沢山の指摘、ありがとうございます。
□ヒトカゲ月りゅうのいかり日 晴れのち曇り
ワカバタウンは雰囲気だけじゃなくて人までマサラタウンに似てる。優しい人が多くていい町だよなあ。
見ず知らずの旅人を年の近い息子がいるからってだけで泊めてくれるんだから。あなたが神か。
ただマサラタウンで何かと科学の力に驚いてた近所のお兄さんのそっくりさんが全く同じ言葉を発した時には、すわこの休暇は早くも終わりかと覚悟した。本人だったらまず間違いなくオーキド博士とかに連絡行くからな…。何だろう、実は生き別れの兄弟とか?流石に生き別れは冗談だけど、親戚かもしれない。
今度会ったら聞いてみたいな、気になるし。これで特に何にもなかったら赤っ恥だけどな!
そうそう、泊めてもらった家の息子さんはヒビキ君っていうらしい。俺の3歳年下で、はねた前髪が特徴的な男の子だ。
何でもポケモンと一緒に旅をするトレーナーに憧れてるんだとか。
キラキラした顔で旅に出たらまず何をしたい、どんなポケモンがカッコよくて強そうだ。色々と語ってくれて、いかにも夢いっぱいの少年って感じだった。体も結構鍛えてるらしい。ちょうど三年前の自分を見てる気分だった。
ポケモンが大好きらしく、ボールから出しっぱなしのピカチュウに目を輝かせて抱き着いて電撃を貰ってたのが強く印象に残ってる。
ちょっと焦げてたけどピンピンしてた上に笑ってたところを見るに、グリーン以来の逸材だぜ!――――頑丈さが。
ヒビキ君はその内旅に出ようと考えてるらしく、旅の事を色々と聞いてきた。なんでも近所に住んでる幼馴染の女の子も一緒で、早く旅に出たいんだそうだ。
一つ一つトレーナーとしては基本な事でも答えるたびに感心してたから、”今までそういう話を聞いた事が無かったのか”と聞いてみた所、ワカバタウンには研究者はよく来るけどトレーナーはなかなか来ないんだとか。
確かにここにはジムもポケモンセンターも無いし、仕方ないのかもしれない。
そういうところもマサラに似ていると思った原因かもな。
俺みたいな口下手――口さえ動けばもっと上手く話せると思いたい――の話でも喜んでくれるのは嬉しい。話してるこっちも結構楽しめたし、コレは本当に良い家に泊まれたな。全ての質問に納得のいく答えを返せなかったのが本当に残念だ。
俺が旅に出た時はなあ……。散歩してたら大量のポケモンに襲われて、仕方なくそこら辺で拾った木の棒で撃退してる所で博士からボールに入ったピカチュウと図鑑を渡されて、気づいたらなし崩し的に旅立つことになったんだっけ。
無我夢中で棒を振り回してたからそこら辺の記憶が若干曖昧なんだよな。それにあの時は必要だったからポケモンや図鑑貰っただけで旅に出る心算はなかったのに、母さんがどこから聞いたかいつの間にか俺の旅支度を完了してて……やたら綺麗な笑顔で「本気なのよね、頑張ってらっしゃい」って言うもんだから帰るに帰れなくなって…うごごご。
うん、旅中はともかく旅立ちはとてもじゃないけどロマンなんてなかったな。ヒビキ君や彼の幼馴染ちゃんには是非ともしっかり旅立ってほしいところだ。
初めての旅立ちってのは一生に一度の経験だしな。
でも流石に「隣のカントーには俺と同い年でチャンピオンになった人がいるって聞きましたけど、どんな人ですか!?」とか直球で聞かれると焦る。
まさか”目の前にいる!”、なんてバカ正直に答えるわけにもいかず、嘘を教えるのも嫌だし―――どう誤魔化したもんかと。結局『今は偽名のお蔭でバレはしない』と考えて、適当に答えておいた。
