「「「「個性把握………テストォ!?」」」」
皆が一斉に驚きの声を挙げる。
だが、驚いても仕方のない事だ。入学早々にテストをする……という他の学校では考えられないような話だ。しかしここは雄英。
普通では有り得ないような事も、この学校では起こる。
それがこの学校にとっての”普通“であり、周りにとっては”異常“な光景なのだ。普通では入学式、ガイダンス等があるだろう。
しかし、ここが”異常“で”普通“な学校である以上、そのような常識は通用しない。僕達は油断していたのかもしれない。雄英に入った事で有頂天になっていた僕達は………………
「入学式は!? ガイダンスは!?」
「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」
「………………!?」
先生の言っている事は、なんとなくではあるが納得出来た。確かにヒーローになる以上、時間は大切になってくる。
それなら合理性を求め、無駄な行事を省いた方がよっぽど良いんじゃないか? と思ってしまう。
普通はあるような事もない学校………………それが雄英、それが雄英だから、で全部済んでしまって恐ろしい。
まあ正直な意見としては、入学式とかガイダンスはいらないと思う。校長先生の長いだけで中身の籠っていない話を聞くよりかは、無くしてしまった方が良いだろう………あくまでも個人的な意見だが。
”個人的“な意見だから。
「雄英は”自由“な校風が売り文句。そしてそれは”先生側“もまた然り」
あまりにも”自由“過ぎると思うのだが……………校風で”自由“だったら良いって問題でもないのだが。
少なくとも先生まで自由なのは駄目じゃないか? 疑問は口には出せずに、先生の話と共に流されていった。
他の皆は分かっていないようで、首を傾げている。すると、耳朗さんが僕の耳元に口を近づける。
少しくすぐったいんだけど。
「ねえ、緑谷」
「…………何、耳朗さん?」
「あのさ、意味わかんないんだけど………先生の言ってる事」
普通の反応はそうだろう。先生の言った”意味“が分かったのは、ほんの一握りだろうと思われる。
ちなみに僕はある程度は理解している。多分。
「まあ……なんでもありって事かな……?」
「ふーん………」
僕の説明が適当だったからこんなに素っ気ないのか?
少しでも分かりやすく説明した僕を慰めてほしいです。誰でも良いから慰めて………安心院さんならきっと………駄目だな。
先生の話は続く。地味に寒いのだが、この格好は。
「ソフトボール投げ」「立ち幅とび」
「50m走」「持久走」「握力」
「反復横とび」「上体起こし」「長座体前屈」
「中学の頃から色々やってるだろ? ”個性“禁止の体力テストとか」
確かにやってたかな、体力テスト。能力禁止っていうのは中々良かったと思う。
フェアだったから、”無個性“のテストってのは。安心院さんの特訓のお陰でかっちゃんと渡り合えたからね。
今なら越えてると思うけど………スキルがあるから余裕だとは思う。それに正確な力が測れて良いかもしれないな。
「爆豪、中学の時ソフトボール投げ、何mだった」
先生はかっちゃんに記録を聞いていた。かっちゃんは元々が才能の塊みたいな感じだからなぁ……ソフトボール投げも中々凄くなかったっけ?
60m位ではなかっただろうか………まあ、僕の記憶など宛にはならない。
正直な話、特訓以外に覚えてる事なんて殆どない。 特訓→学校→帰宅→睡眠→最初に戻る(ループ)みたいなもんだったから…………思い出すだけでも恐ろしい。
「67m」
やっぱり才能はあるんだよ、かっちゃんは。
性格以外は良いんだけど…………いかんせん性格に問題が。あの性格は欠点だろう。
あの性格を直さない限りどうにもかくにも……………
「じゃあ”個性“を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい、好きにやれ」
かっちゃんの”個性“は爆破、という超絶的に強力な”個性“だ。僕の考えとしては汗がニトロのようになっているんじゃないか? と考えている。
けどかっちゃんの”個性“は戦闘以外にはとてつもなく向いていないだろう。だけど、大きなデメリットもなくて派手で強い。
かっちゃんの性格にピッタリの”個性“だ。爆発的に暴力的な将来有望少年、といった所だろう。
「んじゃまぁ」
腕を回して投げる準備をする。ウォーミングアップは大事。凄く大事だ。
そのまま投げる構えに入り、こう叫びながら投げた。
「死ね、クソがッッ!!!」
かっちゃんは腕を振り抜いた。その瞬間、とてつもない爆音が響いた。爆音の中心地から大量の砂埃と風が飛んできた。
威力や音にも驚いたが、一番驚いたのはかっちゃんが叫んだ言葉だった。
「いや、死ねって……えぇ……」
今のは忘れる事にする。
「まず、自分の『最大限』を知る事」
そう言った先生の手の中に、メーターのような物が握られていた。
ソフトボール投げの記録が書かれている。
『705.2m』
やっぱり飛んだなぁ、と思う。
まあどうせかっちゃんだし、凄い記録になるんだろうな…………とか考えてたし。
「それがヒーローの素地を形成する、合理的手段」
この先生、合理性求め過ぎじゃないか………今の教師には珍しいタイプの人間だろうか。
安心院さんとは別ベクトルでヤバい人に思える。
いや別に安心院さんをヤバいと言っている訳ではいが………。
「うおー! すげー面白そう!」
「705mって…あんなボールって飛ぶんだ」
「”個性“思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」
面白そうってか面倒くさいだけじゃないか。”個性“使えりゃ良いって問題じゃないだろう、コレは。 それにいきなりこんな……………
「……ハッ……面白そう……か…」
先生の雰囲気が急に変化する。
これは……地雷を踏んでしまったかもしれない。
「ヒーローになる為の三年間……そんな腹づもりで過ごす気でいるのか……………よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分だ」
先生の発言があまりにも衝撃的だったのか、皆が一斉に黙りこむ。
そして次の瞬間―――
「「「「はああああ!?」」」」
驚きのあまり大声を出している皆。
僕はある程度予測済みだったので、特に驚く事はなく静観する。
「生徒の如何は先生の”自由“……ようこそ、これが――――雄英高校ヒーロー科だ」