扇矢萩子の捜査録~艦これRPGリプレイ~   作:長谷川光

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山部少尉が悩みがちだったものとは


写真屋

表通りから路地へと一本入ったところに、その写真屋はあった。

上海の「大世界」にある劇場の女優や、現在上海に滞在している各国の艦娘の写真が展示、販売されている。

しかし店主が従軍していたのか、売場面積の半分が英領マルタ島に関わりのある写真が多い。

 

かつて世界をその美貌と破壊力で震撼させたボッキュンボンな英国艦娘『ドレッドノート』

飛行機を前にして、顎に手を当て何事かを考えている士官等々の写真が店内に陳列されている。

続々と集結してくる連合軍の艦艇を眺め下ろすように写したもの。

自信満々、来るなら来いといった挑戦的な顔で勢揃いする英仏の艦娘たちとその指揮官。

勇ましく出撃してゆく連合軍とそれを帽子を振って見送る基地要員。

遅れて参戦した明石号を始めとした日本海軍の艦艇を迎え入れる軍人たち。

既に入店していた一人の壮年の男は、それらをじっと眺めていた。

**:「…エル二号、か。 …私は、私には… 資格はあるのだろうか?」

そのようなことを彼は呟きながら、展示されている写真の中の一つに焦点を合わせていた。

山部少尉@:「…八意、先生。こちらに小官をお呼びになったのは、何か訳があってのことなのですか?」

八意時宗:「いや…少しオヤジの昔話に付き合ってくれというだけだ…」

第二特務艦隊の司令部と艦娘たちが並ぶ写真を示しながら、彼は何事でもないように呟く。

山部少尉@:「え…? なんで、出雲さんが二人も?」

写真中央には苦笑いを浮かべて司令官の隣に腰掛ける出雲、そしてその後ろには幼いながらも出雲に顔立ちのよく似た、いや余りにも似ている少女の姿があった。

その写真の隣には、幼げな出雲ともう一人の少女が盛大に表彰されている写真。

さらに、その隣には彼のよく知る出雲と幼い出雲の二人のツーショットが飾られていた。

八意時宗:「一個の人間として生きるためには、科学者の命というべき研究生活を…かえって放棄することこそ正しい科学者の道である場合が時にはある…と昔の学者は云ったそうだが、な」

 

八意時宗:「君は知っておくべきだろう。海軍が、私が犯してしまった生命への冒涜を」

山部少尉@:「…何故、小官なのですか?」

八意時宗:「……君は、出雲女史から信頼されているのだろ?」

山部少尉@:「ど…どうなのでしょう。何時も叱られてばかり居ますので…」

八意時宗:「君は年若いからまだ分からないだろうが、叱るというのはそれなりに気力の要ることなのだよ。だから、君にそれだけの気力を掛けてやる価値はあると思われていると云う事だ。」

 

そう云われた少尉はふと思い出した。

『姉貴の奴がさ、現役時代のアタシを褒めてくれたのは両手の手で足りるぐらいだったよ… 姉貴はあの強面のくせしてシャイだってのを地で行っているからなぁ』

江田島での授業を担当していた教官(磐手)が、そう大笑いしながら雑談代わりに思い出を自分たち士官候補生に語っていたのを。

 

 

「さて、前置きが長くなってしまったな… 私が学生時代から構想していたあるアイデアは、海軍にエル号計画として呼ばれる大掛かりなものとして進行した。エル号計画というのはな……」

 

そこで語られたのは出雲の過去、そして旧世代となってしまった艦艇群・艦娘たちが辿った闇の歴史。

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