”どんな人”っていうのは大分アバウトな質問だと思う。容姿に特徴、性格に特技。仮に俺がチャンピオンじゃなく、またその知り合いでもなかったらどう答えただろう?やっぱ容姿かなあ。それとも印象か。俺の特徴って言えばやっぱり『無口』かな。いや、単に喋れないだけなんだけど。
ただこの先どこかで俺が映ってる雑誌の記事とか見られたら即バレするなんて可能性もあるのが怖い。
マスコミ関係から逃げるためにいろいろ苦心してたから俺の顔の入った写真は少ないけど(恥ずかしいという理由もなくもない)、流石に公式戦とかの写真まではな…ちょっと帽子を目深にかぶった位で果たして効果があるのかどうか。
俺が出る公式戦自体少なくて基本的に顔を出すくらいだったから、写真の絶対数が少ないのが救い――いや、旅の間にリーフあたりは撮りまくってるだろうからやっぱりマズいかも。どんな写真が出回ってるか分かったもんじゃない。
雑誌に自分が写ってるのとか見るの恥ずかしくて結局まだ見てないんだよなあ…。他人の評価は確かに気になるけど、そればっかり気にしてたら精神的に潰されるって最近学んだし。…主に二つ名で。
変装とかもっと本気で考えた方がいいのかもしれない。いっそのこと服装だけじゃなくて髪型も変えてみようか。仮面なんていう選択肢も…止めよう、この年で不審者扱いされたくない。
ヒビキ君には昨日の夜に一応旅の先輩としてアドバイス、というか箇条書きで色々書いた紙を渡しておいた。直接言おうとしたらどうしても片言になって訳わかんない事になるだろうし。遠足のしおりみたいになったのはご愛敬だ。
『バッグとおこづかい3000円とキズぐすりだけで旅に出るなんて無謀だぞ、俺は地獄を見た』とか『旅の後半になってくると定期的に金の儲かるバイトとか探した方がいい、ポケモン全員(特にカビゴン)の食費マジヤバい』とか。
他にも『身の危険を感じた時にダイレクトアタックは基本』とか『トレーナーなら自分のポケモン以上に強くなる様鍛えるべき』とかね。
いや、流石にもっと丁寧に書いたけど大体こんな感じ。
前二つは旅の中で実体験して学んだことで、後ろ二つは黒づくめコスプレイヤーのお兄さんに教えてもらった事だ。―――そういえばあのお兄さん凄い体張った
カビゴンが珍しくバトル以外で起きたと思ったら、持ってきた食料が全滅してた。これが絶望か…。
□ヒトカゲ月かえんほうしゃ日 曇りのち晴れのち曇りっぽい
参った、また寝過ごした。これじゃ先輩としてヒビキ君に恰好がつかないな――なんて、考えてる場合じゃない出来事が起きてしまった。
どうやらこの街の、というか泊めてもらってる家の隣にあるウツギ研究所でボヤ騒ぎが起きたらしい。
そしてその騒動に皆が気を取られてる隙に、保管してあった初心者用のポケモンが入ったボールを一つ取られてしまったそうだ。警察まで来てて、結構な騒ぎになってたからビックリした。そういえば何となく外が騒がしかったから一度起きた気がするんだよな…寝惚けて何か物を投げた様な……でも周りに無くなってるものとかないし、ただの夢か。
火事とか三年前ファイヤーがリーグに突っ込んだ時以来だね物騒だ、なんて思ってたらピカチュウに怒られた。
隣が火事になっていつこっちに飛び火するか分からない中必死で起こしてくれてるのに熟睡してたらそりゃあキレるよな…。何で隣でそんな大変な事が起きてるのに悠長に寝てられたんだろう。いやホント、反省してます。平謝りした。
