僕のスキルと安心院さん   作:レインコート

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No.9 教師とは理不尽の塊である

「「「「個性把握………テストォ!?」」」」

 

 皆が一斉に驚きの声を挙げる。

 だが、驚いても仕方のない事だ。入学早々にテストをする……という他の学校では考えられないような話だ。しかしここは雄英。

 普通では有り得ないような事も、この学校では起こる。

 それがこの学校にとっての”普通“であり、周りにとっては”異常“な光景なのだ。普通では入学式、ガイダンス等があるだろう。

 

 しかし、ここが”異常“で”普通“な学校である以上、そのような常識は通用しない。僕達は油断していたのかもしれない。雄英に入った事で有頂天になっていた僕達は………………

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」

 

「………………!?」

 

 先生の言っている事は、なんとなくではあるが納得出来た。確かにヒーローになる以上、時間は大切になってくる。

 それなら合理性を求め、無駄な行事を省いた方がよっぽど良いんじゃないか? と思ってしまう。

 普通はあるような事もない学校………………それが雄英、それが雄英だから、で全部済んでしまって恐ろしい。

 

 まあ正直な意見としては、入学式とかガイダンスはいらないと思う。校長先生の長いだけで中身の籠っていない話を聞くよりかは、無くしてしまった方が良いだろう………あくまでも個人的な意見だが。

 ”個人的“な意見だから。

 

「雄英は”自由“な校風が売り文句。そしてそれは”先生側“もまた然り」

 

 あまりにも”自由“過ぎると思うのだが……………校風で”自由“だったら良いって問題でもないのだが。

 少なくとも先生まで自由なのは駄目じゃないか? 疑問は口には出せずに、先生の話と共に流されていった。

 

 他の皆は分かっていないようで、首を傾げている。すると、耳朗さんが僕の耳元に口を近づける。

 少しくすぐったいんだけど。

 

「ねえ、緑谷」

 

「…………何、耳朗さん?」

 

「あのさ、意味わかんないんだけど………先生の言ってる事」

 

 普通の反応はそうだろう。先生の言った”意味“が分かったのは、ほんの一握りだろうと思われる。

 ちなみに僕はある程度は理解している。多分。

 

「まあ……なんでもありって事かな……?」

 

「ふーん………」

 

 僕の説明が適当だったからこんなに素っ気ないのか? 

 少しでも分かりやすく説明した僕を慰めてほしいです。誰でも良いから慰めて………安心院さんならきっと………駄目だな。

 

先生の話は続く。地味に寒いのだが、この格好は。

 

「ソフトボール投げ」「立ち幅とび」

 

「50m走」「持久走」「握力」 

 

「反復横とび」「上体起こし」「長座体前屈」

 

「中学の頃から色々やってるだろ? ”個性“禁止の体力テストとか」

 

 確かにやってたかな、体力テスト。能力禁止っていうのは中々良かったと思う。

 フェアだったから、”無個性“のテストってのは。安心院さんの特訓のお陰でかっちゃんと渡り合えたからね。

 今なら越えてると思うけど………スキルがあるから余裕だとは思う。それに正確な力が測れて良いかもしれないな。

 

 

「爆豪、中学の時ソフトボール投げ、何mだった」

 

 先生はかっちゃんに記録を聞いていた。かっちゃんは元々が才能の塊みたいな感じだからなぁ……ソフトボール投げも中々凄くなかったっけ? 

 60m位ではなかっただろうか………まあ、僕の記憶など宛にはならない。

 正直な話、特訓以外に覚えてる事なんて殆どない。 特訓→学校→帰宅→睡眠→最初に戻る(ループ)みたいなもんだったから…………思い出すだけでも恐ろしい。

 

「67m」

 

 やっぱり才能はあるんだよ、かっちゃんは。

 性格以外は良いんだけど…………いかんせん性格に問題が。あの性格は欠点だろう。

 あの性格を直さない限りどうにもかくにも……………

 

「じゃあ”個性“を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい、好きにやれ」

 

 かっちゃんの”個性“は爆破、という超絶的に強力な”個性“だ。僕の考えとしては汗がニトロのようになっているんじゃないか? と考えている。

 けどかっちゃんの”個性“は戦闘以外にはとてつもなく向いていないだろう。だけど、大きなデメリットもなくて派手で強い。

 かっちゃんの性格にピッタリの”個性“だ。爆発的に暴力的な将来有望少年、といった所だろう。

 

「んじゃまぁ」

 

 腕を回して投げる準備をする。ウォーミングアップは大事。凄く大事だ。

 そのまま投げる構えに入り、こう叫びながら投げた。

 

「死ね、クソがッッ!!!」

 

 かっちゃんは腕を振り抜いた。その瞬間、とてつもない爆音が響いた。爆音の中心地から大量の砂埃と風が飛んできた。

 威力や音にも驚いたが、一番驚いたのはかっちゃんが叫んだ言葉だった。

 

「いや、死ねって……えぇ……」

 

 今のは忘れる事にする。

 

「まず、自分の『最大限』を知る事」

 

 そう言った先生の手の中に、メーターのような物が握られていた。

 ソフトボール投げの記録が書かれている。

 

『705.2m』 

 

 やっぱり飛んだなぁ、と思う。

 まあどうせかっちゃんだし、凄い記録になるんだろうな…………とか考えてたし。

 

「それがヒーローの素地を形成する、合理的手段」

 

 この先生、合理性求め過ぎじゃないか………今の教師には珍しいタイプの人間だろうか。

 安心院さんとは別ベクトルでヤバい人に思える。

 いや別に安心院さんをヤバいと言っている訳ではいが………。

 

「うおー! すげー面白そう!」

「705mって…あんなボールって飛ぶんだ」

「”個性“思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」

 

 面白そうってか面倒くさいだけじゃないか。”個性“使えりゃ良いって問題じゃないだろう、コレは。 それにいきなりこんな……………

 

「……ハッ……面白そう……か…」

 

 先生の雰囲気が急に変化する。

 これは……地雷を踏んでしまったかもしれない。

 

「ヒーローになる為の三年間……そんな腹づもりで過ごす気でいるのか……………よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分だ」

 

 先生の発言があまりにも衝撃的だったのか、皆が一斉に黙りこむ。

 そして次の瞬間―――

 

「「「「はああああ!?」」」」

 

 驚きのあまり大声を出している皆。

 僕はある程度予測済みだったので、特に驚く事はなく静観する。

 

「生徒の如何は先生の”自由“……ようこそ、これが――――雄英高校ヒーロー科だ」

 

 

 

 

 




   
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