抱っこ…………と言う物だ。
ここじゃなかったら明らかにセクハラになるレベルです。
「ちょ…………っ………止め…!?」
ジタバタしているが、全く落ちる気配がない。当然だ、女の子はただでさえ怪我をしている上に、僕の力も上がっている。
落とす訳がない。
「降ろせ! は、恥ずかしい!!」
「ゴメン。今ちょっと無理かもしれない。だから少し、掴まってて………ね…!」
そう言った瞬間、ロボットの腕が僕達の居た所を直撃した。どうやらギリギリだったようだ。
そのままビルの壁に張り付いた。
ただし足だけで。
「えっ!? ど、どうなってんの!?」
女の子は驚いているが、答えるのも少し面倒なので無視する事にし、後で沢山謝ろうと思う。
暴れて落ちるのも駄目なので、更に深く抱き寄せる。
反論しようとするが、それは却下。
「舌噛むよ………静かに」
「…………えっ………ちょっ…………」
ロボットは僕に気付いたようだ。さっきとは反対の腕で、こちらに向けて攻撃しようとする。
その時、良い事を思い付いた。
『言葉の重み』を使おうと思う。
悪いのはあっちだからな、壊しても文句は受け付けないです。
「それじゃあ………………喰らえ」
「『平伏せ』」