―――で、だ。何度も書いてるが俺は寝てたんだ。昨日の深夜12時から今日の15時まで――ワオ、こうやって書いてみたらどんだけ寝てるんだ、自分のことながらビックリだよ。というかもう呆れるレベルだ、15時間睡眠てオイ…。
とにかく、ただ寝てただけのハズの俺が何故かウツギ博士や警官、研究所の周りの家の人に感謝された。「御陰で大事にならずにすんだよ」って…何の話かサッパリだったっぜ。
何がどうなったらずっとベットの上でグースカ寝てたはずの俺が消火活動を率先してやった、みたいな話が広まるんだろうか。もしかして夢遊病?――なわけないよな。ただピカチュウがふんぞり返ってたのが気になった。
まあでもウツギ博士が図鑑(中のトレーナー情報書き換え済み)のバージョンアップしてくれたし、ラッキーだったって事でいいかな。ちょっと、いやかなり良心が痛いんだけど。
それは置いておくとして、ヒビキ君とコトネちゃん(昨日ヒビキ君に聞いた幼馴染ちゃんの名前らしい)がウツギ博士に頼まれてポケモンを取り返しに旅に出る事になったんだとか。研究所に残っていた初心者用のポケモンも貰って、ついでにたまたま用事で来ていたオーキド博士に図鑑も貰ったからジムにも挑んでチャンピオンも目指すそうな。俺が起きた時にはもう旅立ってたから、ヒビキ君のお母さんから聞いた話なんだけど。
昨日『ちゃんと旅立ってほしい』なんて日記に書いたのがフラグだったのか…ごめんなヒビキ君。まあ旅に出るとき楽しそうに笑ってたってヒビキ君のお母さんも言ってたし、それが救いか。
俺が旅に出た時は多分能面みたいな顔になってたんじゃないかと思う。生まれつき仏頂面だからそんなに変わらないかもしれないけど…。今度母さんに聞いてみようか。当てにならない可能性は否定しない。
――――いやそうじゃない、そんな事より非常事態だ。オーキド博士なんで
あれか、ポケモン研究の権威者とか呼ばれてるのに学会で
「ポケモンの数は全部で150匹じゃ(ドヤァ」
とかやって大ポカしたから何かしら発見しようとしてるのか。新種なんだからしょうがないだろマサラタウンにお帰り下さい。つか帰れ。
下手をすれば本当にこのまま俺の休暇が終わってしまう事態になりかねないので、荷物をまとめてさっさととんずらしてしまう事にした。
わざわざ弁当を作ってくれたヒビキ君のお母さんには感謝してもしきれない。大変美味しくいただきました。
――余ってるからって言ってポケギアまでくれたのはビックリした。余ってるって何さ。俺一応自分の持ってるし(置いてきたけど)、流石にそれは貰い過ぎだと思って首を横に振ったら「遠慮しなくていいのよ」って全力投球してきた。ポケベースのエース狙えそうな剛速球でした。
思ってた以上にワイルドな人だったよ。ちょっと母さんを思い出した。実はヒビキ君と俺の境遇ってちょっと似てたり…?ないか。
結局ポケギアもありがたく頂きました。ジョウト用として使っていこうと思う。いつか何かしらお礼をしなきゃいけないな。
とりあえずできる範囲で…そうだ、旅先でヒビキ君に会ったら色々手助けしてあげよう。
さて、食料は買い込んだしカビゴンはしばらく起きないだろうから安心だ!
□ヒトカゲ月ほのおのうず日 大雨(天気とかポケモンがコロコロ替えるから書かなくても良い気がしてきた)
出て来るわ出て来るわ見た事ないポケモンが。初めての旅の時みたいにワクワクするな!
オタチにホーホー、ハネッコっていう名前らしい。何ていうか、癒し系?のポケモンが多かった。一方でコラッタやポッポみたいにカントーにも生息しているポケモンもよく見かける。
―――前の旅と違って、ちょっとピカチュウが強すぎるんだけどね。誰がどう見ても明らかなオーバーキルだったのが何とも…。
見敵必殺と言わんばかりに、野生ポケモンが飛び出てきた瞬間10万ボルト。相手は死ぬ。
更に明け方から降りだした大雨の所為(あまごいじゃないよ!)で水たまりができていたのが運のつき、バトルに全く関係ない野生ポケモンまで巻き添えに。ヨシノシティに着くまで築かれた黒焦げの屍(死んではない)は数知れず。地獄絵図ここに再びだ。
もうこれこの場にポケモン大好きクラブとかいたらまず間違いなく訴えられるレベルだよ。訴えられるチャンピオンとか史上初かもしれないね!全く以て笑えない。
初見のポケモンも何匹かいるんだしもうちょっと使う技とか見てみようよピカチュウ。
最近、というか三年前のリーグ戦前くらいからピカチュウには何も指示してないんだよなあ…。ピカチュウが勝手に動いて勝手に倒してる。これってトレーナー失格なのかな…一応言う事は聞いてくれるんだけど。
何だろう、そんなに俺に指示されるの嫌なんだろうか。勝手に動いてるのに相手の攻撃8割は回避して攻撃は必中してるってんだから…。うん、確かに俺が指示してる頃のピカチュウは8割回避なんて無茶苦茶なことできなかったし、自分で動いた方が強いって事なんだろう。自信無くすなあ、やっぱトレーナー失格………忘れた方がいい事もあるよね。
久しぶりにポケモンセンターで食べたご飯は美味かったです、まる。
□ヒトカゲ月ほのおのパンチ日 (天気書くの止めた)
親切なおじいさんがヨシノシティの案内をしてくれた。
ポケモンセンターに宿泊してるトレーナーからこの街に初めて来た人をさがして、ヨシノシティの事をよく知ってもらう事がおじいさんの生きがいなんだとか。因みに新米トレーナーは長年の勘で見たら一発で分かるからその場で案内してあげてるそうな。
としのこうって すげー!
ほんの少し前にもハイパーボールみたいな色をした帽子をかぶった明るい新米トレーナーを案内したんだとか…それ絶対ヒビキ君だよ。コトネちゃんは一緒じゃなかったのか。
まあ会った事ないしどんな子か知らないから、容姿を言われたとしても分からないんだけど。聞いた感じだと一人だったそうだしやっぱり別々で旅をしてるみたいだ。
俺やグリーン、リーフもそうだったし別におかしなことじゃないんだけどな。ポケモンもいるから寂しいとかは無いし。
軽く世間話をしながら色々と教えてもらったところ、ヨシノシティは思ってたよりずっと広いようだ。おじいさんがやたらアクティブな人で、ランニングシューズで走り回ってたんだけど結局回りきれなかった。
元々町を一日で全部回れるとは思ってなかったから、のんびりしながら行こうと思う。旅は旅でもちょっと長めの慰安旅行(許可は取ってない)だしね。何か目的があるわけでもなく、誰に責められるわけでもないし。……いや、捕まって帰ったら色々責められそうだけど。なんとしても逃げねば。
取り敢えず今のところはオーキド博士の動向にだけ気を付けておく。
ポケモンセンターに戻る時おじいさんが「これは付き合ってくれたお礼じゃ」って、ジョウトのタウンマップをくれたのは正直に嬉しかった。
でも案内してもらった身としては礼を言うのは俺の方だと思う。語りを聞いてるだけで結構楽しかったしね。
渡せる物が無かったからとりあえずポケギアの番号を教えて、困ったことがあったらかけて来てくださいって言っておいた。無茶なお願いじゃなければとりあえず聞こうと思う。
あ、あとおじいさんオススメの靴屋でランニングシューズを買った。動きやすくてイイね!
コレで追手からも逃げ切りやすくなったよ、ありがとうおじいさん!!
―――夜、ポケギアからオーキド博士のラジオが流れて来て胆が冷えた…。ゴーストポケモンに悪夢見せられた時の何倍も怖かった。いや、本気で。
目覚ましの代わりに耳元に置いといたのが間違いだった。どうせ目覚まし機能なんて使わないし、明日からはバッグの中に入れておこう。
と言う事でいつも通り朝は頼むよ、ピカチュウ。
第二話 読了ありがとうございます。
サブタイトルを考えるのが難しい…。
今は懐かしのセリフなんかを引っ張ってきてますがそのうちネタ切れになりそうで怖い。あんまり長すぎるのは使いづらいですしおすし。